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涼華@海法よけ藩国様からのご依頼品

昼食を知らせる鐘が響いている。
「休憩だー!ごはんー!」
涼華がはしゃいだ声をあげる。
その教室の中央、晋太郎はみんなの中心でにこにこと笑っている。
涼華の隣の席で竜乃が、
「にゃー!お昼ごはん!涼華さんー!久々にお外で食べようー!」
と楽しげに言った。
「いってらっしゃい」
晋太郎は二人の楽しげな様子をみながら、そう言った。
「晋太郎さんもいきませんか?」
「僕かい?そうだな」晋太郎は数瞬考えた後、
「分かった。いこうか」
「はい!」
「一緒ですー!」
涼華は晋太郎の横に立った。
近すぎず、遠すぎない距離。
それが今の二人の距離だった。
「麻衣さーん、どこで食べる?」
「屋上は見晴らしが良さそうだけど、どうかな?」
だが、秋とはいえ、残暑はまだまだ厳しい。
「暑いよ」
晋太郎は、正直に言った。
それを聞いた涼華が、
「中庭は?」
と提案した。
「木陰とかなら、暑くないかな?」
竜乃も、
「暑いと私も溶けそうー」
と猫耳を寝かせている。
「そうだね。木陰がいいかもね」
晋太郎の鶴の一声。
「じゃあ、中庭へ!木陰でごはーん!!」
嬉しそうな涼華の声に、やはりにこにこと笑いながら、晋太郎は、
「うん」
とうなずいた。
「涼しいトコいこー!」
竜乃も嬉しそうだ。
木陰を探して歩く道すがら。
誰もが晋太郎を見ている。
彼には人を集める、そんな力がある。
「晋太郎さんの今日のお昼のメニューは何ですか?」
涼華が尋ねると、同時、晋太郎に見惚れた竜乃が涼華の手とつないだ。
二人の仲の良さそうな様子ににっこりしながら晋太郎は、
「今日は赤飯に、青梗菜とあげの炒め物、漬物、鮭の切り身の塩焼き」
と豪華なラインナップを述べた。
「はう、美味しそう!」
「うわー!内容がすごい!」
二人は感嘆の声をもらす。
そんな二人ににこやかに、
「作り方は簡単だよ」そして、
「今度、教えてあげるね」
と、にこにこした。
すかさず、
「はい!」
と答える涼華。
「私もお弁当作ってきたけど、卵焼きと冷凍食品しかない」
と笑い、
「教わりたいです!」
と力強く竜乃も答えた。
涼華は、ラインナップの逆自慢。
「あたしは、朝買ったパンだもん」
えへと笑う涼華に、晋太郎もまた笑う。
歩いているうちに、丁度良い木陰を見つけた三人。
さすがに残暑厳しい中、外で食べる人は少ないようだった。
竜乃が、
「あそこなら涼しそうですー!」
晋太郎も、
「うん」
とうなずく。
涼華と竜乃がシートを一緒にしく様子を、にこやかに見つめる晋太郎。
誰かが仲良くしているのを見るのが、好きなようだった。
準備ができ、晋太郎はにこにこしていた。
それは竜乃にも伝染して、つられてにこにこになる。
涼華は、辺りを見渡し、
「お日様気持ち良いのに、人少ないねー」
そして、
「晋太郎さんもどうぞ!」
シートに座りながら、晋太郎を呼んだ。
「ありがとう」
晋太郎が座ったのは、微妙な位置。
近づくわけでもなく、遠いわけでもない。
そして昼食が始まる。
晋太郎は小さな弁当を広げ、竜乃は大きなお弁当をとりだした。
食べながらぽつりと晋太郎が、
「巨峰、もってくればよかったな」
と言った。
嬉しそうに涼華が、
「デザートですね!」
と言う。晋太郎はにこやかに、
「うん。良く知ってるね」
涼華は、ほめられてうれしそうに、
「食後のフルーツはいいよねー」
そんな様子に晋太郎は微笑んで、
「種無しもあるんだけどね」
と、二人でにこにこと会話をしながら食事をとる。
竜乃が、
「デザートなら冷やしぜんざい持って来ましたー!買って来たやつだけど……」
ちょっと手作りではないことに引け目を感じながら、
「また、みんなで食べようと思って、いっぱい持ってきちゃった」
てへ、と笑い、
「晋太郎さんも涼華さんも一緒に食べよう!」
と薦めた。
涼華は、あまり近づきすぎないように晋太郎の横に座る。
食事もあらかた片づいたタイミングで、晋太郎は弁当をしまうと、
「ありがとう」
と竜乃から冷やしぜんざいを受け取った。
「わーい!」
同じく、涼華もそれを受け取った。
保冷剤がたくさんついていたそれは、まだひんやりしていて、とてもおいしい。
が、なぜか晋太郎の笑顔が少し変になった。
微妙な変化に気づいて、涼華が、
「あれ?晋太郎さん?」
と尋ね、その視線の先を追った。
目の隅に、学校の塀を乗り越える人がいた。
光太郎だ。
見つけるやいなや、晋太郎は、
「ごめんね、少し待ってて」
と立ち上がった。
竜乃が、
「にゃー!弟さん発見!」
涼華が、
「光太郎さん、なにを…」
そんなつぶやきが届かないところで、晋太郎はいきなりコラッと言った。
「げ、兄貴!」
竜乃は、何?何?と興味津々で見ている。
晋太郎はよく通る声で、
「コウ、勉強はちゃんとしないとダメだよ」
必死の言い訳が大声で聞こえる。
「いやいやいや、俺はただ、昼飯を」
ちょっと遠巻きに、晋太郎と光太郎に聞こえるよう声をはって涼華が、
「あは。光太郎さんも一緒にご飯食べませんか」
光太郎はまだ必死で、
「ほら兄貴っ、兄貴の彼女もそう言ってるし!」
それが聞こえたのか聞こえていないのか、
「?」
な涼華。
晋太郎はため息をつきつつ、
「彼女でもないし、僕は、君が何をやってるかをきいている」
「あー」
光太郎はめをさまよわせた後、
「バイト……」
ふたりのそんなやりとりが聞こえない竜乃は、
「光太郎さんの分の、冷やしぜんざいもありますよー!」
と叫んだ。
様子がなんとなくおかしいことに、涼華は、むーと考えている。
と、唐突に、晋太郎は光太郎を殴った。
驚く涼華と、弟さん一直線だー!とこころの中でつぶやく竜乃。
「やりやがったな!」
「わ、ちょ、喧嘩はたんま!」
言いながら動かない涼華。
「ケンカはいけませんー!」
竜乃はダッシュでふたりのところへ走り、持っている扇子でふたりをチョップする。
だが、その程度でこの兄弟は止まらない。
「ちゃんと勉強しないといけないよ」
さらに、光太郎が全力で殴る前に、晋太郎は光太郎を華麗に投げ飛ばした。
竜乃が、
「喧嘩はだめですー!」
と涙目になるのに対し、涼華は、
「あらー、晋太郎さん、すごい!」
と目を輝かせている。「げ、元気になりやがって、がくっ」
光太郎はそう言って倒れた。
竜乃は目の前で一瞬にして起こったできごとに、
「あれ…すごい投げ技…」
晋太郎は倒れた光太郎を見て一言、
「バカ」
そして、いつものにこにこ顔に戻り、
「ごめんねみんな」
と涼華と竜乃のもとへ戻ってきた。
涼華と竜乃は、
「大丈夫です。それより、光太郎さんをこっちへ…」
「弟さんも一緒に、お昼にしましょう?ね?」
晋太郎は光太郎を抱えて連れて来た。
光太郎は目を廻している。
晋太郎は少し憮然とした顔で、
「まったく誰がこんな子に」
と言いながら、光太郎をシートの上に横たえる。
涼華は苦笑い。
「晋太郎さん…」
「僕がいない間に、悪い影響与えた人がいるんだろうなあ」
良くも悪くも晋太郎の表情を変える。
いまはまだそれが光太郎だけだと、お互いが知っているかはわからない。
だが、それは本当であった。
竜乃は、色んな思いから少し遠い目をしている。
晋太郎は再びシートに腰を下ろすと、冷やしぜんざいに手を伸ばした。
「あ、このぜんざい、おいしいね」
竜乃はほめられて、
「はい!ありがとうございます!」
涼華もやっと落ち着いて、冷やしぜんざいに舌つづみをうつ。
「冷え冷えでおいしー」
晋太郎はもう何事もなかったかのように、いつものようににこにこしている。
「いえいえどういたしまして」
涼華がふと、
「晋太郎さんは、甘いものお好きですか?」
と尋ねた。
「ううん。甘すぎるのはすきじゃないなあ」
晋太郎の答えに、甘すぎは好きじゃない、とこころのメモを作成する涼華。
乙女である。
竜乃はマイペースで、
「ちょうどよかったかも。いつも作るお菓子は何故か甘さ控えめなんだよね」
と、好みの味のぜんざいとマッチしたことに喜んでいる。
「甘すぎると、素材の味が死ぬような気がして・・・」
晋太郎はスプーンをくわえたままそう言った。
微笑ましい。
竜乃は思うところがあるのか、
「はい、素材そのままの味が一番ですよ!」
とにっこり笑った。
晋太郎の言葉を受けて、涼華はひょっとして、と、
「晋太郎さんって、魚やコロッケに醤油とかソースとかをあまりかけたりしない人?」
「うん。あまりかけすぎるのは」
晋太郎の答えに、
「やっぱり」
と涼華はうなずいた。

光太郎が目を覚ました。
「いててて」
「あ、光太郎さん?大丈夫ですかー?」
心配する竜乃に、
「おはようございます」
と笑う涼華。
「はい、冷たいものどうぞー」
と、竜乃は光太郎に冷やしぜんざいを差し出した。
光太郎は投げられた時に打った場所をさすりながら、
「いてー。なんだよヒデー兄貴だ」
恨めしげに晋太郎を見た後、
「さんきゅ、美人のねーちゃん」
と竜乃から冷やしぜんざいを受け取った。
竜乃は真っ赤である。
「はう!」
慌てて涼華は竜乃から扇子を取り、竜乃を扇ぎ始めた。
光太郎は冷やしぜんざいを一口食べて、おー、うめーとか言いながら
「兄貴を幸せにしてやってください」
と、スプーンをくわえて頭を下げた。
だが、竜乃はそれどころではなく、まだ真っ赤になったまま、
「あはは…ありがとうー!びじん…」
とつぶやくのがやっとであった。
そんな光太郎には、晋太郎が眉をしかめて、
「コウ……」
ため息ひとつ。
「あんまりそんなこと言ってると、嫌われるよ?」
「誰に?」
どこ吹く風の光太郎に、
「そうだな……巫女さんとか」
晋太郎はさらりと言ってのけた。
凍りつく光太郎。
冷やしぜんざいがぼたりと落ちた。
「はっ!いけない!光太郎さんにはー!」
竜乃がそんな様子を見て取り乱すのと同時に、
「小夜たん、いないのかな?」
と涼華があたりを見渡す。
「優しいのはいい事だけど、本当に大事な人を見失っちゃダメだよ!」
竜乃の的確な恋愛アドバイスに、ついに光太郎は倒れた。
どうやら、兄にだけは知られてないと思ってたらしく、恥ずかしさに死んでいる。
うー、とか言いながら顔を押さえている。
竜乃は冷静に、いや、知られてないなんて無理だろう…、と心の中でつぶやく。
「晋太郎さん、よくしってましたね…小夜たんのこと」
涼華が、先ほど光太郎が落とした冷やしぜんざいを片付けながら聞くと、
「まあ、色々あってね」
と晋太郎は笑った。
涼華も笑いかえし、そしてそれ以上は聞かなかった。
世界には、聞かない優しさというものがある。
そこへ竜乃が、意を決した様に言った。
「えーと…あのね、今日は晋太郎さんに、いっぱい『ありがとう』って言いたくってお誘いしたんです」
「僕に?」
晋太郎はにっこり笑って竜乃を見た。
「はい!FEGを助けてくれてありがとうございました!って」
竜乃の話が始まり、涼華は倒れている光太郎を扇子で扇ぎ始めた。
竜乃は、不意に真面目な顔になり、晋太郎に向かいあった。
晋太郎の笑顔は変わらない。
竜乃に笑みを向けたまま、顔を少し傾けた。
「あと、晋太郎さんがいなかったら、私、この世界に来ることもなかったから…」
竜乃はそこでいったん言葉を区切り、
「だから、いっぱい『ありがとう』なんです!」
片手で光太郎を扇ぎながら、涼華は、
「よしよし」
と竜乃の頭を撫でた。
「涼華さんにも『ありがとう』だよー!」
そんな二人の様子に微笑みを浮かべながら晋太郎は、
「僕には意味がわからないけど。どういたしまして」
そしてにっこりと笑い、
「君のためになれたのなら、僕は嬉しい」
と竜乃に告げた。
竜乃は真面目に、凛とした笑顔で、
「いいんです。ただ、貴方のおかげで勇気をもらえました。本当に、ただそれだけですから」
涼華は、そんな二人の会話を聞きながら、光太郎をゆったりと扇ぎつつ、小さな声でつぶやいた。
「晋太郎さんがいなければ、この世界にいなかったのは、あたしも同じだから…」
誰の耳にも届くことのない、それは切ない真実。
晋太郎は微笑みを浮かべている。
そして、尋ねた。
「うん。これから何かするのかい?」
涼華は、晋太郎の微笑みにつられて、微笑んだ。
竜乃は、先刻の続きを口にした。
「だから!晋太郎さんが困った時は絶対に助けにいきます!」
「うん。ありがとう」
話は終わった。
木陰では、こずえを揺らす風が、さわさわと吹いている。
昼休みは、いますこしある。
「麻衣さん、トランプかなんかないの?」
竜乃にそう声をかける涼華。
えーと、とバッグをさぐる竜乃。
「……」
晋太郎はにこにこしながら、唐突に沈黙を破った。
「恋の告白?」
「!!!?」
涼華がびくっとして飛び退き、
「うあーーー」
と叫んだ。
どうしたなんだ、いまの会話をするのは恋の告白になるのか。
一方竜乃も取り乱し、
「いえ!?違います!」
叫びだした。
「私には心に決めた人がいるんです!」
晋太郎はにこにこしながら、取り乱す様子もない。
「うん」
涼華は冷静になり、静かに竜乃に、
「そうだったね…」
と、彼女の心に決めた人のことを思い浮かべた。
晋太郎はそれを聞いて、にっこり笑い、
「だから告白にいくのかなって」
晋太郎の言葉も、取り乱した竜乃に届かず、竜乃は、
「その人は、趣味が人助けみたいな人だから」
見かねた涼華が声をかける。
「麻衣さん?」
晋太郎は、鋭かった。
いまの会話から、竜乃がこれから何かするのを、考えていたのだった。
「僕にそう言うってことは、一つの区切りかお別れに見えたから」
竜乃は猫耳を寝かせて、にこやかに笑う晋太郎に、
「あぅぅ…はい!告白しに追いかけます!」
涼華も微笑んで竜乃に、
「うん、大好きアタックしにいくんだよね。麻衣さん」
「うまくいくといいね」
晋太郎は、湛えた笑みを竜乃に向けて、
「応援する。がんばって」
竜乃はそれを見て、尻尾をぴんとたて、
「でも、晋太郎さんも大好きで、涼華さんも光太郎さんもみんな大好きですー!」
晋太郎は今まで見せた笑顔の中で最高の笑顔を見せた。
みんなが大好きなこと。
そのかけがえのなさや、その大切さに。
晋太郎は温かく笑ったのだった。
涼華はその笑顔につられ、自然と微笑んでいた。
「はい!ありがとうございます!絶対きめてきます!」
竜乃の言葉に晋太郎はうなずいた。
竜乃は、晋太郎の笑顔に尻尾をパタパタ振っている。
そんな状況の中、ひとりそろりと移動しようとするものがいる。
光太郎は起き上がって、にげようとしている。
「光太郎さん!」
扇いでいた涼華が真っ先に気づき、思わず光太郎の服を掴んだ。
ぶっ倒れる光太郎。
「なにすんだよねーちゃん!」
「ご、ごめんなさい!!」
涼華は掴んだ服を離す。
「にゃー!光太郎さーん!」
竜乃はすかさず、光太郎の上に乗った。
赤くなる光太郎。
竜乃はあくまで熱血指導。
「お兄さんから逃げちゃだめだよー!」
そして、
「兄弟仲良くねー!」
光太郎からは、あさっての答え。
「や、優しくしてね」
そして晋太郎に殴られた。
「あ。」
「あ。」
「下品だよ」
竜乃はちょっと笑いながら、
「えーと…舞い上がりすぎちゃってごめんなさい」
晋太郎は、ふっと笑った。
「つい、逃げようとしてたから…ごめんね、光太郎さん」
竜乃は、光太郎の上からどいた。
晋太郎は、高くなり始めた秋の空を見た。
「そろそろお昼も終わりだね」
光太郎は、殴られた場所を押さえて、
「バイトが……」
竜乃は、
「あ、午後の授業ー」
涼華は、名残惜しげに、
「そう、ですね。今度はフルーツ持ってきましょうね。晋太郎さん」
晋太郎は涼華を見て笑いながら、
「ありがとう」
と言った。
「えへ」
竜乃は、区切りがつき、んーと伸びをして、「また、いっぱいお弁当作って、みんなで食べようね!」
そして、
「よかったら、光太郎さんも!」
光太郎は涙目で、
「あい」
晋太郎はあくまで勉強の姿勢を崩さず、
「おこずかいなら、あげるから」
「うっせえ兄貴、ばーか」
竜乃は最後まで兄弟喧嘩を続ける二人に、
「兄 弟 仲 良 く、ね?」
涼華は、
「あ、ばかは…いっちゃ…」
光太郎はそれでも走って学校に戻っていった。
「やれやれ」
ふう、と晋太郎は息をついた。
安心する涼華。
「良かった。」
竜乃は、元気よく、
「私達も戻らなきゃ!」
「うん」
晋太郎はうなずき、立ち上がる。
「一緒に」
晋太郎をみてにっこりしながら、涼華は言った。
「お片づけ完了~!」
竜乃がシートをたたみ終える。
「はいー、シートもらうー」
竜乃からシートを受けとる涼華。
三人は、仲良く教室に戻りました。


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最終更新:2007年10月10日 23:43