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あおひと@海法よけ藩国様からのご依頼品


死に行く男達は… ~ひと時の幸せ~

軍服というものは個人の想いを覆い隠してしまう特別なものだろうか…。キミはこの時の善行の覚悟を知るのはずっと先の事となった。

 待ち合わせの場所に少し遅れて行くと、そこには白い軍帽を被り、それに合わしたかのような白い軍服を着た善行がそこに立っていた。キミの姿を見つけるとうれしそうに笑って出迎えてくれた。キミは不思議そうに首をかしげて「…どうしてそんなににこにこしてらっしゃるんですか?」と聞くと善行は「いえ、久しぶりに逢えたんで…。逢いたかったんですよ」と答えると同時にキミは善行に飛びつき「私も忠孝さんに会えて、嬉しいです」ととても嬉しそうに笑った。
 キミを力強く抱きしめてくれている善行が珍しくキミに提案してきた。「そうだ、今日は貴方が好きなものを食べましょうか?」嬉しくなったキミは何の疑問を持たずに「いいんですか?えっと、じゃあ、ハンバーグが食べたいです!」と上目遣いで善行の方を見た。善行は短く「はい」と答え、彼の指とキミの指を絡ませてゆっくりと歩き出した。

 しばらく行くと、小笠原で唯一の洋食屋に到着した。昼食のピークは過ぎたのか他の客はだれもいなかった。キミは少し浮かれながら「ハンバーグランチと…。えーっと、忠孝さんはどうします?」と聞くと「私も同じものを」と言ってキミに席を勧めた。
 一息いれた善行は「ハンバーグなんて久しぶりですよ」と呟くとキミも「私もですよ。でも、美味しくて好きなんですよねー。子供っぽいって言われるのですけど」と少し恥ずかしそうに答えると「いいじゃないですか。子供っぽくても」とすごく優しくキミに語り掛けてくれた。しかし、キミは少し俯いたまま「……あの……次は、どこに行かれるんですか?」と質問すると上機嫌で「貴方の好きなところに。まだ時間はありますから」とお茶を啜った。キミがまだ俯いたまま「違います。次は、どこの戦場に行かれるんですか?…ごめんなさい、無粋な話で。でも、教えてください」と聞いた。

 善行は上機嫌な顔が軍人の顔になって「話せません」と冷たく答え、「…どうしてもですか?」と頑張るキミに「軍機なのです。誰にも教えられません。例え貴方にも…。」と言って静かにお茶を啜った。キミは思いつく限り提案してみた。「……ついて行く事も許されませんか」、「私、秘書官です。事務とか出来ます…って、やっぱり駄目ですよね…」と言っても答えは全て「すみません」の一言だった。
 しばらく、沈黙が店を包んだが店員が美味しそうなハンバーグランチがキミ達の前にやってきた。ハンバーグの上にかけられているデミグラスソースの匂いがキミ達の食欲をそそった。ハンバーグランチを見ながらキミは「じゃあ、お願いがあります」というと善行は「なんなりと」と答えた。キミは「今度、お土産にそこの名物買ってきてください。それから、今日はすごく甘えますから覚悟しておいてください」少し無理をして笑った。善行はキミの想いを汲み取ってくれたのか「わかりました」と優しく笑って答え、「さあ、さめないうちに頂きましょうか」とフォークとナイフを持って少し苦労しながら食べ始めた。ハンバーグランチは思いのほか美味しく先ほどまでの嫌な雰囲気はもうなかった。

 食事も終わりそうになって、キミが「これ食べ終わったらどこに行きましょう?」と聞いて最後の一切れを口に運んだ。すでに食べ終わっていた善行は「お望みの通りに…。まあ、今日だけは命令されようもないですからね。自由ってことです」というと、キミは「だったら、忠孝さんが私と一緒に行きたいところに連れて行ってください。どこへでもついて行きますから」と嬉しそうに答えた。善行は「分かりました」と微笑みながら返事をした。

 洋食屋をでたキミ達は手を繋ぎながら目的も決めずに歩いていた。ふと、ふとキミの視界が狭くなった。何がおきたのかと思ったら善行が自分の軍帽をキミに被せてくれた。「軍帽ですみません」と一言。何がおきたのかを理解したキミは嬉しそうに「うわっ……いいえ、忠孝さんの帽子ですもの。嬉しいです」「私にはあんまり似合いませんけどね」と複雑な笑みを浮かべると善行も「まあ、軍帽が似合う人とは付き合いたくないですね」と同じような笑みを浮かべた。キミは「でも、忠孝さんはかっこいいですよ?…欲目って言われそうですけど」というと善行は何も言わず笑っていた。
話題を変えるかのように「海岸のほうにいきませんか」というとキミは「はい」と言って歩き出そうとした矢先に「…えいっ!」と言って善行の眼鏡を取り上げた。半目の善行が「なにか?」とたずねると「忠孝さんの目を、直接見たかったんです…ドキドキしますね」と少し顔を赤くして答えた。善行は一瞬困った顔になったが微笑んでキミの顔に近づいてきて、キミの頬に軽いキスをした。「…お返しです」と言って同じようにキスを返すキミに「そういうことならしばらく預けますよ。あ、人が着たら貸してください」と微笑んでくれた。キミは「わかりました!」と言って眼鏡を持って嬉しそうに海岸に向かっていった。

海岸を見渡せる岩場まできて善行が不意に「一緒に泳ぎましたねえ」と呟くとキミもその光景を思い出して「そうでしたねー…みんなで来て楽しかったです。それから…初めてキスしたのも海でした」善行は頷き「そうですね」と答えた。
その後、お互いにその時光景を思い出して照れていたが、本来の姿であるように昼下がりの夏の日差しを受けてできた二つの影が一つになり岩場に濃く映し出されていた。その至福の時間は一瞬にして砕かれた…。気を失っていくなかキミは軍服の裾を握るのが精一杯だった…。

善行は気をうしなったキミを優しく抱き上げ、そして、別れのキスをした。若宮と軽く話した後に意識の無いキミに微笑んで死地に戻っていった。キミが意識を戻した時には善行はおらず現地部隊の女性がいた…。キミは突然のサヨナラに自分の体からこんなにも涙がでるのかと思うぐらいに泣いた…。そう、キミにできるのは無事に帰ってきてくれる事を信じるだけだ。



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引渡し日:2008/1/1

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最終更新:2007年10月14日 00:38