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89金村佑華@FEG 様からのご依頼品


キーンコーンカーンコーーン……

 昼休み開始の鐘が学校中に鳴り響く。金村佑華は、作ってきた弁当を抱えて一人ぽつんと教室の中にたっている。
 小カトーのために弁当まで作ってきたのだが、相手が見当たらないのだ。
 とりあえず探しに行かなければ。と、金村は屋上へ出てみる。
「あれえ? ショウ君?」
 ピンクの髪を屋上から捜してみるがどうも見つからない。
「ショウ君~!? どーこー!?」
 叫んでみるが、見つからないものは見つからない。
 それから2分ほど遅れて、空に穴が開いた。20mほど先。
 金村は走って穴の方へ行ってみる。小カトーが気絶をして倒れていた。
「ショウ君? 大丈夫? 大丈夫?」
 落ちてきたときに強かに頭を打ったらしい、血が、流れ出ている。取り敢えず弁当を包んでいた風呂敷を裂いてガーゼ代わりにし、金村は止血をした。
「大丈夫? 大丈夫?
 目、見える? 私見えてる?」
 小カトーのまぶたが動いて。
「うう」
と唸った。
「いってー」
「! よかったぁ意識はあるみたい…大丈夫?」
 止血を続けながら、金村は小カトーが声を発したことでとても安心をした。打ち所が悪すぎて死んだということはなかったらしい。その発言に、小カトーはじと目だ。
「それ、俺の血を見ていってる?」
「言ってる。すごい打って血が出てるからすごく心配してる」
 真顔でかえす金村。
「悪い冗談かと思った。イテテ」
 自分の意識がはっきりしているのを感じて、小カトーは
「ここ、どこ?」
と問うた。どうやら何も判らないらしい。
「小笠原。分かる?」
 金村は小カトーを支えて、止血をしたままそーっと起こした。
「小さいときにきたことはあるけど、こんなに暑くはなかったな」
 うーん、と頭をひねる。それから、金村を見た。
「あんたは?」
「金村佑華(カナムラユーカ)。えーっと…アイドレスのパイロットしてます」
「知らないな。日系か。俺も、日系なんだぜ」
「そうなんだ? えっと…もう大丈夫?」
「なんとか。じゃ」
 話を切り上げて別れようとする小カトー。
「あっ、待って。…行くあてとかあるの?」
 小カトーのために作ってきた弁当をもってモジモジと呼び止める金村。屋上の柵から下を見ながら
「状況把握から」
と答える小カトー。
「あのさ、ここなら私案内できるし。状況把握できてないなら地元民連れてった方がいいでしょ?」
 なんとか同行できやしないかと、金村は必死に理由を考える。
「それはそうだけど」
 地上から金村に視線を変えて、小カトー。よっ、と柵を越える。
「待って! 早まらないで! 飛び降りたら危ないよ!!」
 それを見た金村が慌てて叫ぶが、
「大丈夫だって」
と軽やかに飛び降りてしまった。地上で綺麗にごろごろと転がって着地した。
 金村は驚いて、自分まで屋上から飛び降りてしまった!
「まっ、待って! 置いてかないで!」
 飛び降りてから、来るべき衝撃を想定してぎゅっと目を瞑る。が、地面にぶつかる衝撃は来ない。
 目を開けると、小カトーが金村を受け止めていた。
「……なんなんだよまったく」
 小カトーは呆れている。
「だっ、だって、貴方がいきなり降ってきて、血まみれなって、びっくりしたんだもん。
 怪我完治してないのにいきなり暴れてまた血が出たらどうするのよ…」
「で。お前も落ちると。わけわかんね」
 金村は涙目で小カトーを見上げながらだってぇ…と唸る。
「だって貴方は私に自己紹介してないじゃない…」
 参ったなあという顔で、鼻の頭を磨く。
「はぁ。んじゃ、どうぞ」
「……何で空から降ってきたの?」
「俺のほうが知りたいよ」
 つっけんどんな小カトーに言葉を詰まらす金村。どうしよう、と考えた後に、そういえば弁当を持ったままだと思い出した。
「……何か、お昼休みなのに、お弁当食べそびれた……」
「俺なんかに、構うから。
 んじゃな。悪かった」
 金村を降ろして何処かに行こうとする小カトーを慌てて呼び止める。
「あっ! 待ってってば!
 状況把握って、まずどこ行くか分かってるの?」
「わからねえけど。誰かの昼飯邪魔までして自分の都合を安売りしたくはないね」
「なら! せめて、一緒に食べて。……怪我してるし、まず血が止まるの待ってから動いても問題ないでしょ?」
 金村は折角小カトーのために作ってきた弁当を、どうにかして一緒に食べてもらえないかとがんばっている。
「腹ごしらえしてからでもいいじゃない……それに、またいきなり血が出て倒れたら、私、また心配する……」
 小カトーは金村を変人を見る目で見たあと、やはり諦めたかのような声で了承した。
「……いいけどね。俺と食べて楽しいかどうかしらんけど」
 その言葉を聴いて、金村は輝くばかりの笑顔で食いついた。
「本当!? 久しぶりにお弁当自分で作ったから、誰か食べて味教えてくれる人、ほしかったの」
 嬉しそうにそう言って、座れる場所を探した。小カトーは状況把握して元の場所に帰りたかったが、金村に合わせることにしたのだった。
 校内にはあちこちに木が植えられており、気持ち良さそうな木陰を作っている。もう昼休みには遅く、誰も居ない。
 近い木陰に二人で座る。
「お昼遅れたね。はい」
 金村は弁当を開いた。ハンバーグ中心の力作だ。
 もぐもぐと食べる。
「かーちゃんのに似た味だな」
 ふ、と小カトーが漏らした。
「ふえ、それってどう言う意味?」
「懐かしいかも」
「ふえ……」
 ちょっと顔を赤くする金村。
「? 一応ほめてんだぜ」
「……えっとね、デザートもあるんだよ? 梨むいたの」
 照れ隠しに保冷剤を貼り付けていたパックの蓋を開け、爪楊枝を刺して小カトーに差し出す。
「こっち食べ終わったらよかったらどうぞ」
「ああ。うん」
「えへへ。嬉しい」
 金村はもぐもぐと食べるのを再開する。
「あのさ」
「はい?」
「俺と話すの嫌いなら、俺すぐ、どこかいくから」
 何を言い出すんだろうと思いつつ、金村は軽く首を振る。
「そんな事、ないよ?」
 小カトーは黙って金村を見ている。なにか悪いことしたのだろうか、と慌てて弁当を食べ終える金村。
「あのさ、食べ終わったら、どこ先に行くの? 状況把握に」
「さあ。とりあえず、歩いて、誰かと話して。そこからだな」
「さあって。えっと、高いところからだったら分かるの?」
「わかんねえ」
 小カトーが食べ終わるのを見て、金村は立ち上がる。
「とりあえず、そこ、歩く?」
「ああ」
 小カトーも同じく立ち上がる。
「……案内するって言ったし。一緒に行っていい?」
「あ?」
 金村への返事ではない。小カトーは上に引っ張り上げられている。ゆっくり上がりつつある。なんだこれは、と自分の体を見回している。
「おお?」
「うえ?」
 金村も驚いて、思わず腕を掴もうと伸ばした。が。するりと自分の腕が通り抜けた。小カトーが、半実体化している。
「これで帰れるっぽいな」
「何? ねえ、何で!?」
「バイバイ。カナムラ」
 浮きながら消えながら小カトーは別れを告げた。
「帰っちゃうの? もう会えないの?」
 小カトーを見上げながら、金村。
「きっと、逢わないほうがいい」
 もう殆ど透けている。
「たぶん、俺たちは……」
 そこで全部消えて。続きは聞こえなかった。

―――
お世話になっています、鍋 黒兎@鍋の国です。
No.89の金村佑華さまに指名していただいたSSが完成いたしましたので、提出させていただきます。
お気に召しましたら幸いです。
ご指名有り難うございました!


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最終更新:2007年10月28日 18:05