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NO.97 高神喜一郎さんからの依頼



高神喜一郎は、一生に一度の一発芸をしようと、この日に賭けていた。
 お見合いで知り合い、その時からずっと追いかけてきた相手の為に。
 国は「協力しよう」と資金まで提供してくれた。
 この芸、失敗する訳にはいかない。
 絶対成功させなくては。
 紅葉藩国が「祭りだ~」と大騒ぎする中、彼の周りだけ空気が違った。
 これは、恋を賭けたゲームなのだから。


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「バロ」
 祭りで騒ぐ人の群れから抜け出し、高神はバロの手を引いて人気のない場所に立っていた。
「わざわざ一緒に来ていただいたのは、貴方に見ていただきたいものがあったからです。貴方は、…勿論俺も、男色ではないので、ならばいっそ、女になろうかと」
 懐からは、ピドポーション。性転換するアイテムである。
 バロは、高神と懐のそれを見た後、爆笑した。
 高神は少しだけムッとする。
「何で笑うんですかー!!」
「面白い」
 バロは、本気で笑いが止まらないようである。
 高神はますますムッとし、ピドポーションの蓋を開けた。
「いいですよもう、飲みますからね! ……止めるなら今のうちですよ!」
 そのまま腰に手を当てラッパ飲みをした。
 しかし………。
「? 失敗、ですか?」
 高神は高神のまま、男のままだった。
 しょげる高神の頭を、バロはポンと叩いた。
「いや、面白かった。礼を言おう」
 高神の暗い顔とは反対に、バロは明るい。
 やや落ち込んだが、すぐに気を取り直した。
「……悔しいので、お礼の分一緒に遊んでもらいます。責任は取ってください」


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 祭りの輪に戻っていったら、辺りは屋台が乱立していた。
 色んな所から、お腹のすくようないい匂いが漂っている。
「バロは、甘いものは、お好きですか?」
「う、ん? ま、まあまあだな」
 釈然としないバロに、またも高神はむくれた。
「では止めておきますか?」
「なんなりと」
 むう。
 高神、むくれるどころか脹れだした。
「……ではキスしてくださいといえば、するんですか、バロは」
「食べ物の話だと思ったが」
「食べ物ですが。俺はバロの好みが知りたいんです!」
 本気で癇癪を起こそうとした矢先。
 奥の方で何やら騒がしい。
「ん、何かあったみたいですね、行きますか? ……何が食べたいかは、後で絶対聞き出しますから!」
「女みたいなことを、もう少し力強くいけ。他人がどうした」
「俺はバロに合わせたいんじゃなくて、バロのわがままが聞きたいんです」
 脹れながら言うと。
 バロは何を思ったか頭を撫でてきた。
 高神、癇癪起こそうかなと少しだけ考えた後、こちらもバロの頭を撫で返した。
「背を伸ばさんと、いかんな」
 ……高神が爪先立ちになり、やっとの事でバロの頭に手が届くのである。
「鍛えてください」
「ほう?」
 バロは「面白い」と言う顔をした後、高神をくすぐり出した。
 高神は、唇を噛んで笑うのを我慢していたが、こちらもくすぐり返し出した。
 互いが互いをくすぐり合っている。

 傍ではそれを「バカップル」と言うのだが、二人は本気である。気付いてはいないのだろう。


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 こう二人で歩いていたら、店があった。
「ヨシフキンの店」と、そう書いてある。
「あー!!」
「ヨシフキンの店」と書いてある屋台からまゆみが顔を出した。
 バロを見つけた。
 そのまま抱きつこうとしてきたが、バロは避けた。

 プチン

 さっきまで溜まっていた何かが切れた。
 高神はまゆみに対抗してバロに抱きついた。
「ん?」
 バロの様子がおかしい。
「胸が当たってるぞ」
「胸、ですか?」

 ようやく効果があったらしい。
 気がつけば高神の髪は伸びていた。
 高神が女性になったのを見計らった神室想真が浴衣を用意してくれたので、高神はいそいそと物陰に隠れて着替えて出てきた。
 艶やかな浴衣姿である。
「ええっと……女になったわけですが」
 高神は顔を赤らめて言う。
 バロは一旦口を閉じた後、ようやく口を開いた。
「いつ戻るんだ? それまで散歩してくる」
「ちょ、待ってください! 一緒に歩いてくれる約束でしょう?! 一生に一度の芸を、お見せしますと言ったじゃないですか」
「まあ待て」
 バロはヨシフキンの屋台に顔を出した。
 並んでいる品の中には、ピドポーションがある。
「俺も賭けよう。いいな。すぐなにもかも清算してやる」
「!! 清算より、責任とって欲しいんですが! 俺は!」
 高神は、伸びた髪を膨らませて屋台に顔を出した。


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 ヨシフキンの周りには既に賭けをしている面々でいっぱいだった。
 中でもすごいのは、ルーシィ藩王が当てた黄金のリンゴである。
 彼女が当てたそれは、かつて某国の女王がブラウニーなる人物を捕まえて「モテモテになりたい」と言って作らせたアイテムであり、これをつけたものはたちどころにモテモテになると言うものだった。……しかし、これに群がる男が尋常じゃなく多くなる為、「これ外して」と泣いてブラウニーなる人物に謝ったものだと言う。

「うぉぉぉぉぉ、外したぁぁぁ!!」
「おお、やりましたぞ!!」
「ふええん……」

 周りは悲喜こもごも、叫びながら賭けに熱中していた。

「ヨシフキン。賭けを」
「らっしゃい、何にします?」
「ポーションを」
 高神は顔を引きつらせた。

 賭けのルールは至って簡単。
 ダイスを振り、ヨシフキンより上の数字を出せばいいだけである。
 バロがダイスを振る。

「5」

 周りがどよめいた。
 高神も息を飲む。

「……彼女の為に」
 ヨシフキンもダイスを振った。

「6」

 周りは歓声に包まれた。
 バロは、気絶してしまった。


「やれやれ」
 ヨシフキンは倒れたバロを見ながら、屋台を畳み始めた。
「待ってください!! 俺が、まだです……」
 高神が叫ぶと、ヨシフキンは顔を上げた。
「手を広げて」
「?」
 高神が素直に手を出すと、ヨシフキンは出した手に指輪をのせた。
 コロンとそれが二つに分かれる。
「……ありがとうございます」
「これだけ儲けさせてもらったからね」
 根源力をたくさんもらい、ヨシフキンはホクホクしている。
 そのまま手を振ると、ヨシフキンの姿かたちはたちどころに消えた。
 高神は、ヨシフキンからもらった指輪を、大事に握り締めた。


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「バロ、バロ。起きて下さい」
 気絶しているバロの横に座り、高神はペチペチとバロの頬を叩いた。
「指輪を、いただきました。……お揃いのものを」
「……負けた……200年ぶりだ」
「200年、ですか。…ではこの先300年負けなければいい話でしょう?」
「ふ。それもそうだな」
 バロは起き上がり、立ち上がった。
「副官の任を解く、これからは自由に」
「嫌です!」
 高神はバロを睨みつけた。
「俺は貴方の隣に居るのが幸せだと、そう何度も言いました。その言葉には偽りはありません、今も」
「黒に女はいらんのだ」
「黒でなくては、貴方の隣にはいてはいけませんか」
 バロは笑って頭を何度か叩こうとしてやめると、高神の髪に触れて歩いていこうとした……。
 が。


「あら」
「ちょっ!!」
 バロはルーシィのつけた黄金のリンゴに引っかかり、ルーシィに抱きついていた。
 高神はバロの背中に抱きつき、ルーシィから引き剥がしにかかった。
「俺は貴方の生き様に惚れました。女としてでも、男としてでもなく、人として」
 引き剥がしながら、バロに語りかける。
 ……無論リンゴの呪いのせいで、バロの耳に届いているかは分からないが。
「そして貴方は副官になれと、そう言ってくださった。一度した約束を、破るのですか……」
 高神は息を吸った後、思いっきり力をこめ、バロを引っ張った。
「俺はバロが好きなんです、何がどうあっても、離れたりしません、離れさせたりしません!俺は、貴方が嫌がろうと、隣に居座り続けます!!!
 バロは、そのまま一気にルーシィから引き剥がされた。

「……聞いてましたか?」
「…………いや、聞いてないな」
「指輪、受け取ってください。給料の三か月分とは行きませんが、それでも大事なものです。では何度でも言います。俺は、貴方の隣を誰にも譲らない。貴方に拒否されても、俺はバロの隣に居続けます。お願いです、俺を置いていかないでください。最後の時まで、せめて一緒に居させてください」
 高神が指輪を差し出した。
 バロは少し笑った。
「……くすぐりますよ。聞こえてたんでしょう、本当は。それでも俺は何度でも言いますけど」
 高神はバロをくすぐり出した。
 バロも、そのまま高神をくすぐり出した。
「バロが、好きです。一緒に居させてください。……今日の、侘びとして」


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 二人の世界を作っている間。
 紅葉藩国奥様戦隊が暗躍していた事は公然の秘密である。


「あらあら、これはビッグニュースですわね奥様」
「そうですわね、このシーンはぜひとも秘宝館に発注かけて国に飾らなくては」
「諸外国の方々にもぜひ見ていただきましょう、お二人の熱い仲を」
『ほぉんと、若いっていいわねぇ―――――――』
 夜の空に、む~む~、神室、結城の高笑いが響いた。
 ……紅葉藩国のゲリラと言う名のアイドレスが存在し、連絡用と情報戦対策として盗聴器が仕込まれていた。
 つまり、上記のやりとりは、全て録音されたものである。

―――
 高神喜一郎さん依頼SS完成しましたので提出します。
誤字脱字は確認しましたが、もしありましたら連絡お願いします。


作品への一言コメント

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最終更新:2007年10月28日 18:04