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刀岐乃@越前藩国様からのご依頼品


■桜の花、海辺に咲く頃に (前編)
  • 作: 3100590 伏見@伏見藩国

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教壇に立つのは一人の少女。
年端も行かないような少女。
その少女の頬は心なしか、赤い。

「がんばれー七海!!」

対面から激励が飛ぶ。
イントネーションがややずれているのは、わんわん帝国の一部地方でよく見られる方言のためか。

「いつも通りにすればいいんやでー」

その声で、七海と呼ばれた少女は更に赤面。
ぼ、という音とともに火がでそうな勢い。
あがっているのは目に見えていた。
その様子に、鴻屋の顔がにやける。

「七海ちゃんが照れてる、かわいい~☆」

黄色い悲鳴。
刀岐乃という女性が顔を抑えてきゃあきゃあと騒いでいる。
その声に目をぐるぐるとさせた七海はどうにか声を振り絞る

「えっと」
「こら、みんな茶化すな」

そこで周囲を注意したのは齢三十を超えた越前藩国執政の黒崎紘。
『藩王より優秀』と周辺諸国、特に共和国から評価の高い男である。
口調はキツいというよりは柔らかなもので、その表情もどこか綻んでいた。
どこか先生然とした男――

「いや、かえって緊張すると思うぞ。」

と、夜薙当麻が黒崎に続き状況の平定に貢献。
場の興奮もなんとなく収まり、七海の発表を待つ準備は整った。
今日は、そう。
七海少女の夏休みの発表会の日であった。

「僕が思うに」

こほんと咳払い。

「蟲ってスピリチア・ダンスというゲームのユニットです」

聞き慣れない単語を、まず刀岐乃が復唱。

「すぴりちあるだんす?」
「なに、そのすぴりちあるって?」
「ゲーム?」
「なんだい、それ?」

次々と越前藩国民の質問が舞う。

「アイドレスの次のゲーム」
「?! 次のゲーム!?」

こともなげに放たれた言葉。
その言葉を聴いて、ガタと驚いて席を鳴らしたのは執政黒崎のみで、他の国民は皆、頭に疑問符を浮かべていた。

「えーと、2010年に生まれて、ポイポイダーと同い年で」

みなの驚きように逆に戸惑った七海はぎくしゃくと言葉をつなげる。

「僕は子供会員なんだ」
「あー…っと」

夜凪がなおも疑問符をぶら下げながら、うなる。

「えっと、七海ちゃん…じゃなかった、七海先生!」

本人も疑問顔だった刀岐乃が勢いよく挙手。
会話の流れを一度断ち切る。

「ゲームってことはわかったんだけど、どんなゲームなの?」
「えっと、宇宙戦争」
「宇宙戦争!?」

心底驚いた顔の鴻屋が叫ぶ。
感嘆した顔で、はーと息を吐いた。

「それはまた壮大やなぁ」

その後ろでは夜薙が必死に解らないなりにメモを取っていた。


「あと、みんなで船に、のるの」


くす、と笑うのはガロウという男。
「楽しそう」と同意するように微笑む。
その一方で、夜薙は「うちゅ-のうみはおれのうみ」と古いフレーズを放つ。
果てしない憧れである。

「また宇宙に行けるや、楽しそう」

とうれしそうな鴻屋への返事。意味深。
彼女らが意味深でなかったことなどないが。

「もう少しだよ。アイドレスの技術から、生まれてくるんだから」
「それは待ち遠しいなー」
「なんだかわからないけどすごそう!!」
「『言葉の意味は良く解らんが……』ってやつだね」

苦笑気味に、はしゃぐ刀岐乃に注釈を加える夜薙。
その横から黒崎が質問。

「ええと、七海ちゃんはその船って乗ったことあるの?」
「七海は、2012年生まれ。今10歳」

回答とは関係のない唐突な答え。
だが、出自年齢と開発時期を比べればわかる答え。
彼女はその時期には生まれてはいない。

「ということで、昔のゲーム見るのははじめて」
「えっと…?あ、そうか、七海…先生から見るとアイドレスって昔のゲームになるわけかー」

合点。納得する黒崎。
少し笑って髪を振り、自らのまとうアイドレスを見る七海。

「そか。それはいい経験したな」
「古いゲームってたまにやると結構はまるんだよね~♪」
「…ときのんはゲームのやり過ぎやから。」

刀岐乃と鴻屋、息のあった会話。
そこに加わる、これもまたいつものアクセント。
夜薙の気の利いた注釈。絶妙のタイミング。

「昔の方が面白い事もあるからね。どうだった、アイドレスは」
「たいへん」

簡素な言葉。
だが、その苦労を知る人間は笑って肯定。
ガロウの心よりの頷き。

「ですよね~」

一方では、過去の経験にうめく人間もそれこそ山ほどに。

「う……」

戦時の記憶を思い出したか、胃を抑える刀岐乃。
心配そうな表情をする黒崎、鴻屋。だが、それもそこまで。

「編成とか吏族とか」

鴻屋、沈黙。

「あと根源力の管理とか」

黒埼、耐え切れない胃痛。


「確かに大変だね……」

うん、と頷いたのは優しげな男。
RANKという古参。どこか頼りなさげな雰囲気だが、それゆえ、付き合いやすい雰囲気でもあった。

「あと藩王がいなくなったり」

言葉の刃が乱れ飛ぶ。
巻きわらのように責任者の心が刻まれる。

「喧嘩、すぐするし」

追撃につぐ追撃。
良識ある人間ほど、こういうときに苦労する。
黒崎がぐったりとしゃがみこんでいく。

「たいへんだーせっしょーがくるしんでるぞー」
「摂政さま、気ぃしっかりもちや!!」
「摂政~気をしっかり!!」

棒読みの夜薙。
刀岐乃と鴻屋がはげますも、顔がにやけていては締まらない。

「は、ははは。七海さんには、見苦しい所を見せてしまったかもしれませんね、はは……」

目も空ろに笑う黒崎。
その様子は最早、どこか痛々しいを通り越えて、見ていられない。

RANK、思わず涙。
一方の夜薙はサムズアップで、それでこそと肯定。
しかし、一方で鴻屋は違った。

「…ほんまやな」

深いため息を吐く。

「なんでもっとみんな楽しめへんかったんやろ」

しみじみとした言葉。
誰も彼もがそう思っていることだろう。
皆がどこかで自分から荷物を背負い込んで、その重さに嫌気がさしていった。
そんな時代が、確かにあった。

「まだ、登用制度も評価制度もなかったんだね」
「とーよーせーど…」
「ということはすぴりちあなんとかは、その辺はちゃんとあるんか?」

頷く七海。
執政だけがその言葉に、自らの首を心配し慄いた

「軍ではこれのみがものを言うんだ」

襟を見せる。そこには特師の階級賞。

「へー、なんか七海はすごい階級もってんなー」
「おお~襟のそれなに?なんかかっこいい!」

価値を解らぬままの鴻屋と刀岐乃の感心。
一方で黒崎は記憶を掘りおこす。
目の前の少女が、確か『将軍』と呼ばれていたことをどこかできいたような――


「何かの勲章……?」
「軍?七海は軍にいたんか?」
「うん。軌道連邦」
「藩国みたいにみんなそういうところに所属するの?」

微笑む七海。
褒められ、どこかうれしそう。年相応の笑顔。
まるで花が咲くような可憐さ。

「まってね。コムするから」
「コム?」

その横で黒崎がありったけの情報を文殊に流し始める。
越前藩国の名物執政の早業。病的な仕事意欲。
映像と音声が片っ端から入力されていく。

(桜子ちゃん?)
(なに?七海ちゃん)

会話開始。
桜子と呼ばれた少女の、鈴をころがすような声が響く。

「おや、またかわいい声がすんなー」
「なんだ心太くん。声だけで惚れたかい?」

とたんに顔が綻ぶ鴻屋。
夜薙がひやかすが笑みはとまらない。

(夜明けの船、転送できる?)

「なんですと!?」
「ん?なんか今すごい単語が聞こえたような」
「ほんまに!?」
「夜明けの船!?」
「よ、夜明けの船を!?」

黒崎、刀岐乃、鴻屋、ガロウ、RANKの順に驚く。
皆がシャークヘッドの潜水艦を想像した。

(夜薙が土場の皆と乗った夜明けの船と、同じ物だろうか……)

あれを呼ぶのか?
皆、一様に疑問に満ちた表情を浮かべた。


(セイがいないから、ポイポイダーが代理指揮してるけど、いい?)
(うん。星蟲は私の使って。1-0-12 スターゲート)


「ここに呼ぶの!?」

二人のやり取りを聞いた刀岐乃が目を輝かせた。

瞬間。

窓ガラスが、震えて、全て砕けた。

いっせいに悲鳴が上がる。

割れた窓ガラスの向こう――
ほぼ垂直に艦首を地面に向けた250m級の小型艦が剣のように浮かんでいる。

「えらい派手な登場やな…。七海、怪我ないか?」

笑みで答える七海。
怪我ひとつあるはずもなく、全てのガラスは微塵に粉砕されていた。

「あらら?…すごい、ガラスが……!?」
「…ほんま、七海ってすごいなぁ」

感心したような鴻屋の呟き。他の者もおおと唸るばかり。

「七海は、防御用の蟲をもってるから」
「今の破片除去は……この世界の情報に干渉した……わけではないのか。物理的に??」
「まったく、すごいんだな蟲って」
「6000種類くらいある。KOU・KUROSAKIの蟲も、持ってる」

しれ、と少女が答える。
一瞬、場が凍りつき、当人が大きな声で叫んだ。

「のわっ!? 私の蟲???」

不思議そうな表情。
意味が解らない、とはまさにこのことか。
衝撃的な発言に、目を白黒とさせるばかり。
急に挙動不審になる黒崎を出しに、周囲がやんやと盛り立てる。

その間に七海はぽけっとから丸い虫を取り出した。
きゅう、と可愛い声でソレは小さく鳴く。
周囲の視線に照れたか、恥じるように丸まり、少女の掌の上で転がる。

「これ」
「ま、丸いなぁ……」

「なんやこの…ダンゴムシみたいなの?」
「これが……摂政の蟲?」
「え……? この丸っこいのが摂政の蟲ぃ~!?」

悲鳴が上がる。よく見れば蟲には「文殊」と書かれていた。

「……???」

当の本人は事態についていけず、首をひねり続ける。


「文殊って書いてある…」
「なんで文殊ってかいてんの?」
「やっぱ、摂政イコール文殊なんだ…ぷ」

夜薙が耐え切れず吹きだす。
おかしくてしょうがない、というようにくすくすと笑い続けた。

「文殊って名前だから」

その笑みを意に介さぬ七海の回答。
名前を呼ばれ、きゅうと不思議そうに文殊と呼ばれた蟲が鳴いた。

「……う、優填! 今の音声を至急解析して……」
「なんや、妙に愛嬌があるなぁ」

錯乱気味の執政の横で、鴻屋がケラケラ笑う。
その後ろでは、皆が一心不乱に文殊を観察していた。

「RANKさん、摂政にしては可愛すぎない?」
「泣き声は……ね」

ぼそぼそと刀岐乃とRANKの会話。
と、文殊をつかんだ鴻屋が刀岐乃のほうへと蟲の腹を見せる。
八本肢がわしゃわしゃと動いた。
それは、鳴き声に反してグロテスクな絵であった。

「前言撤回…」

震えた声で刀岐乃が後ずさる。

「わたし、肢が多いのは苦手~」

ガタガタ震える刀岐乃を前に、鴻屋の掌の上で文殊がころころと転がる。
きゅう、と相変わらず愛くるしい声で鳴いている。

「なんかみょーにかわいいな、ときのん」
「心太くん、ちかづけないでよ!?」
「かわいい……のか?」

どたばたと暴れる二人を見ながら、ガロウの呟き。
目をグルグルとさせた刀岐乃が本気で壁際まで後退し、警戒もあらわにしている。

「……落ち着け自分。さておき。たとえば、この蟲にはどんな能力があるのですか?」

一方、混乱から立ち直った黒埼は、七海に文殊についての解説を聞いていた。
端から見ていると、自分の作ったものを他人に説明してもらっているようにも見えるが、
このときの黒埼には、半ば余裕というものはなかった。

「文殊はデータ管理するんだ」
「そうか……星見司ではないので、世界の仕組みにはあまり詳しくありませんが、2012年の世界には、文殊という存在がこのような形で伝わっているのですね……」

しみじみと呟く黒崎。
己の作り上げたものが未来でなお息づいているというのは、技術者としては感慨深いものなのだろう。
その目は、遠く、遠くを見つめていた。

「こいつ、結構えらいねんなぁ。文殊を管理するなんて……」
「うん、えらいえらい……えらいからもうしまってよー…」

同じようにしみじみと鴻屋も頷いた。
ただし、その手にはいまだに文殊が握られていた。
その手が、刀岐乃の眼前へと伸びる。

「きゃわ~!!?」

全速力で教室の隅まで再び掛けだす。
刀岐乃の全身から厭な汗が噴出していた。
本当に怖がっているようだ――

「わ、わたし、鳴き声だけでいいから……」
「よくみれば、なかなか愛嬌あるじゃないか。…まあ、これが摂政かと思うと微妙だが」
「今は、みんなが繁殖させてもっている」

わさわさと脚を動かし自己主張する“文殊”
この文殊が無数に歩き回る絵を想像しかけて、刀岐乃はあわてて頭を振った。

「一杯…いるんだ…」


RANK :「繁殖するんだ……」



芝村 :七海の手についている盾虫が肢を伸ばしている。



ガロウ :「それなに?」


芝村 :よいしょっと感じで歩いて、机の上までいって休んでいる。



鴻屋 心太 :「って、ことは。将来僕も蟲を持つことできるんかな?」



黒埼紘 :「この蟲は……機械の動かない世界、たとえばレムーリアでも存在できるのですか?」



ガロウ :(盾虫を見つめます)



七海:「うん」



鴻屋 心太 :「そか、それは楽しみやな!!」






刀岐乃 :(おそるおそる教室の隅から帰還)

「もっとこう、見た目からして可愛らしいのなら欲しいなあと思うけど…」

深いため息を吐くと同時に、髪が動いた。
不自然に、まるで何かが動かしているかのように。

「なんかついてんで、ときのん?」

鴻屋の一言で、ふと頭皮の異変を察知した。
確かになにかが、いる。

「ま、まさか……なんか動いてるんですけど……」

ぞわぞわと、刀岐乃の肌があわ立つ。
その様子を見て、しかし、夜薙が残念そうな表情。

「あぁ、言っちゃった」
「夜薙さん……)」

流石の鴻屋もそれには苦笑。
固まっている刀岐乃に向かって七海が耳を済ませた後、告げた。

「好きだって」

刀岐乃の髪の毛が逆立った。
最早、緊張のあまり、体をうごかすこともままならない。
泣き喚くように助けを求める。

「ね、ねえ、RANKさん、髪のところ、何もついてないよね、ついてないって言ってー!!」
「ほらRANKくん、取ってあげな」
「いやいやいや。取るとかも無粋じゃないか。はっはっは」
「その子に気に入られるんやなぁ。ときのん、仲良くしいや」

夜薙、黒崎の両名がここに来て面白がって、刀岐乃の様子を眺めだす。
一方では鴻屋が心配はしているものの、手助けはしない。
泣きだす一歩手前の刀岐乃の髪の中からひょこりと、それが顔を出した。

一対の羽根を生やした小さな人形。
それが寝そべり、ウィンクしていた。
まるで、それは空想小説の妖精のごとき外見――
確かに蟲の羽根をその背に持っていた。

「これは……蟲なのか?」

RANKの表情が曇った。
ふと、硬直から解けた人々は、その姿に見覚えがあることを思い出した。
次々とその名を口にだす。

「あれ……?って優填?」

しりもちをつく刀岐乃。
はふ、と口から呼気が漏れる。

「心臓が止まるかと……」
「羽が蟲のソレだねぇ……。じゃあやっぱり、コレも蟲なのかい?」
「うん」

七海が頷く。
蟲と称される存在には外見的な共通は少なく、それこそ千差万別なのかもしれない。

「まったく、いるならいるって一言いってよね~!おかげで…ああ、想像したくもない」

があ、と吠える刀岐乃。
彼女の脳裏に一瞬、多足の虫が頭上を這いずり回っている映像が浮かんだ。

「あー、大丈夫?刀岐乃さん」
「うん、大丈夫…もう平気」
「いろんな蟲がいるんだよ」

うれしそうに、七海が説明する。

「…なるほどねぇ、勉強になったわ」
「勉強になったけど…なんかすごい疲れた……」
「蟲と共に宇宙を翔ける世界か……」

窓の外を見る。
そこには尖鋭の船が屹立している。
黒崎に浮かぶヴィジョン。星海を翔る妖精と船。

「つまり次のゲームではみんな蟲を使って遊ぶんですね」
「うん。でも、蟲使いはあんまりいないんだ」
「そうなんだ」

残念そうに、詰まらなさそうに、七海。
少しほほが膨らんでいるのが、年相応に見える。

「…ん?じゃあ、蟲使いはレアなんだ?」
「宇宙船に限定された環境で繁殖・維持するのは、何かと難しいのだろうか。」
「面白そうやのに、蟲使い。」

方々がああだこうだと感想を口にする。
それへの回答は断ち切るような、それ故に簡潔な言葉。
心底つまらなさそうに、七海が口にした。

「みんな、蟲が嫌いだって」

単純明快。
特に思い当たりのある刀岐乃がぶわりっと汗を吹く。

「そーなんやー」
「あ~、えっと、よく見ると結構かわいいかなあ?」

鴻屋のちろちろとした視線から目をはずしあさってを見つめて口を開く。
言いつくろいの取り繕いといった様子が丸出しである。

「むー、勿体無いよな。俺はカッコイイと思うぞ、蟲使い」

褒め言葉に喜んだのは七海と、七海以外の何か。
少女の頬が緩む。
そして褒められソレも、同じように緩んだ。
もっとも、それは頬ではないし、可愛らしいものではなかった。

にょきりと。
尖鋭の形状の、夜明けの船から肢が生えた。
わしゃわしゃと音を立てて、歓喜を表現。
なかなかに幻想的、あるいはなかなかの現実離れ。

「…なんか出た…」
「……。私は疲れているのかな……」

眉間を揉む黒崎。
幻想と幻覚をうちけすためのおまじない。

「何か、見えるはずのない物が見えている気がするんだ……」

だが、そこにあるのは確固とした現実。
すさまじい存在感と自己主張であった。

「うお、こええ!」
「あれも、蟲なのか!?」
「…おもしろすぎやー」

ガロウ、RANK、鴻屋、三者それぞれ阿鼻叫喚。
一方の刀岐乃は例によってまた硬直。
唯一立ち直ったのは黒崎だけだったが、これも最早義務感の為せる範疇であった。

「あ、あ、夜明けの船からなんか出てる…は、はは」
「……七海先生。つまり、あれも、あれだ、と……?」

夜明けの船を指差し、あいまいに問う。
そして、それを少女は微笑んだ。
悪戯に成功した童女のように。言いたいことがようやく伝わったと安堵するように――

「うんっ」

振り返った少女の微笑みはまぶしかった。
その手はいとおしげに、夜明けの船を撫でていた――

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最終更新:2007年12月07日 11:40