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那限逢真・三影様からのご依頼品


~妖精の服~

 我が国の摂政は妖精に愛されている。
 辺境のこの藩国で妖精が舞う姿があれば、そこに摂政がいる。
 摂政が空を見上げて笑うならば、その視線の先には妖精がいるのだった。

 1にゃんにゃんショップは賑わっていた。
 慢性的な資源不足の中、わずか1にゃんにゃんで様々な物が買えるとあれば、それは賑わいもあろうものだが、本日の賑わいはそれとは違った。

 妖精が1にゃんにゃんショップの天井の下を飛んでいた。
 妖精が飛んでいるということは、そこに芥辺境藩国の摂政である那限逢真がいるということである。

 なぜ摂政がこんな店に
 妖精だ...はじめてみた
 うわあ、かわいいなあ...
 摂政だ、摂政側が店を査察にいらしている...誰か何かしたのか?
 てか、摂政も1にゃんにゃんショップ利用するんだねえ
 いや、まさか。その気になれば数時間で数億稼ぐことだって出来るんだぞ?
 いや、その分その気にならなくても一瞬で数億浪費したりするし、生活費少ないのかも
 そうだねえ、なんか、一人暮らししていたって噂も聞くし
 とりあえず、そっとしておくか
 そうしようか...
 うん、そうしよう
 とにもかくにも、こうして有名人たちは空気の読める藩民たちによって生暖かく静観されることになったのであった。

「聞こえているぞ、領民...」
 那限逢真は半眼で呟いてから、ひとついくらの人形の服を手に取る。
 ん? と残り二人と1匹?が振り向いたが、それには軽く笑って応えておいた。
 服はビニールのパッケージに平たく包装されていた。コンビニのボールペン売っているところみたいだと思ったけど口には出さない。
「ずいぶん多いな...なんで、人形の服"だけ"がこんなにたくさんあるんだ...」
 バラエティに富んだ服。品質もまあ、Qが実際に着ても動き回れそうなぐらいのクオリティはあった。
 人形の服なんてものが1にゃんにゃんで売っているというのも衝撃的だったが、その品質にも感動する。もっと高くてもよいのではないだろうか。
 店を案内する月子嬢が、笑ってその辺のからくりを説明してくれた。
 服だけなら、商標がないのでその分安くつくのだという。
 つまり那限逢真が高い高いと思っていた人形の代金のほとんどは、商標やブランドイメージに対する値段だったと言うことである。
 なるほど、そういうものなのだろう。

 ともあれ、Qはひとしきりバリエーションを楽しんだ後でハイレグの水着の様な服(というか水着)を選んだのだった。
 動きやすいのが好みなのだろうか。もっとも、看護服やセーラー服やメイド服を着たQなんて想像できないが。
 しかしまあ水着。
 妖精には暖かいとか寒いとか言う概念はないのだろうか。
 その辺を聞くと「他のは羽が折れちゃう」と得意げな答えが返ってきた。
 そういうことかと納得したのは月子嬢で、「あとで縫ってあげる」と白いワンピースを選んですすめている。常世も「手伝います」と必死のアピールをしていた。
 常世はともかく月子嬢の選んだ服は、ずいぶんと清楚なワンピースだった。
 ワンピース姿のQ、見てみたい気はするけどQの性格を考えるといささか大人しすぎる印象がある。
 自分が着せたいのを選んでいるのかもなあ...
 まあ、Qもその服でいいと嬉しそうだったので、文句はない。
 買うことに決めた。
 縫い方と洗濯の仕方は月子嬢に教えて貰った方が良いだろう。
 旅先で縫い目がほつれたときの補修ぐらいはできた方が無難だ。
 芥の人間はさほど器用ではないが...その辺は努力。
 ついでに裁縫セットも買いそろえておくべきだろうか。
 100円ショップで全部揃えられたものか。
 常世がもう2・3着買おうかと提案したので那限逢真はQに他に着た衣服はあるかと訊ねる。
 意外なことにQが「もう十分!」と拒んできた。「それ以上持ったら飛べなくなっちゃう」らしい。
 クロゼットを作るとか、そういった考えはないのだろう。いや、
――あるいは旅の多い自分に遠慮しているのだろうか。
 案の定、それぐらい持つよと言うと「悪いよ」と、遠慮してきた。
「とべなくなるよ?」
 人間はそもそも飛べない。それを知ってか知らずか、そんなことを言うQ。自分が自由だから、他人の自由も妨げたくないのだろうか。
 なんにせよ、Qがこちらを気遣っているのだなと感じて、その気遣いに妙に嬉しくなる。
 自分も何か選んであげたかったのになあと未練がましくいいつつも、それ以上は言えず、苦笑してしまった。
「うっ...」
 だが、Qの方はと言うとその一言で考え直したようだった。
 なんだ、やっぱりまだ服が欲しいのだなと理解して那限逢真は悩むQに後押しした。
 二人で分ければ飛べるから大丈夫だから、遠慮するなよと。そんなニュアンスの言葉だった。
「じ、じゃあ1着買うっ」
 説得が通じたか、もう一着買うことになった。
 更に嬉しくなって今度は微笑んだ。
 こっちの顔を見て、Qの表情も顔をいっそう明るくなったのは気のせいだろうか。
 微かに頬が赤かったように見えた。
 Qはピーターパンみたいな服を選んだ。
 妖精らしい服だなと思っていると、妖精らしい服を探していたんだ、と胸をはって言われる。
 妖精の服は特別製なのだという。
 良品とはいえ所詮は着せ替え人形の服である、生地が安物だったりボタンもセメダインで貼りつけたアップリケだったりと見劣りする部分もある。縫い目にしても、妖精から見れば相当に粗いということになるのだろう。彼女たちからすれば縫い糸はロープで、針は杭ぐらいありそうだった。
 そういえば、月子嬢が常世に安物だし使い棄てでいいって説明していたとき、頬を膨らませていたなあ。
 やっぱり本物の服が欲しいのだろう。
(それはそうか)
 なんとかして、作れないものかと思案する。
 Qが言うには、昔は本物の職人が彼女たちの仕事の報酬に作ってあげていたらしい。
 妖精は一生懸命な人間のモトにふらりとあらわれるものらしい。
 そんな妖精が見込んだ職人の服だから、きっと本当に凄い出来映えだったのだろう。
 「500年着れる服もあった」なんてQの言葉も強ち否定できない。
 職人は妖精と同じだという。
 なら自分は妖精になって、妖精の服を作らないとなあと漠然と思う。
 オレも妖精の域になれるかなと訊いてみると、ピクシーQは嬉しそうに自分の頭上を舞った。
「Qが教えてあげる」

~終わり~


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最終更新:2007年12月15日 15:06