あおひと@海法よけ藩国様からのご依頼品


蒼の忠孝一生一度の晴れ舞台【本戦】


2008/01/07 22:33版

三千世界の片隅にゃんにゃん共和国。

その中にある緑為す森と避ける木々の国、海法よけ藩国。

そこに一組のカップルがおりました。

二人はお見合いで出会い。

長い時間を掛けて愛を育み。

幾多の試練を乗り越えて。

今日のこのめでたき日に、遂に結ばれるのです。

それは何処にでもある、愛に満ちた恋人達の物語。

ただちょっと普通と違うのは。

旦那様はアゴヒゲ眼鏡で戦争嫌いのクセに戦上手でエロリストなド変態で。

奥様が国家の重責を担う元軍医の麗しき魔法使い。

だったことです。

これから記されるのはそんなちょっと変わった二人がそんなことなんかまるで関係なく幸せを掴むという、そんな物語です。


参列者名簿(※以下のリンクはよけ藩の皆様が結婚式にご用意なされたページに繋がっています)

新郎 蒼の忠孝様 海法よけ藩国

アゴヒゲ眼鏡がトレードマーク。戦争が嫌いな癖に戦上手というド変態。

最近日々エロリストに変貌しているというお噂ですが、あおひと様をお守りする際にはそれは頼もしくいらっしゃいます。



新婦 蒼のあおひと様 海法よけ藩国

旧姓善行忠孝に思いを寄せ、お見合いへ突撃。

名医として腕を振るう一方、万難を排して見事忠孝のハートを射止めてそのままよけ藩国へ連れ帰ったという逸話を持つ勇者にございます。



仲人

海法 紀光藩王様 海法よけ藩国

他ならぬ藩国の主。あらゆるものを避ける剛(業)の者。

この結婚式には振り袖(下はブルマ)に結い上げ髪という盛装で参列なさいました。




※ご友人の皆様はドレスコードにより全員が女装+ブルマ着用(している心意気)でございます。



嘉納摂政閣下 海法よけ藩国

純子様

青にして紺碧摂政閣下 海法よけ藩国

メビウス様 海法よけ藩国

うにょ様 海法よけ藩国

黒崎克耶様 海法よけ藩国

ソウイチロー・黒崎様

双樹 真様 レンジャー連邦

ソーニャ・モウン艦氏族デモストレータ様

エミリオ・スタンベルク様

奥羽りんく様 悪童同盟

奥羽 恭兵様

後藤 亜細亜様

暁 ゆかり様

/*/

 2007年11月大安吉日。

 避ける大自然と森国人が見事な融和を見せる緑の王国、海法よけ藩国。

 今日の良き日に結ばれる二人を祝福し、藩国中が祝賀ムードに満ちていた。

 今回式場となった政庁前広場を除いては。

(お見合いかぁ何もかも懐かしい)

 振り袖に化粧ばっちりの盛装で列席したよけ藩国王、海法紀光は娘を送り出す父親の心境になって感慨に浸っていた。

 うんうんと頷いている海法藩王を余所に続々とドレスコードをパスした参列者が詰めかける式場では、藩国の主立った面々が集まり重苦しい会場の雰囲気に戸惑っていた。

 本式場となる講堂へと続く大通りの両側にずらりと並んだ装甲車。

要所要所に目立たないように配されたI=D。

 ある意味壮観ではあるが。

「まあ、戦時下一歩手前だし」

「おーい、装甲車買ったの誰だー?。装甲車買う金があったら、アイスクリームを買えと」

「予算握ってるのは財務系なので、あやしいのは吏族」

 これが嘉納摂政と海法藩王の会話である。国のトップが知らない内に式場内にこんな物が持ち込まれてしまって良いのだろうか…。

 それでなくても落ち着くに落ち着けず、参列者に挨拶して回っていた新婦、蒼のあおひとが二人の元に小走りに駆け寄ってくる。

「いつのまに…陛下!?も、もう、無駄遣いは駄目っていつも言ってるじゃないですかっ!!」

「てか、どこの装甲車?宰相?」

「なんかこわいなあー、やりそうなのは厚志さんとか?」

「キングサイズのベッドは発注したんですけどねぇ」

 めでたい場に相応しくない物々しい雰囲気におろおろするあおひと。流石に暢気な首脳陣も色々と心配になってきたようだった。

「祝砲なら戦車か大砲。装甲車ってなんか凄くすごいいやな予感がするな」

「装甲車にI=Dか…」

「つまり、何かの囮か。これは」

 顎に手を当てて考え込む嘉納摂政の呟きを受けて海法藩王が携帯通信機を取り出す。軍用バンドに合わせて装甲車との通信を試みる。

「あーあーすいません。こちら藩王ですが、そちら管轄どちらっすか?」

「うーん、まぁお見合いに未婚号持ち込んだくらいだからねぇ」

「誰がI=Dに乗るねんな、これ」

「これなら未婚号も引っ張り出してくればよかったかな。あれはあれで見た目は華やかだし」

「1、2、3……たくさんの装甲車だ」

 これは紺碧摂政。その他軍医の黒崎、メビウスも集まってきている。新婦が新婦だけに参列者は国の要人や他藩国の有名人ばかりである。

立ち話ながらちょっとした藩国会議の様相だ。

「とりあえず、軍部に連絡して援軍呼びますか、陛下?」

「援軍つっても、うちにあるの、燃料切れの未婚号と旧型I=Dしかないぜ?」

「陛下、それだけじゃありません。今のよけ国ではI=D動かせません。いろいろ足りないんで」

「そんなに貧乏か…我が藩国は」

「主に資源とか資源とか資源が枯渇しそうです」

何かあっても機甲戦力の援護は望めないらしい。

緊張の度合いを増す面々。式場を見渡せば招待状を出した以外の見慣れない顔が随分混じっている。

「紺碧さん、あと、一応DAIVAとかまでの避難路とか」

「はいはい殿下、避難経路確認中です」

摂政二人はとりあえず対応策を取り始めた。

「あ、参列者の方ですか。失礼しましたー。念のため、警備の人とは連絡してくださいねー」

 海法藩王が携帯通信機を切った。どうやら装甲車の搭乗員なり指揮者と連絡が取れたらしい。

程なくして高級将校らしい人物が一団の元へやってきた。

「あ、ご丁寧に。新郎のご友人ですか」

「これはご丁寧に」

「海軍では優秀な指揮官を常に欲しております。藩王どの」

 振り袖姿で優雅に会釈する海法藩王と外交官風にお辞儀する紺碧摂政にそう言いながら敬礼を返す高級将校。

 あくまで穏やかな物腰だが眼光は鋭い。

 階級章は少佐、軍装と敬礼の仕方からして展開しているのは天領海軍らしい。

「なるほど。まぁしばらくは、新郎を新婦からひっぺがすのは大変と思いますが、どうぞ楽しんでいってください」

「戦争はいつはじまるかわかりませんから」

 表面上穏やかな会話だがぴりぴりとした緊張感を漂わせる二人から新婦をガードするように、関係者達が少し離れたところへ誘導してしきりに話しかける。

「あおひとさん今日はおめでとうございますー」

「緊張しないほうがオカシイトオモウンダ!」

「大丈夫大丈夫。おちついてー」

「はぁい、あおちゃんあいかわらず元気そうにカクカクしてるわね。

今日はお招き頂いてありがとう」

「み、みなさんあ、ありがとうございますー。

来ていただいて嬉しいです。緊張でガクガクですけれど」

 嘉納摂政はその間も他に招待されてこの場にいない賓客の姿を確認する。妻の純子を中心に。

その純子はにこにこ笑いながら軍人の応対に当たっていた。

「ふむ、さすがは摂政の伴侶。見事ですな。こちらもつつがなく式を進めねば」

恭兵は見当たらず、亜細亜も出席してない。

(恭兵さん、今から、ガータートスに備えて、位置取りを……)

 内心で妙なところに感心しつつ、再度敬礼した少佐と別れて一団の元に戻ってきた海法藩王。とりあえずこの物々しい集団の正体だけは知れた。

「祝いの品も電報も届いております。のちほど、海軍の皆様にもお披露目したいですね」

「ま、新婚夫婦を駆り出す前に、我々もがんばりましょう」

ソウイチローは風邪で欠席と連絡が入った。ゆかりとエミリオは会場でケータリングサービスを手伝っているようだ。

「ゆかりさん、エミリオさん、今日はお忙しい中お越しいただきありがとうございます。しかも手伝いまでさせてしまって」

「いえ。僕ができることなら、なんでも」

「すごい人数ですねえ」

「黒崎さん、料理の中から、病人によさげなものを詰めておきなさいな」

「ありがとうございますー陛下ー」

「克耶さんはそのままソウイチローさんにあーんしてあげればいいですよ」

「ちょ、あおちゃん…。その様子じゃーもうカクカクはなおったみたいね」

 にっこりと参列者達を労うあおひと。漸く緊張が解けてきたようだ。

 黒崎は両手の平を前に出してぶんぶん左右に振った。長い耳の先まで赤くなっている。

そこへ給仕を手伝っていた純子がにこにこしながら近付いてきた。

「どうしましたー?」

きびきびと立ち働く妻に見とれていた夫の元に、メモを残して代わりにワインの瓶を手にして去っていった。

純子の残していったメモを広げる嘉納。そこには丁寧な文字と略図で今展開している天領海軍の部隊表が記されていた。

 どうやら給仕をしながら兵士と接触して情報収集に当たっていたらしい。

「ほうほう、これは……いつのまに。純子さんは見事な手際ですな」

「………陛下ー、追加の仕出しですー」

 嘉納は背後からメモを覗き込む紺碧摂政に微かに頷くと、素早く内容を手近なナプキンに書き写してひらひらふりながら海法藩王に示した。 

 海法藩王はいつもの決済であるかのように眼鏡を押し上げるとメモの内容に目を走らせた。二人の摂政相手に談笑している風を装ってぼそぼそと続ける。

「あーと、この配置だと……装甲車が囮として、敵の攻める方向は、どっちを想定してるのかな?」

 大通り沿いに展開している装甲車は派手に白く塗られ露出しているのに対し、I=Dは上空から巧妙に隠蔽されている。

 空か、それとも大通りを式場へ向けて進撃する敵を挟撃か。

「嘉納さんなんですそれ?」

「んー、仕出しの伝票」

 嘉納は更にメモを書き写すと他言無用と走り書きして新婦の友人達に回した。彼等、彼女らとて各藩の動乱を生き抜いてきた猛者である。

こういう場面では心強い助言者、戦力たり得る。

 次々に回されるメモを読んで行動を開始する。

「………エミリオ、ゆかりさん、そちらは今何の準備かしら、私も手伝いますよ」

「列席者の方々にお手伝いいただくとは。ありがたいやら申し訳ないやらです」

「え、えと、何か手伝えることはありますか?」

何だか慌ただしくなってきた場に再びおろおろし始めるあおひとだが。

「花嫁さんは、そこでふんぞりかえっててー」

「新婦はすわっときなはれ」

「新婦さんは動き回らないものですよ」

「花嫁さんはそこで幸せになるのをまっててくださいー」

「は、はい…」

 本当は動き回っている方が気は紛れるのだが、体調を気遣ってくれている参列者達の好意をむげにも出来ず。

 結局口々に言われれるまま新婦控え室に連行されてしまった。


その頃、新郎である忠孝は控え室で腕を組んでいた。

ひとまず新婦の世話を参列者に、天領海軍相手の情報収集は純子に任せることにして、海法藩王と摂政の二人は新郎控え室の様子を見に来ている。

「はるばる当国まで来てくださったのですから、ごゆるりと」

表向きの用事は式の打ち合わせと挨拶だが、純子がもたらした情報を忠孝に渡すためである。

紺碧摂政が慇懃に対応している傍らで嘉納摂政が新郎の衣装である純白のタキシードと一緒に純子のメモを手渡す。

 忠孝は手の中に押し込まれたメモを素早く掌に隠し持ち、タキシードを広げた。

 よけ藩に産する天絹で織り上げられた絹布をふんだんに用いたタキシードは新婦であるあおひとがデザインしたオーダーメイドである。

「…これを、私が、ですか?」

普段着慣れている軍装とはあまりにかけ離れたきらびやかで滑らかな手触りの服に一瞬ひるむ忠孝。

「あ、その格好でバッチグーです」

あくまで軽快な海法藩王の言葉に暫し迷った後、わかりました、と言って華麗に着替えを始めた。

おもむろに服を脱ぎ出す忠孝。何故か一度全裸になったその瞬間、善行の鍛え上げられた裸身が眼鏡を中心に眩く光り輝いた。

余りの眩しさにその場にいた全員が瞬間的に目を逸らす。いや、他にも目を逸らしたい何かがあったのかも知れないが。

恐る恐る目を開くとそこにはびしっとタキシードに身を包んだ忠孝の姿があった。

この間わずかに3秒。

「さ、さすが忠孝様。見事なお着替えでいらっしゃる…。

よくお似合いですよ、新郎殿」

「正式にご挨拶してなかった気もします。当国藩王の海法です」

「同じく、摂政の青にして紺碧と申します。ご挨拶が遅れて申し訳ありません」

 改めて挨拶するよけ藩の首脳陣に忠孝は礼儀正しく答礼した。姿勢を正して軽く頷く。

「さすがです」

忠孝に合わせてあつらえられたタキシードはきらびやかでありながら羽根のように軽く滑らかで、そこに込められた新婦の愛情が肌を通して伝わってくるようだった。

「忠孝様。今日のあおひとさん、忠孝様のよき日を当国で迎えることができて、私はうれしく思いますよ」

「ええ。私には勿体なさ過ぎるほどの良縁です。いささか私の趣味に理解がありすぎるのも問題ですが」

新郎を交え和やかに談笑する控え室の前を、名産の避けワインを満たしたグラスを大振りのトレイに載せた純子が通りかかった。

歩哨に立っている兵や見回りの兵にもグラスを手渡して回っている。

勧められた兵が、任務中ですから、と言いかけて純子ににっこり微笑まれ思わずグラスを手にとって口を付けてしまっている。恐るべき手腕。

「ちょっと失礼」

 海法藩王は一旦控え室を出ると純子の元へ歩み寄ってワイングラスを受け取った。慎重に口に含み味を確かめる。

 飲み慣れた芳醇な香り。舌に残る酸味と微かな苦み。

 ひとまず薬物のたぐいは入っていないようだが…。

 純子が色々助けてくれているらしいことは解るが、余り天領相手に危険なことはして欲しくないのが海法藩王の偽らざる所である。

彼にとってはよけ藩の民全てが息子や娘のようなものなのだから。

 微かに首を傾げて視線を上げると、今純子が会話をしている相手は行方が解らなかった恭兵と風邪で欠席していたはずのソウイチローだった。

 こんなところで油を売っていたらしい。

「ようこそ、おこしくださいました。……なにかきなくさいことでも?」

海法藩王は二人の賓客ににこやかに挨拶した後、二人だけに聞こえるように小さく付け加えた。

忠孝、ソウイチロー、恭兵。いずれも戦場で名だたるエースである。彼等が集うということはすなわちこの場が硝煙が漂う戦場だということ。

 海法藩王に倣って二人の摂政もこちらにやってくる。嘉納摂政の目当ては主に純子のようだが。

「これはこれは。支部ご友人の奥羽りんく様、それから、当国の黒崎克耶さんのお連れの方ですね。

ようこそおいで下さいました。

ソウイチロー様は風邪を召したとのことでしたが体調はお宜しいので?」

「きなくさいですめばいいがね」

「とりあえずはスカウトを避けるためだが。まあ、まずいな」

摂政としての義務と愛らしい妻の立ち姿に板挟みになって密かに身悶えた後、結局我慢できずに妻を軽く抱き締める嘉納摂政。

「………(ああ、いい!純子さんいい!)………ありがとうございます、足りないところをやって頂いて」

「どうしました?手がいるなら俺も動けますが」

 そんな様子を半眼で眺め、面白くもなさそうに言った恭兵の言葉に海法藩王は眼鏡を光らせた。

やはり、というか今回も一波乱無しでは終わらないらしい。

「でも今これだけの戦力にしかけてくる勢力ってありますかねえ?ソウイチローさん」

そういいながら純子がワインを載せていたトレイの裏に貼り付けていた編成表をちらりと見せる嘉納。恭兵は表情を改めるとなにやらソウイチローと打ち合わせを始めた。

そんな様子を苦々しく見遣る海法藩王。

「……ソウイチローさんも恭兵さんも、新郎同然なんですから、無茶はしないでください。わたしゃ、これ以上、花嫁の泣く顔はみたくないですよ、いやほんとに。

こっちでなんとかできることはなんとかするんで、打ち合わせましょう」

「俺たちはそんな関係じゃない」

 じゃあどういう関係なのか。

海法の言葉にぶっきらぼうに答え、眼鏡に手を添えぷい、と明後日の方向を見上げたソウイチロー。言葉よりもそのアクションが二人の関係を如実に表しているというか。

「それは失礼」

 海法藩王は初々しいな、と心の中だけでそう付け加えた。


 少し離れた新婦の控え室ではこちらもウエディングドレスに着替えを終えたあおひとが室内をぐるぐる歩き回っていた。

 この日のあおひとのドレスはFEGの高渡がデザインと縫製を、その他の実作業に多数が参加しているハンドメイドである。

当初は森国人らしく身体にぴったりしたデザインだったらしいが、式の直前になってあおひとご懐妊の知らせを受けて急遽デザイン変更がなされたという逸話付きの一品である。

まだお腹が目立つ風でもないが、忠孝とのタキシード同じ天絹で織り上げられた布をふんだんに使った優しいドレープのドレスと、長く垂れ下がるヴェールは長い耳と髪を持つ新婦をふんわりと優しく包んでいる。

コンセプトの花の妖精という言葉にぴったりの麗しい装いであった。

「うぅ、手持ち無沙汰です…」

 いささか装いに対して当の新婦の言動がそぐわない風ではあるが…。

「あおひとさーん」

「あ、はい、なんでしょう?何かあります?仕事あります?作業くれます?」

これはあおひとの口癖である。結婚式だというのにこれが出るあたり、かなりテンパっているらしい。

「いやいや、飲み物どーぞー」

 式を直前にいよいよ落ち着きのない新婦に、大きなペンギンの着ぐるみにブルマという姿でドレスコードを突破した双樹がにこにこと手にした飲み物を差し出した。

 これは激しく和む。

 一見してはなんとも形容しがたい双樹の着ぐるみだが、これが後々色々な役に立つのであった。

いや本当に。

「ま、ちょっとおちついて」

「ど、どうも…」

双樹からジュースを受け取って椅子に座りなおすあおひと。

落ち着かないのは新婦の友人達も同じなのか、ほぼ全員が控え室に集まって雑談を交わしたり、少し早い祝杯を上げている。

「お酒まわってない人いませんかー」

「あ、黒崎さん、私にもお酒くださいー」 

「はいーメビウスさんどーぞ」

「どうもありがとうございます」

「ところで、乾杯はイツになるのかなぁ」

「暇なら智恵の輪でもどーぞ」

 冷静なのか暢気なのか。この新婦にして流石の友人達である。

刻々と近付く開宴の時。控え室の壁に掛けられた大きな柱時計が時を告げ始めた。

それを合図に参列者達が講堂の席へと移動を始める。

「エミリオ、そろそろ時間みたいよ会場にいきましょ」

「えへへ、真さん、気を使ってくれてありがとうございますー」

「いえいえ、では期待してますよー」

 着ぐるみのフリッパーを振りながら退室する双樹を見送り、あおひとは両手で軽く頬を叩いて表情を引き締めた。

 いよいよ、本番だ。


「ようこそおいでくださいました」

各々の控え室から講堂へと向かう参列者に紺碧摂政が一礼と共に挨拶を交わしている。

今回本式場として用意された中央政庁に付随して建っている講堂は、普段は政庁スタッフを集めての集会やよけ藩運動会の室内競技で使用される場所である。

今回はそこに宣誓台を設え、参列者用に円卓を幾つも運び入れて結婚式及び披露宴を執り行えるようにセッティングされている。

高い天窓から陽光が降り注ぎ、色とりどりの花や垂れ幕で飾られた講堂は急拵えながらも華やかでいて荘厳な雰囲気に満たされている。

後は立会人海法藩王と新郎新婦の入場を待つばかりなのだが、当の新郎新婦付添人と立会人はまだ控え室の前で密談を続けていた。

「…だからかくれてるのさ」

「心配な顔を見たくないから隠れる、というのは、激しく方向性を間違ってると思いますよ。

とりあえず、心配の原因を話してください。力になれるかもしれない」

「ここ、襲撃されるぜ」

 海法藩王の問いかけに何気ない口調で答えた恭兵の言葉に、その場にいる全員の顔に緊張が走った。

 どうして、というよりかはやはり、という感じだ。

 やはりこの藩国と藩王にしてこの国民なのである。突発的なトラブルには慣れている。

そしてそれはいつも『いいところ』でやってくるということを良く知っていた。

「なるほど。では、避難しましょう。戦艦の中ではどうですか?」

「純子さんも、そろそろ始まるみたいだし殿下の所に行かれたらどうですか?」

次善策を練り始めた海法藩王の言葉を受けてうにょが促すが。

「さすがです、純子さん。ほんとまじでさいこー!」

嘉納摂政が飛んでいく方が早かった。まぁ、愛妻家の彼らしい行動ではある。

そんな夫を迎え、純子はにこにこ笑っている。

「にゃにゃにゃ」

近くに寄り添った嘉納は微笑みにとろけそうになりつつ、筆談でこれまで調べた内容について裏付けを、と頼んだ。

純子は微笑みを絶やさないまま顔を近づけると夫の耳元で戦闘のご覚悟を、と囁いた。

瞬時に嘉納の表情が引き締まる。双璧為す摂政として藩国の重責を担ってきた男の顔。

「了解」

 短くそれだけを答えた。


 参列者が着席して開式を待つ講堂。

 黒崎はそわそわして隣に座る双樹をべしべしと叩いた。

 ずっと続いているおかしな雰囲気から来る緊張感からか、ソウイチローの姿が見えない不安からか、無意識に近い行動だ。

「痛い!痛い克耶さん!部品が刺さる!」

「あれ!始まった!」

 抗議する双樹の言葉も聞こえているのかどうか、黒崎が声を上げた。

 壁際にずらりと並んだ軍楽隊が一斉にマーチの演奏を始めた。管弦楽と吹奏楽両方ができる特別選抜隊だ。

 華やかではあるが、やはり結婚式向きではないかも知れない。

「ううううううう、緊張する、緊張する…」

「あおひとさん、リラックスですよ。少々手違いもありますが、式も始まりましたし。

落ち着いてください」

「り、りらーっくす、りらっくすー」

 講堂の入り口では紺碧摂政に付き添われた新婦のあおひとが懸命に緊張と闘っている。

 深呼吸して講堂の中央を見れば宣誓台についた海法藩王が新郎新婦の入場を待っていた。

「ぼへー」

 新婦に連れられ新郎がよけ藩にやってきてより幾星霜、様々なことがあった。きっと胸に去来する思いに浸っているのだろう。

…決してただ惚けているわけではないはずだ。 

「すごいね、軍の音楽隊って」

「景気は、いいですねぇ、克耶さん」

「そうねぇ」

 気のない調子で答えながらやはりべしべしと叩く黒崎。

「だから刺さる!刺さるから!」

「陛下も、ぼへーっとしているようで回りに目を配っていらっしゃるか」

「べほー」

ちがった。あれは早くご飯を食べたいと思っている目だ。

 軍楽隊によるマーチの演奏もいよいよ佳境、新郎新婦の入場だ。

 嘉納摂政に付き添われた忠孝が講堂入り口へとやってくる。紺碧摂政の手から忠孝の手へ、新婦であるあおひとの手が委ねられた。

 二人の摂政は先に入場し、扉の両側に立つ。

 一際高らかに鳴り響くマーチ。

「き、緊張します…」

 かちかちになったあおひとに優しく微笑みそっと手を握りしめると、忠孝は胸を張って前を見据え、一歩、また一歩と深紅の絨毯へ踏み出す。

 盛大なマーチと参列者の万雷の拍手が、宣誓台へとバージンロードをしずしずと歩む新郎新婦を迎え、祝福する。

「おお、ご両人、おめでとうございます!」

「おおぅー」

「おぉ。きれいだ」

「おめでとうございますー!」

 忠孝は堂々と歩みを続けながら傍らに立つ生涯の伴侶に優しい声で尋ねる。

「後悔していませんか?」

「いいえ、まったく」

忠孝を見上げ幸せそうに微笑みかけるあおひと。

「大体、後悔するなら、お見合いしに行きませんよ」

「それはよかった。まあ。後悔させないよう、がんばります」

 微かに頬を赤らめて前に向き直る忠孝。アゴヒゲ眼鏡としてはまあ、これが精一杯だろう。

「はい、いっぱい愛してくださいね」

 にっこりと締めくくったあおひとの言葉と共に二人が宣誓台の前に立った。

 マーチの演奏が止まり、厳かな雰囲気に包まれた二人はこの上なく幸せそうで、一枚の絵のように様になっていた。

 タイトルは永遠の愛とかその辺りで決まりだ。

「あおひとさん、幸せそう。いいなぁ…」

「奇麗ね………」

「いやー眼福眼福」

「今日のこの日にこぎつけることができてよかった…」

「ずいぶんかかりましたもんねー、この日まで」

「紺碧さんおとーさんみたい…」

「しんさん、紺碧さんはじいやだ」

「そうか!そっちか!」

 時には新郎を交えて一緒に小笠原で遊び、時には戦地に赴いた忠孝を待つあおひとを支え、時に良き相談相手であった新婦友人達。

感慨もひとしおに新郎新婦に見とれる。

同じ感慨を胸に抱く二人の摂政は、自分達の役割に従い最後列に立って小声で話しながら密かに筆談を交わしている。

「殿下のドレスコード案がなかったら今頃は…」

(先程純子さんは何と?)

「いや、まさか物堅い君が採用するとはねえ」

(戦闘の覚悟を決めろ、だ)

「いえいえ、殿下のアイデアには感服いたしました」

(了解)

二人の摂政は口を閉じるとにこやかな表情を作って宣誓代の前に立つ新郎新婦を見守った。

これから何が起こるにせよ、今はとにかく無事に式を終えることが最優先だ。

 新郎新婦の前には海法藩王がぼへーとして立っている。

今回は新郎の強い要望で、人前式だ。

 つまり、神ではなくこの場にいる参列者全員を証人として愛を誓うわけだが、なんとも合理の人である忠孝らしい希望であった。

そしてそれは新婦に対する思いやりにも満ちている。

 底意地の悪い神様よりも友人達の方がよほど新婦の助けになるだろうから。

「ぼへー。

今日の良き日に…」

 堂々と式を進行する海法藩王に、これもまた感慨深い参列者達。

 振り袖にブルマ着用で立会人を務めるのは後にも先にもこの人唯一人だけであろう。

 アイドレスに存在する恋人達の未来のためにもそうであって欲しい。

「陛下和服にあってるー」

「陛下、ブルマ着用の立会人なんて…」

「和服…恰好いいなぁ…でも中はブルマ…?」

「いうな、心の目を閉じればわからん。そもそもあの女装だぞ」

「人のことは言えないと思うけどなぁ…」

「…誓いの言葉をどうぞ」

 朗々と言葉を結んだ海法藩王に促され、新郎新婦が互いの手を取り見つめ合う。

「誓います。死が二人を分かつまで。私のほうは、そのあとも」

「皆様の前で誓います。死が私たちを分かとうとも、愛し続けると」

 式場にほう、という溜息が大きく響く。

なんというか、二人ともかっこよすぎる。

 海法藩王は微笑みを湛えて大きく頷いた。

「指輪の交換を以て婚姻の証とする。結婚指輪をここへ」

 新郎新婦が手にするそれは、先日の小笠原行きで立ち寄ったヨシフキンの店で手に入れた強い絆の魔法を持つ指輪。

二人の愛の形ある証であり、二人の名前と同じ色の指輪であり、忠孝の給料3ヶ月分にボーナスを足したほどの値段がした指輪である。

「この小さな円環はただの物だが、壊れざる愛の象徴であり、巡り巡る愛の象徴でもある」

 海法藩王の言葉と共にお互いの薬指に指輪をはめる二人。

ここに大いなる愛の奇跡は成就した。

「それでは、よけ藩国藩王の名と、一同の祝福の元に、二人の婚姻を認めます。

異議ある者は今すぐ述べよ。 さもなくば永遠に沈黙せよ」

微かに緊張した面持ちで心の中で10数えながら式場を見渡す海法藩王。

居並ぶ顔はいずれも沈黙を守り、あるいは笑顔で頷く。異論のあろうはずもない。

どうやら海法藩王が懸念していたのは式をぶちこわしにする敵の襲撃タイミングのようだった。

ひとまず異常がなさそうなので小さく息をついて続ける。

「では、誓いの口づけを」

忠孝はあおひとの肩に手を回して微笑んだ。

「今日は、怒られないと思いますよ」

どうやらキスのことを言ってるらしい。

これまでに公衆の面前を含む至る所で散々キスを交わしておいて今更なにをかいわんや、ではあるが。

「…別に、みなさんきっと、もう諦めてらっしゃいますから…。

好きなときにしてください。

……してくださいというか…ええと、はい。してほしいです」

そう囁いて耳まで赤く染めて俯いてしまうあおひとに忠孝は頷くと、はい、と言って細い頤に指を当てて優しく上向かせ、わななく唇にそっと、唇を寄せた。

あおひとの閉じた瞳から喜びと幸せを集めて珠にしたような、透明な涙が一粒、バラ色に染まった頬を流れ落ちる。

 二人のあンまああぁぁぁーーーーーーーーーーーーーいぃ雰囲気に当てられたようにしーんと静まり返った式場に、始めはぱらぱらと、やがては万雷となった拍手が鳴り響く。

 二人が唇を重ねていた30秒間ずっとである。

 忠孝がようやく唇を離したその頃には、参列席者の掌と顔がいいだけ赤くなっていたことだろう。

 いやもう本当にごちそうさま、なのである。

「すみません…すごく、幸せです…」

「私も、幸せですよ」

 目尻に浮かぶ涙を指先で拭うあおひとに忠孝は素直な気持ちを言葉にした。

「よかったです」

「育児の勉強でもしないといけないですね」

 あおひとの手を取って宣誓台を離れる忠孝は心なし家庭人としての落ち着きが身についてきたように見えた。

 これからは夫として、父親としての忠孝の戦いが待っている。

「そ、そうですね…あの、不束者ですけれど、よろしくお願いします」

「こちらこそ。長い付き合いになりますが」

「短いお付き合いにするつもりはありませんから。いっぱい幸せになってくださいね」

 微笑み合い、晴れて夫婦となった二人は肩を並べ、そのまま万雷の拍手に送られ、忠孝のエスコートで退場していく。

「おめでとう、あおひとさん」

「両人とも、お幸せに!」

「おめでとうー!お幸せにー」

「しあわせになれよー」

「おめでとうございまーす(ぱたぱた)」

「あおひとさん、忠孝さんおめでとうー!お幸せにー!」

「ありがとうございます」

 バージンロードを歩んでいく二人に投げかけられる惜しみない祝福に照れくさそうに微笑み返すあおひと。誇らしげに妻の傍らを歩む忠孝。

 鳴りやまぬ歓声と拍手を背に、二人の姿が講堂の扉の向こうに消える。

この後は暫し中座のお色直し、披露宴となる予定だった。

再び始まる軍楽隊によるゆったりとした演奏。

「さぁごはんだ」

 重責から解放され朗らかに宣言する海法藩王。

 荘厳で華麗な人前式から一転して場が明るい雰囲気に包まれる。何はともあれ、一番クリティカルな場面は切り抜けたらしい。

 互いにワインやジュースを酌み交わし、和やかに歓談を始める参列者達。

「なんだか熱いですねぅー」

「あ…暑いよぅ…ラヴが…ラヴが…」

 双樹のそれは着ぐるみのせいもあると思う。

「灼けちゃいますね」

「………純子さん、ああいうの、やりたいですか?」

純子はにこにこ笑っている。きっと彼女は夫の提案なら地の果てで二人きりの式でも文句は言わないだろう。

「幸せそうで、よかったぁ」

「そですねぇーまったくです」

 ちなみにここにいる大半は決まった相手がいるので、遠からず似たような感想をみんなから受けることになるのだ。

 他人の結婚式について感想が言えるのも今の内である。

そんな和やかな雰囲気に突如として水を差す、何かが破裂する聞き慣れた音。

「きた」

「いえ、まだです」

 先走りを留めるように純子が嘉納摂政の膝に手を置いて静かに言った。

「来た!?いや…まだ…か?」

「なにかしら」

「爆竹だと、思うけど」

 ジュースを口にしながらソーニャの問いに答える冷静に答えるエミリオ。

「えーと、爆竹…?」

「他国ではおめでたい日に大量に鳴らしますねぇ」

「むぅ?」

首を傾げる黒崎の隣で、それまでむすーっとして席についていたソウイチローが退席した。

一人、走って講堂を出て行く。なんやのーっ!?と声を上げ慌ててソウイチローを追う黒崎。

「黒崎さん!気をつけて!」

「はいー!まってー!」

「いってらっしゃーい」

「黒崎さん、頑張ってー!」

「あんなに慌てて、我慢してたのかしら?」

「紺碧さん、ここはよろしく。ちょっと様子を見てきます」

「かしこまりました」

 慇懃に礼を返す紺碧摂政に後を託し、海法藩王がしゃなりしゃなりと二人の後に続いて講堂を出て行った。

 どうやらご飯を食べる前に済ませておかないとけない案件が出来たらしい。

 仕事が待ってると消化に悪いからなぁ、眼鏡を直して海法藩王は一人呟いた。


 その頃、爆発音は控え室へ戻る途中の新郎新婦の耳にも届いていた。

「爆発の、おと?」

 式が始まる前から続いている違和感を思い出して不安げに忠孝の腕にすがりつくあおひとに、忠孝は安心させようと優しく微笑んで首を横に振った。

「似ていますが違いますね。あれは爆竹ですよ」

「爆竹、ですか。いたずらかしら…それとも誘導」

「微妙ですね。殺すつもりなら狙撃すればいいだけ、防ぐつもりなら、別の場所でやればいいだけ。だから、それ以外だと思います」

「まさか…嫌がらせ?」

「嫌がらせにしては、敵味方、本気度が高いですね」

「では分散でしょうか」

 二人は知らないが今は新郎新婦、ソウイチローと黒崎、海法藩王と個別に動いている。敵の狙いが戦力の分散なら、成功していることになるが。

「さてさて」

 可能性は星の数、情報が足りない今の段階では何も言えない。そう忠孝は言っている。

「ただ、何があっても私は貴女を守りますよ。奥さん」

 事も無げにそう言った忠孝にあおひとは顔を赤らめるとぎゅっと腕にしがみついた。


 講堂では居残った新婦友人達が状況を把握しようと話し合っていた。

 折角の今日の良き日くらい新郎新婦を祝い、楽しく語らって和やかに過ごしたいのは山々なのだが、何分不穏な要素が見え隠れしすぎている。

「……分散、ですかねぇ」

「分散して、ヤガミたちをねらう、ですか?」

「陛下が居ないから、忠孝さん、新婚早々もしかしたら指揮のサポートをお願いってお色直し中だし!」

「まあまあ殿下、そういうときの我らですよ。軍事はあなたの畑でしょう」

「可能性1:宰相の嫌がらせ。可能性2:どこかで戦闘勃発。可能性3:戦闘中の混乱に乗じて誘拐などを行う。といったところですか」

「3が1番やっかいですかね?メビウスさん」

「4がある、純子さんを狙ってるんだ! きっと!」

「それは3にふくまれるかと、嘉納さん。目的特定が難しいですからね。逆に目的がわかれば、守りやすくもありますけどね」

「嫌がらせなら、1人ほど心当たりはありますが…」

「新郎か新婦に恨みをもつ人は?」

「調べてみようか」

 そうあっさり言ったエミリオに全員の視線が集まった。


ソウイチローを追って講堂を後にした黒崎は走りに走って漸く見慣れた黄色いジャケットを見付けた。

「はー、やっとおいついた。なんとか無事についたかな?」

周囲を探っているソウイチローに歩み寄りながら辺りを見回す。

政庁の駐車場だ。参列者の車で一杯の駐車場でヤガミが眼光鋭く周囲に視線を走らせている。

「こんなところに…。ソウイチローさん、なにがあったんですか?」

「問題ない。祝ってこい」

「いや、問題ないって言われても…その感じじゃなんでもないってことないやない。

ソウイチローさんの態度みたらわかるもんー…」

「お前には関係ない。たのしんでこい」

 ソウイチローの言葉はいつも通りにべもない。ぐっ、とつまった黒崎は反動を付けて言い返す。

「関係あるよ!今日は友達の大事な日だし…ソウイチローさんも心配だから」

「単に確認に行くだけだ」

「じゃ、一緒についていく…一緒に確認しにいく」

ソウイチローは不満そうだが、最後は同意した。

本心としては黒崎を危険な目に遭わせたくないのだが素直に言い表せない。

その結果として黒崎が自分を心配して着いてきてしまうのが気に入らないのだが、自分が守れる範囲にいたほうが安心は出来る、という葛藤がこの短い遣り取りの間にあるのだが。

この人物、そういうところを伝える能力が忠孝に比べて大幅に少ない。

「あ、有難う」

 嬉しそうに顔を輝かせる黒崎にぶっきらぼうに頷くのが精々である。

「でも、ソウイチローさん、なんで爆竹鳴らしたんでしょうかね?」

 黒崎の問いに顔を上げたソウイチローが何か言いかけた。



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製作:久遠寺 那由他@ナニワアームズ商藩国
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最終更新:2008年01月08日 00:23