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玄霧弦耶@玄霧藩国様からのご依頼品


「ま、負けた……」

03117002。
その日、玄霧藩国藩王・玄霧は彼の長い戦歴の中でおそらく最短の敗北を喫した。
10秒で負けたのである。といっても、トランプのゲームでだが。
「速さか・・・速さがたりんのか・・・」
目の前には勝利に笑う瀧川陽平、そして雷電のコガの姿がある。
「負け組みに味方したのがお前の最後だ」
自信たっぷりに、瀧川が言い放った。
トップを独創しているのは実はコガだったりするのだが、それはこの際おいているようだ。
動物兵器が人間に混じってトランプをし、あまつさえトップ独走というのも色々間違っているのだが……
ともあれ、それこそ第五世界脅威の技術力という事なのだろう。閑話休題。
「そうよ!」
滝川の隣で、結城火焔も追い討ちをかける。
玄霧は今回のゲームに火焔の軍師役として参加したはずなので実際に負けたのは火焔のはずなのだが、それもこの際おいているようだ。
「さあ、好きな人をお言い!」
声高に火焔が言い放つ。
このゲームでは、「勝ったら、好きな奴をばらす」という賭けがされていた。
重ねて言うが負けているのは火焔のはずだが、なぜか矛先が玄霧に向く。
しかし、この話題に関して玄霧は一切の躊躇などなかった。
話題を刷りかえられていることすら、気にならない。
「え、火焔」
即答する。彼女への愛はいまさら隠すようなものではない。

「……」
「……」
瀧川とコガは、無言で肩をすくめた。
処置なし、と言った顔である。
「なーんかなぁ……」
「バウゥバゥ……」
ぶつぶつ呟きながら、次のゲームの準備を始める。
「なんだ、そのスルーっぷりは」
流石にこの対応は、ちょっと堪える。
実際のところまじめに返されても困るが、玄霧的には何らかのリアクションはほしい。
火焔が真っ赤になるとかしてくれれば楽しいのだが、肝心の彼女は顔を反らしていて見えない。
「ええい、次は普通に参加してやる。まーぜーろー」
このままスルーされたままで引き下がっては、何か負けた気がする。
何度もいうが負けているのは火焔であって玄霧ではないのだが、どうもそんな空気ではない。
「次は負けん」
「ばう」
瀧川の言葉に「返り討ちだ」と言わんばかりにコガが答えて、二回戦が始まった。

ゲームは「21」と言うもので、シャッフルした山からそれぞれ手札を二枚+任意で引き、21に近い方が勝つと言う、要するにブラックジャックの簡易版である。
玄霧に配られた二枚の手札は、それぞれジャックと7。
絵札は10として扱うので、合わせて18である。
(むむむ……)
ここで手札を追加するか否か。
21が上限である以上、17は必勝の手ではない。
しかし、5以上のカードがきた場合ドボン、つまり21オーバーで無条件に負けとなる。
はっきり言って、微妙な手であった。冒険するか、それともこれでいくか。
周りの顔色をちらりと伺うと、みな微妙な顔をしている。
唯一動物であるコガだけ少しわかりづらいが、これも微妙な顔をしている……ような気もする。
「一枚引くわ」
「俺もだ」
火焔と瀧川が、それぞれ手札を追加する。
勝負に出てきた。
「(……どうする?)」
三枚にもなれば、15を超えている算段は当然あがる。
ブラックジャックと異なり見せ札がないので相手の手を推測することは難しいが……
コガの方は動きがない。これは今の札で十分と言う意味か……
「俺は引かない」
「ばう」
意を決して玄霧が宣言し、それにコガが同調する。
5を超えたら負ける状況で引くのは、少々不安が大きい。
長年の参謀としての経験で磨き上げてきた戦いの勘が、今は冒険すべきでないと告げていた。
「せーの」
瀧川の合図で、全員がいっせいに手札をさらす。
「ドボンだ」
「同じく」
「ばう!」
「17」
火焔と瀧川はいずれも22を超えている。
この時点で二人には勝った。
そして、コガのカードは……キング、そして8!
「……くっ!」
「ばうばうー!」
玄霧が中庭の芝生に拳を叩き付け、コガが勝ちどきを上げる。
これまでの余勢があることを考えれば当然でもあるのだが、やはり悔しい。
向かいも見ると、火焔はなぜか顔を赤くしている。
「あちゃー……」
一方、滝川は割と平静だった。しかし……
「えっと、じゃあ萌りん?」
火焔のこの言葉で、滝川の顔色が一変する。
「ぎゃぉぅううう!!!」
よくわからない奇声を上げながら、今度は瀧川が顔を赤くした。
そのまま、火焔にドロップキックをかます。
「きゃっ」
悲鳴を上げて、火焔が倒れる。
「俺のじゃねーか!」
玄霧は瀧川に親指を立て、合図を送った。
だがそれと火焔を蹴ったのは別。
と言うわけで、瀧川に一撃。
「怪我人に何をするかー!」
叫んだところで、尻に痛みが走った。
反射的に振り返ると、なぜか火焔が自分に噛み付いている。
「ぬぉあー!」
いやこういうのは、火焔と言えど流石に。と言うかなぜ俺に噛み付く?なぜに石津萌?
「うー、うー」
何か火焔がむぐむぐ言っていて、更に瀧川も暴れ始める。
中庭で落ち着いているのは、コガだけだ。
「お前ら、ここをどこだと思ってやがる!!!」
聞きつけた医師が中庭に怒声を響かせて乱入するまで、その騒ぎはしばらく続いたのであった……


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最終更新:2008年01月17日 21:04