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みぽりん@神聖巫連盟様からのご依頼品



史上空前の買い出し作戦


2008/04/07版


「ネギは刺すものだよ。空さんとかに」さちひこ アウトウェイ藩王
「ネギと納豆は合うのですよ。だからサンドイッチにも合うはずです」 藻女 神聖巫連盟藩王
「ネギを入れたサンドイッチ…」「サンドイッチにこだわるな」 青の厚志 芝村舞
 自然食スーパー『24』にて 藩王及びに著名人のサンドイッチの具についての談話より


/*/
 それは。
 何処にでもあるようなとあるスーパー、夕暮れ時の情景。
『ただいまより~牛乳のタイムセールスに突入いたしまぁす。
 お一人様2パックに限り、なんと表示価格より更に30%引き~、30%引き~・・・』
「牛乳はもらったー!!」
 店内にアナウンスが流れるなり雄叫びを上げて売り場に突撃していく雹。
「雹さんが戦場に突撃した!」
 七比良は勇敢にも買い物中の奥様方という難攻不落の防壁に立ち向かう戦友の姿を感嘆と共に見送った。
 轟くときの声、熱気、ぎゅぎゅうに押し合いへし合いする奥様方。
 それは彼の目にはかつて経験したいかなる戦場にも引けを取らない壮絶な光景に映った。
 蛮勇振った突撃より暫し、壮絶な争奪戦を繰り広げる奥様方の密集陣形からぺっ、と吐き出されるようにして雹が戦域の外に帰還した。
「摂政さま、こ、これを…」
 良いだけもみくちゃにされて無惨にもよれよれになって倒れ伏した雹は震える手で激戦の末に勝ち取った牛乳の紙パックを七比良に託すと、そのまま力尽きた。
 ぱたり、とその手が床に落ちる。
「雹さん…君の犠牲は無駄にしない…」
 くっ、と涙を堪えた七比良は丁度そばを通りかかったみぽりんが押すカートにぽい、と牛乳パックを放り込んだ。
 みぽりんが酷く真剣な表情で押しているカートには、既に他の者が入れた商品が文字通り山と積まれている。
 彼女はこれが『カートを他の人や物にぶつけずにレジまで運んでいくゲーム』と信じているが、どうやらそれに『積み込まれた商品を崩さずに』という難易度の高いルールが加わったらしい。
 カートの中身はといえば、食パン、バター、チーズ、マヨネーズ、野菜色々(ゴーヤ含む)、モチ、海苔、お茶の葉、缶詰(サバの味噌煮)…等々。
 その総量、概算で100㎏を超す。
 それは今日この自然食スーパー24に来店した彼等が無節操に商品を手に取った結果だが、内容を見るだに最早スーパーの縮図の感すらある。
 果たして彼等はなにゆえこのように大量の買い物をし、タイムサービスに雹が突撃し討ち死にすることになったのか。
 その原因を探るべく少し時間を遡ってみよう。

 小笠原分校の放課後。
 昼間運動会に参加した各藩からの来訪者達は運動後の心地よい疲労感と共に楽しかった運動会の余韻に浸って談笑していた。
 そんなとき、運動会に招かれていた青の厚志が突如として教壇に立った。
 何事かと見守る10余名を前に厚志はにっこりと笑うと高らかにこう宣言した。
「突然ですがスーパーで買い物します。
サンドイッチの具を買わないといけません」
「…どれぐらいの量を?」
 にこにこしている青に内心戦慄しつつサングラスを指で押し上げぽつりと問うさちひこ。
 サンドイッチの材料をクラスメートと買いに行く。
 文章にするとなんの変哲もない、ごくありふれた日常のようだが、発言者があの青の厚志、そしてここに集う面々を見れば彼の内心、その発言に込められた意味を推して知って貰えると思う。
 つまり、ただでは済むまい、と。
 その後なんだか色々誤ったサンドイッチに関する知識の流布やら照れた舞が真っ赤になって机に轟沈したり窓から今日子が侵入してきたりヴァンシスカがいないと思ったら優雅に校門で日傘を差して立っていたりしたのだが。
 まぁ割愛させていただく。

 かくしてさちひこの予感は現実の物となり、この物量である。
 さながら大型飲食店の仕込みか炊き出しか、といった量とラインナップであった。
「んー。今日子ちゃんが大人しい・・・。何か計画中か?」
「そういやそうだな…」
 カートに山積みされた商品を眺めていた空とさちひこはほぼ同時にそのことに思い至った。
 今日子のなんというか天真爛漫なフリーダムっぷりは昼間とくと堪能している。
 そんな彼女をこの奥様方の聖域たる戦場の野に解き放ったらどうなるか。
 どちらからともなく目配せしあうと出入り口にほど近いレジカウンターから再び売り場へと今日子の姿を探しに戻る。
「姫様、今日子ちゃんを見ていて下さい」
「はーい」
 解き同じくして同じことは七比良も考えていたらしく、前に立って店内を回る藻女にそれとなく注意を促す。
 特に疑問も抱かず素直に返事を返す藻女。
 彼女にとっては天領より護衛として派遣されてきた今日子は如何に大きく強く育ったとはいえ、彼女こそが常に護るべき対象なのだった。
 母のように姉のように。
 だから七比良に促されるまでもなく傍らで試食品に片端から手を伸ばしている今日子を微笑ましく眺めていた。
 そこへアウトウェイの二人が今日子と藻女の姿を認めて合流する。
「藩王のお傍で試食してましたった」
 空とさちひこにはい、と元気に手を上げて申告する今日子。
「試食は別に問題ないよ?」
 今の所、特に騒動は起こしていないらしい。
「……(試食…毒見?)
もふもふー」
 わざわざ様子を見に引き返してきた二人に対して藻女は不思議そうに首を傾げたが、さちひこにはぴんときたらしい。
 自らも傍らのウインナーを試食しながらじーっと今日子を観察する。
「姫様もどうぞ」
「食べる~」
 七比良がそう言いながらウインナーを差し出した瞬間、どがっしゃーん、と派手な音が店内に鳴り響いた。
 上に乗っていた諸々ごと倒れる試食台、床に飛び散る爪楊枝、あちらこちらに転がって行くウインナー。
 差し出されウインナーを受け取ろうとしていた藻女はほえ、と手を伸ばしかけた姿勢のまま固まり、七比良の手からはぽとり、と楊子の先のウインナーが落ちた。
「ぬぉ!?」
 ホットプレートであつあつに熱されていたウインナーの直撃を受け空が顔を押さえて仰け反る。
「おっとー。ごめんねえ。手がなんとなくぅー」
 その惨劇の中心には試食台をひっくり返したフォロースルーの今日子がいた。
 いわゆるイッテツクラッシュの構え。
「なんて事を・・・」
「先に片づけしないと。
 美味しくなかったですか」
「ごめんねえ。
 藩王様もめんごめんご」
 絶句した七比良、ちょっと眉根を寄せた藻女に今日子はてへへ、と笑いながら手を会わせてぺこぺこと頭を下げた。
 音を聞きつけて他の者も集まってくる。
「お片づけをしましょう。
 今日子さん、どこかいたいところはないですか?ぶつけたりしてないですか?」
 海堂は惨劇を前にしてまず今日子を案じた。
 試食台は重いし、熱されたホットプレートや先の尖った楊枝が載っていた。
 今日子は何事もないようだが、唯一実際被害を受けた空は誰も心配しないのだろうか。
「…藻女たん 忘れがちだが一応俺ら藩王だから試食とかはしないほうがいいぜ」
 さちひこは珍しく抑えた声でそういった。
 サングラスを少しずらして見せたその目は真剣だ。
「普段はしないですよ?摂政が勧めてくれたからだよ」。
 つまみ食いはするけどね」
「毒見はしましたよ」
 さちひこの指摘にうーん?と口元に指を当てる藻女と心外な、という表情の七比良。
 まあ七比良は多分普通に試食していただけだろう。
 藩王と摂政という重責を担い辣腕を振るう彼等だが、なんと言っても若い。
 公的な場ではともかく、このような場所ではともすれば普段の意識が出てしまうのも無理からぬ所である。
 そしてその為に今日子が派遣されているのであり、彼女は見事に役割を果たして見せた。
 …多少手段に難ありとはいえ。
「おかたづけー。ごしごし」
「代わりましょうみぽりんさん。ちょっと休んでいてください」
 藩王達の遣り取りに間に雑巾を手に床をごしごしするみぽりんだが逆に汚れが広がってしまっている。
 雹は微かに苦笑を浮かべるとみぽりんから雑巾を受け取って床掃除を代わり。
「みぽりんさん、ゴミ袋もらいに行きましょうかー」
「はいですー」
 りっかがみぽりんを伴ってゴミ袋を貰いに行く。
 彼女を現場から遠ざける見事な連係プレーである。
 誰に指示されるでもなく協力して片付けを始める面々に懐かしい物を感じつつ、さちひこは箒を手にした藻女の傍らでちりとりを構えた今日子に小さく礼をした。
 その小さな身体に宿る藻女を護ろうとする意気に、敬意と感謝を込めて。
 今日子はさちひこの視線を感じるとにんまりと笑って無い胸を張った。
「私が護衛だから、心配むよー」
「うぃ あんまり無理しないように」
 こちらもにやりと笑って労うと今日子は今度はにこっと笑った。
 年齢相応の可愛らしい笑顔だった。
 さちひこの言わんとするところは伝わったようだった。
「楽しんでいるならそれでいいですよ。でも無理はしないでね」
「誓って」
 自然な笑顔に微笑を誘われた藻女の言葉に今日子は表情を引き締めて腰を折った。
 腰に帯びた剣が小さく音を立てる。
 もし床が汚れていなくてちりとりを手にしていなければ跪いて剣を捧げているところだが。
 そんな今日子を感慨深げに見守る海堂。
 海堂に限らず今日子の誕生の経緯を知るこの場の者達はきっと一様に同じ感慨を持っていたことだろう。
 あの小さかった今日子が、いや今でも十分小さいけれども、天領の騎士となって藻女を護らんとしている。
 その破天荒で突飛な言動はともかく、彼女には周囲の人間を和ませる力があるようだった。
 なんだか交わされる笑顔が気恥ずかしくてなって、逃げるように売り場をぶらぶらするさちひこを空が茶化す。
「おー。藩王が恥ずかしがってる。珍しい事もあるもんだ」
「うりうりー、なにいいやがるーかーこらー」
 ここぞとばかりにヘッドロックで反撃。
 内心照れ隠しの口実が出来てほっとしているかも知れない。
「珍しいの?よく恥ずかしがってた気がするんだけどな」
「珍しいですよ。こうまで態度に出るのはーって何するかこのやろぅ」
 ぐりぐりされつつ藻女に答えぐおーっとさちひこを持ち上げてバックドロップの態勢に入る空。
「やー 照れてるさちひこさんがかわいいですー」
 にこにことじゃれ合う二人を見ている雹。
 もしかしたらこういった光景はさちひこが神聖巫連盟に在籍していた当時は日常的な光景だったのかも知れない。
「そっかぁでも感情が出せるのはいいことです。よかったですね」
 一時の惨状もきれいに片付けられ、なんだかすっかり和やかな雰囲気に戻った一同の方を気にしつつ七比良は先に会計を済ませることにした。
 藩国発行のゴールドカードを差し出すとキャッシャーのパートのおばちゃんは恐縮しつつそれを押し頂くようにして精算を始める。
 何しろ量が量なので暫くかかりそうだった。
 長大なレシートを吐き出すレジスターを眺めつつ内心で思うのは今日子のこと。
 彼女と1日行動を共にすることで護ること、護られることとは何かを再び考えさせられた。
 やがて精算も終わり、この莫大な量の荷物をどうやって持ち帰ろうか、という問題にはたと気付く一同。
「誰が持つって、そりゃぁ・・・・荷物もちが・・・」
「荷物もちって空さん自分の首を絞めちゃダメだよ」
「御疲れ様でしたね」
 げんなりした表情の空ににっこりとしつつ何気に酷い藩王と摂政コンビ。
「はーい、荷物もちしますー」
「はいー荷物持ちますよ」
 見かねて海堂と雹も志願したが。
「僕が半分くらい持つよ」
 青のこの言葉におお、と拍手する一同。
 教壇に立ったときから多分こうなることを予見していたのだろう。
 さすがは青、といったところだろうか。
 こうして無事に分校へと持ち帰られた食材を使ってサンドイッチを、そう、くれぐれも忘れてはいけないがこれはサンドイッチの材料の買い出しである。サンドイッチを作ることになるわけだが、どんな物が出来上がるかについてはここでは語らないことにする。
 きっとわいわい賑やかに、楽しくて美味しい物が出来るのだろう。
 もしかしたらそれはサンドイッチではなくなってはいるかも知れないけれども。
 宵闇が支配し始めた小笠原の空に、騒がしくも和やかな一団を見守る星が瞬き始めていた。

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拙文:ナニワアームズ商藩国文族 久遠寺 那由他


以下確認点です。
本文部分以外は自サイト掲載時用の蛇足です。
不要でしたら削除いたしますのでお申し付け下さい。
戦力判定及び掲載見本http://www16.ocn.ne.jp/~nayuta/idress.html
秘宝館提出後は上記自サイトに掲載を想定しています。
公開を希望されないならば見合わせますのでご指定下さい。

他に些細な事でも気になりましたら御指摘いただけると嬉しいです。
わたしの作業ポリシーというか、形式としてご依頼の品に限り依頼主の方の物、という考え方なのでこのように確認を頂いています。
細かい部分が気になったりするので少々鬱陶しいかも知れませんがご容赦下さい。
もちろん納品後はどのように扱われても構いません。
お手数ですがよろしくお願いいたします_(_^_)_

今回は書き出すまで色々悩みましたが雹さんがタイムセールに突撃する図がイメージできてからは早かったです。
素晴らしい突撃と戦績に(`・ω・)ゞ

作品への一言コメント

感想などをお寄せ下さい。(名前の入力は無しでも可能です)

  • wwww>雹さんがタイムセールに突撃する図がイメージできてからは早かったです。 個人的には今日子ちゃんとさちひこさんがかわいいなあとにっこりしておりますw  ありがとうございましたw -- みぽりん@神聖巫連盟 (2008-02-15 02:39:58)
  • 掲載に関しては私としては構いません どこに連絡すればいいのかわからないのでひとまずここに伝言を残します -- 藻女@神聖巫連盟 (2008-02-15 20:33:48)
  • 中々ご連絡が取れず許可のお礼申し上げるのが遅くなり、申し訳ありませんでした。この度誤字などを修正したものをギャラリーに収めていただきました。今更ながらですがお納めくださいませ。 -- 久遠寺 那由他 (2008-04-08 14:10:34)
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久遠寺 那由他@ナニワアームズ商藩国
http://cgi.members.interq.or.jp/emerald/ugen/ssc-board38/c-board.cgi?cmd=one;no=718;id=UP_ita

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