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世の中の人間には男と女の2種類しかいない。
その内大体4割の男は時と場合によるが己の欲求に忠実である。
-E・ハガネスキー

小笠原の海岸に3人の人影がやってきた。
前を行く二人の女性、扇りんくと浅田は海を見てきゃーとかわーとか大変女の子らしい反応を示していた。
その後ろを一人の男ががっしゃがっしゃと両腕にパラソルやクーラーボックスを抱えて砂浜を歩いてくる。
この男、名前を青森恭兵という。普段は凄腕の傭兵をやっているが今日は荷物持ち兼保護者であった。
「ここが、お前達の秘密基地ってやつか?」
そう言った青森はどっこいしょ、とクーラーボックスを降ろしてパラソルを砂浜に突き立てている。
青森の言葉にでも秘密基地ってなんだろう…、と思いつつとりあえず扇は「綺麗な海岸ですねぇ」と答えた。
「青森さん、折角の海なのに、そんないきなり。扇さんおろおろしちゃってますよ!」
見かねた浅田の言葉に青森は頭をかいた。
「ま、男心なんかわらんかもな。まあいい、今日は付き添いだ。好きなだけ泳いでよし。なんなら裸でも構わないが」
男心…海のロマンって奴ですね!と必死にフォローしようとしていた扇は裸と聞いてそれは駄目ですー!と言って赤面した。
そんな扇を見てにやにや笑う青森にため息をつくと、浅田は遠くの岩陰に隠れているもう一人の同行者の姿を見ていた。
「あ、遥ちゃんいた」
浅田が近寄っていくと吉田遥は逃げ出した。
「ま、まって!」
その後を必死に浅田が追いかける。二人はぐるぐると大きな岩の周りを回っていた。

青森は持ってきた折りたたみ式のチェアをパラソルの下に広げて、気持ちよさそうに座る。
その横にとてとてと扇が近寄ってくる。何かほっとした表情だ。
「でも、一緒に泳いでくださるのは嬉しいです。泳ぎは得意なので、たくさん泳ぎましょう!」
とても嬉しそうに扇は青森の腕を引っ張って連れて行こうとした。結果、青森はチェアからずでん、と落ちた。
「きゃー! ご、ごめんなさい! 大丈夫ですか」
扇が慌てて青森に手を貸して起こす。今にも泣き出しそうな顔だ。
尻に付いた砂をぱんぱん、と払うと青森はまだ追いかけっこをしている二人を見る
「子供はこれだから……」
ぶつぶつ言いながらちゃ、と拳銃を構える。ばぁん、と大きな破裂音が一発辺りに響いた。
ばた、と吉田が前のめりに倒れる。青森の横では子供といわれて愕然とした扇が銃声をまともに聞いてきゃっ、と驚いて尻餅をついていた。
「ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!は、遥ちゃん!遥ちゃん!」
声にならない叫びを発した後、浅田は大急ぎで遥に走り寄る。
まだ腰を抜かしたままの扇が涙目で青森に訴える。
「あ、青森さん、ひどいです…」
その表情を見て青森は皮肉そうに笑った。空いているほうの手を扇に差し出す。
「あ、ありがとうございます……」
扇は立ち上がると、体に付いた砂を払った。

吉田は銃弾を喰らって倒れたわけではなかった。
青森が放った銃弾は砂浜に転がっていた小さな石を吉田の足元へと弾き飛ばし、それを踏んで倒れたのだった。
だが、相当驚いたのかうつ伏せのまま手足を縮こませてガクガク震えている。いわゆる亀の状態だ。
怪我が無くて良かったと半無きだった浅田は
「遥ちゃん、もう大丈夫だから。ほら、お話、しよう?」
浅田は優しく背中を撫でて警戒を解こうとする。
「あの人……こわい」
「大丈夫。何かあったら、絶対に守るから」
青森と吉田の間に立ちはだかるようにしながら、とりあえずあの男は国に帰ったらしばこう、と浅田は心に誓った。

「いきなり、驚かせないでください……心臓が止まるかと思いました」
「はいはい。ま、子供でも……」
ぽりぽりと頭をかく青森に、扇が頬を膨らませて反論する。
「さっきから子ども子どもって…これでも20は超えてますよ!」
「へえ。その尻で」
「何処見てるんですかー! もう…!」
顔を真っ赤にしてぽかぽかと手をぶつけて来る扇をけらけら笑いながら、青森はまた懐から銃を取り出す。
「青森さん、ダメですってば! あっちの子が怖がってますよ!!」
「泳ぐんだろ?」
青森はさっきまでとは違うにこりとした笑いを浮かべる。
「銃を持って泳ぐのはなんだからな」
「! はい、泳ぎましょう! そうですね、銃がダメになっちゃいますもんね」
その笑顔と言葉を受けて扇がみるみる笑顔になる。
そしてその笑顔はばぁん、と言う2発目の銃声に凍りついた。

吉田はまだ涙目であった。
せっかく安心していたところに青森の銃弾が弾いたと思わしき石が降ってきてこつん、と頭に当たったのである。
「……あの人、国に帰ったら、女の恐ろしさを見せてやる」
愛用の拳銃を持って来るべきだった。いや対戦車砲でも足りないと浅田はぶつぶつ言う。
その後ろで、吉田が凄い勢いで立ち上がった。そしてそのままわぁぁぁと泣きながら青森を追いかけていく。
どうやら怒りと悲しみと不満がいっぺんに爆発したようだった。
「は、遥ちゃん?」
その後を浅田は慌てて追いかけていった。

「ほら、泣いちゃってるじゃないですか!女の子を泣かせてはダメなんですよ?」
扇は青森の横で泳ぎながらジト目で見る。そんな視線などどこ吹く風で青森もすいすいと泳ぐ。
「…うちの大将に良く似てる。他人の親切に気付かないところなんて特にな」
「え? 誰がですか? (大将に似てるって…?)」
さっきまで青森の背中をぽかぽか叩いてた吉田は波打ち際で固まって追いかけてこない。どうやら海に入るのを躊躇しているようだ。
「さてね。泳ぐとしようか」
「なんか誤魔化されたような…でも、泳ぐのは好きなんです♪ 青森さんは、泳ぎは得意なんですか?」
ような、ではなくあからさまに誤魔化されている。
「まあまあだな、泥沼や川の中を歩くほうが得意だが」
「……それはいわゆるサバイバルスキルでは…いや、すごいですけど…」

その頃、吉田は未だに波打ち際で動けないでいた。海風に帽子が飛ばされて、ころころ転がっていく。
浅田は転がってきた帽子を自前の鞄にしまうと吉田に話しかける。
「遥ちゃん、いっしょに、泳ご?」
吉田は答えない。ただ、意を決したように眼鏡を外すと海に進んでいく。
相当の覚悟を固めたようだ。その背中は決意に満ち溢れている。
「わ、わ!」
驚いているのか嬉しいのか判らない声を発しつつ浅田もその後を追った。

それを眺めていた青森は「溺れるほうに10にゃんにゃん」と言った。
吉田はずんずんと歩いてくる。腰の辺りまで海に浸かっただろうか。
「お前さんはどうする?」
「北海道の海育ちで泳ぎは得意です! 青森さんがそういうことを言うなら、私は浅田さんが助けるに100にゃんにゃんですよ」
吉田はさらにずんずんと歩いてくる。そしてそのまま高波に呑まれた。
吉田の片手が助けを求めるように海面から突き出ている。慌てて後を追ってきた浅田が水中に潜り、吉田を引っ張り上げた。
「ほら、やっぱり。さすが浅田さんですよね」
「今度おごる。ディナーでも」
「わぁ、ありがとうございます。嬉しいです」
と、そこまで言って扇はこの人物の主食が何であるかを思い出した。カップ麺である。
「って、カップ麺以外も食べましょうよ。今度、美味しい手延べうどんもって行きますから…」
「お、カップ麺が育ったな」
「育った…なんか違うと思いますけど、でもその時はかけうどんでも作ります。って、これじゃ私がディナーを奢ってるじゃないですか!」
「それもそうだな。じゃあ、ケース1つやるよ。弾でもいいが」
青森は豪快に笑った。
「……いえ、どちらもけっこうですから、あの、あとで一回だけぎゅーしてください…」
「牛丼か?」
「……違います。青森さん、わざとでしょう…」
扇はがくっ、と頭を垂れた。

一方、浅田に助けられた吉田はぼろぼろと涙を流していた。先ほどの比ではない、マジ泣きである。
「ひどい。ひどいよ。私が何か悪いことしたの?あの人はなんで私が気に食わないの?」
「遥ちゃん……あのね」
「なによっ」
浅田、絶句。精神的には本当に立ち直れないかもしれないほどのダメージであった。
だが帰って来れないギリギリの位置から最後の力を振り絞って、吉田に言葉をかける。
「遥ちゃんは、嫌われてるんじゃないよ。うぅん。嫌ってる人なんて、居ない。居させないから」
一息呼吸を入れてさらに言葉を続ける。
「遥ちゃんの一面だけ見て嫌いだって言う人が居たら、私がその人のところに行くよ」
「俺は泳げないやつは大嫌いだけどなあ」
近寄ってきた青森の茶々にギリ、と浅田が奥歯を噛み締めた。そして青森をキッと睨む。
「そんなの、遥ちゃんを嫌ってるんじゃないもん」
そんな浅田を見て青森はにこにこ笑っている。心底幸せそうだ。
「好かれる理由が見当たらなくてね。お前さんが俺の敵でないと、なぜ言える?」
「だから、私はその人のところに行くよ。貴方の勝手に決めた遥ちゃんを嫌うな、って。だから、今は泣かないで。私がきっと何とかする」
浅田はそう言いつつ青森を睨み、青森は命のやり取りが大好きな目で吉田を見る。
そして吉田は浅田と青森を交互におろおろと見ていた。
「うー…それは難しい問題ですけど。青森さんが浅田さんと吉田さんの為にしていることは、優しいことだと思うので」
そう言いながらぱしゃぱしゃと扇が青森の横に泳いでくる。
「そういう青森さんが、私は好きでここに連れてきていただきました。そのために、努力もしました。敵ではないことは誓っていえます」
「子供に優しいのは当然だ、そうでない奴は死んでもいい。ま、スパイならもう少しいい尻をしているか」
「お尻は関係ありませんーー!!だから、なんでそこに行くんですか!」
赤面しつつ扇がさらに反論しようとすると、悲鳴がそれを遮った。吉田だ。
「え?」
浅田が何があったのか聞こうとすると、何かが尻を触った。
「!何!?」
扇も何かに触られる。たまらず一番大きな声を上げた。
「うきゃー! せ、セクハラー!? さっきは散々子どもだっていったくせにー」
そのまま赤い髪を振り乱してギリギリギリと青森の頬をつねり上げる。
ふと浅田は思い当たって海の中を見た。何か大きなものが吉田をつついている。
「わ。遥ちゃん。ほら、いるかさんだよ。かわいいねぇ」」
浅田は吉田に振り向くように促す。
「イルカ……?」
…イルカだった。浅田が触るときゅー、と一声鳴く。
「冤罪は晴れたか?」
ギリギリと頬をつねられつつ、青森はそう言った。
「え? 青森さんじゃなかった…? ご、ごめんなさい…い、痛かったですか…?」
「まあ」
「ご、ごめんなさいごめんなさいー」
笑っている青森に扇は平謝りする。
きゅー、とまた鳴きながらイルカは一行の周りをぐるぐる回った。青森の尻にもぶつかっている。
「い、イルカさん。可愛いけど君たちのおかげで青森さんにひどいことしちゃったよ…」
そう言いながら扇は背中に乗ってもいいですか?とイルカに訪ねている。案外タフかもしれない。
「ほら、遥ちゃん、撫でさせてもらおう。かわいいよ」
浅田は吉田を連れてイルカに近づく。吉田はイルカへの興味と青森への怒りを天秤にかけているようだ。
そんな心を見透かすように浅田は吉田にささやく。
「もしも怒っても、遥ちゃんも青森さんも、きっと痛いよ。だからほら。一緒に撫でよう?」
吉田は恐る恐るイルカを撫でてみる。イルカは警戒せずに自分から体を摺り寄せてきた。
初めて笑顔が浮かんだ。

扇はその間にイルカの背に乗っていた。大変ご機嫌のようだ。
「うわー うわー 青森さん、一緒に乗りませんか?」
いやいや、見ているほうが、と青森が躊躇すると
「そんなこと言わないで、ほらー」
と、扇が手を引っ張る。
「(青森さん、押しに弱いんだ…) ね、早くて楽しいでしょう?」
「まあな」
そう答える青森は何か他の事を気にしているようだ。
扇は何だか心配になってきた。
「どうかしたんですか、青森さん?」
その問に深刻な顔をする青森。そしておもむろに口を開いた。

「男の身体には色々あるんだ」

「……! あ、えと……す、すみません……」
扇、本日何度目かの赤面。慌てて手を離してイルカから降りると恥ずかしがった。
どきどきしながらちら、と青森を見る。
青森は舌を見せて笑っていた。
「……青森さんのばかー!」
扇、本日何度目かの激怒である。
「青森さんに弄ばれた…(しくしく)」
「セクハラされた」
「してません!!むしろ、セクハラ発言はさっきから青森さんがしまくりです!」
「見解の相違だな」

さて、二人の言い争い(というか扇がからかわれている図)の間に後ろでは大変な事になっていた。
イルカに抱きついていた吉田がそのまま沖に連れて行かれてまたしても溺れていたのだった。
おまけにそれを助けに行こうとした浅田も何故か溺れている。
「は、遥ちゃんだけは……青森さん!」
がばがば溺れながら浅田が必死に叫ぶ。
「くー…って、大変だ、青森さん二人が遭難しかかってます!助けにいきましょう!」
「はいはい」
青森は先ほどまでとは違う、ダイナミックなクロールで溺れている二人の元へと急行する。
程なく二人は青森に助けられた。
「あ、ありがとうございますー」
安心したのかぐったりとした浅田が礼を言う。
遅れて扇がパシャパシャと泳いできた。
「二人とも、大丈夫ですか?って、青森さん! レディの扱いはもっと丁寧にしなきゃだめですよ!」
青森は吉田と浅田をそれぞれ片手で持ち上げていた。ワンピースの首筋の部分を猫の子供持つみたいにして。
「抱き疲れて俺も溺れたほうがいいか」
「……そ、それは困るのでやめてください」
扇、どうやら内心ちょっと羨ましいようだがそれを言い出せない
「おっ、子供だがいい眺めじゃないか」
青森のセクハラを浅田と扇が責めるよりも早く、吉田が青森を殴った。
思いつく限りの罵詈雑言を並べ立てているが吊り下げられている上に海上だから腰の入りようが無くぽかぽかと殴っている。
「殴り合いもできないようじゃな、人間関係なんか、出来はしない。うちの大将も最初はそうだった」
「その関係ってわりと特殊な気もしますけど…まあ、確かに一理あるかもしれませんね」
扇が一人うんうんと頷くと、青森は吉田と浅田を海に降ろす。
そして狙うならここを狙え、と自分の眉間を指差した。
吉田は浅田にしがみつきながら青森の眉間を狙って拳を撃つ。が、やはり足元がおぼつかないのか絣もしない。
「いいぞ。戦場はどこででもある。今やるなとか、別のところでだだとか。戦いはそれができないから戦いだ」
拳をひょいひょい避けながら青森はまるで教師のように吉田に語りかける。
…その言葉を吉田が聞いていたかは疑問だが。

このままではらちがあかない、と判断した浅田と扇はそれぞれ青森と吉田を後ろから支えて拳が簡単に当てられるように手伝う事にした。
浅田は背後から青森の頭部を固定し、扇は泳げない吉田を後ろから支えた。
「やっちゃえ遥ちゃん。これも戦いです」
「吉田さん、いっちゃえー!」
覚悟を決めた吉田の渾身の一撃が青森の顔面に放たれた。
青森、ニヤニヤ笑いながら何食わぬ顔で水中へとしゃがみこむ。
「わ!」
「あ。」
渾身の一撃、見事顔面直撃(ただし浅田の、だが)あう、と海に沈めた。
「あ、浅田さん~!! ちょ、青森さん、なんてことをー!」
吉田を支えつつ急いで水中に潜る扇。
「あーおーもーりーさーんー! ホントに、そこで潜るのは反則ですよ! って、どこいったんだろ」
再び水面に戻るときょろきょろと周りを探す。と、青森が海岸に上がって何やらごそごそしている姿が目に入った。
鼻を押さえている浅田に吉田をお願いすると、扇は急いで青森の元へと走る。
何と青森は水着を脱いでいる最中だった。
「って、ぬぐなー!」
後ろから思い切り背中をひっぱたく扇。その声を聞いて青森がくるりと振り向いた…

その後、青森の笑い声や女性陣の叫び声や銃声が木霊したかどうかは…ご想像にお任せする。



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御発注元:扇りんく@世界忍者国様
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製作:高原鋼一郎@キノウツン藩国
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最終更新:2007年09月25日 18:17