影法師@ながみ藩国さんからのご依頼
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芝村:登校した瞬間に休校になったよ。
芝村:みんな。えーという感じだ。
芝村:あなたは朝から下校することになる。
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グルグルしながら登校したら休校だった。
「まさかの展開……」
一瞬呆然とした。見れば周りの学生達も一様に驚いている、どうやら今日になって急遽休校が決まったらしい。
「いや、まあ、いいか。こういう場合ってすでに織り込まれてんのかな」
切り替えは早かった。影法師はもっと早くに連絡しておいて欲しかったなぁと考えながら、校門までさっさと戻る。
そこにはアララがいた、しかもデカイ鎌を持って、妙に嬉しそうな笑顔で・・・・
とても素敵な笑顔なのだが、嫌な予感しかしないのは何故だろうか?
「………おはようございます」
色々と考えた結果鎌に関しては見なかった事にした。触らぬ神に祟り無しとは良く言ったものである。
だが、そんな影法師をアララは完全に無視し、スキップして校外へと歩いて行ってしまった。
一瞬呆然としたが、気合で持ち直す影法師。
「ってちょっと待ってくださいよー」
小走りで追いかける。アララは何かを探しているかのようにきょろきょろ周囲を見回しながら、歩いていた。
影法師はそういえば昨日戦闘があって、どうも敵を探していると言う事に気づいた。
「あー……。なんか病院に出てきたとかなんとかいうやつを探してるんですか?」
「ついてこないほうがいいわよ」
アララの返事はそっけない。と言うか質問には直接答えていない。
「置いてけぼりのほうが嫌です」
「強い敵がいそう。ふふっ」
「どんな死に方するかしら。いい男がいたりして」
アララは影法師の意思表示になんて聞いちゃいなかった。とても嬉しそうに良い笑顔で独り言を呟いている。
傍目にはどう見ても怪しい人であるが、影法師は全く気にしてはいなかった。
「居てもやっぱり殺すんですよね」
「いや、まあ。負けるとは思ってませんけど、死なないでくださいね」
マイペースだなぁ、と苦笑しかけ、でも、やっぱり死なれるのは嫌なので一応釘を刺しておく影法師。
まぁ、効果があるかは甚だ疑問であるのだが。
「何、手下になりたいの?」
何を勘違いしたのかアララが光り輝かんばかりの笑顔で聞いてきた。
嬉しそうな笑顔を見て、そんなに手下が欲しかったのかと思う。
「いや、半分そのつもりで付いてきてたんですけど」
少しおどけて言ってみせる。じゃないと恥ずかしくて言えないのにはちょっと赤面してしまいそうになる。
「偉い。よし」
「手下一号。いくわよ」
「イエスマム」
アララはどこか満足げだ。やっぱり手下が欲しかったらしい。
そして影法師の方は手下一号と聞いて、内心で小躍りした。返事の声も自然と弾んでしまっている。
「で、どこ向かってんですか?」
「分らない。敵のいるところ」
アララはどうやらまだ敵を見つけていないらしい。
つまりは無計画に散策している訳である、この辺りの行き当たりばったり加減はアララも影法師も変わらないのが不思議である。
「ああ、絶賛偵察段階なんですね」
「襲われたのは病院で、そっちは撃退しちゃったらしいですけど」
「病院か。頭悪い敵ね」
アララは腕を組んで冷静にそう言っている。
そうしている姿はちょっとカッコ良いなと影法師は思ったが、
「戦えるような人員が居ないとこ襲ってるあたりが、ですか?」
「金を狙ってるなら銀行、強い敵と戦いたいなら、戦場、女が好きなら女子高を襲えばいい」
「病院なんて。頭が悪いとしか思えない」
この辺の価値観は非常にアララらしい独特なものだった。つまりは分かり易いのである。
「ああ、なるほど。医者と患者ぐらいしか居ませんしね、病院」
「虐殺好きだったりしたんですかね」
何気ない一言だったが、アララの癇に障ったらしい。
面白くもなさそうに影法師を見ている。その目は冷たく軽蔑しているかのよう。
「あー…すいません。口閉じます」
しょんぼりする影法師。
「そういえば見えないだのなんだのって話も耳にしましたけど」
空気に耐えられずに話題を変える。その声音はどこか弱々しげだ。
「目立たない美少年?」
そこですぐに美少年に行きつく辺りがアララ・クランの思考回路らしい。
影法師は別に美少年かどうかなんて言ってないんだけどなぁと呟いた。
「あー。でも残念、私、卑怯で病院襲う小悪党なんてきらい」
「殺して遊ぶか」
「まあ、そこは同意です。遊ぶのはお任せしますけど」
ぺろりと舌なめずりして全く冗談の無い過激発言をするアララ。
影法師、手下一号は主人の趣味には口出しをしてもどうしようもないなとは思いながら乗り気ではなさそうである。
「なんつーか・・・少し見ない間にこうも変わるのか、小笠原」
「戦場になってからははやいわよ。」
「私もそうだったから」
その横顔は影法師にはとても遠くに見えた。近くにいるのに心はとても離れているような気がしたからだ。
とても寂しい気持ちになって、それ以上話題を続けられなくなってしまった。
しばらく二人の間には会話は無く、影法師がまた空気に耐えられなくなってきて話を切り出そうとした時。
病院の前まで来てアララは立ち止まった。
「ついたわよ」
「ふむ。戦場ね。なるほどなるほど」
「敵はここから学校に向かっていったのね」
アララは薬莢を拾った。帝国製の30mm砲弾でこれは地竜が使っていた物らしい。
「ここから、ですか」
きょろきょろと辺りを見回す。
「ここから学校…。確か紅葉の藩王を追っかけて移動したらしいですね」
「男?」
「女性だったはずです」
「でも確か金の林檎だかを所持してたんで、女好きだったわけじゃないと思います」
「……たぶん」
聞き知った話をアララにするのだが、たぶんって弱気にならなくても良いのだが、やはりさっきの失言が尾を引いているのだろう。
「そうか。女狙いじゃない。残念ね。今日の格好はかわいいのに」
アララはとんでもなく短いスカートの裾を摘んでパンツが見えそうになる位まで裾を持ち上げた。
その仕草を見て、今更顔を真っ赤にしてしまう影法師。見せブラだけでも結構来ていたと言うのにこれは・・・と言う顔である。
見えそうで見えない絶対領域は維持していたのだが、さすがは影法師 絶対領域だけを見て、鼻血が出そうになって、鼻に詰め物をし始めた。
「いや、まあ、その。多分追っかけてきそうな予感はしますけど…」
恥ずかしくて直視出来ていないのに主人をよいしょ出来るのはさすがの手下っぷりである。
「敵、出ないわね」
アララはつまんなそうに呟く。
「ですねえ……。別なとこに隠れてるか、やっぱり帰っちゃったんじゃないですか?」
「もしくは全滅しちゃったのか」
「どうしよう・・・」
途方に暮れてしまうアララ。こんな顔は初めて見るなと影法師は思った。
「今日も暇だったら、寝るかも」
さっきまでそんなに敵探しには乗り気じゃなかったが、しょんぼりしているアララを見ると応援したくなって来るのが手下の手下たる所以である。
「探して歩きましょうか。歩兵は足が資本っていいますし」
「そうね」
手下に賛同されたのが嬉しかったのかもしれない。アララの機嫌は良くなって来ている。
そんなアララを見ながら影法師は、敵を探すにはどこに行けば良いのやらと考え始めないといけなくなった事に今更グルグルしだすのだが、それはまた別の話にしておくとしよう。
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引渡し日:2008/04/08
最終更新:2008年04月08日 21:16