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霰矢蝶子@レンジャー連邦様からのご依頼品



恋心と空の青


 恋とは瞬発力である。
 理性より感情。
 思考より直感。
 長考より行動。
 蝶子は必死だった。
 離れるなんて嫌、置いていくなんて許さない。
 必死に必死すぎて。
 現在空を延々と落ちている真っ只中だった。


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 そこは延々と青空が続いていた。
 どこを見回しても空の青。青。青。
 蝶子はヤガミに抱きついたまま、この青空を延々と落ち続けていた。
「大丈夫か? 寒くはないと思うが」
 ヤガミが声をかけてきた。
 当然だ。蝶子はパジャマ姿のままヤガミを追いかけて、ここまで来てしまったのだから。
「はい、大丈夫です。寒くはないです。ありがとう。」
「ここまでいると、もう戻れないな。1年はたっている」
「1年……!」
 蝶子は絶句した。
「こ、ここ。なんなんですか? ゲート?」
「そうだな」
 ヤガミは答えた。
「これはグリフだ。心の境界面の風景だな」
「グリフ……?」
 どこかで聞いた事のある言葉だった。どこかまでは覚えていないけれど。
「心の境界面、ですか。誰の?」
「恐らくは、お前の」
 ヤガミは微笑んだ。
「俺なら星空になるはずだ」
「私のー……。そうか。私の心。青空なんですね。」
 蝶子も一緒になって微笑んだ。
 ヤガミの見える景色を想像してみる。
 いつか言っていた「俺は星だ」の発言を思い出し、微笑んだ。
「星空もいいなあ。」
「そうだな。見たいものが見れる。このまま永劫に落ちる」
「ヤガミは、どうやってここに? 私が呼んだから?」
「いや、盛大に落ちていくのが見えたから」
「うわあ見つけてもらってよかった。ありがとうございます。」
「助けたら少し照れたが」
 その一言に、蝶子は顔から日が出そうな程真っ赤になった。
「す、すみませ……!」
 蝶子が謝るのに、ヤガミは明後日の方向を見た。
 ヤガミも何となく頬が赤いように見える。
「……まあ、忘れてやるから安心しろ」
「……覚えててもいいです。恥ずかしいけど覚えてて下さい。それで時々思い出しては照れて下さい。からかってもいいから」
「……だったら謝らなければいいのに」
 ぼそりとつぶやくヤガミ。
 蝶子はキョトンとした。
「あ、謝らなくてもいいですか。ヤガミが嫌だったかな、と思ってたんですけど。」
「俺は……」
ヤガミは少し言いよどんだ。
「そもそもいつ俺がからかった。からかってるのはお前のほうだろう」
 蝶子は「ポンッ」っと爆発した。
「か、からかってなんかないです!からかえるだけの度胸があれば、あれば、もにょもにょ。ヤガミはほら、ヘビドリンクの時とか!この間のデートの時とか!」
 あれやこれを思い浮かべてヤガミの腕の中でバタバタする。
「そんなことやったっけ」
「やりましたー! やりましたー! 覚えてるんですからね!」
 蝶子の発言にヤガミはガーンと言う顔をした。
「というか抱きついたのはからかってなかったのか!」
からかってると思ってたのか!
 蝶子も釣られてガーンと言う顔をした。
 ヤガミの腕の中で「うー」とうなった。
「私はいつも大真面目です。」
「俺も真面目だ。実に」
 そのまま二人は顔を見合わせた。
 そのまま「プッ」と吹き出して、笑った。
 似た者同士なのだろう。


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「パーフェクトワールドに行く」
 ヤガミは言った。
 空の色は、まだ続き、二人の落ちていく速度もまた変わらなかった。
「何をしに?」
 蝶子が返す。
「日向と言う男がいる」
「助けたいんですね。日向さんを。」
「そうだ。それに。見てみたい」
「何を?」
「冒険艦でしか見れない光景を」
 蝶子はそう語るヤガミの目をじっと見た。
「私を連れては、いけないのですか。」
「だから、国が……」
 ヤガミが言いよどむ。
 蝶子は王である。レンジャー連邦の。
 王がいないと、国は滅ぶ。当然の摂理だ。
 それでも蝶子はがんと言う。
「私では。あなたの横で、同じ光景を見れませんか。王様だからふられるんですか。私」
「そうだな。王様というのは自分勝手には出来ない」
「私、あなたを失って、王様を続けていく自信ないんですけど。」
「だから、忘れさせると」
「それは却下。」
 蝶子は首を振った。
 ヤガミは肩をすくめた。
「頑固すぎるぞ」
「あなたを忘れても同じことです。ずっと私の心を支えてきたのはあなたなんだから。はい。頑固なんです。かたくななんです。頭が固いんです。」
 ヤガミが黙ると、蝶子は畳み掛けるように続けた。
「なんて言ったってこれだけは譲れないです。あなただけは、譲らない。」
 蝶子の言葉に、思わずヤガミはナニかをしようとした。
 蝶子はポッと顔を赤くした。
「め、眼鏡ですか?」
 ヤガミは思わず止めた。
「当然だ」
「で、ですよね。えへへ。」
 似た者同士二人、抱き合ったまま黙っていた。


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 空の青は続いた。
 不安を感じないと言えば嘘になる。
 でも今は、自分の感情を、直感を、行動を、信じたい。
 蝶子はヤガミに抱きついたまま流れに身を任せていた。
 目的地は、あと少しである。



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引渡し日:2008/12/02


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最終更新:2008年05月01日 23:44