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蒼のあおひと@海法よけ藩国様からのご依頼品



子供たちは能力者!?




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 蒼家の三つ子ちゃんにはヒミツがある。

 緑の森と森国人が調和をなす海法よけ藩国。豊かな避けの森にほど近い、閑静な住宅地に瀟洒な一軒家が建っている。
 薄緑の外壁が暖かく来客を迎える2階建てのこの家こそがかの蒼家のスイートホームである。
 ちなみにこの真新しい家、女主人である蒼のあおひとが昨年のクリスマスに行われたのろけ大会で賞品として手に入れた。堂々の一位で、である。
 ニューワールド広しといえども忠孝へののろけを語って家を手に入れるという快挙はこの人にしかなしえないであろう。いやまったく、いちゃラブぶりもここまで来れば芸術的ですらあり、あおひとの人となりを十二分に表したエピソードといえよう。
 閑話休題。
 そんなわけで甘ログの女王、秘密組織のクイーンと数々の異名をほしいままにしてきた彼女も今ではすっかり三児の母。愛する夫と三つ子ちゃんに囲まれ幸せも4乗倍であった。
 今日はそんな幸せな家族のある一日を覗いてみよう。
 1階にある明るいリビングでは最近歩き方を覚えた三つ子ちゃんが笑顔で声をかけたり手を叩いたりしているあおひとによちよちと懸命に歩み寄っていた。
「翡翠ー、柘榴ー、ひなぎくー」
 あおひとに似て銀髪尖り耳の三つ子ちゃんにはそれぞれ特徴がある。
 翡翠は緑色の瞳に少したれた耳。柘榴は赤い瞳に少しつり耳。ひなぎくは黄色い瞳にまっすぐ横に伸びた耳。と文字通り名が体を表している。
 大きく腕を広げて待つあおひとまであと少し、というところで柘榴が転んだ。床にぺたんと座り込んで大泣きしてしまう。
「あー。よしよし、大丈夫ですかー?
 翡翠とひなぎくはあんよが上手ですねー」
 柘榴を抱き上げてあやしつつ無事にゴールインした翡翠とひなぎくの頭を撫でるあおひと。
 ひなぎくはちょっと得意げにへへーと笑い翡翠はあおひとの足元にごろごろ、あやして貰って泣きやんだ柘榴はあおひとに蝉みたいにへばりついている。
 中々どうして、個性的なのは名前だけではない三つ子ちゃんであった。
「もーぅ、柘榴はあまえんぼさんですね~」
 何とも可愛らしい三つ子の様子に蕩けんばかりの笑顔で嬉しそうにあおひとが感嘆をもらすと、それまでテーブルについて新聞を読むふりをして微笑ましく様子を見ていた夫、忠孝が優しく声をかけた。
「一人受け持ちましょうか?」
「あ、じゃあ翡翠をお願いします」
 微笑んで答えた妻にいそいそと立ち上がって翡翠を抱き上げる。実を言うと忠孝もこの団欒の輪に入る機会を伺っていた。
 腕の中でだきついてくる翡翠に一際相好を崩す忠孝。何をさせてもそつのない彼らしく、こどもを抱いている姿も様になっていた。
 さすが私の旦那さん~。とか暫し忠孝に見とれてから、あおひとは空いた片腕にひなぎくを呼んだ。
「ひなぎくもおいでー。
 …すっごい幸せです」
 危なげなくよちよち歩きしてあおひとの腕に収まったひなぎくと、へばりついたままの柘榴を膝の上に抱き寄せる。
 笑顔を絶やさずこちらを見上げるひなぎくと甘え足りないのか抱きついたままの柘榴。どっちも可愛くてしようがない。
「えへへー、もうみんな可愛いなぁ」
「そうですね。今のうちに可愛がっておかないと」
 ひなぎくのおでこにこつんと自分のおでこを合わせて微笑むあおひとだが翡翠を抱いた忠孝の声は浮かない。
「今のうちじゃないと駄目なんですか?」
「戦争が来ますから」
 きょとんとして問いかけたあおひとに忠孝は端的に彼の抱える懸念を述べた。その間も抱き上げた翡翠を軽く揺すったり小さくステップしたりして飽きさせないのはさすがだが。
「ぅ…やっぱりそうですよね…この子達は守りたいなぁ」
 肩を落として子供たちをぎゅっと抱き締めると、二人は揃ってその紅葉のような手であおひとの頬にぺたぺたと触れてにこーっと笑った。
「…元気付けてくれてるんですね、ありがとう」
「ははは。子供たちもなぐさめてますね」
「実はこの家で一番心配かけてるの、私かもしれないですね。
 旦那さんに愛されて、子供たちにもいっぱい愛されてます」
 腕の中の子供達につられて笑顔になったあおひとは感謝と愛を込めて柘榴とひなぎくのおでこに小さくキスした。
 この家ではこんなふうに誰かの笑顔が誰かの笑顔になって常に笑いが絶えないのだった。
 忠孝も笑っている。その腕の中では翡翠は指をくわえてあおひと達の方を見ていた。やはりお母さんの方がいいのかも知れない。
「翡翠もこっちにきますか?」
 それに気付いてくすくす笑いながらあおひとが腕を伸ばした刹那。
 翡翠は忠孝の手から消えた。
「ほへ?」
 思わず気の抜けた声を上げてきょろきょろと翡翠の姿を探すあおひと。ふと視線を落とすといつの間にか子供達を抱く腕の輪が一人分増えていた。
 ひなぎく、柘榴、翡翠。三つ子ちゃんが仲良く並んで抱かれている。
「……」
 未だ翡翠を抱いた姿勢のまま、忠孝は口をあんぐり開けて瞬間移動した翡翠をみつめている。茫然自失とする忠孝はかなり貴重かも知れない。
「……うわあ…すごーーーーーい!!!」
「そう言う反応ですか」
 きらきらと目を輝かせて翡翠を見ているあおひとに、ようやく呪縛が解けたように忠孝は苦笑して頭をかいた。
 出会ってこのかた、こういった事態に対する免疫力というか即応性はどうしてもあおひとに勝てない忠孝であった。
「うわー、うわー、翡翠凄いですー!今のどうやったんですか?!」
「いやまあ、いいんですが」
「え?なにがですか?
 翡翠は凄いことが出来るんですね~」
「母は偉大だ」
 我が子の意外な才能?を発見して無邪気にはしゃぐあおひとに、忠孝はかなわないな、と感心して苦笑するしかなかった。歩み寄って再び翡翠を抱き取る。
 まさしく、母は強し。
 そこでふと忠孝は気付いて柘榴の隣でにこにこしているひなぎくに優しく呼びかけてみた。
「ひなぎくは出来るかな?」
 その瞬間、ひなぎくはなんでもないことのようにあおひとの腕の中から消えた。
「………」
 これはよく見掛ける、頭痛を堪える表情になる忠孝。
「だって、世の中には魔法使いもいるんですしー。
 あ、柘榴も出来ますか?」
 両親の注目を受けていると分かったのか、それともだっこを独り占めして嬉しいのか柘榴はにこーと笑った。
 それだけだった。
「柘榴は出来ないんですね。いい個性です」
「いや、それよりひなぎくはどこに」
 まあ何が出来ても出来なくてもあおひと的に万事オッケーらしい。対照的に忠孝はおろおろしている。
 たしかに、言われてみればリビングの見える範囲にひなぎくの姿はない。
「ひなぎくー、ひなー?」
 さすがに心配になったあおひとが柘榴を抱いたまま名前を呼びながら立ち上がって探しに出ようとすると、やはり唐突に空中からひなぎくが落ちてきた。
 これまた狙い澄ましたようにあおひとの腕にすっぽりと収まる。
 おまけに何故か大きな猫を抱えていた。
「あ、にゃんこさんだ…。
 どこの猫さんなんでしょう?ひなぎく、この猫さんはどなたですか?」
 あおひとが首を傾げるとひなぎくも不思議そうに首を傾げる。猫は、ひたすらに迷惑そう。
「ぅ…さすがに子供二人と猫一匹はつらいかも…」
 安心して力が抜けたのか、ぺたんとその場に座り込むあおひと。その隙にするりと逃げ出した猫を忠孝が片腕でひょいと確保した。
「あらー、どうしたんでしょうね?
 猫さんはどちらからいらっしゃったんですか?」
「お隣さんちの猫みたいですね。返してきますよ」
「すみません、お願いします」
 忠孝はやれやれといった感じで歩いていった。その背中を苦笑気味に見送るあおひと。
「ひなぎくはお隣さんまで行ってたんですか?
 お父さんとお母さんの見えないところに行ったら心配しちゃいます」
 言い聞かせてみるのだが、ひなぎくはやっぱり不思議そうに首を傾げる。あおひとは仕方なくこつんとおでこを合わせるに留めた。
 程なくして忠孝が溜息をつきながら戻ってきた。
「いやはや。困ったな。どうしましょうか」
「どうしました?」
「この力ですよ。ふむ…」
「確かに、目の届かないところに行ってしまうと心配しちゃいますよねー」
「大きければ選びもできるでしょうが…小さいうちだと、あぶないことになりそうな…」
「翡翠とひなぎくに、どこかいなくなっちゃだめだよって教えてあげないと…」
 ふにふにとひなぎくのぷくぷくしたほっぺをつんつんしながらあおひとが呟く。でもどうやって?
「なんとか封印とか…制御ができればいいんですが」
 忠孝が悩ましげに翡翠に視線を落とした瞬間、再びその姿が消えた。
 反射的に視線を走らせるがリビングの中にその姿はない。あおひとが二人を抱えたまま子供部屋に向かったものの、そこも空振りに終わった。
「翡翠ー?返事してくださいー。
 忠孝さんとりあえず落ちついて、二階を探してください。いたら声出して伝えてください」
「は、はい」
 再び翡翠を抱えていた姿勢のまま右往左往し始めていた忠孝はあおひとの言葉に反射的に敬礼を返すと、2階へ上がっていった。
 忠孝、これでも英雄。かつては鬼善行とかも言われていた。
 非常時も関わらずそんな夫の姿を可愛いなぁ、とか思いつつ、あおひとは庭に出てみる。
「翡翠ー?聞こえますかー、翡翠ー」
「上にはいません」
 声を上げて探してみるもののやはり翡翠の姿はなく、同じく見付けられないまま二階の窓から顔を出した忠孝が非常に困ったという表情であおひとを見下ろしていた。
「…どこにいったんでしょう…わかりますか?」
 柘榴とおでこを合わせてあおひとが呟く。柘榴は目を丸くしている。
 と、三度唐突に翡翠が落ちてきた。
 慌てて窓から身を乗り出してキャッチする忠孝。こういう時旦那さんが肉体派でよかった、とつくづく思うあおひとだった。
「よかった…」
 胸をなで下ろしつつリビングに戻ると、丁度酷く疲れた顔をした忠孝が翡翠を抱いて降りてきたところだった。
「もーーー!!!勝手にいなくなったら心配するじゃないですかーー!!
 今、心臓止まるかと思ったんですからね…」
 思わず涙目になったあおひとが二人の子供たち抱いたまま、翡翠のおでこにこつんとおでこを当てるが、翡翠はやっぱり良くわかっていなさそうだった。
「伝わらないのは分かってますけれど…いなくなったらお母さんは心配します。
 悲しいんです…」
「まいりましたね…」
 さすがの忠孝も物理的に解決の出来ない問題には疎い。あおひとの肩に手を置いて嘆息した。
 大いに悩む両親に対して元気を出して、というように柘榴はぺたぺたちっちゃい紅葉のような手であおひとの頬を触っている。
「柘榴…ありがとうございます…。
 もう、大丈夫です」
 柘榴は優しい子だな、とおでこに小さくキスする。すこし甘えん坊で泣き虫だけどあおひとを一生懸命気遣っているのが伝わってくるようだった。
 忠孝はそんな家族の結びつきを見て激しく和んで立ち直ると、あらためて解決策を模索し始めた。
「さてさて、どうしましょうか。誰かに相談して、能力を封じちゃいましょうか」
「うぅ、どうしましょう…この子達が大きくなって、選べるようにとか出来るんでしょうか…?」
「いやまあ、便利な能力ではありますが、育つまえに僕が心労で死にます。たぶん」
「私も倒れそうです…。
 あぁ、駄目です…今なんだか凄く不安になってしまいました…」
 翡翠も抱き寄せて三人ともぎゅ、と抱き締めると不安な気持ちが伝わったのか三つ子ちゃんが揃って盛大に泣き出してしまった。
「うわわわわ、大丈夫、大丈夫ですから。…ね?」
 忠孝と二人で慌ててあやし始めるあおひと。結局その日は三つ子ちゃんをあやして寝かしつけるのに手一杯で、具体的な対策を立てることも出来ずに一日が終わってしまった。
 代わりに、というわけでもないだろうがそれからぴたりと三つ子ちゃんの不思議な能力の発現はとまってしまった。

 数日後。
 再び和やかな日常の戻った蒼家のリビングで忠孝は柘榴を抱いている。たかいたかいをさせる度きゃっきゃっと柘榴が笑った。
「結局あの能力はなんだったんでしょうねえ」
「んー、素養はあったんだと思うんですけれど…私が不安になったから、使わないようになったんじゃないですかね?
 どうも忠孝さんだけじゃなくてこの子達にも愛されすぎているみたいです」
「両親ともにそんな能力はないんですがねえ」
 今度はぶーんと柘榴を滑空させた忠孝はどうにも腑に落ちなそうにそう言った。
 くすくすと笑って家族の洗濯物を畳んでいるあおひとの言葉を聞いたひなぎくは、寝かされていたベビーベッドからちょっと浮きかけていたが、浮くのをやめた。
 それを見ていた翡翠が目をまん丸にして手を叩いて、笑った。

 蒼家の三つ子ちゃんにはヒミツがある。
 それはもしかしたら赤ちゃんなら誰でも持っている、小さな幸せの魔法かも、知れない。
 それに比べたらちょっと消えたり浮いたりするくらいは、まあ大したことではない。

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拙文:ナニワアームズ商藩国文族 久遠寺 那由他



作品への一言コメント

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  • 指輪の購入>結婚式に続いて蒼家の幸せぶりを書かせていただきました。
いつもなぜ蒼家があんなに幸せそうなのかなーと不思議でしたが、今回の依頼を通してあおひとさんと忠孝さんがその時々に合わせて少しずつ柔軟に変化しているからじゃないかな、とふと思いました。
これからどんなことがあってもご家族皆さんで笑顔で乗り越えていけると信じています。
というか三つ子ちゃんにとろかされっぱなしでした(/ω\) -- 久遠寺 那由他 (2008-05-23 13:13:57)
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久遠寺 那由他@ナニワアームズ商藩国
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最終更新:2008年05月25日 00:36