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黒崎克耶@海法よけ藩国様からのご依頼品


黒崎克耶は他者から見ると過分に乙女であった。本人は力いっぱい否定するが。
「ちーがーいーまーすーっ!」
いやナレーションに突っ込まれても。

宰相府藩国のハイマイル区画と言えば、わんわん帝國テラ領域でも有数の観光スポットである。
通常、摂政・藩王でもなければ入ることの出来ないハイソな住宅街には、一軒の屋敷が建っていた。
広大ながら手入れのされた庭園、優雅な屋敷、屋敷を支えるたくさんのバトルメード。
あのお屋敷には帝國のやんごとなき人が住んでいるのだ、いや鳥だ飛行機だと近所のマダムたちの噂にも登る。
だが、誰一人として屋敷の玄関に小さくかけられた『Souichiro-K』の表札には気づかないのであった…

屋敷の二階には普段使われない客室が10個ばかりずらり、と並んでいる。
普段ならば物音一つしないはずの一室から、その日は何やら異様な音が聞こえていた…

ごっごっごっごっごっごっごっごっごっごっ
「ソウイチローめソウイチローめソウイチローめ」
ごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつ
「ソウイチローめソウイチローめソウイチローめソウイチローめソウイチローめソウイチローめ」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
黒崎克耶が豪奢なベッドの天蓋を支える柱の一本を、一心不乱にメスで彫り始めてからかれこれ数時間が経過していた。
見事な造りを施されていた柱は、今や眼鏡をかけた優男の頭部を彫られて無残な姿を見せている。

黒崎はぜーぜー言った後、先がぼろぼろになったメスを綺麗に仕舞うとそのままベッドへと倒れこむ。
「うう、ソウイチローさんのばかー。うわきものー」
大事だとか一番だとかキスまでしたのにーと言って転げた。そしてベッドから落ちた。
支柱の一本の強度が著しく失われた天蓋には、その衝撃は酷であったようだ。
みしみしという音と共に天蓋はがたーんと倒れて無残にも壊れた。

場面は寝室で転げまわる一時間ほど前に遡る。

絵画室で甘い一時を過ごした後、黒崎は廊下を歩いていた。
足元がふわふわしているように見えるのは、下が高級絨毯だからではあるまい。
ふんふふーんと鼻歌を歌いながら廊下を進んでいく。ああ、まさにこの世の春を満喫しているかのようであった。

「…ではそのように」
「…ああ、頼んだ」

ぴく、と猫耳が動く。男女の声。男はソウイチローだ、間違いない。
かさかさかさ、と足音をすばやく消すと声のする角の向こうをこっそりと覗く。
メードに書類を渡しているソウイチローの姿が見える。
笑顔を向けられて笑っている。何かふわふわした髪型のメードさんから笑いかけられて笑顔で談笑している。
目の前が何だか、まっくらになった。じんせいの はるは どこに

ガシャーン

「ごふぁっ!?」
「きゃー時価2000万わんわんの壷がソウイチロー様のこめかみにっ!!誰かー!?誰か医者をっ!?」
その場に二人いる医者のうち一人は意識を失って倒れ、無事な方の医者は泣きながらものすごい勢いで逃げていた。
慌てるメードと倒れたまま起きないソウイチローをその場に残して、黒崎は流れる涙をこらえきれず廊下を走るのだった…

回想終わり。場面は部屋に戻る。

「うーうーうー、メードがそんなにいいか。浮気者、うーわーきーもーのー」
ごろごろごろごてんと転がり落ちて、えぐえぐと床の上で泣き出す黒崎。何かおかしいものが思考に介入してるんじゃないかというくらいの混乱であった。
手足をばたばたと絨毯の上で動かし始めてから30分ほど経っただろうか。ぜんまいが切れるようにじわじわと手足が止まった。
「駄目だ。本当に駄目だ。悩んでる暇なんかないのに」
むくりと起き上がり、あーでもどうしたらいいんだろあー、とすぐ落ち込んだ。
この全く出口の見えないサイクルを1時間ほど繰り返しただろうか。どんよりした目でゆらり、と立ち上がると
「寝よう…」
と、呟く。この時点で既に9割グロッキーである。
(んーとクローゼットは…ここか)
用意してもらった寝巻きを取り出そうと、よろよろとクローゼットに手を伸ばす。
とりあえずいい事と嫌な事がいっぺんに来てぐるぐるするし、せっかくハイマイルにきたんだから明日は観光につきあってもら

l!:ソウイチローの屋敷にはメードがいる={
側面:住み込みでメードが働いている
側面:緊急事態用に各部屋にはメード用のメード服が備え付けられている
側面:うっかりメードが一人黒崎の泊まる予定の部屋から片付け忘れる可能性はある
}
GM:通った

「…」
黒崎は凍った。そらあもうわずかに残っていた最後の1割が一瞬で消し飛んだくらいである。原因はもちろん、目の前にあるどこからどう見てもメードさんが着る制服だというのが明白であった。
(あっれー、何でメード服があるんだろうハハハこれはあれか着て寝ろということなんだろうかいい加減疲れました藩王様よけていいですかコンチキショー)
今日あったいろんな事が物凄い勢いで頭の中を練り歩いていく幻想に、黒崎はカクッと頭を垂れる。あ、魂が抜けた。
まあせっかく置いてあるんだから、と疲れた頭でよろよろと着替えてみる事にしてみた。
…大分自棄の類であるのは否定できないとして。

(…いや、これはこれでいいんじゃないかな、うん)
くる、と鏡の前で廻ってみる。スカート若干短めなのは動きやすさを重視しているからだろうか。まあ一人なら気にはならない。
サイズは…うん問題ない。恐ろしいくらいにぴったりである。計ったんじゃなかろうか、という疑念すら沸いて来た。
「あー、うん。まあデザインは結構いいよね」
デザインはなかなかいい。うん、一般的にぐっと来る感じだと思う。
「えーと…こういう時は…」
上半身、少しかがませる。
両手は前で会わせて、笑顔。
ほほの筋肉をにっこり上に上げて
「いらっしゃいませー☆」

そして鏡に映ったドアの向こうにはソウイチロー

「…あー、うん。まあキニスルナ」
ぱたむ、と閉じられる扉。足音がこつこつこつと離れていく。
1秒、2秒、3秒

「ぎーにゃーあー!ちょっとまったー!!はなしを!べんかいを!せつめいさせてー!!!!」

本日一番の叫びがハイマイルの夜空に木霊するのであった。



作品への一言コメント

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  • おもろいのでよしとしよう!!=□○_ ありがとうございましたーwまた頼みますvvv -- 黒崎克耶 (2008-06-08 22:12:15)
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引渡し日:2008/06/08


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最終更新:2008年06月08日 22:12