内田樹「日本辺境論」(2009)
評価
★★★☆
ひとこと
「日本人とは?」について述べた書。
「なんとなくそんなな感じ」と思っていたことを、
様々な歴史的事実に基づいて肉付けした感じの一冊。
終章の「日本語」についての考察が面白かった。
分類
目次
- 日本人は辺境人である
- 「大きな物語」が消えてしまった
- 日本人はきょろきょろする
- オバマ演説を日本人ができない理由
- 他国との比較でしか自国を語れない
- 「お前の気持ちがわかる」空気で戦争
- ロジックはいつも「被害者意識」
- 「辺境人」のメンタリティ
- 明治人にとって「日本は中華」だった
- 日本人が日本人でなくなるとき
- とことん辺境で行こう
- 辺境人の「学び」は効率がいい
- 「アメリカの司馬遼太郎」
- 君が代と日の丸の根拠
- 虎の威を借る狐の意見
- 起源からの遅れ
- 「武士道」を読む
- 無防備に開放する日本人
- 便所掃除がなぜ修業なのか
- 学びの極意
- 「水戸黄門」のドラマツルギー
- 「機」の思想
- どこか遠くにあるはずの叡智
- 極楽でも地獄でもよい
- 「機」と「辺境人の時間」
- 武道的な「天下無敵」の意味
- 敵を作らない「私」とは
- 肌理細かく身体を使う
- 「ありもの」の「使い回し」
- 「学ぶ力」の劣化
- わからないけれど、わかる
- 「世界の中心にいない」という前提
- 辺境人は日本語と共に
- 「ぼく」がなぜこの本を書けなかったのか
- 「もしもし」が伝わること
- 不自然なほどに態度の大きな人間
- 日本語の特殊性はどこにあるか
- 日本語がマンガ脳を育んだ
- 「真名」と「仮名」の使い分け
- 日本人の召命
日本人は後発者の立場から効率よく先行の成功例を模倣するときには卓越した能力を発揮するけれども、先行者の立場から他国を領導することが問題になると思考停止に陥る。・・・そのようなことをしたら日本人はもう日本人ではなくなってしまうとでも言うかのように。(p89)
私たち日本人は学ぶことについて世界でもっとも効率のいい装置を開発した国民です。(p148)
メモ
- どういうスケールで物事を見るか、そしてその理由は?
- ローレンス・トーヴ(未来学者)、司馬遼太郎(ex.「この国のかたち」)
- 外交プロトコル上必要であったから国歌が制定された。(もともとあった訳ではない)
- 真名と仮名を使い分けることで、土着語だけで知的職業に就けるアジアでは唯一の国。
- 真名:漢文でしるされた外来語。男性語。
- 仮名:土着の言葉。本音。女性語。生活言語。
参考文献
- カール・マルクス「コミュニスト宣言」
- ローレンス・トーヴ「3つの原理」
- 司馬遼太郎「この国のかたち」
- 梅棹忠夫「文明の生態史観」
- 丸山眞男「原型・古層・執拗低音」
- 丸山眞男「日本文化のかくれた形」
- 川島武宜「日本人の法意識」
- 吉田満「戦艦大和ノ最期」
- ルース・ベネディクト「菊と刀」
- 池部良「ハルマヘラ・メモリー」
- 丸山眞男「現代政治の思想と行動」
- 山本七平「『空気』の研究」
- 丸山眞男「日本の思想」
- 司馬遼太郎「坂の上の雲」
- 朝河貫一「日本の禍機」
- エンゲルス「空想から科学へ」
- 高橋源一郎、柴田元幸「小説の読み方、書き方、訳し方」
- 新渡戸稲造「武士道」
- 池谷裕二「単純な脳、複雑な『私』」
- 鈴木大拙「日本的霊性」
- 親鸞「歎異抄」
- 鈴木大拙「新編東洋的な見方」
- 篠田鉱造「明治百話」
- ヘーゲル「精神現象学」
- ハイデガー「物への問い」
- ハイデガー「存在と時間」
- 白川静「中国古代の文化」
- 白川静「古代中国の民俗」
- ショーレム「ユダヤ神秘主義」
- ジャック・ラカン「精神病」
最終更新:2010年12月17日 18:47