鈴木信一「800字を書く力」(2008)

評価

★★★☆

ひとこと

800字かどうかは本書ではあまり関係ない。
書く力をつけるためには、読む力も大事。
書くことに関する様々な“思い込み”に対する反証と、
書けるようになるためのトレーニング集になっている。
西林克彦「わかったつもり」にも通じる一冊。

分類

目次

序章 学校で国語を学ぶ意味
  1. 言葉はなぜ必要か
    • せつなさも、「むかつく」と表現してしまう若者
  2. 人はなぜ文章を書くのか
    • すぐれた表現には、世界の見方を反転させる力がある
第一章 「書くこと」の仕組み
  1. 人は絶えず「振り返る」
    • 七〇%以上の人が、似たような文を書いた
    • それは、感性の問題ではなく、論理的必然性の問題
  2. 文は何かが足りない形をとる
    • 何かが足りないから、どんどん書きつづけていく
  3. 文章は「書くと書ける」
    • 書くという行為には、即物的なところがある
    • 言葉のおかげで、見えなかったものが見えた瞬間!
  4. 恋文のカラクリ
    • その人の人間性を覆い隠す「活字」の魔力
    • 書くことの真の怖さ
第二章 800字を書く
  1. リレー作文を知っていますか?
    • 普通は、書きたいことなんかないのが当たり前
    • 二〇人の生徒が「たすき」をつないでいく
    • 書くことは、すでにあるものを再現する作業ではない
  2. さて、最初の一文をどう書きだすか?
    • 書きだす勇気を邪魔する要因は?
  3. 書くことに、感性や想像力は必要ない
    • 嘘をつきとおすのも能力
    • 何が足りないかを見極める能力
  4. 「気になる一文」
    • でまかせの文章を書いてみる
    • ふと出た一文に感心させられる
  5. なぜ最後まで読んでもらえないのか
    • 読み手は、すぐに退屈してしまう存在
  6. 不足に気づく力
    • 読み手が求める「期待感」と「達成感」
  7. 文章に不可欠な「展開の妙」
    • はっとさせられるのは、どんなときか
    • 文章の論理的必然性を崩すとき、作者の眼力が必要になる
  8. 800字書けば、言いたいことは伝わるのです
    • 読み応えのある800字に必要なこと
  9. 「起承転結」は必要ない
    • とくに<起>や<結>を誤解している人が多い
    • なぜ結論を先延ばしにしようとするのか
  10. 壊すということ
    • 作文を通して「考える」習慣
    • 映画の名シーンは 「壊す」瞬間でもある
  11. 文学の話法
    • なぜ、小説は説明を嫌い、詩は明言を避けるのか
  12. リレー作文がうまくいった理由を考える
    • 冷静な「他人の目」の存在
第三章 言葉をどう自分のものにするか
  1. 言葉を実感する
    • 手持ちの経験をもとにして、頭に映像を描いてみる
  2. 具体と抽象
    • 文章は、具体と抽象のあいだを行き来する
    • 「小説は具体的」というのは、本当か
  3. 「ニュートラルな場」としての読み書き
    • 難解な小説と、安直な小説
第四章 「書ける」ようになるための読み方
  1. 読めない人の「読み方」
    • 読むにも、衝動が必要だ
    • 個々の文を頭に放り込んで、読んだことにしてしまう
  2. 読みが完結するとき
    • 「何の感慨も生まれなかった」もまた必要な気づき
  3. 国語という教科への誤解
    • 「国語の答えは一つではない」は、正しいか
    • 自己流の読みが、なぜいけないか
  4. 通読してはいけない
    • 文の配列・順序が大事
  5. 初めが肝心
    • 初回を見忘れたTVドラマは、集中できない
  6. 疑問と待ち伏せ
    • 疑問を抱きながら、読むこと
    • 疑問を解決する文はどこにあるか
  7. 話の先を予測する習慣
    • 読むときも、書く時と同じ頭の働かせ方
    • 文章の先を予測するから、読書は楽しい
  8. 文の切れ目は、どこ?
    • 段落意識を持てる人が、読める人
  9. 読解問題に挑戦してみよう


気になる表現



メモ

  • 話の切り出し
    • 結論からいきなり切り出す、先延ばしして期待を高める、の方法がある。後者の難点は結論が決まってしまっていること。前者の方が話が発展する可能性がある。

  • 文章は絵画とはちがい、ざっと概観できない。通読しても事柄だけなら拾えるかもしれないが、論理は追えない。

参考文献

  • 児童言語研究会「一読総合法入門」
  • 永野賢「文章論総説」
  • 鈴木孝夫「ことばと文化」
  • 小林秀雄「常識について」


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最終更新:2011年05月01日 23:07