西林克彦「わかったつもり」(2005)
評価
★★★★
ひとこと
「わかったつもり」とはどういう状態なのか、を実例で体験できる面白い一冊。
最近、速読ばかりに気を取られて“読み落とし”が多い自分としては、
どういうメカニズムで読みが浅くなったり、誤解したりしやすいのか、
が理解できたことは大きな収穫だった。
また、「わかったつもり」は音楽の解釈などにも通じる部分があるかもしれない。
なお、国語の試験での選択肢の選び方(適切なものを選べ=整合性の観点からあり得る解釈はどれか)については、
無意識のうちに実践していたらしく、学生時代から悩んだことがなかったな・・・。
分かりやすさ向上のためのトレーニングに主眼をおいた
池上彰「わかりやすさの勉強法」、分かりやすさ向上のためのハウツーに主眼をおいた
木暮太一「『わかりやすい説明』のルール」
などとの併読もおすすめ。
分類
目次
第1章 「読み」が深まらないのはなぜか?
- 短い物語を読む
- 「わからない」と「わかる」と「よりわかる」
- 「わかったつもり」という困った状態
- 「もっとわかりたい」と思わなかった理由
- 「わかった」状態はひとつの安定状態
第2章 「読み」における文脈のはたらき
- 文脈がわからないと「わからない」
- 文法も単語もわかるのに……
- スキーマ
- 活性化
- 文脈
- 文脈による意味の引き出し
- 「わかる」と「引き出した意味」
- 「部分の記述」と「文脈」と「引き出された意味」
- 文脈の積極的活用
- 「わかったつもり」と文脈
- 「個体識別」という文脈
- 「読み」に貢献しない文脈もある
第3章 これが「わかったつもり」だ
- 「全体の雰囲気」という魔物(その1)
- 安定状態は「停滞」状態
- 長文を読む
- 捏造された回答
- 「全体の雰囲気」という魔物(その2)
- 「わかったつもり」の手強さ
第4章 さまざまな「わかったつもり」
- 「わかったつもり」の“犯人”たち
- 間違っているのになぜ「わかったつもり」でいられるのか
- 「齟齬を設定する」ということ
- 文脈の侵入
- 「間違っている」わかったつもり
- 部分が読めていない
- 文脈の魔力
- 「結果から」というわかったつもり
- 「最初から」というわかったつもり
- 「いろいろ」というわかったつもり
- 「書かれていないこと」を考えるには
- ステレオタイプのスキーマ
- スキーマのより強力な使われ方
- 物語スキーマ
- 「善きもの」の魔力
- 「無難」というものの魔力
- 「当たり障りのない」スキーマ
第5章 「わかったつもり」の壊し方
- 「わかったつもり」状態を認識する
- 「わかったつもり」状態を認識する
- 「魔物」の存在を見極める
- 「きれいごと」には要注意
- 文脈の効果を再考する
- 終わりなき探求
- 解釈の自由と制約
- より緊密な関係
- 客観的な事実による緊密化
- 規定による緊密化
- 整合性ということ
- 「正しさ」のワナ
- 試験問題を解いてみる
- 大学入試センター試験の問題
- 国語教育に対するひとつの提案
- まとめ
メモ
- わからない/わかる/よりわかる
- 文章や文で、部分間に関連がつかないと「わからない」
- 部分間に関連がつくと「わかった」状態になる
- 部分間の関連が、以前よりより緊密になると「よりわかった」状態になる
- 文脈:よりよく読むための道具
- 文脈が分からないと「わからない」
- 文脈がスキーマを発動し、文脈からの情報と共同して働く
- 文脈がそれぞれの部分の記述から意味を引き出す
- 文脈が異なれば、異なる意味が引き出される
- 文章の雰囲気から「わかったつもり」:正倉院の話
- 文章の構成に読み手が惑わされた「わかったつもり」
- 結果から:小さなリスの大旅行の話
- 最初から:ニャーゴの話
- いろいろと:いろいろな船の話
- 読み手の既存のスキーマによる「わかったつもり」
- ステレオタイプのスキーマ:夕鶴の話
- 部分に関してあてはめられやすいスキーマ(善きもの、無難):高瀬舟の話
参考文献
- 西林克彦「『わかる』のしくみ」
- 西林克彦「間違いだらけの学習論」
最終更新:2011年11月06日 17:05