財部誠一「メイド・イン・ジャパン消滅!」(2012)

評価

★★★☆

ひとこと

上司から拝借した一冊。
思考停止に陥っている日本を「製造業」の切り口から説いた一冊。
主張に100%賛成という訳ではないが、「リアリティ」のある議論を!という姿勢に共感。
直前に下山の思想を読んで、納得感が得られなかったのはこのような問題意識だったのかもしれない。

分類

目次

  • 第1章 高品質化するメイド・イン・アジアの脅威
    • アジアで一番が世界一
    • 1990年代までの対中投資の実態
    • 世界でトップになるための最大の要件
    • 生産現場で起こり始めた逆転現象
    • 実態を失った日本の優位性
    • 岐阜で上海の工場を経営する方法
    • 製品の品質を工場させたWebカメラ
    • 「Maid in China by Taiwanese」
    • 台湾企業の原動力は未公開株市場
    • メイド・イン・アジアが支える日本人の暮らし
    • 再編が進む国内工場、建設が進む海外工場
  • 第2章 日本経済の破局は製造業から始まる
    • 輸入車ナンバーワンは日産「マーチ」に
    • 「日本の底力」を再認識させた東日本大震災
    • 円高で急速に進む「逆輸入」の動き
    • 未来の産業までも失う恐ろしさ
    • 世界の工場の“先生”だった日本の工場
    • 壮絶な円高対策
    • オバマ大統領も重視する製造業
    • 自動車メーカーが国内生産に執着する理由
    • 製造業が大規模節電に協力できた理由
    • 長らく地域経済を支えてきた製造業
  • 第3章 日本企業を魅了するアジアの潮流
    • 香港の「愛 日本料理!」キャンペーン
    • 変質する日本とアジアの関係
    • ベンチャー企業を誘致する韓国
    • テクノロジー系ベンチャーの苦闘
    • 台湾が提案する「ゴールデン・トライアングル」
    • 世界市場の奪回を目指した一大プロジェクト
    • 日本に製造業が踏みとどまれない理由
    • 日本企業を魅了するアジアの成長市場
    • アジアで繰り広げられる覇権争い
    • TPPは一里塚、日本はFTAPPを最終目標にすべし
    • もっともっとリアリティを
  • 第4章 踏みとどまるか「メイド・イン・ジャパン最後の砦」
    • 日本社会は製造業を本当に見捨てていいのか
    • メイド・イン・ジャパン最後の砦は「トヨタ」
    • 超円高に先行したトヨタの新興国対応
    • ロシアで得たトヨタの教訓
    • トヨタが国内の雇用に執着する理由
    • 本当に雇用を守り切れるのか
    • 国内生産に執着するトヨタの3つの合理性
    • メイド・イン・ジャパンの将来を決定づける要因
    • 電気自動車の時代はすぐに訪れるのか
    • メイド・イン・ジャパンが圧倒的な強さを誇る領域
    • 姿を変えつつあるメイド・イン・ジャパン
    • 心配すべきは日本社会の閉鎖性



気になる表現

派遣切りでここまで悪道非道といわれるなら、国内の新工場などつくらなければよかった(p95, 大手企業の経営者の本音)

TPPの議論で思うことがある。
貿易技術立国でここまで発展してきた日本にとってTPPが国益を損なうとしたら日本は何をしたいのか。
議論の順序として環太平洋のTPP参加の前に、アジアの国々とのFTA・EPAを先行しろという議論ならわかる。
だが、そんな国家戦略を描いて、日本がアジアをリードしているわけでもない。この国はいったいどこに向かっていきたいのだろうか。(p143, コマツ会長 坂根正弘氏のコメント)


もともとアメリカには、優れた画像処理技術などが数多くあるのですが、
コンシューマー向け市場ではやや弱いんです。<中略>
もう一つ大きいのは、アメリカ企業はこれまでパソコンやメインフレームで巨額な利益を
得てきたため、市場がコンシューマー寄りになってくると、利益率が低下してしまうのです。
それで、アメリカ企業はむしろ開発に特化し、製造の拠点はアジアなどの新興国に置くという動きになってきているわけです。
(P193-194, 東京エレクトロン 東哲郎会長)

先端技術というものは複合技術です。<中略>
そこで問われてくるのが技術の蓄積です。簡単に真似できる世界ではない。<中略>
それを持っているのは日本とアメリカだけでしょう。(P196, 東京エレクトロン 東哲郎会長)


メモ

  • 森松工業(本社岐阜。上海森松が中核)
    • 長江沿いに工場を建設(80万㎡)。人口運河(幅400m、水深10m、長さ2km)を建設し、工場内の建屋まで引き込み(=自社専用の港)
    • 工場内のWebカメラでリアルタイムに見られる
    • 中国政府とのWin-Winで許可させる。(地元政府にとっては、造船会社を誘致に活用できる)
    • 世界でトップになるための最大の要件は「インフラが整った立地条件」

  • EMS(Electronics Manumacturing Service)
    • OEM
    • ODM(Original Design Manufacturer):発注主の意向に従って設計・開発から生産まで請け負う

  • トヨタのグローバル生産体制
    • 海外に50の製造拠点:カナダ×2,アメリカ×9,ラテンアメリカ×4,欧州×8, アフリカ×2, アジア×23, オーストラリア, バングラデシュ
    • コピー生産から「リンク生産」へ:世界の工場が互いにクルマを融通し合うことで需要変動に対応
    • 海外生産拠点の年間生産能力は20万台が基本ユニット:30万台の工場は作らない。(10万台分はグローバルリンクで調達。需要が40万台になった時に新工場を追加する)
    • 新興国市場では「20万台」の需要がない。トヨタは「地産地消」の観点から「小さく産んで賢く育てる生産ライン」を検討

  • イタリアがプライマリーバランス黒字なのにたたき売られる理由:経済が低成長であるため。


参考文献

  • 「日本経済起死回生のストーリー」
  • [パナソニックはサムスンに勝てるか」

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最終更新:2012年01月30日 21:15