堀公俊「ファシリテーション入門」(2004)

評価

★★★★

ひとこと

ファシリテーションとは会議進行の技法だと思っていたが、もう少し広い意味だったようだ。企業の「××企画」「××推進」などというような役割に就いた時には不可欠なスキルであると思う。
漆原次郎「日産 驚異の会議」と合わせて読みたい。

Coffee Breakに出てくる「協働作業を理解するエクササイズ」が、どれも愉しいけど、やってみると難しそうでGood。どこかでお遊び的に試せるとよいのだが。


分類

目次

  1. 脚光を浴びるファシリテーションの技術
    1. 従来型のリーダーシップとマネジメントの限界
      • 組織による問題解決が硬直化している
      • 行きづまりを見せる社会的な問題解決
      • 「個人」から「関係性」へ
    2. 協働を促すファシリテーション
      • 集団による知的相互作用を促進する
      • 会議で活躍するファシリテーター
      • 支援型リーダーシップと場のマネジメント
      • 新しい日本型リーダー像をめざして
    3. ファシリテーションがもたらす三つの効果
      • 学習するスピードを高める
      • チームの相乗効果を発揮させる
      • メンバーの自律性を育む
  2. 応用が広がるファシリテーションの世界
    1. ファシリテーションの発展の流れ
      • ファシリテーションの歩み
      • ファシリテーションの六つのタイプ
    2. 多彩な分野で応用されるファシリテーション
      • あらゆるビジネス活動での問題解決に
      • ファシリテーションで組織を変える
      • まちづくりに活かす合意形成型
      • 学習者が主体となる教育を目指して
    3. ファシリテーターに求められる技術
      • ファシリテーションで用いる四つの基本スキル
      • 多様な経験がレベルアップにつながる
  3. 場のデザインのスキル 場をつくり、つなげる
    1. チーム活動の場をデザインする
      • 場をデザインする五つの要素
    2. 基本プロセスを使いこなす
      • 「起承転結」型プロセス
      • 「発散・収束」型プロセス
      • ダイアログとディスカッション
      • 「問題解決」型プロセス
      • 「体験学習」型プロセス
    3. 効果的なチームをつくる
      • メンバー特性をチーム作りに活かす
      • チーム活動のベースをつくる
      • アイスブレイクで場をつくる
      • 誰がファシリテーターを担うべきか?
  4. 対人関係のスキル 受け止め、引き出す
    1. 聴く力 傾聴で共感を呼ぶ
      • コミュニケーションとは分かち合うこと
      • 耳で聞かず、心で聴く
      • 復唱で相手を承認する
      • ペースを合わせてから引きこむ
    2. 訊く力 質問で話を深める
      • 聞いた質問で発想を広げる
      • 閉じた質問で話を絞り込む
      • 内に秘めた創造力を引き出す
      • メンバーを依存的にさせないために
    3. 観る力 言外のメッセージを読む
      • 口調、表情、態度の三つに注目する
      • 聴く力と観る力で場の空気を読む
    4. 応える力 話をつないで広げる
      • 要約と言い換えで橋渡しをする
      • 事例と比喩で直観的に理解させる
      • 質問を使って自己主張する
  5. 構造化のスキル かみ合わせ、整理する
    1. 主張を正しく理解させる
      • 論理を正しく伝えるには
      • 前提となる知識を明らかにする
      • 主張の根拠を提示させる
      • 論理の飛躍をつなげ直す
      • あいまいな結論を明確にする
    2. ポイントと位置づけを明らかにする
      • ロジックツリ―で階層化する
      • モレなくダブリなく整理する
      • 議論の土俵を合わせる
    3. 議論を構造化する
      • 誰もが持っている構造化の基本プロセス
      • 議論を描くファシリテーション・グラフィック
      • ファシリテーション・グラフィックの進め方
      • 四つの基本パターンを使いこなす
      • フレームワークを活用する
  6. 合意形成のスキル まとめて、分かちあう
    1. 合理的で民主的に意思決定をする
      • 評価基準をつかった意思決定
      • 合理的な意思決定の落とし穴
      • 多数決を使った意思決定
      • コンセンサスを使った意思決定
    2. 協調的にコンフリクトを解消する
      • コンフリクトが創造性を生み出す
      • コンテクストを共感的に理解する
      • 共感があればWin-Loseにはならない
      • Win-Winでの対立解消をめざす
      • リーダーとファシリテーターのコンフリクト
    3. 学びを次につなげる
      • 成果の確認と行動計画づくり
      • フィードバックが自己成長を生む
  7. ファシリテーションの実践に向けて
    1. ファシリテーションで会議を変える
      • 硬直化・形骸化した部内会議
      • 問題解決型の会議をデザインする
      • 事実を引き出し、問題の構造を明らかにする
      • 最良のアイデアを協働でつくりあげる
    2. 支援型リーダーをめざして
      • 場から学び、場で鍛えられる
      • 協働の場で育み、活動に意味を与える

気になる表現


メモ

  • 個人の集まりとして組織を動かそうという「構造(システム)」的なアプローチではなく、人と人の相互作用の集まりとして組織を考える「関係(プロセス)」的なアプローチが重要になってくる

  • ファシリテーションのポイント
    1. 活動の内容(コンテンツ)そのものはチームに任せて、そこに至る過程(プロセス)のみを舵取りする
    2. 中立的な立場で活動を支援する。それによって客観的で納得度の高い成果を引き出す。

  • ファシリテーションがもたらす3つの効果
    1. 学習するスピードを高める
    2. チームの相乗効果を発揮させる
    3. メンバーの自律性を育む

  • 1960年代にグループ体験によって学習を促す技法として誕生

  • ファシリテーションの6つの分野(出典:中野民夫「ワークショップ」)
    1. 問題解決型(ビジネス・政治分野)
    2. 合意形成型(社会活動・学術分野)
    3. 教育研修型(ビジネス・社会教育・学校教育分野)
    4. 体験学習型(自然・環境分野)
    5. 自己表現型(アート・芸能分野)
    6. 自己変革型(ビジネス・生活分野)

  • ファシリテーターに求められる技術
    1. 場のデザインスキル(場をつくり、つなげる)
      • 目的
      • 目標
      • 規範(グラウンドル-ル)
      • プロセス
      • メンバー
    2. 対人関係のスキル(受け止め、引き出す)
    3. 構造化のスキル(かみ合わせ、整理する)
      • テーマを明らかにする
      • 前提となる事実を明確にする
      • 事実と意見を切り分ける
      • 言葉の定義を明確にする
      • 暗黙の価値観を明らかにする
      • 根拠を提示させる
      • 根拠のつながりをチェックする
      • 例証の適切さを確認する
      • 基準の妥当性を確かめる
      • 他に根拠がないかを調べる
      • 主張を具体化あせる
      • 事例や定量的表現を求める
      • 文脈を明らかにする
      • 思考停止ワードを避ける
      • 他に結論がありえないかを調べる
    4. 合意形成のスキル(まとめて、分かち合う)

  • プロセスデザインの基本形
    • 起承転結
    • 発散・収束
    • ダイアログ(対話)とディスカッション(議論)
      • ダイアログ:物事の意味を探求するための話し合い。拡散型の会話
      • ディスカッション:ひとつの解答をめざして知識を寄せ合う。収束型。意思決定のための話し合い
    • 問題解決型
    • 体験学習型
      1. 体験する
      2. 同定する(シェアリング)
      3. 解釈する
      4. 一般化する
      5. 応用する
      6. 実行する

  • ファシリテーターは黒子。要約と言い換えで橋渡しをする。(出された意見に対していちいち応える必要はない)


参考文献

  • ファシリテーション全般
    • 堀公俊「問題解決ファシリテーター」
    • フラン・リース「ファシリテーター型リーダーの時代」
    • 中野民夫、森雅浩、鈴木まり子、冨岡武、大枝奈美「ファシリテーション」
    • ドイル,マイケル「会議が絶対うまくいく法」
    • センゲ,ピーター「フィールドブック 学習する組織「5つの能力」」
    • 伊丹敬之「場の論理とマネジメント」
    • ウィートリー,マーガレット「リーダーシップとニューサイエンス」
  • ファシリテーションの応用
    • 堀公俊「ワークショップ入門」
    • 中野民夫「ワークショップ」
    • 森時彦「ザ・ファシリテーター」
    • 柴田昌治「なぜ会社は変われないのか」
    • 白川克、関尚弘「プロジェクトファシリテーション」
    • ちょんせいこ「学校が元気になるファシリテーター入門講座」
    • 堀公俊、加留部貴行「教育研修ファシリテーター」
    • 中の民夫、堀公俊「対話する力」
  • 場のデザイン
    • 堀公俊、加藤彰、加留部貴行「チーム・ビルディング」
    • 堀公俊、加藤彰「ワークショップ・デザイン」
    • 中野民夫「ファシリテーション革命」
    • 浅海義治他「参加のデザイン道具箱(Part1~4)」
    • ロバート・チェンバース「参加型ワークショップ入門」
    • 中原淳「知がめぐり、人がつながる場のデザイン」
    • エティエンヌ・ウェンガー「コミュニティ・オブ・プラクティス」
  • 対人関係スキル
    • 津村俊充、石田裕久「ファシリテーター・トレーニング」
    • 星野欣生「人間関係づくりトレーニング」
    • ロジャー・シュワーツ「ファシリテーター完全教本」
    • シャイン「プロセス・コンサルテーション」
    • 野島一彦「エンカウンター・グループのファシリテーション」
    • 堀公俊「『ホンネ』を引き出す質問力」
    • 岡本浩一、鎌田晶子「属人思考の心理学」
  • 構造化スキル
    • 堀公俊、加藤彰「ファシリテーション・グラフィック」
    • 堀公俊、加藤彰「ロジカル・ディスカッション」
    • 森時彦、ファシリテーターの道具箱研究会「ファシリテーターの道具箱」
    • 船川淳志、生方正也「論理アタマをつくる!ロジカル会話問題集」
    • 野口吉昭「コンサルタントの『質問力』」
    • 松岡正剛、ISIS編集学校「直伝!プランニング編集術」
    • 渡辺パコ「はじめてのロジカルシンキング」
  • 合意形成スキル
    • 野沢聡子「問題解決の交渉学」
    • 鈴木有香「人と組織を強くする交渉学」
    • 中島一「意思決定入門<第2版>」
    • 堀公俊「チーム・ファシリテーション」
    • 北川達夫「不都合な相手と話す技術」
    • シャーマー「U理論」
    • ブラウン,アニータ「ワールド・カフェ」
    • 亀田達也「合議の知を求めて」

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最終更新:2012年08月10日 10:26