サンクトゥス・フルゴルにある(主に龍殺しとかの実績が)有名な生産ギルドファイアワークス。
生産や人探しから調査・討伐まで何でも請け負う事で知られている。
その敷地の片隅に、余り使われていない劇場がある。
演目表には、今日の日付と五時半という時刻だけが書かれている。
夕陽が街並みを紅く染める頃合い、ふたりの少年が劇場を訪れた。
リコト「ここが少年ファイアワークス隊のアジトなの?」
ペガ 「そんなところですね、そろそろ五時半だから皆集まってる頃合いだと思いますよ」
リコト「とりあえず入ろーよ、ボク寒いのやだよ」
ペガ 「はいはい、行きますよー」
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劇場内に入り、普段は無人のホールへ。
舞台上には、既に先客が居た。
アレン「ようやく依頼主のお出ましか、遅かったじゃねーか」
レヴィ「そろそろ懐厳しい…報酬期待してる」
マキナ「あれーペガちゃん、その子誰? 新人さん?」
リコト「この人達が少年ファイアワークス隊…?」
ペガ 「リコトって言うんだ、うちの新人だよ」
アレン「なんだよそっちの新人かよ、ちゃんと収入有って良いねぇ」
ペガ 「ちゃんと成功報酬払ってんだから文句言わない!」
アレン「へいへーい」
レヴィ「あれ、その子もしかして
エルフ…? 耳尖ってる」
アレン「そーいや確かにな」
リコト「えっとこれは……」
リコトは耳のことを突っ込まれてあからさまに動揺している。
それも当然だ。
リコトはその耳のせいで虐げられていたのだから。
ペガ 「あー…この子ハーフエルフなんだよ」
リコト「何言ってんだよ! そんなの知られたら何されるか…」
マキナ「ビクついちゃってカワイー! あたしらそーゆーの全然気にしないから大丈夫だよ!」
そう言うと少女はフードを脱いだ。
同時に猫耳が露わになる。
マキナ「あたしは猫族のマキナ、よろしくね!」
続いて隣に座る少年がバンダナを外した。
その額には小さな角が生えている。
アレン「俺は妖鬼のアレン……まあ、よろしく」
今度はもうひとりの少年が帽子を脱いだ。
すると細長い耳がぴょこんと立った。
レヴィ「ぼくはレヴィ…兎族」
リコト「みんな人間じゃないんだ…」
リコトは胸を撫で下ろす。
ペガ 「まだまだ亜人や妖鬼の社会的地位は高くないですからね、所謂ストリートチルドレンも多いんですよ」
ペガ 「だから路上で飢え死にする子供達を少しでも減らすために、イグさんは情報収集の手伝いで報酬を渡すことを考えたんです」
リコト「なーるほど、あの人らしいや」
ペガ 「でしょう? でも彼らは実際かなり役に立ってくれていますよ」
アレン「さァ、さっさと今回の依頼を言えよな。 こっちは働きたくてウズウズしてんだ」
マキナ「どーせ金欠なだけでしょ?」
レヴィ「まあまあ…落ち着いて」
ペガ 「それじゃあ早速今回の依頼を発表します」
ペガ 「今回の依頼はかなり危険だから本当は君らの協力は仰ぎたくないんですけど……」
アレン「今更何言ってんだ、さっさと言えよ……こっちは明日の飯が懸かってんだ!」
ペガ 「分かりましたよ……この間レンターっていうマッドサイエンティストが死んだんですけど、その研究成果がこの街に運び込まれたって噂があるんですよ」
レヴィ「研究成果…?」
ペガ 「通称【プロメテンの残滓】、それを元に研究が完成したら街ひとつ消し飛ぶじゃ済まないような代物です」
マキナ「何それ!? 面白そーじゃん! あたしらはさしずめ街を救ったヒーローかな?」
レヴィ「気が早い……」
マキナ「それってどんな形で運び込まれてんの?」
ペガ 「恐らくは
魔導書、それも一冊じゃ収まらないはず」
レヴィ「自力で運んでくるのはキツそう……」
アレン「ところでそのハーフエルフも参加すんのか?」
ペガ 「勿論ですよ。 この子の名前は…」
リコト「リコトだよ、よろしく」
アレン「おう、こちらこそ。 仲良くやろうぜ」
レヴィ「よろしく……」
マキナ「よろしくー! それじゃあ早速手分けして情報集めよっか!」
アレン「そーだな、早く動かないとまたどっかに運び出されちまうかもしんねぇ」
ペガ 「それじゃあ頼みましたよ。 また明日、この時間に」
ペガ 「少年ファイアワークス隊…出動です」
ペガはそう言うと3F硬貨を3枚指で弾いた。
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リコトは夜の街をひとり歩いていた。
リコト「参加するって言っても、ボクにできることなんてあるのかよ…」
路上で逞しく生き、過去に何度も情報収集をしているという少年達を見てリコトは思う。
彼らはなんて強いんだ、と。
彼らは自らの手で生きていく術を持っている。
ずっと教会で育てられ、これからも聖歌隊として生きていくであろうボクとは違う。
今お世話になっているギルド、ファイアワークスの面々にしてもそうだ。
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リコト「ねーちゃん…何しに来たの?」
法王 「リコト、あなたは何時までもそうやって閉じこもっているつもりですか?」
リコト「何時までも…か。 そうかもね、年取らなくなっちゃったんだもん」
法王は暫く考え込んだ。
そして慎重に言葉を選びながら話す。
法王 「確かに二年前、リコトがハーフエルフだと知った時は驚きました。 でも私はあなたを畏れはしません」
リコト「そんなの知ってるよ! ねーちゃんはボクを怖がりも虐げもせずに傍に居てくれた」
法王 「そんなこと、例え私が法王で無かったとしても当たり前です!」
リコト「でも他の人達は違う! ねーちゃんがボクを怖がらないのだって本当は…!」
リコトはそれ以上続けることが出来なかった。
法王がとても…とても傷付いた表情をしたからだ。
リコト「…………ごめん、言い過ぎた」
法王はリコトの頬を優しく撫でる。
法王 「私はあなたが優しい子だって知ってます……そうだ!」
法王は何時もと変わらぬ優しい笑顔を浮かべる。
法王 「私のふぃあんせが所属している【ファイアワークス】というギルドがあるのです」
リコト「ふぃあんせってあの半蛇の蓬って人だよね?」
法王 「はい、蓬さんが所属している……一応は生産ギルドです」ニガワライ
リコト「一応? そんなに胡散臭いところなの?」
法王 「胡散臭いと言えばそうなのですが……優しい人達ですよ」
リコト「優しいって言ったって、どーせボクのことなんて受け入れてくれる訳ないよ」
法王 「それは違います。 彼らの多くもまた虐げられてきた人達なのです」
リコト「えっ……?」
法王 「でも彼らは弱者の集まりではありません。 きっとあなたを変えてくれますよ」
リコト「…………分かったよ、ボクもずっとこのまま居る訳にはいかないから」
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ファイアワークスのメンバー達には、虐げられて行き場所もなく流れ着いた人も少なくなかった。
だからこそボクに対してもただの新入りとして接してくれる優しさを持っているのだろう。
けどそれだけじゃない、彼らはファイアワークスの一員という揺るがない誇りを――強さを持っていた。
それは今までただ生きてきただけのボクには無い強さだった。
多分彼らの優しさには裏が無いのだろう。
それはきっと何度その優しさに付け込まれようと屈しない強さが根底にあるからだ。
けれど、ボクはきっと―――そんな風に強くはなれない。
ボクには一体、何が出来るのだろう。
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兎に角、何かをしてみなければ何も起こらないし変わらない。
何をしようか考えた時、真っ先に思い付いたのはやはり歌うことだった。
教会で皆と、時にはひとりで、何度も歌った賛美歌を。
夜の路上でひっそりと風にメロディーを乗せる。
アメージング・グレース――神の愛への感謝を歌った曲だ。
しかしもしも運命を決めた神が居るのなら、ボクはそれを恨んでいるのだろう。
口では平然と賛美しながら。
いつかは本心から感謝を歌うことが出来るのか、ボクには分からない。
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肌寒い夜の路地の片隅に、小さな人集りが出来ていた。
透明なボーイソプラノが寒空を滑る。
二年前から全く変わっていない声だった。
一曲歌い終えてほうっと息を吐き出すと、寝ている住民達に配慮してか控えめな拍手が答えた。
集まった人達は周りの数人と感想を言ったり、愚痴を零したりしている。
他愛無い雑談に花を咲かせる人もいる。
この空間を作れたことが、ボクには少し誇らしかった。
ふと、誰かの喋り声が耳に入った。
「俺運送ギルドで仕事してるだろ。 この間おかしな荷物が届いて大変だったんだよ」
「それ、どんな荷物だったんだ?」
「中身は大量の魔導書でさ、内容は読めないようにプロテクトされてたんだけどな」
「へえ、そんでその荷物何処宛てだったんだよ。 大量の魔導書ってくらいだから貴族か何かか?」
「それが奇妙でさ、街外れのちっちぇー家なのさ」
「それは奇妙だなぁ」
「だろう? おかしいと思ったんだけど、自分のものだと主張するしお金も払ってもらったからな」
「なら別に良いじゃねーか、荷物だけ寄越せとか言われた訳じゃないんだろ?」
「まーな、そんだけの話さ」
リコト「その話、詳しく聞かせて貰えませんか?」ズイ
「「えっ?」」
まったく意外なところに情報が転がっているものだ。
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ペガ 「少年ファイアワークス隊からの報告は以上です」
イグニス「そうかー……やっぱり噂は本当だったんだな」
ペガ 「みたいですね。 明日の内にレンター派の研究者の残党に引き渡されるみたいです」
イグニス「皮肉なもんだな、不死を辞める為の研究を不死を求める連中に利用されるなんて」
ペガ 「ええ、全くそんなものを求めて何になるって言うんですかね……」
イグニス「さあな、少なくとも俺達はそれを止めなきゃならない」
ペガ 「そうですね、レンターを“殺した”のは僕達なんですから」
イグニス「……それはそうと、明日って言ったら丁度
新大陸の上陸調査の実行日だよな」
ペガ 「そうですね……僕は今回の調査には加われそうにないです」
イグニス「他のメンバーはどうする? ひとりで突入という訳にも行かないだろう」
ペガ 「そうですね、今回みたいな潜入の場合はむしろひとりの方がやりやすいんですけどね」
イグニス「でもレンターに関連する奴らだぞ、ひとりじゃ危険だ」
ペガ 「元密偵を舐めないでくださいよ……でももしもの時に備えて潜入得意な
モスマンさんに待機してもらった方が良いかもですね」
イグニス「じゃあそうしとくよ――――誰だ!?」
蝙蝠 「キキッ…!」バササ
イグニス「なんだ……蝙蝠か」
ペガ 「とりあえずそーゆうことで、明日に備えて僕は寝ますね」
イグニス「俺達も上陸調査があるからな、寝るとするか」
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ペガ 「さてと、準備はこんな感じですかね」
ペガはもう一度持ち物を確認する。
今回は殺すよりも捕らえるのが目的だし、何よりスニーキングミッションに重装はご法度なのでトワイライトは置いていく事にする。
久し振りに使う麻痺毒瓶がベルトポーチに入っていることを確認し、ショートソードの流麗な刀身を撫でる。
ペガ 「久し振りの潜入……元密偵の腕が鳴ります」
ショートソードを腰の鞘に収める。
棚に置かれた【愛しき箱】をひと撫でし、ペガはギルドを後にした。
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正午近くのサンクトゥス・フルゴルは人々の活気に満ちている。
それを避けるように人通りの少ない路地へ。
建物に入る前に見つかっては元も子もないので慎重に。
?? 「おにーさん何処行くの?」
急に話しかけられて動揺する。
まさかこんなところでバレたのか?
恐る恐る振り向くと、そこには見知った顔があった。
リコト「ひとりでこんなところに来たら危ないよ」
ペガ 「ってリコトですか。 それはこっちの台詞ですよ、早くギルドに戻ってください」
リコト「…………嫌だ」
ペガ 「なんでですか? 最悪死ぬかもしれないんですよ!?」
リコト「だからだよ! ボクにだって何か出来ることが…」
ペガ 「ありません。 駄目です」
リコト「そんなのやってみなきゃ分かんないじゃん!」
ペガ 「少年ファイアワークス隊への依頼は情報収集まで、此処から先は僕の依頼です」
リコト「ボクだってファイアワークスの一員だろ!」
ペガ「……そうですね。 でも―――駄目です、足手まといです」
ペガは自分でもびっくりするほど冷淡な声でそう告げた。
悔しげな表情で走り去るリコトに背を向け、いざ依頼の場所へ。
件の建物に到着。
密売人がアジトにしていると噂されている建物だ。
見つからないように裏口へ。
戸を少し開き、見張りが居ないことを確認して滑りこむ。
気配を殺し、神経を研ぎ澄ませ、慎重に会合場所を目指して進む。
廊下には見張りがひとり。
こちらには気付いていない。
ペガ 「……」シュッ
見張り「!?……うぐ…」バタリ
麻痺毒を塗ったショートソードで浅く斬り付け、転がす。
近くには会合が行われているであろう地下へと続く階段があった。
足音を立てない様に地下に降りる。
目的地はすぐそこだ。
地下の廊下を進み、いよいよ目的の部屋へ到着。
扉を少し開けて中を窺う。
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研究者「さて、早速例のものを貰おうか」
密売人「へいへい、こちらに」バサッ
密売人が荷台に掛かった布を剥がすと、そこには大量の魔導書が乗せられていた。
研究者「確認しよう」
白衣の男が何やら呟くと、魔導書に掛かっていたロックが解除される。
男は全ての魔導書の中を見ると、それを荷台に戻す。
研究者「確かに確認した」
密売人「では預かり賃のお支払いを…うぐっ!?」バキュン
放たれた弾丸は密売人の胸を貫いた。
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崩れ落ちる密売人を尻目に、ペガは部屋へ突入する。
研究者「…っ!? 感付かれたか!」
白衣の男は目を見開く。
―――そして、獰猛な笑みを浮かべた。
咄嗟に竦みかけた身体を叱咤して目の前に躍り出る。
男と対峙した時、ペガの神経は自然と最高潮に研ぎ澄まされた。
研究者「チィ…ッ! 餓鬼が!」
男は持っていた銃を捨てると、懐からもう一丁の銃を取り出しペガに向けて発砲する。
ペガ 「視える…っ!」
研ぎ澄まされた感覚が銃弾の軌道を捉える。
――チュインッ!!
ショートソードの切っ先が銃弾を真っ二つに切り裂く。
ペガ 「……っ!」
その動きと連動して四肢は身体を前に運び、ペガはショートソードを男に突き込む。
男は咄嗟にその切っ先を躱すも、体勢を崩した。
それを見逃さずに素早く銃を持った手に手刀を浴びせる。
男が放った反撃の蹴りを紙一重で躱し、鳩尾を殴り付ける。
踞った男目掛けてペガはショートソードを振り下ろした。
――視界が反転した。
訳の分からないまま床に叩き付けられる。
床を転がりながら見渡すと、筋肉隆々な男の姿。
顔立ちはさっきの見張りと似ているが、その身体は人間というよりむしろ魔物に見えた。
オーガ「屈強なオーガの身体を舐めてもらっちゃあ困るなァ、あんな毒くらいすぐに分解できるぜ」
迂闊だった、と言うしか無い。
姿形を変えて人間に偽装した魔族が居るとは想定外だ。
ショートソードはさっきの衝撃で手放してしまったし、そもそもあの肉体にダメージを通せるとは思えない。
オーガはもう一度突進するために構えを取っている。
この狭い室内では避けることもままならないだろう。
オーガが床を蹴る。
しなやかな筋肉が凄まじいスピードで躍動し、迫る。
ペガは突進をなんとか受け流し、オーガもろとも倒れこんだ。
組み合ったまま床を転がる。
そのままの勢いでオーガの身体を壁に叩き付け、ペガは腰のホルスターから魔導銃【ΑGITΩ】を抜いた。
真紅の銃身をオーガに押し付け、引き金を引く。
紅蓮の渦がオーガの肉体を包み込み、それは火柱となって薄暗い地下室を照らした。
ペガ 「はぁっ…はぁっ…!」
尚も燃え盛るオーガの亡骸から身体を離し、息を整える。
しかしその時には既に、白衣の男がこちらに銃口を向けていた。
研究者「流石に優秀な用心棒を雇っていたみたいだな――――死ね」
ペガ 「――っ」
―――ひと筋の閃光が疾走った。
その閃光がペガを貫くことは無かった。
寸前のところで何かが銃弾を防いだからだ。
ペガ 「――赤い…蛙?」
研究者「今度は何だ!?」
状況を飲み込めずに居ると、今度は澄んだメロディーが地下室を反響していく。
昔一度聴いたことがあるポピュラーな賛美歌だ。
研究者「何処だ……出てこい!」
切羽詰まったその声に応える様に、見知った三人の子供達が飛び出してくる。
ペガ 「そんな、嘘だ……」
彼らは大きなフライパンを振りかぶると、音楽バフを存分に乗せて男の頭を殴り付けた。
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ペガ 「助かりました……皆が来てくれなかったら僕死んでましたね」
リコト「本当だよ、無茶してくれちゃって」
ペガ 「それはこっちの台詞ですよ、こんな無茶して」
アレン「その無茶のお陰で生きてる奴に言われたくねーな」
ペガ 「言い返す言葉もないですね……」
レヴィ「追加報酬…出るよね」
マキナ「そんなことより、あたし達ほんとうに街を救った英雄だよ!」
アレン「誰も知らない英雄ってのも悪くないかもな」
さっきペガを庇った蛙が、ぴょこぴょこ跳ねて主の元へと還っていく。
ローブを纏った少年がため息を吐いた。
レン太「ったく、手間掛けさせやがって」
ペガ 「いやそもそもなんでレン太がここに?」
レン太「自分の研究が悪用されるってのに黙って見てる訳にもいかないだろう」
ペガ 「あー……聞いてたんですね、イグさんとの会話」
レン太「そういうことだ」
ペガ 「良い趣味とは言えませんね…まあ今回は助かりました」
リコト「さあ早くこの人を縛って教会に突き出しちゃおう!」
アレン「そうだな、これで俺達もいよいよ英雄か!」ワクワク
もう帰りムードだが、そういう訳にはいかない。
ペガ 「その前に……この魔導書は燃やさないとですね」
レヴィ「でもそれ…ぼくたちが取引潰した…証拠じゃ」
レン太「教会に預けて悪用されたら元も子もないからな、全部燃やしちまうのが手っ取り早いさ」
ペガ 「そういうことです」
ペガは持ってきた石油を念入りに魔導書に掛けると、着火した。
禁忌の研究が記録された魔導書は、その全てがひっそりと焚かれる事となった。
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こうしてボクの少年ファイアワークス隊としての最初の依頼は幕を閉じた。
夕焼けに照らされる帰り道を進みながら、無意識に幼い頃に歌った童謡を口ずさんでいた。
ペガ 「その歌知ってますよ、ちっちゃい頃に父さんと母さんと歌いましたから」
リコト「へえ、ボクも昔ねーちゃんと歌ったんだ!」
これから先、ボクが神様に心の底から感謝することが出来る日が来るのかは分からない。
とりあえず今は本当の仲間に出会えたことを感謝しよう。
神様と、ねーちゃんと、ファイアワークスの仲間達に。
リコト「ボクもいつかファイアワークスの皆みたいに強くなれるかな?」
ペガは躊躇いなく断言した。
ペガ 「なれますよ――優しさがあれば、強くもなれるんです」
ペガが差し出した手を、ボクは躊躇いがちに握り返した。
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―夕焼け小焼けで日が暮れて
―山のお寺の鐘が鳴る
―おてて繋いで皆帰ろ
―からすと一緒に帰りましょ
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リコト「ボクも強くなるよ、例えハーフエルフだとしても――凄いだろって誇れる様に」
-fin-
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深夜のサンクトゥス・フルゴルは静寂に満ちている。
淡い月明かりが白く照らす街を歩く人影に近寄る影がひとつ。
振り向いた少年の手には月明かりを受けて白く輝く石が乗っている。
アレン「あれ…? ペガじゃねーか、こんな時間に何してんだ?」
ペガ 「その声は…アレンですか、あなたこそ何を?」
アレン「俺のねぐらはこの近くだからな。 こんな時間に足音がするなんて妙だと思ってな……何処行くんだ?」
ペガ 「…………港です」
アレン「港? こんな時間に船なんか出てるのかよ」
ペガ 「ええ、今夜は特別に出るんですよ……新大陸行きの船が」
アレン「新大陸? ああ、お前らが調査に出てるっていう」
ペガ 「はい。 その長期探索部隊が明日の早朝に向こうで現地にいる探索部隊と落ち合うことになってるんです」
アレン「もう長期探索なんてするのか? かなり危険だと思うが……」
ペガ 「危険は承知です。 黙っていられる状況でも無いんですよ」
アレン「そうなのか、まあ生きて帰ってこいよ」
ペガ 「元密偵の実績を評価して貰った訳ですから、期待には応えますよ。 ああ、あなた達への伝達役はこれからリコトになるからよろしくお願いします」
アレン「それでこないだのに同行してたんだな、気を付けてな」
ペガ 「ええ、またその内」
僕は真っ暗な街を名残惜しみながら港へ向かった。
数日前、ギルドが襲撃されてイグさんが大怪我を負った。
あの時僕は何も出来なかった。
ただイグさんを助け出すことに精一杯だった。
イグさんを救出できたという意味では最悪は避けられたのだろうが、それでも僕の自信を奪うには充分過ぎる出来事だった。
――ギルマス代理を守る。
ギルドメンバーとして当然の責務さえ果たせずに何がファイアワークスの一員だろうか。
今回襲撃者を探すという目的で予定よりも早く結成された長期探索部隊に選ばれたことは嬉しい。
だからといってイグさんの復讐をしようという訳でもない。
ただ――ファイアワークスとしての誇りを取り戻す為に。
現大陸で巻き起こる不穏な空気はきっと仲間達が晴らしてくれると信じて。
汽笛が鳴り、船が出る。
白み始めた東の空に向かって。
いざ行かん、
漆黒のカーテンを越えて――――
最終更新:2016年04月29日 15:49