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星空の物語

【語り:不眠の姫マグ】

さぁ、お集まり。
今夜はこの広い広い星空のお話だよ。

私達が当たり前のように見ているこの星空が、彼女にとっては未だ馴染めない真新しいものかもしれないね。

誰かって?

ウィミンシス-窓辺の月-】さ。

彼女は遥か昔、私達が生まれるずっと前なんてもんじゃない。

もしかしたら、この星空さえなかったかもね。
星空のある空間すらなかったかもしれない。

彼女はとある所に生まれた。

棚のある部屋さ。

そしてそれからまた気の遠くなる時間が経ったころ。

え?何も無かったのに時間や棚があるかって?

それらが生まれたから今があるのさ坊や。

時が生まれた時、棚が生まれた時、彼女が生まれた時、空間が生まれた時。

棚には本が生まれる。

彼女は生まれた本を読むのさ。
月明かりでね。

そして、星空が生まれた。
多くの物が生まれてきた。

本棚は満たされていくのさ。
彼女は本を読み続けた。

そんなに沢山本が読めるかって?
彼女にとって時間は永遠にある。

私達の命なんて彼女の読む本の一文字にもなりゃしないのさ。

でもね
彼女にも終わりがあったのさ。

世界が一巡する満月の夜のことだよ。

彼女の時間は終わる事を告げる本が生まれた。

彼女に終わりが生まれたのさ。

彼女は本に栞を、挟んだ。

挟んだ栞は月明かり。
星屑のラメ。

そして彼女は生まれた。
見た目生きた時間全てが生まれたてなのに彼女は終わり生まれた。

彼女は栞を取り本を読み続けた。

前戦争もフルゴルも、ましてや私達の世界なんてない時からね。

彼女は一人さ。

彼女は司書さ。

彼女は窓辺の月明かり。

本棚で隔てられた空間があった。
種族間の隔たりなどないのさ。

全てがそこにあるのさ。

もしかしたら、坊やの無くした靴下の片割れの本もあるかもね。

さぁ、月が出てきたね。

彼女の時はどれくらい経ったろう。

彼女が読んだこともない本が生まれた。

「死」さ。

そう、生命の終わりが生まれたのさ。

彼女は涙を流しながら読み続けるのさ。

ずっとずっと、長い時間流し続けなければならなくなった。

「争い」が生まれてしまったのさ。

それが生まれたせいで彼女は自分の仕事が恐ろしくなった。

自分はただ読み続け、管理するだけだからね。

自分の終わりと生命の終わりは違うものと知ったのさ。

そして「知識」が生まれた。

彼女はそれは喜んださ。
でもそれは長くは続きやしない。

知識を糧に争いと死は増えていった。
種類も傾向も、感情も何もかもがこれによって生まれ増えて行ったんだよ。

さぁ、ここからがみんなの知る「前戦争」が生まれるよ。

何世紀も続き、果ては自分達が何故憎しみ蔑み悲しみ争いあってきたかもわからなくなった頃だよ。

とっくの昔に生まれた神が現れたのさ。

そして戦争に終わりが生まれた。

その夜の月夜だ。

司書は安らぎに満たされ終わりを迎えた。

司書が終わり生まれた時、本当の「安らぎ」が生まれた。

司書は大喜びで読んださ。

お前達も本を読む時に好きなお話になると心が踊るだろ?

本当の「喜こび」が生まれたさ。
それはそれは嬉しかったろうねぇ。

ふふっ。

彼女が夢中になっている間。
図書館はとても大きなものになった。

天井と床にはあらゆるモノの正確な地図が。

蔵書は無限に等しく。
棚は迷路さ。

お嬢ちゃんなら迷っちまって、お母さんと泣きながら呼び続けるだろうね。
泣き虫さんだからね。

そんな事ないって?
そうかいそうかい、それは悪かった。
大きくなったねぇ。

月明かりの司書はね。
どこの棚のどの段に、何冊目に読みたい本があるか分かるのさ。

なんでだろうね。
仕事だからかね?

始まりから終わりまで

人から魔まで

砂から鉄まで

寓話から神話まで

すべての隔たりはない。

それがその図書館さ。

さぁ、長い私のお話も終わりが見えてきた。

えぇ?まだ足りないって?
寝不足になっちまうよ。ふふっ。

彼女の時は永遠さ。
何度終わり生まれたかなんて覚えちゃいない。

彼女の司書としての

窓辺の月としての

時が終わる事を告げる本が生まれたのさ。

そんなものとっくの昔に生まれていたはずなのにね。

彼女は初めて人間に出会うのさ。

いい出会いだったかどうかは分からないね。

彼女は図書館を出た。


出されたのさ。

今頃図書館の棚はどうなっているかね。

彼女は閉じ込められた。

図書館と似た大きな部屋に。

図書館の窓辺と似た月明かりに。

栞に似た星屑のラメに。

彼女はね、【ラピスラズリ】があると司書としての力を失う。

また「知識」が生まれた。

でも読めやしない。

読めるのはつまらない自慢ばかりの本だったさ。

それでも読めないよりはいい。

彼女は仕事としてじゃなく、永遠の時を過ごす為だけに読み続けた。

今の法王様が生まれるずっと前だよ。

本棚で隔てられた空間
種族間の隔たりなどない

始まりから終わりまで
人から魔まで
砂から鉄まで
寓話から神話まで

すべての隔たりはない

今宵もまた月夜
司書は月明かりで書を読む

挟む栞は月明かり
星屑のラメ
次に読むは世界が廻ったその先


この詩はね。
世界が生まれる前に生まれたものさ。

彼女は今も涙を流し読み続けているよ。

えぇ?僕が彼女を助けるって?

あぁ、ぜひそうしておくれ。

彼女の

司書の

月の

図書館へ帰してあげておくれ。

きっと読みたい本が沢山あるだろうさ。

早く終わり生まれたいだろうさ。

さぁ、今夜のお話はここまでだ。

はやく布団に入って窓から月を見な。

そして、星屑のラメで栞を挟んで瞳を閉じな。

沢山の夢を生みな。

図書館に司書が戻った時に喜ばせてあげな。

きっと、ワクワクしながら本を開くよ。

  • fin-
最終更新:2016年04月29日 15:52