【とある吸血鬼の休日】
種別:
アーティファクト
説明:日記のようなアイテム
突然現れた、とある吸血鬼の過去が書いてあるもの
その吸血鬼本人には知覚できないし、読めない
要は本人に参加させず過去編を見るためのもの
あるところに、家族で仲良く暮らしている吸血鬼の少年がいました
その少年は元気で、優しく、そしてなにより吸血鬼であることに誇りを持っていました
少年は人間のような、寿命こそ吸血鬼ですが、穏やかな日々を過ごしていました
少年には可愛らしい恋人がいました
名をレアと言い、後ろに束ねた艶やかな髪と緑色の瞳が特徴の、心優しい女の子です
レアはその優しさから、種族への偏見すら持たず、少年とお付き合いをしていました
その日は、晴れでした
少年とレアは森の入口へ、ピクニックに行きました
森にはときどき魔物が現れますが、少年は戦いの心得と、親から譲り受けた剣を持っていたので、全く気にしていませんでした
二人はそれぞれお弁当を持ち寄りそれを交換したり、ゆっくり横になったりと、静かな時間を過ごしていました
そこへ、レアの家のとなりに住んでいる■■■が突然走ってやってきて、少し離れたところへレアの手をひいていきました
「彼なんか置いて」
「僕と付き合ってください」
レアは困ってしまいました
レアは、吸血鬼の少年とお付き合いをしていて、結婚まで考えていたのです
そもそもそんなことを言う人だとは思っていなかったので、驚いてしまって、なんと言えばいいのかわかりませんでした
少年もまた、困ってしまいました
なんと言えばいいか、あるいは何も言わない方がいいのか、全くわからなかったからです
二人共離れたところで話しているつもりのようですが、彼には聞こえていたのです
少年は人を傷つけることを嫌ったので、どうすればいいのかわからなくなってしまいました
「ご、ごめんなさい、■■■、私は彼とお付き合いをしているから……」
「……っ、なんで」
■■■は叫びました
「レアはなんでそいつを選ぶんだよ!」
「アイツはなんでレアに選ばれたんだよ!」
「魔族の穢れた血が混じってるくせに!!!」
吸血鬼の少年は、■■■を蹴飛ばしました
■■■はバランスを崩し、倒れてしまいました
次の瞬間、お腹がとても熱くなりました
■■■と少女の悲鳴が響きました
吸血鬼の少年は、持っていた剣を■■■のお腹に突き立てたのです
剣を引き抜き、切りつけました
■■■は激痛に身を縮こませ、少女は恐怖によって動けなくなってしまいました
「……」
ざしゅっ
「……」
ズサッ
「……」
グサッ
「……」
ビシャッ
吸血鬼の少年は小さく呪詛を吐きながら、■■■を肉塊に変えていきました
すでに息はありません
ただ、淡々と
「……」
ぐちゃっ
「……」
ぐちっ
「……」
べたっ
「……」
べちゃっ
肉塊は泥にまみれ、砂をかぶり、身につけていた布は小枝を巻き込み、ついにそれがなんだったのかすらわからなくなってしまいました
吸血鬼の少年はそこでやっと剣を振り下ろすのをやめ、ただ何も言わず、立っていました
少女はその惨劇を見て動けなくなりながら、それでも吸血鬼の少年を信じました
"神様、お願いします
今に彼は剣を取り落とし、泣き乱れるのでしょう
人を殺してしまったと、後悔し、落ち込み、ひどい自己嫌悪に陥るのでしょう
きっとそうに決まっています
そうでないと、決して彼と共に道を歩むことはできないのだから"
と
そして
吸血鬼の少年は剣を取り落とし、こう言いました
「ああ、服が汚れてしまった。母上に叱られる」
神はついに、少女の願いを聞き届けませんでした
最終更新:2016年04月29日 16:03