エイル·アルマ=カルマ

我々が産まれる少し前、1人の人族の女性が居た。
その女性は同じ人族の男性と恋に落ちた。

愛し合い、共に生きた。
女性も男性も歳をとった。

先に女性が逝く事が決まった夜のことだ。

  • 先に天国で待ってるわね

男性は涙を流しながら語った。

  • 私は人間ではないのだ。

  • 私は永遠に君のもとへ行けないのだ。

涙ながらに語る男性の手を女性が握るとある違和感に気づいた。

手の皺がない。
見るとそれは子供のようにハリのある肌になっていた。

  • 私は永遠に死ねないのだ。

  • 私は、私は、

涙を流す度に男性は若返って行った。
女性は見る事しかできなかった。

男性が子供の見た目までなると若返りが止まった。

  • 私は君が生まれるいくつも前から生きている。

何を言っているのか分かるわけがない。
何が起こっているのか分かるわけがない。

  • それでもあなたを愛しているわ。

  • もし、私が生まれ変わったらまた愛してね。

  • いくつもの愛を育んでね。

女性は笑顔のまま動かなくなった。
呼びかけにも応じず、手を握っても握り返さない。

男性だった子供は泣き叫びながら自身の腕を切り落とした。
そして、それを女性の腕と交換した。

するとどうだろう。

眠り続ける女性はみるみる若返り、初めて出会った時の見た目になった。

しかし女性は目覚めない。
そのうち、女性の身体からあらゆる生物の羽、鱗、角、等あらゆる器官が発現していった。

子供は女性だった何かを抱き抱えた。
まるで空の上にいる使者のような美しいそれを。

  • 君は永遠に行き続ける。

  • しかし、私の呼びかけに応えてくれることはないだろう。

  • 共に死ぬ方法をみつけよう。

  • 2人だけの城にいよう。

  • どちらかの身体が朽ち果てるまでともに

  • どちらかが新しい命を授かるまでとわに

子供の身体は子供の意思に関係なく、月を星空へ閉じ込めた。
愛する女性と美しい月明かりの中朽ち果てようと。
最終更新:2016年08月05日 10:37