ある昼下がり、いつもならぷぇぷぇウニョニョニョと騒々しい生産ギルド・ファイアワークスは不自然なほど静かであった
なぜなら今日は、殆どのギルメンでテルス平原へピクニックへ行っているからだ
冒険者の皆や生産職の人達は勿論、居候の外神グループやペット達、見習いギルメンの人達&少年ファイアワークス隊の子達も朝早くに皆で弁当を包み、十数台の馬車に乗ってテルス平原に向かったからだ
だから今日はギルドはおやすみ…なのだが、ギルドには人が居た、ロビーの机で算盤を鳴らし、ため息と共にペンを投げ捨てたその男はのっそりと立ち上がる
「やっと終わった…でも今からじゃ間に合わないな…はぁ」
それはギルド横にある何でも屋「花火屋」の店員にして、ギルドメンバーの商人・アラキである
花火屋も今日は臨時休店なのだが、アラキはうっかり発生してしまった帳簿間違いの修正のせいで、ピクニックへ迎えなかったのだ
グルルルルル、とロビーに腹の虫の咆哮が響く
「…よし、飯作るか」
普段は食堂でギルド付きメイドの
マリエールさんや多くの料理人のメンバーがご飯を作ってくれている
しかしアラキは今日は全員にピクニックを楽しんでほしいので、1人残って、得意ではないがたまにやる自炊をするといったのだ
「食材は皆が用意してくれているのがかなりあるからな…なんとかなるだろう」
倉庫にはかなりの食料素材がある…大半がモンスター素材だが
「…無難なものでいこう、食あたりしなさそうなやつで…」
「やはり作り慣れてるジャポネ料理か、でもいつもうどん作ってるから飽きてきた…」
ふと、彼にはもう一つ得意料理があることを思い出した
ずっと心の奥にしまい込んで、忘れようとしていたレシピ
「…俺はもう昔の俺じゃない
過去と向き合う時が来たのかもな」
そう言って食堂に向かう…
※かっこつけた台詞を言ってるが、これは料理の話である
材料は
トーフ 1丁
豚ひき肉 100g
ジンジャー 1欠片
ガーリック 1欠片
サムライネギ適量
イグ茄子 半分
アブナナ油 1滴
唐辛子 結構
その他、コッコ肉ベースの鶏ガラスープを初めとした調味料類
「まずはトーフの水を切ってきれいに切る
ジンジャー、ガーリックとサムラキネギはみじん切りに、イグ茄子はざく切りにする」
器用な手つきで切り分ける
「鉄鍋を熱し、油をひいて温まったら各種野菜と豆板醤を加える…辛いが香ばしい匂いだ」
「ここで豚ひき肉を加えて…色が変わってきたら混ぜておいた調味料を回すように加える
そして沸き立ってきたら豆腐を加える」
「そして弱火でしばらく煮て、水に溶いた片栗粉を回し入れ…しっかりと煮る
火の魔法があれば火力調整も楽なんだろうけどなぁ…」
「そしてアブナナ油を適量垂らして、残ったサムライネギを散らせば…」
完成、【簡単マーボー茄子トーフ】
熱い湯気と共に、香ばしい香りが
「…ディセプティオで、よく母さんに作ってもらってたな…
うん、冷めないうちに食べよう」
「いただきます」
炊いておいた白米と一緒に麻婆豆腐を黙々と食べるアラキ
「…うん、程よい辛さととろみ…美味いな」
「…母さんのものには及ばないけどな」
そういって、ただひたすら麻婆豆腐と白米を交互に食べるアラキ
面白みもない食卓、しかしそこには幸せがあった。
最終更新:2017年06月13日 20:05