テルミドール(thermidor)


甲殻類の古典的な料理法。
オマール海老や伊勢海老の身を半割にし、クリーム系のソースをかけ、チーズなどをふって黄金色に焼き上げたもの。
一見退廃的でシンプルに見えるが高価な食材をふんだんに使用し調理工程も多いため、通常は特別な機会に用意する料理として知られている。
日本でも結婚式の定番料理として良く出されるため、見たことがある方も多いと思われる。
1980年代には、エールフランスのニューヨークからパリへのコンコルドルートの機内メニューに登場するなどその気品は疑いようも無い。

まず香ばしく焼かれた表層のチーズや海老の香りが食欲をそそる。
匙でひと掬い、口へ放り込むとクリームやエビと一緒に香草やキノコの香りが爆発し鼻から通り抜ける。
そして咀嚼と共にマスタードと海老味噌の暴力的な旨味が口の中を蹂躙し、殴られたかのような多幸感を与えてくれる。
最早飲み物と言っても過言では無く、場が許すのであればわんこそばよろしく次々と平らげられる事間違い無い

その歴史は古く、1894年1月24日に、パリの有名レストランであるシェマリーで紹介された。
その夜、ヴィクトリアン・サルドゥの演劇「テルミドール」は、コメディ・フランセーズと呼ばれる劇場で初演された。
マリーは、劇「テルミドール」の初演に敬意を表して新しい料理を発売することにした。
その主題はフランス革命だったが、それは100年以上経った今でも政治的に敏感な問題であり、この劇はたった3回の公演で禁止された。
劇以上に長生きした料理とも言える。

最終更新:2021年01月16日 06:51