第6話 「闘覇の宴」 5

214 : ◆gnI8YzVxOo:2011/07/19(火) 23:01:44
正体不明の軍勢によるオーストラリアの制圧――連日Dコンのネットワークに溢れる真偽不明の情報。
連邦の見解――「要監視」。

「要するに、当分はオーストラリアに奴らを押し込めておけ、ということだ」
クーガー少佐は、無言。
クリストフ・アサイラムは首をひねった。
「しかし、アルカナに覇天王軍か……四世が生きていたら、何と言うだろうな」
アルカナと覇天王軍――共に異世界から出現した軍勢である。トウジロウ・サナダのことも、少佐はクリストフ翁には報告済みだ。
「あの蒼い機体の乗り手から、もっと情報を得たいところだな」
クリストフ翁が言う。異世界「アニロ界」、闘神機と呼ばれる機動兵器、アスケラ・ルクバートという少女。トウジが知っている情報は限られていたが、貴重な情報には違いない。
「クリストフ卿、エルトロス・アイカテリネについて、何か情報は?」
「彼女がホリゾントに派遣されたのには、R&Eコンツェルンが一枚噛んでいるということ以外は良く分からん」
「彼女は異世界について、何か情報を持っているようです」
「一応、マサト・ミツルギと近いうちに情報交換を行なうことになっている」
マサト・ミツルギ――元連邦軍中将にして現地球連邦政府議員・安全保障委員会副委員長。
「彼が地球連邦が不利益を蒙るような思想を持っていないのは知っている。が、裏は取っておくべきだろう」
「お願いします」
「……で、オーストラリアの正確な状況は?」
クリストフ翁の要請にホリゾントが各種データをホログラムで投影する。
『市民は覇天王軍による圧制に晒されています。これはいくつものニュースソースで確認された事柄なので、ほぼ確実だと判断出来ます』
「あのモヒカンどもか」
『はい、クリストフ卿。圧制による死傷者は既に一万人を超えています。被害総額となると、概算で――』
「そこまでだ、ホリゾント」
少佐は遮った。軍人が武力に対して何も出来ないという事態ほど、屈辱の一語が似つかわしいこともあるまい。
「それにしても……目的が気になるな。アルカナは念動力者を捜しているようだが……」
『覇天王軍の目的は、情報を総合すれば、武力による世界の制圧と考えられます』
「覇道、か」
ホリゾントの応答にクリストフは口元を皮肉げに歪めた。
「力ある者が全てを握る、アニロ界とは、まるで仏教の阿修羅道だな。
――そう言えば、漢字の『覇』とは打ち棄てられ雨と月光に晒される屍の意味があるそうだ。奇妙な符合だとは思わんか、少佐――」


215 : ◆RwKPe43EuA:2011/07/20(水) 00:07:43
「それにしても、異世界にきてまでご迷惑をかけてしまうとは……
お詫びの言葉もございませんわ、トウジロウ様」
そう言って、静香は深々とトウジに頭を下げる。
彼の口利きでホリゾントの格納庫のスペースを借り、風姫と雷姫の修理を一通り終えたところだった。
「この艦の方々にも、なんとお礼を申せばよいのか…」
「……」
つばめは回収された直後から、軍の者やトウジに感謝の意を示す以外では、あまり口を開いていなかった。
もともと人見知りで、おしゃべりな方でもないが、何かを深く考え込んでいる様子である。
(呼び止められなかったな…セレネさん…)
カチャカチャと音を立てながら、ジーナ先生譲りのツールボックスを整理する手つきにも精細がない。
(…助けてくれた。アスケラさんも一緒だった。
じゃあ、また私たちの味方になってくれたのかな…?)


216 : ◆vGTe9D4z5Y:2011/07/20(水) 00:55:09
215
「いやー、世の中、助け合いが大切ですから」
照れるように笑うケイト
先の戦闘ではほとんど損害を受けていないケイトは静香達を運ぶ際に、そこそこの活躍を見せたとか
「お二方も元気そうで安心しました!」
あの謎の集団が、撤退を終えた後も自力では動けなかったため、深刻な怪我でもしているのではないかと心配していたが、
このように元気そうな姿を見ると、ケイトも安心をする


217 : ◆tL.I1Fkj/Y:2011/07/20(水) 01:19:50
215
「まああれよ。袖触れ合うも多生の縁って話」

手をひらひら振ってそう言い切るのは、壁にもたれ掛かったエルトロスだ。
その傍らでは同意するかのように黒猫メランがにゃあと一鳴きした。

「そう言う訳だから行く所が無いなら私の方で何処か探してあげても良いわよ?」

──例えば、何処ぞの食堂とか。
笑みを浮かべながらそんな事を聞いてみるエルトロスだった。


218 : ◆FB0Vu0hpIc:2011/07/20(水) 02:41:00
215
「あ~、皆さんここに居たんですか。お疲れです」

つばめ、静香を迎える一団を見つけ赤紫の長い髪ね少女がトテトテと走って来る。
新米パイロットの藤村紫亜だ。
紫亜は初対面のつばめと静香を穴が開く程、充分に観察している。女性パイロットに対してやってしまう悪い癖だ。

「おっと。ごめんなさい。えへへ。私、藤村紫亜です。グングニールのパイロットやってます。…まだ素人なもんでなかなか前線まで出させてくれないんですけどね」

彼女も一応、ホリゾントの護衛で離れた所からモヒカンどもを迎撃していたのだ。
深くお辞儀の後に握手をして風雷の姉妹と軽い挨拶を交わす。
そして、おもむろに恐る恐る、気になっていた事を聞いてみる。

「とと////ところで……静香お姉様とつばめちゃん、どっちが受けなんですか?」

顔を僅かに紅潮させながら聞いたのがこんなことだった。きっと、皆唖然としているだろう。
黙っていればマスコット的な可愛らしい美少女なのだが、彼女は色々と実に残念な女だった……

220 : ◆rJzb6vv1uA:2011/07/20(水) 10:05:29
215
「なぁに、気にすんな!
こんなとこでであったのもなにかの縁だぜ。
まさか異世界で会えるなんてな」

旧友との再会に喜ぶトウジ
自分の世界の人間に出会うことはやはりうれしい

「この世界でわからないことは俺に聞いてくれよな!」

216
「その通りだぜ!ケイト
困ってる人間がいれば誰であろうと助けてあげねぇとな!」
(アスケラ、セレネ・・・・・・アリス。お前らも困ったら助けてやるからな)

遠くに思いを馳せる
昔からの友、一度は袂を分けた友、かつては敵だった友。まだいろいろと思うところはあるけど、今は前だけを見ていようと思った

217
「看板娘の獲得に余念がねぇな。
まあ、今の色気のないメンツだったら、躍起になって探すのも納得だけどな」

エルトロスの言葉にちゃちゃを入れる
最近、彼女をからかうことに楽しみを覚えだしたトウジ

218
「なあ、紫亜。受けってなんだ? 確かにこいつらよくやられるけど、わざとじゃないんだぜ?」

トウジに悪気はない

222 : ◆tL.I1Fkj/Y:2011/07/20(水) 12:28:34
215,218
「………………はぁ~~~っ」

いつも通り過ぎる紫亜の姿に、深く深く溜め息を吐くエルトロス。
そして慣れた様子で紫亜の背後に回ると、右斜め45°から鋭い手刀を繰り出す!

「このバカ紫亜! 初対面の人に対する最初の質問がそれか!」

これこそが日ノ出食堂恒例行事の一つ、エルちゃんのツッコミチョップである!
エルトロスは続けざまに静香とつばめの二人に向き直り、ペコリと頭を下げる。

「……ホントごめん。この子、こんなだけど悪い子じゃないから。笑って許して貰えれば有り難いわ」

真剣な様子で謝罪するエルトロス。
そして、そう言えばきちんとした自己紹介をまだしていなかった事に今更気付く。

「私はエルトロス。エルトロス・アイカテリネよ。困った事があったら遠慮無く言いなさい、出来る範囲で何とかしてあげるから」

その姿は全く持って威風堂々。
そして……その姿は、つばめ達の知るとある少女の姿にどこか似通っていた。

220
「……あんたは、昼時と夕時のあの店を知らないからそんな事が言えるのよ」

トウジのからかいの言葉に、何時もとは全く違う疲れきった声色で返答するエルトロス。
そう、その時間帯の日ノ出食堂は、敢えて言うならば……地獄なのである。
もっとも、仮に静香とつばめがバイトに入ったとしても、今度は二人目当ての客が急増して状況はむしろ悪化しかねないのだが。
その事にエルトロスはまだ気が付いていない。


223 : ◆FB0Vu0hpIc:2011/07/20(水) 15:16:28
222
――後方から殺気。
チョップが繰り出されている。いつまでも攻撃を受けていては身体的につらい。
紫亜はエルトロスにせめてもの抵抗を見せようと向き直り……

「真剣白羽取りぃィ!!」

ガツン!!パン!
チョップが直撃した音と白羽取りをミスして虚しく合掌した音。
エルトロスのチョップは紫亜の頭に完璧に打ち込まれた。衝撃に脳が揺れる。

「いだいっす。じちょうしまず。出力50%ぐらいでいぎまず……」

時折、暴走しては年下のエルトロスにツッコミを入れられる。情けない……。

220
「そういう意味では無くて……はは」

何て言うか単純な人だ。エルトロスが睨みを利かせているので説明は誤魔化した。

「私だってよくやられますよ。右腕のセトルなんてあれでもう三代目なんですよ?」

せっかくの最新装備もあまり活かせているとは言い難い。敵に奪われたTEXナンバーと相対した時に二度破壊されているのだ。


224 : ◆vGTe9D4z5Y:2011/07/20(水) 16:06:00
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意味はよく分からないが、彼女の表情から碌でも無い質問であることは伺える
はぁ、とイータはため息をつく
「私は攻めですね。攻めのほうが楽しいですし」
そう発言したのはケイト
もちろん、意味など分かっていない。スポーツの攻守と勘違いしていた


220
「はい!そうですよ。いやー、元のトウジさんに戻ってよかったです」
最近トウジの様子がおかしいことを心配していたようで、元気そうな姿を見てほっと一安心する
やはり、仲間のそういった姿を見ると、落ち込むものだ。今、ケイトはニコニコと笑みを浮かべている


「そういえば、自己紹介まだでしたね。私はケイト・ラインハルトって言います。そこでムスッとしてるのはイータ・ラングレンさんです」
人見知りであるイータは遠巻きに見ているだけであり、ケイトが手を振るも、知らぬ存ぜぬを通していた


225 : ◆FB0Vu0hpIc:2011/07/20(水) 16:20:56
224
「ねぇねぇイータちゃん、そんな遠くでジトっとして無いで、こっちにおいでよ?楽しいぞ~♪」

紫亜は遠巻きに見ているだけのイータに手を振り、皆の方へ来る様に誘ってみる。
イータの方はどうであるか知らないが、紫亜はクラウソラス戦の時のイータとの連携以来“仲良し”になれたと思っている。


226 : ◆vGTe9D4z5Y:2011/07/20(水) 16:51:54
225
突然、紫亜からの呼びかけにビクンとするも、やはり、近寄ろうとはしない
「ねえ、イータちゃん。そろそろ、歩み寄っても良い頃じゃないかな」
「そうだぜイータ。俺はァ、あいつのことを嫌なやつだとは思わねェ。同じ部隊の仲間同士、人見知りも治さなくちゃいけねェだろ」
サクラとタツキが諭すように、声をかける
そして、有無を言う前にイータの背中をタツキが押した
よろめきながら、他のメンバーの方に近づいていく
「……よろしく」
イータは静香とつばめの二人にぺこりとお辞儀をする
「それと紫亜、改めてよろしく」
きちんと挨拶をしていなかったことを思い出すと、そう言って、頭を下げた
やはり、たどたどしい感じだが、以前に比べたらずっとマシだろう


227 : ◆FB0Vu0hpIc:2011/07/20(水) 18:04:54
226
「こちらこそ、だよ。私、まだまだ弱っちぃけどさ、ヨロシクね?」

にかっと笑いサムズアップをしてイータに応える。


229 : ◆RwKPe43EuA:2011/07/20(水) 22:48:49
216
「本当に、ありがとうございます。
私たちでお役に立てることがあれば、何なりとお申し付けください」
呑気な様子のケイト相手にも、静香は丁寧な態度を崩さない。
そんな様子が彼女の苦労性な一面を伺わせる。
「い、一応メカの整備でなら、お力になれるかと思います」
つばめはといえば、初対面の相手に囲まれて緊張しているようだ。

217, 218, 222, 223
「受け…?」
つばめは小首を傾げる。
そのとき、エルトロスの鋭い突っ込みが紫亜を直撃した。
「い、いえ、お気になさらないでください。
紫亜様のお人柄の良さは、回収していただいた折りに心得ていますから」
?マークを頭上に浮かべたつばめの前に立ち、苦笑しながらエルトロスに接する静香。
まるで保護者同士の会話のようだ。
(それにしても、この方……)
似ている、と静香は思った。つばめも同様らしく、
初めて姿を見た際には目を見張っていた。
「はい。よろしくお願いしますね、紫亜さ…紫亜ちゃん、でいいのかな…?」
外見から紫亜を年下と判断しての呼び方だった。
少し気恥ずかしそうに、目を伏して確認する。

220
グサッ。
(あれ? 今何か鋭いものが刺さる音が…)
トウジの言葉に一瞬静香の笑顔が固まったように見えたが、たぶん気のせいだろう。
「あ、あの、トウジさん」
つばめがひょこひょことトウジに近づき、小声で話しかける。
「トウジさんやアスケラさん達の他にも、私たちの世界から飛ばされてきた人はいるんですか?
たとえばリコさんや、マナさんや…カイルさんとか…」

224,226
「ええ。よろしくお願いしますわ、ケイト様」
とても親しみやすいケイトの態度に、静香は安堵の笑みを返す。
「えと…イータちゃんも、これからよろしくね」
人見知りという点で親近感があるのか、つばめも柔和な姿勢でイータに挨拶する。

243 : ◆FB0Vu0hpIc:2011/07/20(水) 23:39:34
229
「痛たたた……。私は16歳なんだよね、実はさ。一応、法律上は結婚だって出来るんだけどね。つばめちゃんもそのぐらいの年齢じゃ無いかな?」

チョップに痛む頭を擦りながら見た目では間違われがちな自分の年齢を先に言っておく。
しかしエルトロスと数センチしか身長が変わらないのは問題だ。しかも向こうはこれから成長期を迎えようという年頃だ。
年齢が同じでも、つばめとはえらい違いだ。

248 : ◆vGTe9D4z5Y:2011/07/21(木) 00:35:00
229
「よろしくお願いしますね静香さん、それにつばめさんも!」
静香の手をとって握手をし、消極的なつばめに対しては強引に手を取ると、手をぶんぶんと振り回した
「うん、よろしくつばめ」
イータはさっ、と手を差し出す
どうも、彼女の方も人見知り同士、つばめに親近感がわいたようだ

249 : ◆tL.I1Fkj/Y:2011/07/21(木) 01:03:49
223
「ええ、そうしなさい……それと私に抵抗しようなんて百年早いわよ」

頭を抑える紫亜を見て、偉そうに踏ん反り返るエルトロス。
口振りと言い姿と言い、実に自然体で偉そうだ。
ある意味エルトロスらしいと言えるし、日ノ出食堂ではわりかしよく見かける光景ではあるのだが。

224-227
(この二人の遣り取り……何だか、和むわね)

イータと紫亜の交流を見て、何故かにゃんこ同士のじゃれ合いを連想してしまう。
幸い表情に出す事は防げたが、エルトロスは内心で大いに和んでいた

(それに、どっちも良い煌波の資質を持っている……叩けば叩いただけ伸びそうね)

直後、二人の念動力的な資質を思い起こし、にんまりとした笑みを浮かべる。
その笑みは何かを企んでいるような、何処か悪党じみた物であった。

229
静香の言葉に、エルトロスはあからさまな様子で一安心した。

「そう言って貰えれば助かるわ……変な所はあるけれど、基本は良い子だからね」

なんだかんだ言っても紫亜の事それなり以上に認めているエルトロスは、静香に小声で囁く。
紫亜の耳に入ったらまた調子こく可能性があるから、間違っても声を大にはしないが。

「それと、聞きたい事があるなら言ってみなさい。答えられる範囲内なら答えるわよ」

初対面の時に目を見張っていたのを察していたエルトロスは、尋ねないのかと問い掛けてみる。
……まあ、実際の所二人の事は姉経由である程度耳にしている。
だからこそ、二人が自分に姉の姿を重ねたのだろうと、そんな風に推測していた。

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最終更新:2011年08月19日 19:25
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