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 早朝6時半。
 囚人たちの檻が開錠される時間。
 アビス中庭の人工太陽が、灯りを少しずつ取り戻す頃。

『マジかよ……』
『酷いな』
『こうなっちまうとは』

 ある独房の入り口に、囚人、看守を問わない人の群れができていた。
 中にはオルドロス=ティガードの死体。
 全身が湿疹で覆われ、口から泡を吹き倒れていた。

 彼の傍に落ちていたジャムサンドを、検屍担当の係が調べていた。
 その場で結果が出、房の中にいた刑務官同士が目配せする。
 ジャムサンドには、彼の食事では普段抜かれているはずのアレルギー成分が入っていた。

 囚人の野次馬は、看守の制止も効かずどんどん増えていた。
 タイガーファングのボスの死。
 キングス・デイに及ばずとも、アビスの内外で脅威を振るっていたはずの組織のボス。
 ギャングの首領として策謀を巡らせていたとはいえ、本来なら今日、模範囚として出所するはずだった。

 その死は、アビス内でゴシップのネタになるには充分だった。

「………」
 ティガードの死体を見に集まってきた囚人たちの群れ。
 その中に、エネリット=サンス・ハルトナはいた。
 男の亡骸を見ながら、ポケットの中のコインを手で弄っていた。







 ティガードが死亡する前日、エネリットは彼と会っていた。

「ティガードさん」

 昼食を終えた13時。
 囚人たちが休憩時間、各々の時間を過ごす共用広間。
 そこで一人チェスをやっていたティガードに、エネリットは声をかける。
「……あぁ、君か」
 ティガードはエネリットを見上げると、にこやかにコインを差し出すその様に肩をすくめる。 
「付き合ってくれませんか?」
「やれやれ。我が一族のコインを遊びの誘いに使うなんて、君ぐらいのものだ」
 満更でもない風を見せると、ティガードはエネリットを隣の席に座らせ、チェス盤を彼に向けた。

 かつて面会で顔を合わせた後、エネリットはコインを使いティガードに度々会うようになった。
 様々な大人の思惑が渦巻くアビスの内情を教わる事もあれば、必要なものの融通、あるいはただの遊び相手として彼に会うことも多かった。
 ティガード個人としては、一族の財産を渡したことで子供の遊びに付き合わされるのは計算外だったがーー彼自身もエネリットと接することで満更でもない思いを抱いた。
 実際、彼も肩の力を抜き付き合える友人が欲しかったのだろう。
 ティガードは、子供がやっても問題ない健全な範囲での遊びを教え、エネリットもそれに応えた。

「出所、おめでとうございます」
 駒を交互に動かし合いながら、話す。
「ありがとう。結局君をうちに雇えなかったのが、この刑務生活で一番のミスだ」
 盤面に駒を置く。
「生憎、僕はここでやりたい事があるので」
「『復讐』かい?」
エネリットの手が止まる。
「……ええ」

彼の手が止まったのはそれきりだった。
再び駒が交錯する。
「まぁ、君のやりたい事だ。否定はしないさ」

盤面のお互いの駒が、少しずつ討ち取られていく。
ティガードは倒したエネリットの駒を墓場まで持っていく。
「だが、今はヴァイスマンがここを見張っている。アビスの構造上の問題や、システムAも脅威だがーー彼の目の届かぬことで、よからぬ事をするのは不可能に近いよ。私とその仲間も、ヴァイスマンのせいで大っぴらに動けなくなったしね」
「それでも、やりたいんです」
 エネリットのポーンの駒が進む。
「そうか、まぁ……」
 ティガードがルークの駒を動かす。
「私個人としては、前途有望な君を外に出してあげたかったがね」
「……ティガードさん」
「『復讐』、立派な目標で大いに結構。だが、これは個人的な一人の大人としての意見だがーー『復讐』だけをただ一つの人生の軸とするのは危うい。ーー君はまだ若い。仮に『復讐』を何某かの形で終えたとして、それ以外の軸も持っていた方がいい」
「ふふ。つまりティガードさんのような、チェスができる友達をもっと持てという事ですか?」
「それもある意味では合ってるが……照れちゃうなぁ」

 気づけば、エネリットのポーンが相手のキングを捉えていた。
「チェックメイトです」

 ティガードは目を丸く、少し遅れて笑った。
「……ははっ。チェス、上手くなったねぇ」
「あなたに鍛えられたもので」
「ギャングのボス相手に接待せず、本気で倒すとはいけない子だ」
 エネリットは目を伏せ、微笑む。
「貴方自身、接待など望んでいないはずです。本気の相手と戦うのがお好きなようだから。ーー何より、僕もあなたと競うのが凄く楽しい」
 ティガードは満更でもない風に口を緩ませた。
「さすがアビスの申し子。……人をたらすのが、本当に上手いねぇ」

 チェス盤を片付けた後、二人でだらだらと話した。
「ティガードさんはこの後、面会に呼ばれているんでしたっけ。誰ですか?」
「ルーサー=キングだよ。昨日、『14時に話したい事がある』と言伝をもらってね。君もキングの名前ぐらいは聞いてるだろう?」
「ええ、知っています。恐ろしい方ですよねーー大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ。ちゃちゃっと片付けてやるさ」
 ティガードのウィンクに、エネリットは微笑んだ。

「ーーティガードさん。出所したら、何をしたいですか?」
「まぁ、やりたい事は色々あるがーー」
 ティガードは腕を組み、唸る。
「当面は組織の立て直しに追われるだろうなぁ。キングス・デイに一矢報いるまでに、相当忙しくなるだろう」
「やりたい事も、しばらくはできないんですか?」
「まぁそうなるだろうが、真っ先にやりたい事はーー」
 ティガードは目を細める。

「故郷の一族の墓に行って、花を供えたい」

 ふいに、彼がここではない遠くを見ているようにエネリットは思った。



「ーー一族で最後に生き残った僕だけが、それができるから」

 ティガードは、ぼやくように言った。





 14時。

 暖色の電気が灯っているはずの特別面会室は、何故だか凍え、荒涼とした空気を帯びていた。

 ティガードが部屋に入ると、先に待っていたルーサー・キングがテーブルの向かいから穏やかに微笑んだ。
 ティガードも強張った笑みで微笑み返す。
 テーブルには、キングが用意したと思しき上等な紅茶と、粉砂糖を振った四角い揚げ菓子があった。

「呼び出しに応じてくれてありがとう、オルドロス=ティガード。そして、出所おめでとう。しがな一組織の長として、君を歓迎しよう」
「ああ。……ルーサー=キング」
「娑婆にいた頃の君のネオス、大層困ったよ。君がでかい魔獣になっちまえば、どんな鋭利で頑強な鉄もぶ厚い皮膚で立ち所に弾かれる。あれには手を焼いたさ」

 ティガードは椅子に座り、キングと向かい合った。

「この揚げ菓子は一体?」
「うちの傘下から抜け出した奴がベーカリーを開いてな。ベニエって言うんだ。目玉商品らしい」
「へぇ」
「俺の故郷とも所縁のある菓子でもあるから、紹介したかった。まぁ、自由に食ってくれ」
 ティガードは笑みで返すが、ベニエに手は出さなかった。
「先に、貴方のお話を聞かせてくれるかい?なぜ、私を呼んだのかな」
「まぁな……頼み事があるんだ」
 キングは目を細める。重たい空気が部屋を支配する。
「先んじて言っておくが、これから言うお願いを聞いてくれれば、タイガーファングの活動の邪魔はしない。
 俺達の縄張りに少々悪さをされても大目に見よう。その上での、お願いだ」
「……へぇ」

 キングは一呼吸置き、言った。
「二、三消して欲しい奴らが、娑婆にいる。俺じゃ手を出せない奴らを、君に始末してもらいたい」

 ティガードは目を細める。
「……それは、絶対にやらなければいけない事かい?」
「強制というより、懇願だ。俺はこの通り檻に入れられていてな。中々外へ手が出せないんだ」
「君の申し出を受け入れたとして、メリットはあるのか?言っておくが、『君から我々に手は出さない』以上のものだ」
「そうだな……報酬は多く用意する。金や土地だけでない、一人ずつ消すたびに相応の物を手配しよう」
「私に頼む理由は?」
「君がこれから出所するのもある。だが、君がアビスに入れられてなお、タイガーファングは今日に至るまで組織として滞りなく活動できた。それを見越してのお願いだ」
「……そうか」
 ティガードは目を細めた。

 キングは肩をすくめる。眉の位置が変わる。
「それで、受けてくれるのかい?もし了承してくれるなら、前金として早速報酬を用意したい」
 ティガードは俯き、しばらく無言でいた。

 唐突に、ティガードが大口を開けて笑い出した。

「そうかそうか!キングさんはそれがお好みかっ。いいだろう、私の組織なら造作もないことだ。闇の帝王のお望みなら、邪魔者など始末してご覧に入れよう」

 キングは表情を変えず、身じろぎもせずただティガードを見ていた。
 彼はからからと笑っていた。
 しばらくの間、そうしていた。

 ふいにティガードの頭だけが、ぐにゃり、と変な方向に向き、その状態でキングを見た。

「……なんて言うと、思ったか?」


 ティガードは奇妙な頭の向きで、狂気めいた眼差しでキングを見た。

「はっきり言おう。ノーだ。断じて」

 キングは表情を変えず、男の話をただ聞く。
「貴様に一族郎党を惨殺された恨みを覚えていないとでも?
 キングス・デイから略奪を受けた我が部下達も同様だ。薄汚い老いぼれが。
 神話の時代から積み上げてきた我が一族の輝きと、ぽっと出の貴様の下らない取引など、比べるに値しない」
 ティガードが異様な姿勢でキングを睨みつける様は、中世の寓話に出てくる怪物のようだった。
「ルーサー=キング。言っておくが私が出所すれば貴様はもう手が出せない。
 娑婆に出たら欧州中の部下をかき集めキングス・デイを潰してやる。
 我が優秀な構成員たちの総力を上げて、だ。お前が本物の太陽を見れる日など二度とない。
 おまえは獄中で野垂れ死んでーー」

 その時。
 ルーサー=キングが怪物めいた面持ちのティガードと目を合わせた。

 キングはゆっくりと口元を釣り上げる。
 相手に合わせたその黒目は、どこまでも深い闇を湛えていた。

「ーーッ、」

 ティガードはその眼差しを見、正気に帰る。
 多弁だったその口を咄嗟に閉じる。

「そうかそうか」

 キングは、やれやれと言った面持ちで息を吐く。
「受けてくれないか。ーーだが、おかしいな……」
 目を細め、低い言葉で喋る。
「……何がだ」
 ふいに黙らされたティガードが、虚勢を張ろうと発した言葉はこれが精一杯だった。
 キングは口を開く。
「なぁ、お前さん。ランド=ラゴを知っているか?」

 ランド=ラゴ。
 組織の規律を乱すため手を焼いていた男。
 エネリットにより両脚を失い、医療房へ送られたきり消息が途絶えたはずだ。
「……どうしてここでラゴの名が出る?」
「あいつに義足をくれてやったら、大層喜んでくれたんだ」
 怒りと戦慄を堪えるティガードに対し、キングは肩の力を抜き話す。
「そしたらあいつ、お前さんの愚痴をペラペラと喋ってくれた。
 てめえの今の話だと、タイガーファングは組織内での結束が随分強いようだが……ラゴの話は信じられねぇな」
「貴様……」
 ティガードの怒りと戦慄の感情に、焦燥の色が混じる。
「所でお前さん、人には言えない弱みがあるんだって?信頼が厚い家来とやらにも話していない、な」
「貴様がそれを持ち出した所で、私の答えは変わらない。残念だったな、牧師。時間の浪費だ」
 ティガードは歯軋りしながらキングを睨む。
「そうか」
「私は帰らせてもらーー」
「食わないのかい?」

 黒い指がテーブルのベニエを指す。

「食ってくれないのかい?」
「……」
「ベニエ。なぁ」
「……」

 ティガードは、返事もできずに身を強張らせた。
「俺は遅めの昼飯を食べてな、腹一杯なんだ。貧乏育ちだから、無駄にしたくねぇんだよ」
 キングは楽しげな笑みを浮かべる。
「獰猛な魔獣に変化するティガード坊やは、ベニエ如きで怯むのかい?」

 ティガードは、返事もできずに身を強張らせた。
「俺は遅めの昼飯を食べてな、腹一杯なんだ。貧乏育ちだから、無駄にしたくねぇんだよ」
 キングは楽しげな笑みを浮かべる。
「獰猛な魔獣に変化するティガード坊やは、ベニエ如きで怯むのかい?」

 ティガードは、何も言えなかった。
 アレを食べたら自分は死ぬだろう。
 食べる必要性も、どこにもない。
 無理やり突っぱねて部屋を去れば、食べずに済む。

 だが。
 そうはできなかった。

 テーブルの皿を強引に奪い、皿に乗ったベニエに齧り付く。
 粉砂糖で口が汚れるのも構わず、品のない食べ方で貪り、咀嚼する。
 キングの方に意識は向かなかった。向けたくなかった。
 飲み込む。
 荒い息を深呼吸で抑え、無理やり落ち着かせる。
 ーー身体に異常はない。

 ひどく惨めな気持ちになるのを誤魔化し、ティガードは血走った目でキングを睨む。
 キングは肩を竦め、笑いを堪えていた。 
「よかったよかった。がっつく程うめぇか」
 そして続ける。
「アレルギーフリーなんだとさ、そのベニエ。そんな物は食ったことねぇからどういうモンか半信半疑だったが……気に入ってくれたみたいでよかったぜ」
「……ふざけるな」
「あ?」

 刹那、ティガードの身が獣のように跳び上がり、キングの頬を思い切り殴りつける。
 椅子が音を立てて倒れる。
 キングの身体は宙に吹き飛び、壁際に背を打ちつけた。

 キングが頬をさすっているとティガードが接近し、キングの胸ぐらを掴んだ。
「殴る事はねぇじゃねぇか……」
「ーー驕るなよ、黒い猿が」
「なんだと?」

「おまえは仮初の猿山でボスになったように気取っている。だがそれだけだ。
 そんな物、次々とやってくる新しい猿が簡単に打ち砕く。
 おまえはそこから目を背けて無理やり流れを堰き止めているだけの老害だ。
 王を気取っていられるのはいまのうちだーー」

 ティガードは歯茎を剥き出し、瞳孔の開き切った目でキングだけを見ていた。
「いつか必ず、おまえのプライドも、尊厳も、何もかもずたずたにずる奴が現れる。
 それまでせいぜいこの檻で余生を過ごすんだな。
 時代の流れについていけない哀れな老いぼれが」
 キングは胸ぐらを掴まれれたまま、表情を変えずティガードを見た。
「ーーそいつが、てめえだと言いたいのか?」
「まだ喋るか?次は目を狙ってやる」
「無理言うな。明日は出所の日だろう?」
「………ッッ」
「ーー侮るんじゃねぇ。てめえも所詮、檻に入ったただの猫なんだよ」
 キングは不利な立場にも関わらず乾いた笑いを上げる。
 ティガードはこれ以上何も言わなかった。
 ただキングを睨みつけ、視線を外し、歯軋りしながら俯き、何も言わず身を震わせる。
 しばらくそうしていたがーーぞんざいにキングの襟首を放り出し、立ち上がって彼に背を向けた。

 ティガードは、よろめきながらドアへ歩いてゆく。

「ティガード坊や」
 壁によりかかったままのキングが相手に呼びかける。
 ティガードは、何も言わない。
「出所、おめでとう。俺を殴った事は不問にしてやる。
 大丈夫、俺は何もしやしねぇさ。
 出所まで、好きなことをして過ごすといい」
 ティガードは相手の話を聞いていないのか、振り向かず、ドアを開けた。

「ーーあばよ」
 キングは言った。






 夕方、共用広間でエネリットが見かけたティガードの姿は、ひどくやつれていた。
「ティガード、さ……」
 エネリットの呼びかけにティガードは応じずに通り過ぎる。
 広間の奥の廊下へ向かうその後ろ姿は、幽霊に取り憑かれた亡者のようだった。
「……ティガードさん」
 エネリットは彼を見て察した。
 ティガードもまたキングに生命を吸い取られたのだと。
 キングが収監された年数はまだ浅い。
 だが、彼に目をつけられあるいは抗った者たちは、エネリットの知る限り全てが人生を奪われた。
 殆どが幽鬼のようになった。今のティガードのように。
「……あなたも、ダメだったんですね」
 せめてその様をこれ以上見ないようにと、その場を離れようとした。
 だがその時、遠くにいたティガードの方から振り向いた。
 エネリットは怪訝な顔をする。
「……?」

 ティガードはエネリットに向け、微笑んだ。

 申し訳ないような、何か大きな失敗をしたような、なんとも言えない笑顔だった。
 しかしその根底には、エネリットへの感謝がかすかに、だが確かに存在していた。
 しばらくそうしていたティガードは、再びエネリットに背を向け、その場を去った。

「……ティガード、さん」

 エネリットはその場に取り残され、ただ立ち尽くしていた。


 エネリットが俯き、踵を返そうとした時、

「おぉいエネリットっ!」
 唐突に聞き慣れた老婆の声がして、彼は振り向いた。
「……イリアお婆さん?」
「まったくこんな所にいたのかい!探したよっ」
 イリア婆さんが、いつもの調子でぴょこぴょこしていた。
「ごめんなさい。もう、夕飯の時間でしたね」
「そうだよまったくっ。一緒に食べる約束をしたじゃないかっ!」
 小柄なイリア婆さんに、エネリットはついていく。
「そういえば、エネリット」
「?」
「エミルも待ってるんだ。あの子は寂しがり屋だからねぇ、早く行ってあげないと」
「……そうですね」
 この時、エミルはもう亡くなっていた。
 だが、エネリットはそれを持ち出す事はせず、イリア婆さんが進むのに任せた。
「エネリット、エネリット……エネ……」
 イリア婆さんがエネリットを見る。
「……エミル?」
「……ええ。僕はエミルですよ」
エネリットは微笑んだ。






エネリットとイリアは食堂へ行く。
そういえば今日は監獄調理師のオルカンが『急用がある』と休みをとっていた。
夕飯は外の工場から外注したメニューになるだろう。
何が来るんだろうか、とエネリットは思う。

たまにある外からの料理、ジャムサンドが美味いんだよな。
ティガードも、あのジャムサンドが好きだった。
よくわからないが特別な材料を使って、アレルギーの子供でも食べられるようにしているらしい。

食堂に入ると、料理の匂いが鼻をつく。
ティガードはいなかった。
その場にいた看守に聞くと、房に料理を持ち込んだらしい。
『一人になりたい』と。
エネリットは夕方のティガードを思い出し、『そういう時もあるよな』と納得した。

今日できなかったティガードへのお祝いは、明日しよう。
だが、そんな事は永遠にできない確信もどこかであった。
踏み込んではいけない部分に土足で上がり込むほど、エネリットは遠慮を知らないわけではない。
明日どうなろうと、『そういうものだ』と割り切るしかないのだ。



エネリットは、今までそうやって生きてきたのだから。

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最終更新:2026年04月15日 22:24