第10回トーナメント:準決勝②
No.6221
【スタンド名】
カラー・オーケストラ
【本体】
小野乃木 小町(オノノギ コマチ)
【能力】
色の持つイメージを現実化させる
No.3761
【スタンド名】
リトル・テンポ
【本体】
照屋 風夏(テルヤ フウカ)
【能力】
物体の魂「九十九神」を操る
カラー・オーケストラ vs リトル・テンポ
【STAGE:夜の街】◆LglPwiPLEw
プシュ━━━━━ッ!
小町「♪くちぃ~をひらけばぁ~ ぅわかぁ~れるとぉ~
ささったぁ ンまんまのぉ~お ぅわれがらすぅ~♪」
玉を転がすような声で演歌を歌いながら、ガード下の壁にスプレーでグラフィティを施す少女が一人。
その服は雪のように白い和服だ。
一見してちぐはぐな趣味を持つ少女の名前は『小野乃木小町』。
彼女は落書きするためではなく、ある“待ち合わせ”のためにこの場所に来ていた。
小町「いや~絶好のペインティングスポットだねここ!
しばらく通っていっちょド派手なの残しちゃおうかな~」
自分が描いたカラフルなグラフィティを眺めながら、小町は満足気に独り言を言った。
グラフィティにはルールがあり、元からある落書きの上に施す場合には、元よりも手のこんだものでなくてはならない。
小町には、元々この場にあったグラフィティに上書きできるほどの実力があった。
小町「・・・って、そんなことのために来たわけじゃあないんだよね、っと」
小町は『スタンド使い』達が集まって行われる『トーナメント』に出場し、見事1回戦を勝利したのだ。
そして2回戦目のバトルが、これからこの付近で行われる。
どんなスタンド使いが、どんな戦いを挑んでくるのか分からないのだ。
チラリ
小町「ん?」
ふと近くからの視線を感じ、小町はガードの向こうに目を向けた。
そこには、一匹の子犬のような影がいるのが見えた。
サーッ
その影は、すぐさま歩道の向こう側に隠れてしまった。
小町「あれって・・・」
普通の子犬ではない、異質な存在感を放っていた。
もしかしたら、相手のスタンドが偵察しているのかもしれない。
小町「そーこなくっちゃあね・・・いくよ!『カラー・オーケストラ』!」
CO『・・・・・・』
狐のような頭をもった小町のスタンドが、彼女の傍らに立っている。
小町は、先ほどの子犬のようなものが隠れた場所に向かって軽い足取りで歩いていった。
* *
風夏「も~遅れちゃってるよ~!」
『フゥが寝過ごしたから悪いんでしょ・・・』
半身が犬のような奇妙な存在とともに、少女が街の中を駆けている。
彼女は「照屋風夏」。
小野乃木小町の対戦相手となる人物である。
傍らで走っているのは風夏のスタンド『リトル・テンポ』だ。
風夏「だって私って毎晩9時半には寝るもん! 夜遅いのは苦手なんだよぉ!」
人一倍バイタリティの高い風夏にとって、就寝時間は極めて重要だった。
当然、今の彼女のコンディションは絶不調である。
LT『そんなこと言ったって・・・時間と場所を指定したのは運営だし・・・』
風夏「それより! 試合の場所ってもう少しだよね!」
LT『・・・あぁ、そうだね! ○○駅南口近くのガード下―――』
バテーン!
風夏「ひゃあッ!!」
いきなり、風夏は派手に転倒した。
LT『もう・・・ちゃんと足元には気をつけようよ・・・
試合はこれからなのに・・・』
リトル・テンポがそう言いかけた時、風夏の足元の“異変”に気付いた。
LT『!? これはッ!』
風夏の足首には、何か「黒いもの」が絡みついている。
それは、風夏自身の「影」そのものだったのだ。
風夏「ひぃ! リトル助けてえぇぇ~~!」
LT『スタンドだっ! しまった、先に向こうから!』
リトル・テンポの判断は早かった。
咄嗟に戦闘の構えを取り、風夏を救い出そうとする。
??「待て!」
その時、近くから少女の声が響いた。
??「罪深き異形のビジョンよ―――我は汝の“対戦相手”ではない」
LT『誰だ!』
闇に紛れていたように、謎の人物が姿を現した。
その仰々しい口調の主は、黒と銀色のギラギラした装飾を全身に身につけた、派手な格好の女の子だった。
年齢は風夏と同じくらいか。
風夏「き・・・君は・・・?」
??「―――驚かせてすまない、我は今回汝らの血の儀式における“立会人”を務める者。
見ゆるは星、堕つるは陰。時に冥府の王にも並ぶ裁きを下す者。
名を『坂出紅璃珠(ばんで くりす)』と言う」
風夏「はぁ・・・」
LT『・・・?』
何やら凄い趣味をお持ちの方のようだが、とりあえず彼女が「立会人」であるということは理解できた。
風夏「え~っと、立会人さんがなんでここに?」
地面にうつ伏せになったまま風夏が尋ねた。
紅璃珠「そう―――それなのだが、今回の勝利は君に譲りたいのだ」
風夏「・・・は?」
風夏とそのスタンドは目を丸くした。
風夏「な、ななななんで!? まだ相手と会ってもないんだよ!?」
紅璃珠「―――星がそう告げている。汝と“対戦相手”は出会ってはいけないと。
どちらかを不戦勝にしなければ、なにかしらの災いが起こると―――
だから我は先刻に勝敗を決めた。我が大いなる星に誓って―――」
紅璃珠は手に握っていたコインを指で弾いた。
風夏「ちょ、ちょっと待ってよ!」
風夏は慌てて起き上がりながら言った。
風夏「まさか、コイントスで決めたの!? 試合の結果を勝手に!?
そんなの納得できないよ! 相手の人は知らないんでしょ?
災いとかそんなの知らないよ! 私は戦う! 行こうリトル!」
不満を思い切り顔に表しながら風夏は歩き出した。
LT『・・・』
いまいち状況が飲み込めていないリトル・テンポも、無言で風夏の後についていく。
紅璃珠「行くのか―――我は止めない。
だが、既に我から妨害措置を取らせてもらった―――」
風夏とリトル・テンポの足元からは、「影」が消えていた。
* *
小町「おかしいなー、どこにいるんだろ?」
スタンドのような影を追う小町は、ガード付近をウロウロしていた。
謎の影は、小町の視界に現れては消えていた。
追いかければ追いかけるほど、こちらが弄ばれているような気がしてくる。
小町「まさか“罠”なんてことはないよね・・・『カラー・オーケストラ』?」
CO『・・・・・・』
小町のスタンドは何も言わなかった。
元々、自我を持たないスタンドなのだから仕方ない。
しかし、小町はしばしば意味もなく自分のスタンドに話しかけるのが癖になっていた。
小町「・・・あ! いた!」
ようやく、小町は相手の姿を見つけることができた。
暗くてよく分からないが、少女と先ほど見た犬のようなスタンドのシルエットが見えた。
小町「よし!」
気合いを入れて、小町はその影に向かって歩きだそうとした。
だが・・・
グググ・・・
小町「ん!?」
突然、身体全体が後ろに引っ張られるような感覚に襲われた。
小町「なにッ!?」
小町は相手のスタンドからの攻撃だと思った。
―――しかし、そうではなかった。
小町「え?? アレッ!?」
自分の身体を引っ張っているのは、他でもない自分のスタンド、『カラー・オーケストラ』だった。
小町「ちょ・・・戻って! どこいくのぉ!?
うわあああぁぁっ!!」
抵抗できないほどの強い力で、小町はグイグイとスタンドに引っ張られる。
身体全体が磁石になって引きつけられているかのようだ。
『カラー・オーケストラ』は何も言わないまま、相手とは逆方向に歩き続ける。
小町(とにかく止まらなきゃ!)
スタンドの能力、“色のイメージを現実化”を使って、身体をどこかに固定させようと試みる。
小町「トリモチ! トリモチ! トリモチ!」
小町の白い和服を鳥餅に変え、電柱に貼りつこうとした。
ペタッ
小町「んぐううぅぅぅ! ・・・ちょっと、急にどうしちゃったの・・・!」
必死に電柱にしがみつき、小町はスタンドにそう言いかけた。
小町「・・・あ」
先ほどの影の見えた場所を振り返って、小町は目を丸くした。
彼女が踏み出そうとした先は用水路だった。
丁度その場所だけフェンスが途切れており、あそこで前に進んでいたら真っ逆さまに転げ落ちていたはずだ。
しかも彼女は、身動きの取りにくい和服姿。
もし落ちていたら、それほど深くなくても無事ですまなかったかもしれない・・・
小町「助けてくれたんだ・・・『カラー・オーケストラ』・・・」
* *
小町の様子を眺めていた、立会人の紅璃珠は・・・
紅璃珠「―――我の幻影を見破ったのか? 幽波紋が救いだしたように見えたが―――
あの純白の衣を纏いし少女の潜在能力か?
―――いや違う、もっと、何か“罪深き因縁”の匂いがする。
非常に興味深い出来事が起こりそうな予感がする―――
―――フッ 予想外な事象だが、面白くなってきた。
星の運命(サダメ)を敢えて護らずに見守るのも面白いかもしれない。
彼女の犠牲以上の災いが生まれるのを知っていても―――」
* *
風夏「あれ~誰もいないよ~?」
LT『・・・』
約束のガード下に到着した風夏であったが、そこには誰一人いなかった。
ただ、塗りたてのペンキのような匂いだけが籠っている。
LT『ねぇフゥ・・・』
風夏「なに?」
LT『さっきの立会人、怪しいと思うよね?』
風夏「そりゃあ、格好とか話し方とかアレっぽかったけど・・・」
LT『それもそうだけど・・・確実にスタンド使いだよね。“影”を操ってる感じだった。
仮にそうだとすると、あの“忠告”も無視できない気がするんだ・・・』
リトル・テンポの言葉に、風夏は少し声を張って言い返した。
風夏「でもさぁ! 勝手にあの人に決められるのはルール違反でしょ!
私はちゃんとした試合で勝ちたいんだよ!」
LT『気持ちは凄くよく分かる。でも正直な話・・・僕もかなり“嫌な予感”がしてるんだ。
今回の相手は凄く「危険」な気がする・・・』
風夏「どうしてそんなこと分かるの?」
LT『うーん・・・』
小町「ちょちょちょちょちょ! 分かったから急がないで! もう引っ張らないでええぇ!!」
向こうから、女性の声が聞こえてきた。
風夏「あ・・・」
白い和服を着た少女。
その前にいるのは、何本もの尻尾を持った、二足歩行の狐のような存在だった。
風夏「あの人が対戦相手・・・?」
LT『だと思うけど・・・』
小町「あ! トーナメントの人ですよね! わ、私は小野乃木小町といいます!
この子は『カラー・オーケ・・・」
ブンッ!
風夏「ひゃあ!!」
LT『!?』
風夏に向かって猛全と歩いてきた『カラー・オーケストラ』は、何の躊躇もなく彼女に向かって拳を振るったのだ。
小町「えええええ!? 勝手になにしてるのおおおぉぉ!!?」
LT『逃げるよ! フゥ!』
風夏「ひいいいい~~~~!!」
足をもつらせながら、風夏は必死に逃げ出した。
CO『・・・・・・』
ドンッ
それを見たカラー・オーケストラは地面を殴りつける。
バテーン!
風夏「きゃあぁぁ~~ッ!!」
白いタイル貼りの地面がトリモチになり、風夏は足を取られてまた転倒してしまった。
小町「やめてよカラー・オーケストラ! どうして勝手に動くの!?」
本体の命令を無視し、強引に引っ張りながら、狐頭のスタンドは風夏に接近する。
風夏「リトル! 助けてえぇぇ!!」
LT『くっ!』
バキ! バキバキ!
今度は地面のタイルが剥がれ、宙に浮き始めた。
リトル・テンポがタイルの「九十九神」に命令を出したのだ。
タイルは空中で一ヶ所に集まり、巨大な足の形を形成する。
LT『地面のタイルはいつも踏まれているから・・・逆に“踏みたい”要求が強いはずなんだ・・・』
CO『!』
小町「うわああああ!!」
バキャアアア!!
巨大な足がカラー・オーケストラを踏みつけた。
能力が解除された一瞬を見計らい、風夏は立ち上がって駈け出した。
CO『・・・・・・』
尻尾と腕を使って、カラー・オーケストラはタイルの足を難なく砕いていた。
小町はもはや放心状態だった。
小町「・・・ほへ~」
風夏「ねえ! なんであのスタンド、私を殺しにかかってるの!? 恨みでもあるの!?」
走りながら、半分パニックの状態で風夏が言った。
LT『・・・あのスタンド・・・僕に「すごく近い」。
半分動物で、なにか曖昧な物を具現化するっていう能力も似てるんだ』
風夏「そ・・・それがどーしたっていうの!?」
LT『僕の予想が正しければ、あの本体はフゥの“滅茶苦茶遠い親戚”だ』
風夏「は!? 親戚ィ!?」
全く予想外のことを言われ、ますます頭が混乱する風夏。
LT『スタンド同士の波長で感じた。あの娘の先祖はフゥの先祖と何か凄い確執があったんだよ!
「血族の因縁」が、あのスタンドを勝手に動かしてるんだ』
風夏「インネンって・・・私のご先祖様が何をしたの?」
LT『それは分からない。でも一目散に襲ってくるくらいだから、結構えげつないことを・・・』
風夏「・・・き、キターーー!!」
背後から、小町を抱いたカラー・オーケストラが物凄いスピードで迫ってきた。
その動きは、まるで地面を滑っているようだ。
LT『しまった・・・“氷”か! 白い地面を氷に見立ててスケートみたいに・・・』
風夏「早く助けてよおぉぉ!」
LT『分かってる! 何とかして決着をつけないと!』
小町「・・・ふふふ、もう逃さないよぉ~」
地面に下ろされた小町は目つきが変わっていた。
風夏「あ、あんな人だったっけ!?」
LT『きっとスタンドの影響だよ!』
小町「九尾のスタンドラッシュを、食らってくたばれ!」
ギュン!
プシュ━━━━━ッ!!
小町「ぎゃあああぁッ!?」
突如、小町の顔に何かが吹きかけられた。
小町が持っていた、グラフィティ用のカラースプレーだ。
LT『あなたの服に、インクのような染みがついてますね? それはガード下にあった落書きのインクと同じだった!
つまりあなたはストリートアーティストで、スプレー缶を持ち歩いていると予想したんです!』
九十九神が具現化したスプレー缶は、リトル・テンポの近くに飛んできた。
小町「うう・・・」
LT『フゥ! アレは持ってるよね!』
風夏「うん!」
風夏はポケットからカッターを取り出した。
LT『風夏の私物のカッターです。僕の言うことを一番忠実に守る“フゥ自身のもの”!
降参しなければ、これをあなたの首に突き立てますよ!』
脅しをかけ、相手を降参させる作戦だ。
風夏(お願い、降参して・・・
リーナちゃんもだけど、私と大して歳の違わない娘じゃない・・・)
LT『・・・ハッ!!』
バッ!
急に、リトル・テンポが横に飛び退き、風夏を押し倒した。
バアアアァァァン!!!
風夏「きゃあああっ!!」
すぐ近くで、何かが破裂したような爆発が起こった。
小町「“赤”いスプレー缶を・・・自分の近くに浮かせていたのは・・・君自身のミスだからね・・・
中で発火させれば当然爆発するよ!」
風夏「痛・・・」
タラタラ・・・
風夏「う・・・うわああああッ!」
赤い塗料が付着した部分から、自分の血がどんどん流れていくのが分かった。
LT『しくじった・・・』
ビバババババ!!
風夏「ッ!!」
今度は全身に火花が走るような衝撃を受けた。
感電だ。
小町「“黄色”い点字ブロックの上にいつまでも寝てるのも君のミス・・・
うーん、女性だからミス・ミステイクだね」
風夏「ハァー、ハァー・・・」
風夏(ダメだ・・・死んじゃう・・・)
とどめを刺さんと、カラー・オーケストラが風夏に近づいてくる。
LT『無い・・・攻撃できる九十九神が・・・カッター以外に・・・!』
リトル・テンポも既にボロボロだ。
風夏は死を覚悟した。
風夏(怖いよ・・・)
沖縄の家族とも、友達とも、こんな場所でお別れとは。
風夏はそっと自分のスタンドに触れた。
風夏(ごめんなさい・・・興味本位でトーナメントに出たばっかりに・・・
天国に・・・リトルは一緒に来れるのかな・・・)
そこまで考えたとき、ほんの一瞬だけ、風夏に冷静な意思が舞い戻ってきた。
風夏(あれ? 私さっき立会人さんになんて言ったっけ?)
―――災いとかそんなの知らないよ! 私は戦う!
私、戦いたかったんだよなぁ~。
それなのに、今までビビりまくってリトルに任せきりにしてたじゃん。
そんなんじゃダメじゃん。
ここで諦めないでリトルと頑張らなきゃ。
私は―――「本体」なんだよ?
必死の思いで風夏は立ち上がった。
小町「うん?」
LT『ハァー・・・ハァー・・・
フゥ、ありがとう。その気持ち伝わったよ。
お陰でちょっとだけ・・・成長できたかも』
小町「カラー・オーケストラ! 戻ってきて!」
今度は小町の命令に従い、スタンドは後退する。
ユラァ・・・
立ち上がったリトル・テンポは、ゆっくりとした動作で相手と向かい合う。
LT『 「臨」 「兵」 「闘」 「者」 「皆」 「陣」 「烈」 「在」 「前」 』
九字を唱え、印を結んだ。
ブツン!
小町「!」
次の瞬間には、周囲が真っ暗闇になっていた。
街灯は全て消え、自販機の音も聞こえなくなった。
小町「て、停電!?」
LT『違いますよ。これは“召喚の儀式”です』
暗闇の中から、リトル・テンポの声が聞える。
小町「ハッ!」
オドロォォォ・・・
奇怪な音が小町の耳に入ってくる。
ものすごく低い、男の微かな呻き声のように聞こえた。
その音が、次第に周囲のあらゆる場所から鳴り始めたのだ。
小町「こっ、これは何!?」
LT『周囲のあらゆるものに宿った九十九神を、“物”という檻から解放したんです。
魂を失った“物”は機能しなくなってしまうけど・・・九十九神は自由に行動できるようになる!』
オドロオォォ・・・ オドロオォォ・・・
目が慣れてくると、「九十九神」とやらの姿が見えるようになってきた。
顔が3つある干からびた胎児のような姿。
体中に目玉がある巨大な芋虫のような姿。
胴体が脳味噌の足高グモのような姿。
一つ一つの姿が異なり、いずれも妖怪のように不気味な姿だった。
そんな九十九神が向かう先は・・・当然一つしかない。
小町「こここコイツら、私をどーする気なの?
何をしてくるの!?」
LT『さぁ・・・初めてのことなので見当つきませんね・・・
でも降参していただければ、いつでも能力を解除できますよ?』
暗闇の中のリトル・テンポはそう答えた。
小町「ぐぐぐ・・・!」
得体の知れぬ無数の怪物どもが周囲から迫ってくる。
その恐怖と、『負けたくない』という気持ちが小町の中で闘っていた。
小町「『カラー・オーケストラ』!!」
CO『!』
スタンドで九十九神を殴りにかかる。
スカッ
小町「うっ!」
ジュワジュワジュワ・・・
小町「きゃああぁぁぁッ!!」
『カラー・オーケストラ』のパンチは九十九神に当たらず、代わりに小町の腕が無機質な金属のようになってしまった。
LT『どうやら生物が九十九神に侵食されると・・・“物”に変化してしまうようですね・・・』
小町(どうしよう・・・どうしよう・・・!)
潔く負けを認めるか、自分がこのまま銅像のようになってしまうのか。
LT『早く、負けを認めてください!』
風夏「小町・・・ちゃん・・・」
LT『あれ?』
リトル・テンポが急に焦ったような声を出した。
風夏「どうしたの?」
LT『いなくなった・・・』
風夏「・・・え?」
九十九神たちは、目標を見失ってウロウロしていた。
LT『馬鹿な・・・完全に包囲されてたはずなのに・・・!』
風夏「リトル! 後ろ!」
LT『・・・おわっ!』
ドギャアァ!
背後に現れたカラー・オーケストラが、強烈なパンチを繰り出していた。
リトル・テンポはそれを間一髪で避け、スタンドの拳は地面を砕いた。
風夏「て・・・テレポートした!?」
小町「いいや・・・追い詰められたお陰で、『カラー・オーケストラ』も成長できたみたい。一応この子も“成長性-A”だからね。
私達は周りの“黒”い宵闇に同化して、好きな所に移動できるようになった!
私の方が一歩先を行ってたみたいだね!」
フッ
そう言って、小町とそのスタンドは姿を消した。
LT『まずいッ!』
リトル・テンポは必死に周囲を見回している。
小町の言うことが本当なら、どこから攻撃されるか分からない。
かといって今能力を解除しても、勝てる見込みはない。
風夏「もー、そんなに焦らなくていいでしょリトル?」
風夏はそう言うと、スタンドを介して九十九神たちに命令を出した。
パッ
すぐ近くにある街灯が、1つだけ点灯する。
そして風夏はその明かりの中に入り込んだ。
風夏「闇に紛れてるなら、私達だけ光の中にいれば入ってこれないよね?」
LT『そりゃそうだけど・・・これでどうするのさ?』
風夏「このカッターを・・・」
持っていた自分のカッターを放り投げる。
既に九十九神を戻しておいたカッターは、暗闇の中を音もなく飛び始めた。
風夏「これで相手を探知しよう! 場所が分かったら、また隠れる前に九十九神たちをけしかけるの!」
LT『そんな! この広い暗闇の中をアレ一本で探すの!?
っていうか・・・!』
リトル・テンポは、風夏の犯したミスに気付いてしまった。
LT『こんな目立つ光の中にいたら・・・!』
小町「おりゃあああ━━━━━━━━━━ッ!!」
能力を解いた小町とカラー・オーケストラが、目一杯の力を込めて殴りかかってきた!
ガツン!!
CO『!!』
小町「あっ!」
どこからか現れた鉄の板のようなものに、パンチを防がれた。
小町「しまっ・・・!!」
ピタッ
小町の後ろから飛んできたカッターは、彼女の首のところを紙一重で止まっていた。
風夏「・・・私の勝ちだよ、小町ちゃん!」
カラー・オーケストラのパンチを防いだのは、九十九神が具現化したマンホールの蓋だった。
小町「・・・君は・・・“あえて私を誘ったんだね”。光の中に入って・・・」
風夏「そのとーり! 頑張って考えたんだから!」
怪我を負っているにも関わらず、風夏は太陽のような笑顔で言った。
小町「・・・仕方ないね、私の負けだよ」
風夏「どうリトル? 最後は私の力で勝ったでしょ?」
LT『フゥ・・・』
* *
風夏「ごめんなさい」
試合の後、風夏は小町に向かって妙にうやうやしく謝った。
小町「えっ!? どうしたの?
私こそ怪我させちゃって謝らなきゃいけないのに・・・」
風夏「いや、小町ちゃんにもだけど、ご先祖様にもだよ」
小町「え? ご・・・先祖?」
風夏「私のご先祖様って、小町ちゃんのご先祖様に嫌なことしちゃったんでしょ? だからスタンドが暴走しちゃったんだよね。
だから私が、ご先祖様に変わって謝ろうと思ったの」
小町「?? 何のこと?」
LT『分からなくても大丈夫ですよ。
あなたのスタンドが、きちんとフゥの気持ちに答えてますから・・・』
小町「スタン・・・え? え?」
風夏「リトルの言う通りだよ! ねぇ、仲直り・・・の代わりに、私たちも友達になろうよ!
風夏っていいます! よろしく!」
小町には理解が及ばなかったが、風夏の屈託のない笑顔を見て、彼女も理由のない安心感を覚えた。
小町「・・・よろしくね!」
* *
遠くから2人の様子を見ていた紅璃珠の独り言・・・
紅璃珠「実に素晴らしいものを見せてもらった―――
血の因縁による幽波紋の暴走 闘いによる互いの成長―――
幽波紋にここまで未知なるチカラが眠っていたとは―――
そしてあの2人の結末―――こうなるとは想像できなかった。
勝敗こそ我の見た結末と変わらぬが
時を超えて血族が和解するとは―――
真の物語は「星の運命」ではなく「その血の運命」だった。
我も深く学ばせてもらった。
感謝するよ―――」
紅璃珠はそう言って夜の街から消えていった。
立会人・坂出 紅璃珠/スタンド名『マグマ』
* *
翌日のニュースはこう伝えていた。
ナレーター『昨日未明、○○駅付近で発生した停電と思われる事故より、始発から全線が運転を見合わせています。
この影響により、約20000人の通勤客の足に影響が―――』
LT『・・・なにかしらの災いってこれか・・・』
風夏「・・・ZZZ」
★★★ 勝者 ★★★
No.3761
【スタンド名】
リトル・テンポ
【本体】
照屋 風夏(テルヤ フウカ)
【能力】
物体の魂「九十九神」を操る
当wiki内に掲載されているすべての文章、画像等の無断転載、転用を禁止します。
最終更新:2022年04月17日 12:25