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第01回トーナメント:予選③




No.4451
【スタンド名】
テンポラリー・プレジャー
【本体】
マルコ

【能力】
「スーパーボール」を発射する


No.3000
【スタンド名】
アナザー・センチュリー・エピソード
【本体】
パウラ

【能力】
触れたものを「スライド」させる




テンポラリー・プレジャー vs アナザー・センチュリー・エピソード

【STAGE:博物館】◆aqlrDxpX0s




○○市海洋博物館


深夜2時、暗く静まり返った博物館の敷地内……庭の茂みの中から人影が現れた。
タンクトップにホットパンツ、ウエストポーチを身につけた、小麦色の肌をした少女。『アナザー・センチュリー・エピソード』を持つパウラだ。

パウラ「さあて……そろそろ行こうかな。」
*<気をつけなさい、敵はどこから来るかわからない。>
パウラ「はいはい、注意しながら進めばいいんだろ?」
*<いいですか、常に有利な状況に立つのです。>
パウラ「わかってるよ……センセイ。」

パウラは博物館の勝手口のドアノブに手をかける。ノブをひねるとドアはいとも簡単に開いた。
もちろん、いつもならしっかりと鍵がかけられており、館内の防犯システムも稼動している。
しかし今日だけはそれらの全てがはずされ、博物館はパウラを迎え入れた。
なぜなら、今夜ここは戦いの舞台になるのだから……。

館内:第8倉庫


ポン…… ポン……

倉庫とはいっても、この第8倉庫は展示品の一時保管室として使われており、今、室内には何もおかれていない。

ポン ポン ポン

天井が高く立方体の形をしたこの室内にいるのは、部屋の中心に立つ一人の男。

ポンポンポンポンポン

そして……室内を縦横無尽に飛び跳ねる『スーパーボール』。

ポンポンポンポンポンポンポン

男「何も変わらない……いつも通り……いつも通りだ。」

ポポポポポポポポポポポポポポポポポポ

スーパーボールは壁や床を弾むたびに速さを増し、常人では目で追うことすらできなかった。
……そう、『常人』なら。

男「………!!」

ブワッ!

男は指揮者のように両手を空に舞い上げ、手を止めた。
スーパーボールの弾む音が消える。彼の手には、両手に3コずつのスーパーボールが握られていた。

男「何も変わらない、いつも通り……向かう敵は全て動けなくするだけ。」
両手のスーパーボールは煙のように消え、彼……『テンポラリー・プレジャー』のマルコは倉庫の出入口に向かった。

大展示室


パウラ「おお~~デッケェークジラ……。」

体育館ほどの広さのある大展示室には、大小さまざまな展示品の入れられた巨大なショーケースの数々と、
天井からは巨大なクジラの剥製がいくつもの鎖に支えられて吊り下げられていた。

パウラ「この部屋には特に……変な様子はねェな。」
*<パウラ、奥を見なさい。>
パウラ「…………!」

パウラが見た先には、大展示室の隅にある階段があり、その上の扉の前に男が立っていた。
その男……マルコもパウラを捕捉していた。パウラがマルコに気がつくがいなやマルコはパウラに話し出した。

マルコ「ハロー、ボーイ。君が私の今回の相手かな?……写真で見るよりも若く見えるな。まだ子供じゃないか。」
パウラ「……これでも女だよ。それに高校生だ、子供なんかじゃない。」
マルコ「ああ、これは失礼。見た目で人を判断してしまうものでね。」
パウラ「……………」イライラ

顔をしかめたままパウラはマルコのいるほうに近づく。しかしマルコは扉の前から動かずに話し続けた。

マルコ「この壁についてるこれ……なんだと思う?警備員が緊急時に扉をロックするための機械さ。」
パウラ「それがどーした?」
マルコ「この機械は警備員が持つカギがなければ使えないんだけど、あらかじめ警備員室から拝借していた。もうあとはスイッチを押すだけでつかえる。」

カチッ

マルコは機械のスイッチを押した。

*<注意しなさい、パウラ。>
パウラは『声』に反応し足を止めた。
パウラ「センセイ……あいつ、どういうつもりなんだろう。」
*<わからない、でも様子を見たほうがいい。まだ相手の能力もみていないのだから。>

マルコ「これで僕の後ろの扉以外の扉を全てロックした。君が入ってきた正面入り口も含めてね。」
*<まだ動かないで。相手の出方をうかがいなさい。>
パウラ「……はい、センセイ。」

マルコ「さあ『みにくいアヒルの子』よ、君がこれから受ける試練は、童話とは比べものにならないぞ?『テンポラリー・プレジャー』!!」

ボボボボボボボボボボボボボッ!!!
マルコのスタンド、『テンポラリー・プレジャー』は手のひらから無数のスーパーボールを四方八方に発射した。
そして、発射した直後マルコはパウラに背を向けて扉に手をかけた。

パウラ「しまった!距離をつめるべきだったんだッ!」
パウラは再びマルコのいる階段に向かって走り出した。

マルコ「もう遅い!」バタン!

マルコは大展示室を出て扉を閉めた。

パウラ「クソッ…………痛ッ!」

パウラの頭にスーパーボールが当たり、床に落ちて転がった。
パウラ「びっくりした~。なんだこれ………スーパーボール?…………ッ!」

バッ!

パウラは飛んできたスーパーボールを身を翻してよけた。
パウラ「…………これは!」

ボンッ!ボン!    ポン!

無数のスーパーボールが大展示室じゅうを飛び跳ねていた。

*<動きを見極めるのです!永遠に動き続けるものなどありはしない!>
パウラ「うん!」

パウラは周囲を見渡しながら、向かってくるスーパーボールをかわし続けた。

パウラ「まだ……おわらないのかよ……痛ッ!」

背後から1個のスーパーボールがパウラの左腕に当たった。
パウラ「い……痛い……青くなってる。どうして?さっきよりも痛い……。」
*<何をやっているのですか!壁を背にするのです!>
パウラ「は、ハイ!センセイ!」

パウラは近くの壁に駆け寄り、壁を背に立った。


ボォン!  ドォォン!  パァァン!

パウラ「……………ッ!」

大展示室を飛び跳ねるスーパーボールはパウラがはじめ見たときよりも格段に速くなっていた。
それだけでなく、スーパーボールが当たったクジラの剥製は相当な重さがあるにもかかわらず、衝撃で揺れている。
そして時たま、スーパーボール同士がぶつかり合って激しい衝撃を伴って破裂している。

パウラ「どうして……おさまるどころじゃない、勢いが増している……?」

ドグン!!

パウラ「ぐああああああああっ!!」
パウラの右肩にスーパーボールが命中した。


マルコ「踊れ、踊れ、劇場のプリマ。孤独の舞台の上で、海の老兵の観客の前で!」
扉の向こう側でマルコは大展示室内の音を聴きながらつぶやいた。


パウラ「ぐぐぐ……っ」
衝撃を受けた右肩を手で押さえ、パウラは立ち上がった。ダメージはさっきよりも大きい。

パウラ「たぶんこれ……骨にヒビ入ってるな。」

大展示室にはまだ多くのスーパーボールが飛び交っており、もはやパウラはその軌道を見ることすら出来なかった。

パウラ「どうすれば……どうすればいい……?」

パウラは周囲を再び見回した。まわりにあるものは、ガラスが割れた巨大なショーケース、仕切りのポールとロープ、
いくつかの鎖が切れてブランコのように揺れるクジラの剥製……。

パウラ「なあんだ、簡単なことじゃないか。」

パウラは壁から離れて走り出した…………。





階段上の扉の向こうでドアに寄りかかっていたマルコは、大展示室の中が次第に静かになっていくのを待っていた。
スーパーボール同士で衝突すると、そのスーパーボールは破裂して消える。
したがってスーパーボール自体の勢いは増し続けるが、永久にはね続けるわけではないのである。

1時間ほどが経過し、マルコは室内のスーパーボールが数個になったのを音で確認した。
マルコ「テンポラリー・プレジャー、解除しろ。」


マルコはスーパーボールのなくなった大展示室に入る。
大展示室内は床中にショーケースのガラスの破片が散らばり、展示品のほとんどが床に転がっている。
クジラの剥製はわずか2本の鎖でのみ支えられ、ぶらぶらと揺れている。

しかし……パウラの姿はどこにも見つけられなかった。

マルコ「……扉も、壊されていない。血も流れていない。……どこへ行った?」

マルコは静まり返った大展示室内を歩いてパウラの姿を探した。


マルコ「…………」

マルコが一つの巨大なショーケースの前に立つと、あることに気づいた。

マルコ「このショーケースの前に倒れた仕切りのポールとロープ……すべてこちら側に倒れている。しかも、ショーケースギリギリのところで……。
    まるで、ショーケースに『押し倒された』ような……!」

ズズズズ……

マルコ「ん、何の音……?」

何か巨大なものが『引きずられる音』だった。マルコがふと上を見上げると、目の前のショーケースの上に、パウラがいた。
マルコ「なっ!!」
パウラ「『アナザー・センチュリー・エピソード』……ショーケースを『スライド』させるッ!」

音の源は目の前のショーケースだった。パウラは自らの乗ったショーケースをスライドさせ、真下にいるマルコに迫る。

ズズズズズズズズ………

*<今だ、パウラ!>
パウラ「スライド、ストップ!」

すると、ビタッと止まったショーケースは慣性の法則により進んだ勢いのままマルコの方へ倒れていく。

マルコ「おお……お…おおおおおおおおおおお!!!!」
ドズーーーーーーーーン……

パウラの乗ったショーケースはマルコを下敷きにして倒れた。

パウラ「ショーケースを壁から少しスライドさせて、そのカゲに隠れてスーパーボールをやりすごした。ちっちゃいスキマには入ってこねえからな!」


マルコ「………ッ、危なかった。」

ショーケースが覆いかぶさってきたものの、マルコはショーケースにつぶされていなかった。
スーパーボールによってガラスが割られていた為、ショーケースの中に身を入れることでつぶされるのを避けた。

マルコ「しかし、この状況は……」

マルコはうつ伏せの状態のままで動く事が出来なかった。展示品を押しつぶして倒れたため、ショーケースの端のスキマから細く光が差し込んでいたが、
床にはガラスの破片が散らばっていて、少しでも動いたらガラスで体を傷つけてしまうのだ。

マルコ「ちょっと待て……床には一面に散らばったガラス、そして『スライド』させる能力………ッ!!」

マルコがその『おそろしいこと』を考えた時には、パウラが『それ』を実行しようというところだった。

パウラ「『アナザー・センチュリー・エピソード』、このままショーケースを『スライド』させるッ!!」
マルコ「うっ、うわあああああああああああああああああああああ!!!!」

ズガガガガガガガガガガガガガガガ!!!!!!!!


パウラの乗ったショーケースが倒れたまま大展示室の床を『スライド』……すべっていく。
床に押し付けられたマルコ、そして床一面のガラスの破片……ショーケースの中でどんな惨事が起きているかはいうまでもない。


マルコ「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああッッ!!!!」




ショーケースは止まった。
体中にガラスの破片が突き刺さり、血まみれになってもマルコはまだ意識があった。勝ちへの執念が、彼を生きながらえさせた。

マルコ「まだ……だッ、まだ……決着は……。やはり、子供だな……トドメを……ささ…ずに、攻撃を……やめ……るとは。」

バガァン!!

マルコは『テンポラリー・プレジャー』にショーケースに穴をあけさせて、むくりとその場で立ち上がった。

マルコ「…………あの子供……どこに行った?」



グオオオオオオオオオ……



マルコ「?」



グオオオオオオオオオ……

マルコ「なんだ……咆哮?」

マルコが咆哮と言った、その音のした方向……マルコは上を見上げた。



マルコ「こ、これは……ク、『クジラ』が!!」
マルコの頭上には天井に吊り下げられたクジラの剥製が手に届くほどの距離まで近づいていた。

クジラの剥製を支える鎖は『スーパーボール』の衝撃で千切れ、今や一本だけになっていた。

グオオオオオオオオオオ……

マルコが咆哮だと思っていたのは、クジラを支えている鎖と天井が軋む音だった。

マルコ「は、早く逃げなければ……がッ、体が………!!!!」

ピキピキ……

鎖の付け根の天井にヒビが入った。
そして、クジラの剥製はマルコがショーケースの穴から這い出る前に……




ドズゥゥゥゥン………



その地響きのような大きな音をパウラは博物館の外で聞いた。
*<キッチリとどめをさしなさいといつも言っているでしょう?ポーチにナイフは入れておいたのに……>
パウラ「イヤだよ。そんなのやったらトラウマものじゃん。特に今回に限ってはさ。」
*<だけどねえ……>
パウラ<全身にガラスが刺さった人間なんて絶対見たくない!>
*<はあ……私はこの先心配ですよ。>
パウラ「……大丈夫だよ。わたしにはセンセイがついてんだから。」
アナザー・センチュリー・エピソード<まったく……私を操るのだってあなたなんですからね?>

そして、パウラと『アナザー・センチュリー・エピソード』は夜明けを迎えようとしている博物館をあとにした。

★★★ 勝者 ★★★

No.3000
【スタンド名】
アナザー・センチュリー・エピソード
【本体】
パウラ

【能力】
触れたものを「スライド」させる








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最終更新:2022年04月18日 22:25