第15回トーナメント:予選③




No.7525
【スタンド名】
ウォームハンド・コールドハート
【本体】
イェルズェラ・ムラージョ

【能力】
スタンドの右手は熱く、左手は冷たくする


No.5501
【スタンド名】
ロック・ディス・タウン
【本体】
杉戸森 杉人(スギトモリ スギト)

【能力】
隙間から別の隙間へ物を瞬間移動させる




ウォームハンド・コールドハート vs ロック・ディス・タウン

【STAGE:つぶれたボウリング場】◆OW136s5D06





鯵屋仁 純子(あじやに じゅんこ)は――困惑していた。

通常、彼女が困惑することなど、ほとんどない。

世界を股にかける女泥棒。
無口、冷徹、無表情、冷静沈着、鉄仮面……それゆえに虎視眈眈。
涼しい顔とは裏腹に、心の中には欲望の炎を強かに燃やす。

――盗む、奪う、勝ち取る。

そういう事への執着が彼女の原動力。

だから、このボウリング場にも、野心をたぎらせて(もちろん顔には

見せないが)来たというのに……。


どういうわけか、廃墟と聞いていたはずのボウリング場は、すっかり

整備され、電気まで来ている。
いつでも営業が再開できそうなほどに、清掃も行き届き、それどころ

か真新しいジュースサーバーにアイスクリームマシーンまで完備され

ているのだ。

純子は、ボウリング場のベンチに座り、オレンジジュースをすすって

いた。

――トーナメントはどこに行ったのか、試合はどうなったのか……。
――なぜ私は、当たり前のように、こんなにまったりした時間を過ご

しているのか……。
――なぜ廃墟だったはずの、このボウリング場はここまで改装されて

いるのか……。


――なぜ、対戦相手であるはずの少女は、あそこで付き添いの男にボ

ウリングを習っているのか……。


もう一人の対戦者、イェルズェラ・ムラージョは、付き添いの青年、

杉戸森 杉人(すぎともり すぎと)から、ボウリングのやり方を教わっていた。
数か月前、彼女はアフリカのとある国で――戦争孤児であった。
両親を戦争で失い、家もなく、ひどく惨めな生活を送っていた。

そして、旅行に来ていた杉人と出会った。

杉人はその時、彼女の瞳に、『何か』を感じたという。
『何か』としか言えない迫力、覚悟の様なものを感じたのだ。
そして、杉人はイェルズェラを日本に招待することを決めたのである。

杉人は言う。

「私の父はいわゆる、大富豪です。ですから、僕は御曹司ということになる、のかな?」
「結婚の話……多いんですよ、嫌になります。だって彼女たちは、僕の妻にふさわしくない」
「家柄、知識、学歴……彼女たちはどれも持っているんですがね」
「僕の妻にふさわしい『何か』を持っていないのです」

「その点、イェルズェラには、学がありません。華々しい経歴もない。でも『何か』はある」
「彼女こそ、僕の妻にふさわしいんです。知識だとかは、僕があげればいい」
「まだ彼女は12歳ですから、法的に結婚は出来ませんが、16歳になるころには、
 国籍も手に入るように取り計らいます」
「いいですか? 彼女には、僕がすべてを『与えます』。彼女にはその『器』がある」
「僕の妻たる『器』がね」


だから、杉人は、イェルズェラに、普通の人にはならない能力がある

と知った時、このトーナメントへの出場を進めたのだ。

トーナメント『優勝』という経歴を与えるために。

――それが、ナンバー1であることが、彼の妻には、杉戸森家の女にはふさわしいから……。

第一試合、彼は付添人としてイェルズェラと共にやってきたのである。


「まぁまぁ、二人とも。折角の試合場所が廃墟だなんてあんまりだと思って、
ボウリング場だって改装させたんだから、少し遊んでいきましょうよ。
イェルズェラは、やったことがないだろう? 僕が教えてあげるよ」

杉人がそんなことを言い始めて、この奇妙なボウリング大会が始まったのだ。
純子は思った。泥棒と言う仕事柄、金持ちという人種は彼女カモだが、
どうも金持ちという連中の考えていることというのは、理解できない。
家を延々増改築したり、海外からゲテモノ料理を取り寄せたり、得体の知れない庭園を造ったり。

――杉戸森とかいうこの男も……理解しがたい。

「純子さんの番ですよ? ボウリングはお得意ですか?」

純子はサイドテーブルにオレンジジュースを置き、立ち上がる。

――『やるなら、とことんまで、やらなくっちゃあいけない』

純子の座右の銘だ。これが彼女のプライドであり、人から物を盗むことに罪悪感の少しも抱かない彼女の
たった一つの倫理だ。

――だから『やってやるか』



~~30分後~~


「……フッ」

純子が静かな笑みを漏らす。
杉人は驚愕していた。イェルズェラは、尊敬の目を純子に向ける。

スコア300……フルスコア。

純子のたたき出した得点だ。

――『とことんまでやってやったわ』

「いや、すごいですねぇ、純子さん!」
「ふふん~♪」

首をぶんぶん縦にふるイェルズェラに、大げさにほめる杉人。
純子も少し機嫌がよさそうだった。


しかし――純子は思う。

――そろそろ、始めないと。

そして、純子は言った。

「……トイレ、どこ?」
「トイレですか? 廊下の突き当りです。水道も完備させていますから、普通に使えますよ」
「ありがと」

すたすたと、純子はボウリング場を後にする。
しかし――彼女はトイレには向かわなかった。

彼女が向かったのは――旧事務所。このボウリング場がかつて営業していたころにスタッフが
出入りしていたであろう場所だ。

綺麗に改装されたレーンと比べて、いや比べなくてもはっきりわかるほど、そこは見るからに
廃墟だった。
放置された段ボールが乱雑し、蛍光灯もつかない。

杉人は別にこのボウリング場を営業可能にしようとしたわけではない。
今日一日、いや、イェルズェラがここにいる間だけ、遊べればそれでいいのだろう。
だから、この事務所までは手を付けなかったと見える。

それは、純子にとって都合のいいことだった。

純子は、放置された段ボールを漁りだす。

――こういうところには、ああいうのが……あ、あった。

目的のものは――ほどなくして見つかった。


「トイレに行くんじゃあなかったんですか?」

純子はハッとして振り返ると、事務所の入り口に、杉人が立っていた。

「身構えないでくださいよ、僕は別にこのトーナメントの試合自体に口出しすることは
できないんですから」

ニヤニヤした笑いを浮かべ、杉人は言う。

「別にあなたのすることを止めるつもりも、イェルズェラの肩入れしてトラップなんかを
 仕掛けるってこともしませんよ。いや、むしろ、僕は、あなたに、あなたが有利になる様な
 情報をあげたいと思っている」

「……どういうこと?」

「知りたくないですか? イェルズェラの『スタンド』について」

「……貰えるものは、病気以外はなんでも頂くわ」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

イェルズェラは、一人、ボウリング玉を転がしていた。
純子がトイレに行くと言って消えてから、すぐ、杉人もどこかへ行ってしまった。

始めてする遊びに、彼女の心は子供の様に浮かれていた。
いや、実際、子供なのだ。

数か月前までは、不衛生なスラム街で、生きる事だけに必死だったのに。
信じられないくらいにおいしいジュースを好きなだけ飲めて、好きなだけ遊ぶことが出来る。

――でも、今は――そう、これから私は、純子さんと戦うんだ――。

イェルズェラの心に、靄がかかる。

どうしてそんなことをしなければならないのか。
そんなことしたくないのに。
どうして……。

………………
……………
…………
………
……




「イェルズェラ!」

杉人の声がした。

気がつくと、休憩用の椅子に純子が腰かけていた。
その後ろに杉人が立っている。

「そろそろ、始めなくちゃあ、いけないな」

杉人が言う。
それに続けて、純子が言う。

「『やる時は、とことんまで、やらなくちゃあいけない』わ。
 貴方に恨みはないけど、戦いはすでに、始まっているわ……」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……。

場に、緊迫感が流れた。
イェルズェラは、純子を見る。

純子の背後に、スタンドが出現していた。
鍵の装飾をあちこちに着けたコート姿のスタンド。


『ロック・ディス・タウン』。


能力は、射程内の隙間から隙間に物体を瞬間移動させ、射出する能力。

すでに、イェルズェラは、射程範囲内に入っていた。


「あなたのスタンド……パワーはAと聞いたわ。言ってしまうと私の『ロック・ディス・タウン』はB。
 スピードは私もあなたも同じくらいね、まともになぐり合ったら、私に勝ち目はないの。
 でも、射程は私のほうが広い……だから、私はあなたに近づかない……」


イェルズェラは、何も言い返さない。日本語が分からないわけではない。
数か月の日本生活で、驚くべきことに彼女は日本語での会話をほとんどマスターしていた。

だが――彼女は、何をどう返せばいいのか、わからなかった。

だって、何が起こるのか、何がどうなるのか、一体何が起こっているのか……。

それがわからないのだ。


だが――戦いはすでに始まっていた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


純子の足元にはひと箱の段ボール箱が置かれていた。
事務所から彼女が持ってきたものだ。
中には――かつてこの店が営業していた時に、配っていたのだろう。
店のロゴ入りのボールペンが入っていた。段ボールひと箱、百本近くあるだろうか。

なぜ彼女がそんなものを持ってきたのか。ボールペンなどで何がどうなると言うのか……。

だが! 彼女のスタンド『ロック・ディス・タウン』の能力で、隙間から高速射出すればッ!
ただのボールペンでもッ!! 殺人凶器と化すのであるッ!!!

ボウリング場の休憩ソファー、その横にはサイドテーブルが置かれている。
ソファーとテーブルの間――『隙間』。
純子がそこに差し込んだボールペンは……。

イェルズェラの足元におかれた、ボウリング玉の指入れ穴からッ!!
イェルズェラの頭部めがけて思いっきり射出されたッ!!!


「!?」

イェルズェラがとっさに身をかわす。
射出されたボールペンは、彼女の額をかすめ……そのまま天井に突き刺さったッ!
イェルズェラは、攻撃を避けた反動で、後ろに大きく飛び退き、レーンの上に倒れ込む。

額からわずかに血が流れ、彼女の黒い肌の上を赤く張った。


イェルズェラは、すぐに身を立て直し、純子に向かって走り出そうとする。
彼女の背後には『ウォームハンド・コールドハート』が現れた。
パイナップルの様なテイストのスタンド。足はなく、手が大きい。

右手で物を熱し、左手で冷やす能力。

イェルズェラ自身も、今完璧に使いこなせるわけではないが……。
ひょっとすると、すごいものを秘めている、のかも、しれない。

彼女は! このスタンドで! 純子に反撃しようと走り出したッ!

だが、純子もそんなまっすぐな攻撃を許すほど、甘くはなかった。

「手加減は、しないわ」

純子は、段ボールからボールペンを鷲掴み、それを握り潰した。
ボールペンが折れ、中に入っていたインクが外に吹き出す……
と思いきや、飛び散るはずのインクは一滴も垂れなかった。

『指と指の間』――『隙間』に吸い込まれたのだッ!!

そしてインクが向かう先は……レーン上!!フローリング上の木の板と板の間ッ!!!
イェルズェラの足元ッ!!!


イェルズェラは、足元から突如噴出したインクに足をとられ、転倒するッ!!!

「『やるからにはところんまでやる』のよ」

そして、純子は再び、ボールペンを鷲掴みにし、それを椅子とテーブルの隙間に差し込んだッ!!



ボウリング場にあるすべての『隙間』をあげればきりがない。

ものがあれば、当然、隙間はある。
物と物があれば、そこに隙間は生まれる。

椅子と壁、壁と人、ガーターとレーン、壁紙と壁ッ!!

いわばすべてが純子にとっての銃口ッ!!
このボウリング場自体が、純子による絶対の処刑場ッ!!

数にして、11本のボールペンが、転倒したイェルズェラの四方八方から襲いかかるッ!!!


イェルズェラは、思った。


――負けたくないッ!! 私も守れッ! 『ウォームハンド・コールドハート』ッ!!

その想いにこたえるように、『ウォームハンド・コールドハート』が彼女の周囲を
左手でかき回すようになぞるッ!!


ガキィィィ――――――ンンンゥゥンンンッッッ!!!!


襲い来るボールペンは……、突如、空中で弾き飛ばされるように動きを止めた。
イェルズェラの周囲、2メートル。そこに入った瞬間、同時に。

彼女の周囲は空気が凍っていた。比喩ではない。
本当に、物理的に凍っていたのだ。

そう、原理としては、かつてパッショーネというギャング組織の暗殺チームの男が
使った『ホワイト・アルバム ジェントリー・ウィープス』と同じである。


「これは……『絶対零度』。全ての物体が動きを止め、存在してはいけない世界……。
 ここまで冷やすことが出来るのかい。イェルズェラ、君のスタンドは……」

純子の後ろで戦いの様子を見ていた杉人は感嘆の声をあげた。

「……すごい、予想外だわ」

純子も驚いたように言った。

が、彼女の目には、まだ、あの冷静さが残っている。

純子は考える。

――『ウォームハンド・コールドハート』……。
   能力とスペックは、この杉人と言う男から聞いているけど、このスタンドには弱点がある……。
   『真の強さとは、弱さを認めることから始まる』。私のスタンド『ロック・ディス・タウン』の弱点は
   『隙間』がなれけば、能力を発揮出来ないこと。
   そして『ウォームハンド・コールドハート』の欠点は、温めること、冷やすことを
   一緒でないと行えないこと。つまり、彼女の周囲が絶対零度まで冷えるということは、
   彼女は同時にどこかを熱くしているはずッ!!
   周り全てを冷やして凍らせることは出来ないッ!凍った空気だけでなく、
   熱くなった空気がどこかに逃げているッ! あれは絶対の防御などではないッ!!
   穴があるッ!!!

   そして、それは確実に、彼女の頭上! 
   周囲から一気に襲ったペンが止められたなら、上は熱の逃がし口になる。
   でないと周囲を防御できないッ!!
 
   私は、自分の弱点はすでにカバーしているのよ……――


ゴゴゴゴゴゴゴ……。



イェルズェラが最初のかわしたボールペン。それが突き刺さった天井の穴。

――すでに、頭上に『隙間』は作ってあるのよ。


ピキピ……ピピピキキピキ・・・・・。

天井に刺さっていたボールペンが、奥から押し出された。

『ロック・ディス・タウン』によって送られた別のボールペンが、押し出したのだ。

そして、そのままッ!!

ドシュゥゥウウウウ――――ッ!!!


天井の穴から射出されたボールペンはッ!! こんどこそ、間違いなく、イェルズェラの頭部を狙ったッ!!

純子の読みは当たっていた。

半径2m!現在の絶対零度射程距離ッ!!
天井から射出されたペンはッ! その内部に飛び込むッ!!

止まらないッ!! イェルズェラの後頭部に接触する。

そのままッ! 突き抜けるッ!! かに思われた、が。

突如、このペンも! 動きを、止めた。

他のペンのように凍った空気に弾かれたのではなく、ピタッと、止まった。
空中に浮いたまま、静止した。


「……!!!!」

純子が驚き、席を立ちあがる。

……ペンを止めたのは、氷だった。

イェルズェラは、天井を見上げた。

「……雨?」

室内のはずなのに、雨が降っていた。

いや、スプリンクラーが作動していた。

そうだ、今、このボウリング場には、電気も水道も通っているのだ。
だから、当然、スプリンクラーは動く。そこから落ちて来た水が、『ウォームハンド・コールドハート』の
左手により、瞬間的に凍らされ、地面から逆さの氷柱のように立ち上っていた。
それがペンを巻き込み、瞬間的に空中に固定、静止させたのだ。


純子は慌てた。

なぜスプリンクラーが作動したのか。
それがわからなかった。

あまりに理解が及ばず、思わずそれが口に出た。

「なんで、スプリンクラーが……」

「空気の温度差だ……」

杉人が言った。彼も状況に困惑しつつも、引きあがった頬の笑みに、興味関心を携えている。

「冷たい空気は下に下がり、温かい空気は上に上がる。『ウォームハンド・コールドハート』は
 何かを冷やすなら、同じくらい何かを温めなければならない。周囲を冷凍するために、
 上に逃げた空気は、周りが絶対零度なのだから、超高温になっている。
 それが一気に天井すれすれまであがって、天井付近の気温が急上昇したんだ。
 スプリンクラーがその温度に反応したんだよ……」

純子は、焦った顔で、杉人を見る。


「純子さん、俺を見ないでくださいよ。俺は別のあんたの味方じゃあないぜ。
そして、この建物の構造はね、一個スプリンクラーが作動すると……
連動するぜッ! フロア中のスプリンクラーがッ!!」


杉人と純子の頭上から、一気に水があふれ出した。

純子は思った。

――まずいッ!!!

だが、窮地を脱したイェルズェラの動きは速かった。

瞬間的に、純子との距離を詰めるッ!!


そして、『ウォームハンド・コールドハート』の左手がッ!!
純子と杉人の一帯を急速冷凍するッ!!

右手は、イェルズェラ自身が凍ってしまわないように、自分の周辺を温めているッ!!

純子と杉人の体が凍り付くッ!!

「う、動けないッ!!」

純子は……自分の敗北を確信した。

互いにスタンドの射程内。

パワーで負けている『ロック・ディス・タウン』に勝ち目はない。

だがッ!純子は言うッ!!

「『やるからには、とことんやる』ッ!! イェルズェラ!!そういうものよ!!」

『ロック・ディス・タウン』がイェルズェラに襲いかかるッ!!


イェルズェラは、思った。

――純子さんは、きっと今、すごく大事なことを教えてくれた。
  『やるからにはとことんやる』。これは、きっと、とても大事なことだ。
  それに、今日、ボウリングでスコア300を出した純子さんはカッコよかった。
  とっても、興奮した。自分もああなりたいと思った。
  あの国で、一人でただ、ひたすらに生きていた時には、希望だとか夢だとか、
  そういうものを持つことはできなかった。
  杉人はなんでもくれるけど、夢や希望は、貰っていないような気がする。
  だって杉人は杉人の都合でしか動かないんだもの。

  純子さんには、今日、とっても大事なことを教わりました。

  だから、『とことんやります』。


『ウォームハンド・コールドハート』のラッシュが――。

「ムラムラムラムラムラムラムラムラムラムラムラムラムラムラムラ」

『ロック・ディス・タウン』を――。

「ムラムラムラムラムラムラムラムラムラムラムラムラムラムラムラーッ!!」

打ち負かすッ!!

「ムラスィアス(ありがとうございました)!!」

バ――――ンッ!!



「ブラボー! ブラボーだよ、イェルズェラ。さすが、未来の我が妻だ」

杉人が歓喜の声をあげた。

「ところで、イェルズェラ、僕もとばっちりで凍ってしまっている。溶かしてくれないかな?」


イェルズェラは、杉人を睨みつけた。

そして、喋った。

「純子さん、私のスタンドの事知ってたわ。杉人が教えたんでしょう? 
 ねぇ、杉人、どうして、ワタシのスタンドの事、バラしたの?」

「それは、君に成長してほしいからさ。人は試練を乗り越えて、強くなる。
 君はより強くなって貰わないといけない。僕の妻にふさわしい人間になってもらうためにね。
 だから、バラしたんだ。より大きな試練を作るために」

「杉人、アナタ、ワタシを愛していないのね」


杉人はしばらく固まったが、ゆっくり口を開いた。






「当たり前だろ、愛してなんかいないよ。君はあくまでも僕の『モノ』なんだから」





イェルズェラは、悲しそうな顔を一瞬したかと思うと、すぐに、目に怒りの炎をたぎらせる。



「ムラムラムラムラムラムラムラムラムラムラムラムラムラムラムラ……ムラディアス(さよならよ)!!」


鯵屋仁 純子……全身打撲により再起不能(リタイヤ)。
杉戸森 杉人……肋骨、両腕、右足にひびが入って、入院→再起不能(リタイヤ)。
        彼がスタンド使いだったのかどうかもよくわからないが……。

★★★ 勝者 ★★★

No.7525
【スタンド名】
ウォームハンド・コールドハート
【本体】
イェルズェラ・ムラージョ

【能力】
スタンドの右手は熱く、左手は冷たくする








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最終更新:2022年04月17日 15:14