某所。PM18:25 雑居ビル屋上
街の喧騒がやがて夕闇に浸食されて静かな夜を迎え様としていた。
緑がかったカールした長い髪を風にたなびかせた女性が仁王立ちでそこに立っている。
ヒク…ヒク……ッ
女:
「(また私が待たされる訳ね……全く時間と言うモノの価値を…ぶつぶつ…)」
端正な顔を歪ませてコツコツとブーツの踵でコンクリートに苛立ちを刻む。
女性の名は『リンザ』
その整ったヴィジュアルとは裏腹にかなり歪んだ人物と言える。
指定された時間はPM18:00。つまり既に25分以上もの間リンザはここで何もせず立っている事になる。
リンザ:
「………こうなりゃ何時間でも待って約束を守れ無かった罪悪感を味合わせてやる…」
その一人言を呟いた顔はまるでキレた狂人の様に歪んでいた。
PM19:05
屋上の錆びた鉄の扉が勢い良く開き「もう一人のスタンド使い」が姿を現した。
褐色の肌に引き締まった無駄のないボディ。髪は短く刈られまるで「夏の少年」の様な出で立ちの少女「パウラ」。
そのパウラがリンザを見つけた。
リンザ:
「…………(さあなんて言い訳をするのかしら…クソ小娘が…全くあんなに肌を露出して…羨ましいわ…って言うか若さが憎いわ)」
パウラ:
「お……………」
リンザ:
「(お……?そくなりました?)」
パウラ:
「おっぱいでっけェッッ!!!!!!」
パウラはその丸い目を更に丸くして満面の笑顔で言い放つ。
ヒク…ヒクヒクヒクヒクヒクヒクヒクッッ
今にもこめかみの血管が破裂して血を吹き出しそうな形相で静かにリンザはキレた。
リンザ:
「…ヒューマン・ネイチャー」
スゥ…っと陽炎の様に姿を現したスタンドがなんの躊躇もなく褐色の少女に突進する。
パウラ:
「っ!!いきなりっ!?セ、センセイッッ!!!!!」
センセイと呼ばれたパウラのスタンド『アナザー・センチュリー・エピソード』がその声を聞き終わる前にパウラの盾となり、地表を模した姿のスタンドの拳をガードする。
ドギャッッ!!!
ド━━━━━━━━ンッッ!!!!!!!
アナザー・センチュリー・エピソード:
<何時も言っているでしょう。スタンドバトルにおいて相手を知る事こそが勝利の鍵だと。つまり……知らないと言う…事は……こうなる…くっ…>
機転を利かせて利き腕ではない方でガードした左腕が焼け焦げた上に肉を少し持っていかれている。
そしてパウラの左腕から夥しい量の鮮血が吹き出した。
パウラ:
「うぐぐっ…っ…前置きは無しって訳か。ごめんなさいセンセイ…」
アナザー・センチュリー・エピソード:
<予想さえ外れていなければあの拳になんらかの仕掛けがある。躊躇も無く拳で突っ込んで来たのはその自信のせいでしょう>
パウラ:
「つまり攻撃特化…?だったらそれ以上の攻撃で…」
身を忍者が野を駆けるが如く低くし、今度はこっちの番だと言わんばかりにパウラがヒューマン・ネイチャーに襲いかかる。
リンザ:
「おバカな小娘…」
その疾風の様な突進をまるでダンスのサイドステップが如く華麗にかわすヒューマン・ネイチャー。
パウラ:
「バカはどっちだよ!?センセイッッ!!!!」
かわされた「かの様に見せた」体勢のアナザー・センチュリー・エピソードがその拳でコンクリートと床を殴る。
アナザー・センチュリー・エピソード:
<床をスライドさせる>
横に避けたはずのヒューマン・ネイチャーの体が2発目のアナザー・センチュリー・エピソードの正拳の真正面に移動する。
パウラ:
「ぶっっっっ飛ばすッッ!!!!!!」
勝利を確信した全力の拳がヒューマン・ネイチャーのボディを抉った。
ぎいやああああああああああ━━━━━ッッッ!!!!!!!!
リンザ:
「ふふ…ふふふ…は…ははははははッッ!!こんなに筋書き通りに行くと面白くてたまらないわ!!この私がこんなに笑えるほどね!あーははははっっ」
まるで絵に描いた様な「悪女なポーズ」でリンザが笑う。
一方で全身から煙を立ち登らせて褐色の少女はコンクリートの床に這いつくばっていた。
パウラ:
「こここ…これれは…………でん…き…………」
初弾を食らった時は被害の状況から見て確実に炎、もしくは爆発系の能力だった。それは間違いない。しかし今体感したのは間違い無く電気のダメージ。しかもインパクトの瞬間に相手の体から電気が放出されたかの様に感じられた。
リンザ:
「ふふ…さっき御高説を宣ったそのスタンドが言う通りよ。貴女の陳腐なオツムでは私のスタンドの謎は永遠に解けないわ」
ポツリポツリと降りだした雨が激しい夕立となって行く。
辺りは一気に夕闇に飲み込まれ、その闇の中で青白くヒューマン・ネイチャーが浮かび上がる。
時々パリパリと音を立ててその能力の正体が見えてきた。
リンザ:
「ふふ…お天気すら私の味方みたいね?お化粧が落ちるのも嫌だし最後にさせて貰うわ」
ようやく立ち上がったパウラが身構える。
パウラ:
「(センセイ)」
その言葉にアナザー・センチュリー・エピソードは無言で頷いた。
リンザ:
「ヒューマン・ネイチャー!!“雷の抱擁”で小娘を眠らせてあげなさいっ」
闇夜に光る雷を帯びた体がパウラに突進する。
アナザー・センチュリー・エピソード:
<スライドっ>
床をスライドさせて本体であるパウラと共に雷撃を避ける。
リンザ:
「そうする事もお見通しよ!逃げるスペースの少ない『屋上』だったのが貴女の敗因の一つだわ!おねんねしなさいな」
予め避ける軌道を読んでいたヒューマン・ネイチャーが今度は避ける事の出来ない状態で腕を絡めてくる。
ニヤリ
パウラ:
「違うね…屋上だった事がアタシの運の強さ勝因だよ」
ズズズズズズズズズズズズ
謎の音が近付きパウラはその身を半歩かわしジャンプした。
パウラ:
・・・・・・・
避雷針だッッッ
そのスライドして来た金属の棒はヒューマン・ネイチャーのすぐ横でピタリと停止し、その身に帯びた雷を雨に濡れたコンクリートに拡散させる。
パウラ:
「つ い て い た」
完全に無防備になったヒューマン・ネイチャーの“地表”をアナザー・センチュリー・エピソードの拳の雨が降り注ぐ。
アナザー・センチュリー・エピソード:
オ-ラオラオラオラオラオラオラッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!
<これが“エース級”のラッシュだ>
バ━━━━━━━━━ン!!
【スタンド名】
ヒューマン・ネイチャー
【本体】
リンザ