第17回トーナメント:決勝②
No.4082
【スタンド名】
クレセント・ロック
【本体】
藤島 六郎(フジシマ ロクロウ)
【能力】
殴った場所からロケットを生やす
No.6130
【スタンド名】
クリスタル・ピース
【本体】
新房 硝子(シンボウ ショウコ)
【能力】
微細なガラスを操作する
クレセント・ロック vs クリスタル・ピース
【STAGE:雪原】◆UmpQiG/LSs
薄暗いリビングのソファに全身を預け缶ビールを片手に藤島六郎は考えていた。
このトーナメントの本当の意味と言う物を。
そしてそれに再び身を投じ決勝まで残ってきた自分と言う物の意味を。
ー勝者には富と名声を。
そんな噂が誠密やかに囁かれていた。
しかし六郎の身に富も名声も訪れはしなかった。
あった物は「自分をコマとして使ったゲームに勝利した快感」。ただそれだけであった。
実に下らない。野卑で下衆なゲーム。
なのに俺はまたここにいる。それが自分で何故なのか?それに疑問を感じていた。
まるで何かの意思に操られるかの様な感覚。
ーグビッ・・・・
少し温くなったビールが喉を通って行く。
顎髭を軽く撫で薄暗い虚空を見上げ溜息をついた。
「明日試合に勝てば何か答えがでるのかねぇ・・・」
そんな独り言を呟きながら残りのビールを胃に収める。
グビッ グビッ ・・・・・・ゴクン。
・・・俺が勝ち残った事に意味はあるんだろうか?勝ちを譲られてまで残された意味はなんなんだろうか?
考えた所でなんの意味もない答えの無い自分への疑問。
まあいい。明日試合が終わればその答えも自ずと出てくる・・・。
そこに行き着くまでに4本の缶ビールと2時間と言う時を消費した六郎であった。
六郎
「さ、さみぃ・・・・・・ぃ」
見渡す限りの白の景色の中で六郎は呟く。
北海道某市山中。人里離れた雪原。
六郎は何故こんな所で試合を行うのかと少し憤りを感じつつも
自分の能力を使うのに最適に場所だと言えるとも感じていた。
六郎
「ここならいくらぶっぱなしても誰の迷惑にもならないからいいな」
辺りには葉のない木が所々にあるだけで見晴らしもよく
また快晴であり視界もこれ以上無いと言うくらい良好であった。
クレセント・ロック。触れた任意の場所から制限なくロケットを発射出来る六郎のスタンド。
ただそのロケットは追尾等の能力は乏しく、それ故にこう言った平地の方が本領を発揮出来る能力である。
神様の采配は六郎に傾いていた。
いや、そうであると六郎が勘違いをしていた。
暫くするとチラチラと舞うダイヤモンド・ダストの中から小さな人影が近付いてくる。
六郎
「あんたが対戦相手か?」
唇が避けそうな極寒の中、言葉少なく六郎が問い掛けた。
音の無い澄んだ空気はその声を摩擦ゼロで相手の鼓膜を響かせる。
硝子
「はじめまして。新房硝子です。よろしくお願いします」
硝子は約10m程の距離を残して歩を止める。
六郎
「藤島六郎だ。なんの因果か知らんがこれからあんたをぶっとばさなきゃならん。
恨みッコ無しで頼むわ・・・」
自己紹介をしながら相手の少女を見据える六郎。
見た瞬間に只者でない事を理解した。これはナメて掛かると手痛いしっぺ返しを喰らうと予想出来た。
六郎は美容師である。職業柄硝子世代の少女を嫌と言う程見てきた。
そしてその世代のスタンド使いも間近で知っている。
しかしその脳内データベースを駆使しても目の前にいる少女の違和感・・・
いや、異様さを持った人間を知らない。
和かで落ち着いた表情なのに笑ってはいない。
その佇まいは静かなのに恐怖すら感じる。
そして絶妙な間空いを開け、身動ぎ1つしないその姿。
今迄トーナメントで戦ったきた強者を凌駕するその覇気。
そんな印象を受ける少女であった。
硝子
「藤島さんは・・・・」
六郎の思考に硝子の言葉が割って入る。
六郎
「え・・・・・・」
間の抜けた声が六郎の口から溢れる。
硝子
「すみません・・・。藤島さんはこのトーナメントで何を見て来ましたか・・・」
疑問符を含みつつも何かを伝えたいかのような言葉が六郎にかけられた。
その言葉はまるで禅問答のようでもあり、弱気な少女の不安のようでもあった。
六郎は少し考えその結果を口にする。
六郎
「俺にはキミの言いたい事がわからねえ。質問の意味もわからねえ。
だけどその答えはこの試合の結果にあるんじゃないかと思う」
そう言って口角を少しあげ戦闘体勢をとる。
それを見た硝子もまた納得した様な表情を浮かべ戦闘体勢へと移行した。
そして決勝戦の幕開けとなる。
開幕と同時にバックダッシュで距離を開ける六郎。
クレセント・ロックの能力故に距離は開けておいた方が有利。
相手が遠隔操作であったとしても近付かれるよりはいいと言う判断であった。
一方の硝子は身動ぎせず六郎の姿を目で追う。
六郎
「(ちっ・・・あの嫌なイメージがぬぐえねぇ・・・・・・
取り敢えず様子を見るッッ!!)」
六郎はクレセント・ロックを具現化せず足元に拳を落としロケットを精製し発射する。
六郎
「イケっっっ!!!!!!!」
ジュシュュゥゥゥゥッッッーー!!!
ロケットは轟音を立て発射周辺の雪を溶かしつつ弧を描き硝子へ向かって飛んだ。
六郎
「(さあ!見せろぉ!おまえのスタンド!!)」
勿論こんな単純な攻撃でダメージを与えられるとは思っていない。
しかしなんらかの情報は得られると考えた行動であった。
それに対し硝子は左腕でその攻撃を無効化する。
ロケットを見た硝子は左腕のグローブを脱ぎ捨て掌から集束したレーザーを放つ。
結果ロケットはあっさりと撃ち落とされた。
六郎
「おいおいおいおい・・・なんだぁ?その腕はぁぁ?!?!?」
眉をしかめつつ思わず声に出して叫ぶ。
流石にあれはスタンドではない、それだけは理解した。
硝子
「これはここに至る迄に辿った記憶の証です」
硝子はその機械で出来た仰々しい腕を六郎に見せる。
硝子
「藤島さんは自ら腕を落とす痛みを知っていますか?」
硝子は穏やかに六郎に問い掛けた。
六郎
「・・・・・・・・・。」
その表情に恐怖を覚えた。
六郎
「(あの様子じゃロケットだけでは・・・ダメか?)」
そう考えた六郎はクレセント・ロックを具現化し、
次に十数発のロケットを地面に設置に発射した。
ドシュ ドシュドシュ ドシュドシュドシュッッッ!!!!!!!
ロケットは地面と水平にほぼ真っ直ぐ硝子に向かって行く。
しかし硝子の腕から発射されるレーザー一閃で難なく撃ち落とされ爆発する。
六郎
「だと思ったよ!!!」
ロケットの爆炎の中からクレセント・ロックの手刀が姿を現す。
六郎
「これはどう対処するんだよっ!!」
ロケット発射と同時にダッシュで近付き爆煙を目隠しに使う。
これでもなお通じないような予感はしていた。
振り降ろされた手刀は難なくかわされ空を切る。・・・・はずだった。
六郎
「うぎぃぃっっっ・・・・・・っ・・・」
振り降ろした右腕がまるでシュレッダーに手を突っ込んだかの様にズタズタになっている。
ここで初めて相手のスタンドの正体を垣間見た。
ーーーそうだ。あれはダイヤモンド・ダストじゃねぇ・・・
アレがスタンドなんだ・・・。スタンドは最初から見えていた!!!
片腕を犠牲にした結果がこんなつまらない答えだったんだ。
六郎は後悔よりも自分の馬鹿さに愕然とする。
今迄戦って来た相手から何を学んできたんだと。
そんな六郎を見ながら硝子は次に右腕を曝け出した。
そしてその腕をダイヤモンド・ダスト・・・
つまりクリスタル・ピースの粒子の集まりの中に入れ振り降ろす。
そしてその血塗れの腕を六郎の顔の上にかざした。
硝子
「藤島さんは知っていますか?人の血液がどれだけ熱いかを」
ドプドプと動脈から溢れ出る熱い液体が六郎の顔に、体に、赤い川を作る。
六郎
「うおおおおッッッッ!!!クレセント・ロックぅぅぅぅーーーーー!!!!」
半ば狂乱になりながら辺り構わず殴り付け無数のロケットを設置した。
そしてそれらを目くらましとして発射と同時にその場から飛び退く。
ドシュッ ボボンッ
ドンっ ドシュッ
ボシュッ ズドンっ
ドオーンッ ボボンッ
ジジューッッッッ
あるロケットはその場で爆発し、あるロケットは明後日の方向へ飛んで行き、またあるロケットはその場で爆発せずに閃光と爆炎を撒き散らした。
六郎
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・・・・」
近くにいるだけで死へ直行するようなあの気から離れるだけで精一杯だった。
今迄の対戦相手も人を殺めている様な裏世界のプロはいた。
そんな奴等の雰囲気にさえ臆せず戦い抜いて1度は優勝し、そしてまた今回もこうやって決勝の舞台にたっている。
しかし目の前の少女はそんな奴等を凌駕する不気味な雰囲気を醸し出していた。
六郎
「(あれは殺気とか強さとかそんな小さいレベルの話じゃねぇ・・・
なんらかの"覚悟"を決めた人間の本性だ・・・・・・
多分このトーナメントで死線を潜り抜けて、その毒気に取り憑かれてるんだ・・・)」
漆黒と紅蓮の爆炎が霧散し元の白の景色に戻ろうとしていた。
クレセント・ロックのロケット弾で溶けた雪原にはあちこちにクレーターができている。
そんな異様な景色の中、硝子は何事も無かったかの様にその場に佇んでいた。
積雪からの照り返しの乱反射で今迄以上の輝きを放ちながら人型に形成された
クリスタル・ピースを携えて。
そして目のあった硝子の口唇がゆっくりと動く。
硝子
「藤島さんは、この大会で何人殺・・・」
言い終わる前に六郎が叫ぶ。
六郎
「やめろッッッッッ!!!!!!もういいッッッッッ!!!!!!」
分厚い積雪を拳で叩きながら硝子の言葉を遮った。
六郎
「キミは一体何を考えて何を願うんだ・・・?
どうしてそうなった・・・っ?」
困惑と怒りと哀しさが入り雑じった様な表情を浮かべながら六郎が硝子に問う。
その表情と言葉の意味を理解した硝子は糸の切れたマリオネットの様にその場でへたりこんだ。
硝子
「・・・最初は・・・」
俯いた儘静かにその小さな口唇を動かし始めた。
硝子
「最初はほんの些細などこにでもある小さな願いだったんです・・・」
無音の雪原に硝子の言葉だけだ響いていた。
硝子
「人見知りで引っ込み思案な私はただ【強くなりたい】と願いました。
そんな時、招待状が届きました。メッセージと共に。
強くなりたければトーナメントに出場しろとの事でした。
私は願いました。強くなりたいと。ただそれだけの小さな願いだったんです。」
硝子の大きな目からポツリポツリと涙が溢れ始めていた。
硝子
「だけど・・・私がその後見た物はそんな願いで勝ち抜ける様な温いトーナメントではありませんでした。
血反吐を吐き腕を失い人を殺めて迄残らなきゃいけない道でした・・・」
六郎はただ黙って硝子を見詰めその凄惨な状況がこの少女に大きな精神的負担になっている事を肌で感じ取った。
同時に疑問が浮かぶ。止めると言う選択肢はなかったのか?
自分の対戦相手は自分の夢や目標が叶ったからと俺をこの場所へ誘った。
こいつは既に強くなれただろ?もう答えも出ているんじゃないかと。
硝子
「結果・・・。私は強くなりました。
いえ強くなったと思います。
で、でも!でも!このトーナメントは私を離してはくれませんでした。
強くなったのならもっと強く!そして今度は負けられない!と言う意思が自分を支配していくのです・・・っ」
その顔はボロボロと涙を流しながら、六郎を真っ直ぐ見据え訴えかけていた。
六郎
「・・・わかった。キミの気持ちはよくわかった。
続きをやろう。俺がキミに答えをくれてやるよ・・・」
そう言うと六郎は立ち上がりクレセント・ロックにファイティングポーズを取らせる。
六郎
「俺が・・・キミを殺してやる。
そしてキミの分は俺が生きてやる。
会ったばかりのキミにそこまでしてやる俺ってイケメンだろ?」
六郎は自慢の顎髭を撫でてニカッと微笑んだ。
六郎
「(多分これが俺に課せられた義務なんだ。
これが俺を決勝へと押し上げたあいつらの意思なんだ・・・っ)」
六郎は六郎なりの答えを出した。
踊らされてても構わねぇ。予定調和の1部でも構わねぇ。
それが自分の役目ならやってやるさ。知らない女の子の為落とす命もかっけーもんだろ。
硝子
「かっこいいですよ。藤島さん。でも・・・私のクリスタル・ピースは無敵ですよ。倒せますか?」
硝子はそう言ってニコリと笑う。
六郎
「やってやんヨ」
六郎も再び笑った。
六郎
「行くぜェェェッッッ!!!!!!!!
クレセント・ロックゥゥゥゥ!!!!!
ぶっ壊れても構われねぇ!!!!!!!
限界ブッチ切れェェェェェッッッッッ!!!!!」
喉が切れてしまう程の咆哮をあげ、スタンドもそれに応える。
クレセント・ロック
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!」
雄叫びと共に白銀のスタンドが数百もの拳で地面を乱打し、
そこから地鳴りを起こしながら数百のロケットが硝子を目掛けて飛翔する。
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨
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硝子
「クリスタル・ピース!」
一言短く叫ぶとクリスタル・ピースは人型を崩し数多の水晶のレンズの様な形態にその形を変えた。
そして硝子は静かに正面のレンズに左腕のレーザーを射出する。
するとそのレーザーは反射により拡散しレンズを通してより細かく
そして広い範囲に降り注ぐ。
それはまるで雲の隙間から照らし出される太陽の光のようだった。
その光のシャワーに数百ものロケットは次々と破壊されていった。
六郎
「・・・そんなこったろうと思ったよ!」
限界を超えボロボロになった体で六郎は再び接近を試みる。
硝子
「何度やっても・・・っ」
レンズ形態のクリスタル・ピースはあっという間にその形を崩し
また粒子レベルのガラスのカーテンを形成した。
六郎
「クレセント・ロック!!!!!!
ここだぁ!!!!!!」
六郎はダメージを覚悟で足元にロケットを設置し己の足に命中即爆破を起こさせた。
硝子
「・・・っ!」
それでもなおガラスのカーテンはその鋭利な刃をほんの少し鈍らせる程度であった。
六郎
「し、仕上げだ・・・クレセント・・・・ロック・・・」
クレセント・ロックは最後の力で六郎自身をそのカーテンの内側へ押し込んだ。
六郎
「へへ・・・キミの侵入不可能な部屋の鍵は・・・俺が持ってたんだよ・・・
なんてな・・・・・・」
・・・・・・バフッ・・・・・・・・・
六郎は血塗れの体で硝子をキツく抱き締める。
硝子
「・・・・・・あっ・・・・・・・・・」
六郎
「おまたせ。約束果たしにきたぜ・・・」
硝子
「・・・・・・・・・・・・っ」
硝子の顔に安堵の表情が浮かぶ。
その顔は内気で人見知りの本当の硝子の顔であった。
ニコリと笑う硝子。
頭を撫でながら照れた様に笑う六郎。
そして六郎の腹からは、まるで春に息吹き芽を出す若葉の様にロケットが発射の時をまだかまだかと待っていた。
六郎
「すまんな・・・」
硝子
「・・・ありがとうございます」
カッ
真っ白な雪原にほんの一瞬。
誰も見る事のない赤い花が咲いた。
そしてその花は赤い影を雪原に残し消えた。
六郎
「行くぜェェェッッッ!!!!!!!!
クレセント・ロックゥゥゥゥ!!!!!
ぶっ壊れても構われねぇ!!!!!!!
限界ブッチ切れェェェェェッッッッッ!!!!!」
喉が切れてしまう程の咆哮をあげ、スタンドもそれに応える。
クレセント・ロック
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!」
雄叫びと共に白銀のスタンドが数百もの拳で地面を乱打し、
そこから地鳴りを起こしながら数百のロケットが硝子を目掛けて飛翔する。
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硝子
「クリスタル・ピース!」
一言短く叫ぶとクリスタル・ピースは人型を崩し数多の水晶のレンズの様な形態にその形を変えた。
そして硝子は静かに正面のレンズに左腕のレーザーを射出する。
するとそのレーザーは反射により拡散しレンズを通してより細かく
そして広い範囲に降り注ぐ。
それはまるで雲の隙間から照らし出される太陽の光のようだった。
その光のシャワーに数百ものロケットは次々と破壊されていった。
六郎
「・・・そんなこったろうと思ったよ!」
限界を超えボロボロになった体で六郎は再び接近を試みる。
硝子
「何度やっても・・・っ」
レンズ形態のクリスタル・ピースはあっという間にその形を崩し
また粒子レベルのガラスのカーテンを形成した。
六郎
「クレセント・ロック!!!!!!
ここだぁ!!!!!!」
六郎はダメージを覚悟で足元にロケットを設置し己の足に命中即爆破を起こさせた。
硝子
「・・・っ!」
それでもなおガラスのカーテンはその鋭利な刃をほんの少し鈍らせる程度であった。
六郎
「し、仕上げだ・・・クレセント・・・・ロック・・・」
クレセント・ロックは最後の力で六郎自身をそのカーテンの内側へ押し込んだ。
六郎
「へへ・・・キミの侵入不可能な部屋の鍵は・・・俺が持ってたんだよ・・・
なんてな・・・・・・」
・・・・・・バフッ・・・・・・・・・
六郎は血塗れの体で硝子をキツく抱き締める。
硝子
「・・・・・・あっ・・・・・・・・・」
六郎
「おまたせ。約束果たしにきたぜ・・・」
硝子
「・・・・・・・・・・・・っ」
硝子の顔に安堵の表情が浮かぶ。
その顔は内気で人見知りの本当の硝子の顔であった。
ニコリと笑う硝子。
頭を撫でながら照れた様に笑う六郎。
そして六郎の腹からは、まるで春に息吹き芽を出す若葉の様にロケットが発射の時をまだかまだかと待っていた。
六郎
「すまんな・・・」
硝子
「・・・ありがとうございます」
カッ
真っ白な雪原にほんの一瞬。
誰も見る事のない赤い花が咲いた。
そしてその花は赤い影を雪原に残し消えた。
音の無い白の景色が広がっている。
キラキラと空をさまようダイヤモンド・ダストが綺麗だった。
その白の景色と無音の空間にロータリー音が近付く。
ヘリコプターから降りた男が六郎と硝子であった物に歩み寄った。
「勝者。藤島六郎。」
静かにそう告げるとバラバラになった六郎の腕を探し出し高々と澄んだ空間の中に掲げた。
???
「貴様はよくやった。天晴であった。
よく新房硝子を地獄から開放した。
2階級特進であるっ」
男がその異形の左腕をあげると白衣に身を包んだ集団が
ザッシュザッシュと雪を踏みしめて現れその赤い影周辺を掻き集め袋に詰めてヘリコプターへ運び込む。
???
「心配するな藤島六郎。貴様のやった事は無駄にはしない。」
男はポマードで固めた髪を整えその場所を後にする。
???
「撤収ゥゥゥゥーーーーッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!」
ヘリコプターはけたたましい爆音を上げ遠のいて行く。
そしてまた雪原は平穏で白く無音の空間を取り戻し、その時を刻む。
★★★ 勝者 ★★★
No.6130
【スタンド名】
クリスタル・ピース
【本体】
新房 硝子(シンボウ ショウコ)
【能力】
微細なガラスを操作する
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最終更新:2022年04月17日 16:34