第02回トーナメント:予選③
No.449
【スタンド名】
タイト・ロープ
【本体】
ドナルド・“ドン”・ハーディン
【能力】
張力を調整できる縄を操作する
No.2234
【スタンド名】
バレエ・メカニック
【本体】
井波 政勝(イナミ マサカツ)
【能力】
物体を金属化・サイボーグ化する
タイト・ロープ vs バレエ・メカニック
【STAGE:波止場】◆aQVFw6W.SA
縄を常時携帯するのは、カウボーイくらいだろうか。答えはNOだ。
『タイト・ロープ』のスタンド使い『ドナルド・ハーディン』は、「目に見える生命線」として常にロープを持ち歩いている。
「遅いな……」
対戦場所は日本某所の波止場。対戦相手の学生が、どうもまだ来ていないらしい。
開始時刻は午後十一時。もうあと開始まで三分とない。
「ああ遅くなってすいませーん」
そうこうしている間に、年若い男がヘラヘラとした表情を顔に貼り付けて、小走りでやってきた。
彼こそ対戦相手の『井波政勝』である。
「お前学生か」
「ええそうっス」
「ふーん」
正直言って、それほど興味はない。一応やっておくか程度の、社交辞令の挨拶だ(命のやり取りと言うほどハードな物でもないし)。
「『ドン・ハーディン』だ。よろしく頼むぜ」
ドンは、そう名乗って政勝に握手を求める。当然、政勝は
「渡された名簿にはドナルドって書いてましたけど、何故ドン?」
「ドナルドの愛称だよ。お前……「ウィリアム」の愛称が「ビル」なのは特に違和感を持たないのに「ロバート」の愛称が「ボブ」なのには違和感をもつタイプだろ」
「…………」
ドンの行動の二三に、政勝は多少の違和感を感じていた(ちなみに、ドンが言った「ロバート=ボブ」と言うのは知りすらしなかった)。
この握手を求める動作は、あからさま過ぎて逆に怪しい。
リア充でも非リア充でもなく、スタンドバトル自体の経験も薄い政勝でも、多少なら分かる。これは誘っている。何かを確実に誘っている動作だ。
「……何かを警戒しているようなら別に構わんよ」
「物分かりがよくて助かります」
次の瞬間、政勝は自身のスタンド『バレエ・メカニック』を発現させた。
ドンはそのスタンドの、一見ひ弱そうな像(ヴィジョン)に警戒するが、その像はすぐに消えてなくなってしまう。
「……?!」
「ぁらっ……!」
政勝は素手で殴りかかってきたのだ。
その様子にドンは少しだけ驚いたが、すぐに頭を冷やし、思考する。
「スタンドを発現してくださいよ……そのまま殴られちゃっていいんですか…………ね!」
真っ直ぐ、その拳はドンの脇腹に刺さる。
だが、ドンは眉ひとつ動かさず、1mmたりとも動いてはいなかった。
「スタンドを発現してください……か。よく覚えときなよ。こういうスタンドの形もあるってことをな……!」
そう言ってドンが上着を脱ぐと、彼の上半身にはロープがガチガチに巻かれていた。
「??!」
「『タイト・ロープッ!』」
ドンがそう叫び、彼の上半身のロープが解け、人型の像を形成する。
「縄のスタンド……?」
「まあ間違っちゃあいない。65点だ」
冷静に言い放ち、ドンは『タイト・ロープ』で政勝を殴り飛ばす。
経験の浅さゆえであろう。決して政勝は油断をしていたわけではない。
「クソ……やっぱ速攻では無理かー」
政勝のスタンド『バレエ・メカニック』の能力は、物質と同化してそれをサイボーグ化する能力。
先ほどは、自分自身の拳をサイボーグ化し、ドンに特攻した。
大抵の相手は、身体能力が向上した政勝の攻撃に耐えられず、一撃で昏倒するのだが、やはりスタンド使い相手ではあまり効果がなかったようである。
「だが、吹っ飛ばされた場所がいい……」
そう言って政勝は、再度『バレエ・メカニック』を発現させた。
同化させたのは「ホース」
ドンは、数m先で寝転がっている政勝に歩み寄りながら、少し昔のことを思い出していた。あまりいい事がなかった「昔」だ。
でも、そこには『タイト・ロープ』を発現させる切っ掛けとなった「転落」があった。
「……」
先ほどの攻撃。確かに強かった。恐らくあれが能力なのだろう。『タイト・ロープ』を使って緩衝はできたが、それでも少し喰らった。
口元からこぼれおちる一筋の血がそれを物語っている。
完全な緩衝は期待できない。もちろんあまり喰らい過ぎるのは不味い。それをスッと手でぬぐい取り、彼はこう言った。
「……おおい小僧。さすがにもう眠いだろう。終わりにしようや」
ドンのその言葉に反応してか、政勝はドンの方向に向き直る。
「何かしようとしてるんならやめとけよ。見えてんだ」
「見えてる……本当ですかね……暗くてよく見えないんじゃ? ここは外灯も自販機もなくて、実際にはほとんど見えてないんじゃないんですかね?」
ドンは、最初に政勝が来るのを「遅い」と言った。だが、彼自身来たのは政勝が来るほんの数分前。
先ほどの握手を求める動作もそうであるが、「遅い」の一言も駆け引きだったのだ。
その場でずっと待っていたかのように、相手に伝える効果を持っている駆け引き(ゆえに、決して小声で言い放つことはなかった)。
どちらの動作も、けん制には役に立っていた。
だが、この場所の全容を掴める余裕はなかった。ただ、そう見せているであり、政勝を吹き飛ばした場所に何かがあるかもしれないとまで、考えが及ばなかったのだ。
政勝の方も、スタンドを発現させたことを悟られたくはなかった。
自分の体の陰に『バレエ・メカニック』を隠し、「ホース」へと押し付けた。
このホースは、投網やらブイやらと言った漁用の道具やスチールの空き缶などが大勢転がっている中から探し当てた「リーチを持つ戦力」
このホースは表面が「藻」か「プランクトン」か何か分からない汚いもので覆われている古いホースだ。恐らく捨てられたからこんな場所にあるのだろう。
古いホースであろうと、このホースはドンまで届くほどのリーチがあることは確実だ。
「まあいい。今から一気にそっちに行く。この『タイト・ロープ』の射程は10mだ。射程内にはすでに入ってるってことは理解してるな?」
「……ええ」
「だが、確実に仕留めるために距離を詰める。殺したりはしねえよ命はるほどのモンでもねえ……」
しばしの無言の後、突然蛇のようにホースが伸びた。
「よしっ『バレエ・メカニックッ!』 そのまま締め付け……」
「『タイト・ロープ』」
『タイト・ロープ』は、そのまま受けた。
「くぅ……」
勢いよく飛んできたホースを、腕の部分をロープに戻し、「ネット」とすることで効率よく緩衝したのだ。
「懐に入ったッ!」
だが、直後の政勝の言葉に気付く。
「ホースは囮か」
ホース自体が動いているのとは、少し違う動きがドンにはすぐに分かった。
ホースの動きは、まずピンと伸び、ドンへと向かってくる。
だが、ホースの行動は締め付けるのではない。そのまま真っ直ぐ伸びて、そこから一直線に「何か」が向かってくる。
「「ホース」じゃあないようだな……?」
「ホースがサイボーグ化したと思った? 残念! 空き缶に入ってた「汚水」のほうだったのさ!」
「スタンドによる制御ありきになるけど、「液体金属」が完成したのさ…………「ターミネーター2」でおなじみのな!」
それでも、ドンは依然として余裕の表情を崩さない。
液体金属はどんどんホースから這い上がろうとしているのにだ
「…………何余裕ぶってんだよ……どう考えてもピンチだろアンタ!」
「それはそうと迂闊だな。今何気なしに自分の能力が「サイボーグ化」だってポロリしちまっただろ。」
「いけないねえ……お前もし、自分の能力情報を知ってる奴がやってきたらどうするつもりだ」
「知っるっかっよっそんなもんっ!! 『バレエ・メカニックッ!』」
そう叫ぶとともに、遂に「液体金属」がホースの口の部分から現れ出ようとした。
だが、できなかった。
それと同時に政勝が感じるのは、足下に感じる束縛感。
「こ……これは」
「こっちもネタばらしをしてやる」
「な……何を……何をしやがったんだッ!」
「本気で分からねえって面してやがるから教えてやる お前と俺は『似たタイプのスタンド』使いだったってことさ……」
その瞬間、『タイト・ロープ』が解けて2本の縄となり、うち一本がそのホースへと絡み合い、再度『タイト・ロープ』の像が構築され始める。
「このホースの長さは目算で見ても20mッ! 不足分はこのロープで補おう……!」
「さあおしまいだッ! 帰って寝ろコーコーセイッ!」
スタンド像の構成は、非常にゆっくりであったが、政勝にとってはそれは「死刑台のエレベーター」を上るような感じであった。
逃れようともがけばもがくほど、締め付けられて逃れられない
「チクショウ……クソがァ……ッ!」
意思のある生物ならばともかく、今一体化しているのは単なる水。
操作動力はスタンドパワーに依存するため、破壊力はEであり、『不意打ち』が成功するのを前提の攻撃だ。
もう逃げられない。ホースは完全にロープで拘束され、やや歪な色味を帯びた、通常とは違うスタンド像の『タイト・ロープ』が発現する。
息ができない。そして暑い。密閉された空間の中で政勝をその苦痛が襲い、そして意識を失った。
「「落ち」たな。見届けたぞ」
ドンは、すぐさまスタンドを解除する。すると、『タイト・ロープ』は解け、ただの縄とホースへと戻った。
「まあ……気の利いた事を言うつもりはねえよ」
「だが一言だけ…………せいぜい「這い上が」るんだな」
落ちた政勝に、過去の自分を重ね合わせながら、ドンは去って行った。
★★★ 勝者 ★★★
No.449
【スタンド名】
タイト・ロープ
【本体】
ドナルド・“ドン”・ハーディン
【能力】
張力を調整できる縄を操作する
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最終更新:2022年04月13日 22:08