第02回トーナメント:準決勝②
No.449
【スタンド名】
タイト・ロープ
【本体】
ドナルド・“ドン”・ハーディン
【能力】
張力を調整できる縄を操作する
No.3511
【スタンド名】
イーグル・ハート
【本体】
大友 湊沁(オオトモ ソウシン)
【能力】
触れた場所を糸状にして綻ばせる
タイト・ロープ vs イーグル・ハート
【STAGE:大聖堂】◆1KCngmSt1w
高い天井、太い柱、派手なステンドグラスに、奥まった所に鎮座するパイプオルガン。
電気で明かりも採れるだろうに、あえて祭壇で炎を揺らす燭台の光が、宗教的な荘厳さにより一層の説得力を与える。
そんな、ある種の神聖さすら帯びた空間に、全く場違いな男2人、肩を並べて中央の通路を歩いていた。
片や、ジャケットを着崩し、右脇に松葉杖をつく男。
片や、着流しにマフラーとマントを合わせるという奇抜なセンスの青年だ。
「しっかし、胡散臭ェ建物だよな……いろんな時代の様式がゴチャ混ぜじゃねぇか」
「そんなモンですかね?
うわ、すっげぇ柱。むっちゃ太い。てか、こんなに無駄に立ってたら邪魔じゃん?
……ま、ココは日本人が最近になって建てたゴシック建築『もどき』らしいっすから、伝統なんてあるわけないじゃん。
でもオイラなんかは、これはこれでアリじゃん? って思いますけどねェ」
「ソーシン、お前、アレだろ。
『現代美術』とか称して詐欺師が適当に作った継ぎはぎコラージュ写真を、有難そうに拝んじゃうタイプだろ」
「ドンさん、その言い方ってひでーじゃん?
ま、そりゃ『和洋折衷』大好きなオイラにとっちゃ、当たらずとも遠からずって感じだけどさ……」
松葉杖の男の嫌味に、着流しの青年は肩を竦める。
流暢な日本語で建物の様式に文句を言っていたのは、元曲芸師であるドナルド・ハーディン、通称ドン。
和洋折衷を愛する青年は、その名を大友湊沁(オオトモ・ソウシン)と名乗った。
どちらもつい先ほど、この場所で合ったばかりの仲である。
「さて……そろそろ予定の時間か。
それにしても、不意打ちくらいはされるかと覚悟してたんだがな」
「何言ってんだか。そんな隙見せてくれなかったのは、ドンさんじゃん?」
「まあ、そうなんだけどな」
腕時計から視線を上げたドンは、ニヤリと笑うと半身に身構える。
湊沁も好戦的な微笑みを浮かべると、軽く重心を落として身構える。
そう。
この2人が『こんな場所』にて出会ったのは、何もこのインチキ大聖堂について悪口を言いあうためではない。
互いを潰しあうために、出会ったのだ。
恨みはない。
嫌悪もない。
憎悪もない。
それどころか僅かな会話のうちに、好感に近い感情を抱いている。
それでも、互いに譲れない『何か』のために――最も大事な『何か』のために、相手を、叩きのめす。
彼らはそういう男たちであり、また、既に『そういう戦い』を経験し、勝ち抜いてきた者同士であった。
相手を尊敬すればこそ、油断も慢心も容赦もなく、全力をもって叩きのめす……これは、そういう出会いだった。
最初に動いたのは、湊沁だった。
「『イーグル・ハート』ッ!」
湊沁の叫びに応じて、糸くずと埃を固めて作ったような歪な人型が出現する。
鳥のくちばしを備えた頭部。細いが密度の高い筋肉が詰まった上半身。輪郭も曖昧な両拳。
大友湊沁のスタンド、『イーグル・ハート』だ。
それが主の意思に応じて、ドナルド・ハーディン目掛けて突進する!
「その動き……『近距離パワー型』か。真面目に相手するのは、面倒そうだな」
対するドンは冷静だった。
右手で松葉杖をついたまま、左手一本で『何か』を投げ上げる。
それは――蛇のようにうねる、1本のロープ!
服の下にどのようにして隠し持っていたものか、ジャケットの袖口から飛び出した縄は恐ろしい速度で宙を走り、そして……
大聖堂に立ち並ぶ太い柱の1本に巻きつくと、まるで一本釣りのような動きでドンの身体を跳ね上げる!
「……ッ!!」
「あんまり手の内は見せたくないんだが――しかし、お前さんは『サイボーグ』の小僧よりも『ヤバそう』だ。
『一発殴らせてやる』なんて余裕見せたら、どうにもひどく後悔しちまいそうなんでな」
間一髪、『イーグル・ハート』の拳を避けて虚空を舞いながら、ドンは爽やかに笑う。
そのまま彼は、地上およそ3m、太く長い柱の中ほどに『着地』。
タイミングよくズボンの裾から飛び出したロープが、柱に巻きついて彼を『固定』する。
自在に動く縄の助けを得ているとはいえ、元・花形曲芸師の肩書きに恥じぬ、見事な平衡感覚と体さばきだった。
驚き見上げる湊沁に、左手側のロープを引き戻しながらドンが吼える。
「ソーシンの『能力』はまだ分からねえが……
経験の差ってやつでな、『突撃』する姿1つ見ただけで、大した『射程距離』がねえってのは分かっちまうもんさ。
悪いが『一方的』に決めさせて貰うぜ! 『タイト・ロープ』ッ!!」
ロープが素早くとぐろを巻いて、人型のスタンドの像を描き出す。
縄の一部を本体の空中固定に割いている分、出来上がる像は上半身だけだが、しかしそれで必要十分。
ドンのスタンド『タイト・ロープ』が、遥か下方にいる『イーグル・ハート』に向けて拳を突き出し――
――そして、両の拳が宙を切り裂いて飛ぶ!
「おまえの『射程外』から降り注ぐ、『有線ロケットパンチ』のラッシュだ!
捌ききれるモンなら捌いてみやがれっ!!」
「くっ! 『イーグル・ハート』ッ! 迎え撃てっ! 『クケェェェェェェェェェ!』」
『頭上』という人間の生理的死角から降り注ぐ、拳の雨。
前腕から先の拳だけが具現化され、ほどけたロープでスタンド本体と繋がったそのパンチは確かに脅威。
だが、湊沁は慌てなかった。
襲い来る連打を『イーグル・ハート』の拳で迎撃しながら、今度は湊沁が冷静に分析をする番だった。
「『ヤバそう』っていう『勘』だけで『イーグル・ハート』を避けるセンス、
この巧みな位置取り、速攻での出し惜しみのないラッシュ……
流石はドンさん、ベテランを自認するだけあるじゃん? でもね……!」
互いの拳の弾幕は、ほぼ均衡。
速度は互角。
素のパワーだけなら、『イーグル・ハート』がやや上。
しかし『タイト・ロープ』が高度差で優位を得たことで、パワーに関しては実質プラマイゼロ。
差がつくとしたら、互いの打撃の正確さ――そして、それはドナルド・ハーディンの『タイト・ロープ』の方が圧倒的に上!
既に2~3発、『タイト・ロープ』の拳が湊沁の身体を掠めているし、このまま拳の応酬を続けてもいずれ打ち負ける。
いつかは直撃を食らう。予告どおりに『一方的』に殴られることになる。
そうと分かっていて、しかし、湊沁は逃げなかった。
「でもね――ドンさん」
ニヤリと笑った彼の顔面に、とうとう『イーグル・ハート』の迎撃を潜り抜けた拳が突き刺さって、
「どうやらオイラたちって、ひどく『似たタイプの』スタンドみたいじゃん?」
『タイト・ロープ』の拳の直撃を受けながら――湊沁は、全く余裕の笑みを崩さなかった。
ぼふっ。
気の抜けた音が、広々とした大聖堂の中に響き渡った。
ドンは己の眼を疑った。
いつの間にか――『タイト・ロープ』自慢の『有線ロケット・パンチ』が、巨大なボクシンググローブのように膨れ上がっている!
まるで、中に大量に綿を詰め込んだように。
ふわふわで、モコモコで、まるで『殴られても痛くないジョークグッズ』として売られている、おもちゃのグローブのように!
いったいいつの間に!?
というか、これは……『スタンド能力』!? いったいどういう『能力』だ!?
「なっ――!?」
「何だかんだ言ってドンさん、『油断』したじゃん? こっちの『射程』の外側だから大丈夫だろう、って。
でもね――おかげさまで、その『拳』には、散々『触らせて』貰えた、じゃんっ!」
思わず動きを止めた『タイト・ロープ』の拳、その『隙』を見逃す湊沁ではなかった。
素早く『イーグル・ハート』が『何か』を――『タイト・ロープ』の拳についていた『糸くずのようなもの』を摘み上げると。
『それ』を全力で、『引っ張った』!
「『イーグル・ハート』の能力は、『殴ったモノ』を『ほつれさせる』能力――
悪いけど、『ロープを操る物質同化型』って、『イーグル・ハート』にとっちゃ最高の『カモ』じゃん!?
だからっ! 『無駄ァァァァァァァァァァァァァッ!!』」
あの互いの拳の応酬の中で、『タイト・ロープ』の両拳を構成するロープを対象にして『ほつれ』させ。
細い糸くず状になった『拳』は、クッションのような衝撃吸収性を獲得してしまい、全く脅威ではなくなった。
そして――『タイト・ロープ』を構成しているロープは、全てこの左右の拳と繋がっている!
見る間に全てが『ほどけて』いく。
『イーグル・ハート』が手繰るほどに、『タイト・ロープ』を構成するロープが、細い細い糸へと変わっていく!
血の気を失ったドンもすぐにこの先の結末を悟るが、もう遅い。
『タイト・ロープ』は、あくまで『ロープ』を自在に操るスタンドだ――
それこそ、『ホース』程度のものなら『縄に近いモノ』と見立てて支配できるけれど。
『ロープ』より遥かに細い『糸』は、太さのほとんどない『糸』は、そのコントロールできる範疇にはない!
崩壊はそして、ほんの数秒で訪れた。
ロープはことごとく『ほどけ』て細い細い糸となり、『タイト・ロープ』の人型の上半身も消えうせて。
そして、自らの身体を柱に『固定』していたロープも全て糸くずと化し。
ドナルド・“ドン”・ハーディンは、3mの高さから、成す術もなく無様に落下した。
走馬灯のように、「あの時」の記憶が蘇る。
思い出したくもない自由落下の感覚が、「あの時」の記憶と被る。
命綱なし・セーフティネットなしでの、超高所での綱渡りチャレンジ――「彼」の生涯最後の曲芸公演。
彼はあの時の絶望を忘れない。未だに忘れられない。
足裏から伝わる、ロープがゆっくりとぷちぷちと切れていく、おぞましい感触。
縄のセッティング方法にミスがあったのか、固定された片方の端で、足場になるはずのロープが切れようとしていた。
どこかの角に過剰な加重がかかった縄が、その繊維の1本1本、順番に千切れようとしていた。
もちろん、あらゆる安全対策を放棄して挑んだこの挑戦だ。地面は遥か彼方。ロープが切れたら、まず死ぬしかない。
もはや引き返すには遅すぎて、渡りきるには絶望的で。
見守る観客もスタッフも、未だに「彼」の陥った苦境に気づきもしない。
高空を吹き抜ける強風のせいで、「彼」の叫びも届かない。
必死の形相も身振り手振りも、パフォーマンスの一環と信じて疑わない。
アクロバット界の花形スターとして知られていた「彼」にとっては簡単過ぎるチャレンジだったはずなのに、何故こんなことに。
足の裏から、ロープがゆっくりと切れていく感触が伝わってくる。
今までそれほど明確でなかった感覚が、この生命の危機に研ぎ澄まされる。
ロープが「彼」そのものの肉体の延長として感じられる。
ロープが、命そのものになる。
やがて、千切れゆくロープは限界を超え――「彼」はどうしようもない自由落下へと放り出される。
花形スターを襲った悲劇的な事故は、しかし、「彼」が九死に一生を得たこともあって、大したニュースにもならなかった。
奇跡的に切れたロープの端が絡まって、墜落死を免れたのである。
今にして思えば、それは奇跡などではなく、後に発現するスタンド能力の片鱗だったのかもしれない。
だが、失ったものは大きかった。
スターとしての栄光。彼を応援するファン。出資してくれるスポンサー。
ロープが絡まり全ての加重がかかり、神経に障害が残ってしまった右足の自由。
そして何より――曲芸に対する情熱。
自由落下に身を委ねるしかない僅かな刹那の中、「彼」の中で手に取るように思い出される。
ぷちぷちと、ロープが切れていく。
編み上げられた繊維の1本1本の単位で、ロープが切れていく。
足の裏のロープが、「彼」の身体感覚と重なる。
細い繊維の1本に至るまで、「彼」の身体と一体化して溶け合っていく――
油断はしない。慢心はしない。容赦もしない。
それが、ドナルド・“ドン”・ハーディン、および『タイト・ロープ』という強敵に対する、最低限の礼儀だった。
大聖堂の柱から落下したドンに向け、『イーグル・ハート』を伴った大友湊沁は、油断なく歩を進める。
「ひょっとしたら気絶くらいはしてもおかしくないけど、でも、それって都合の良すぎる考え方じゃん?
狸寝入りなんかで逆転されても、つまらないし納得もできないじゃん? だから――」
1歩。2歩。湊沁は距離を詰める。
落下の衝撃で意識が朦朧としているのか、倒れたドンが身じろぎする。何やらモゴモゴと呟いている。
素早くその全身に目を走らせる。
大丈夫。もう他にロープは隠し持っていない。全て『糸くず』にまで分解した。
『糸』の単位にまで分解した途端に、あの有様なのだ。この状態になれば、彼の支配は及ばないものと考えていい。
必勝の確信を持って、『イーグル・ハート』が拳を振り上げる。
直接この拳をドンの身体に打ち込んで――ドンの身体を『バラバラ』にする。
殺す気はない。だが、誰がどう見ても『戦闘不能』なくらいのダメージは負ってもらおう。『敗北』を納得してもらおう。
半端なところで勝ち名乗りを上げてみせるのは、それこそ失礼というものだ。
「だから、きっちり決着をつけさせてもらおうじゃんっ!
『イーグル・ハート』ッ!」
湊沁の真摯な叫びに、『イーグル・ハート』はそのくちばしを大きく広げて応え――その、拳を、
「――なるほど、『似たタイプのスタンド』か。
そうだな。まったくもって、その通りだよ」
振り下ろして――『何か』に、その拳を『受け止められた』。
「っ!?」
「――たぶんこれは、『運命』だったんだろう。
ここで俺とお前が出会うことは。
俺とお前が戦うことは。
俺が再び、『落下』を経験することは」
息を飲む湊沁の眼前で、『何物か』が『編みあがっていく』。『何か』を材料に『作り上げられて』いく。
『イーグル・ハート』の拳を受け止めた『掌』。
そこに繋がる『腕』。
その腕を支える『胴体』。
既視感はある。しかし微妙にデザインが違う。『緻密さ』が違う。『構成するもの』の荒さが全然違う!
ドンはゆっくりと起き上がると、静かに呟いた。
「お陰で、『成長』できた――
『タイト・ロープ』第二形態。
俺は今日初めて、『ロープ』の太さの呪縛を逃れ、より細い繊維まで完全なる支配に収めることができた。
全てお前のお陰だよ、ソーシン」
ドンの傍らには、まさに『イーグル・ハート』の拳で分解された『ロープ』の成れの果て――
――『糸くず』から再構築された、新しい『タイト・ロープ』の姿があった。
「は、は、は……や、やるじゃん!?」
湊沁は乾いた笑いを漏らす。
状況は圧倒的に不利だ。自分はどうやらトンでもないモノの引き金を引いてしまったらしい。
しかし素早く頭を切り替える。
どうやら目の前の『糸』から生まれたスタンドの操作は、ドンにとっても初めての経験であるらしい。
ならば。
ここまでは彼の『経験値』に苦戦を強いられてきたが、今度はそれが逆転するということだ!
散々使い慣れた『イーグル・ハート』で、若葉マークつきの『第二形態』とやらを圧倒してやる!
「そのスタンドもバラバラにすればいいだけじゃんっ!?
『イーグル・ハート』ッ!! 『クケェェェェェェェェェェェッ!』」
「無駄だよ。もう忘れたのか?
この『糸』は、お前が『ほぐして』作ったんだ。
お前のスタンドが生み出せる、限界の細さなんだ。
これ以上はどう頑張ったって『ほぐせ』ねぇよ。お前にはな」
湊沁は再び拳の連打を放つ。真正面から最高の速度、最高のパワーで放つ。
しかし当たらない。全て『タイト・ロープ』第二形態に受け止められる。平然と手の平で受け止められる。
さっきと同じように『タイト・ロープ』の『手』を『ほぐそう』としているのに、全く変化が現われない――
まさにドンの言う通り。
既に『ほぐれて』いるものが、『ほぐれたまま』スタンドの形状を取っているものが、これ以上『ほぐれる』訳がない!
彼我のパワーの差も、『タイト・ロープ』第二形態が持つ『柔らかさ』のせいで全て吸収されてしまう。
いや、これは『タイト・ロープ』側の能力というより、『イーグル・ハート』が『糸くず』にした物体の特性か?! 完全に裏目に出た!
「そして――反撃だ。今の『タイト・ロープ』は、どうやらちょっとばかり『小回り』が効くぜ?」
「っがッ!?」
そしてドンの予告通り、『タイト・ロープ』側も拳のラッシュを開始するに至り、完全に攻守は逆転する。
速度は互角。パワーの差は決め手にならない。そして、1発1発の拳の正確さは完全に『タイト・ロープ』が上!
『イーグル・ハート』の拳の隙間を潜り抜けて、『タイト・ロープ』の拳が湊沁を襲う。
もちろん『タイト・ロープ』の拳には『柔らかさ』があるのだが……
インパクトの瞬間、特に強く硬く『編み上げられる』拳には、さほどその『柔らかさ』が残っていない!
これもまた、精密で正確な『操作技術』の差による使い分けであった。
「だ、だけどドンさん、これだけじゃ百日手じゃん?」
「ほう?」
「だってオイラは……『自分の肉体』も『ほつれ』させることができるっ!
『打撃』しか攻撃手段のないドンさん相手には、これって『完全なる防御』ジャンっ!」
延々と息もつかせぬラッシュが続く中、湊沁は口の端の血を拭うと最後の手段に出る。
自らの肉体の『糸くず』化。殴られる場所の『糸くず』化。
それは最高の衝撃吸収性を誇り、また、多少引き千切られたくらいでは大したダメージにもならない、自慢の防御手段!
これを使用する限り、『イーグル・ハート』を持つ大友湊沁の『敗北』だけはあり得ないはずであった。
だがしかし、ドンは。
「そうだろうな。
それくらいは、出来るだろうな。
だからお前には、『選んで』貰おうと思う」
あっさりとラッシュを打ち切ると、一旦後方へと跳び下がった。
いつの間にやら、その手に握られていたのは……
「あ、あ、あ……!」
「お前も知ってはいるだろうが、細い『糸』、それに空気を大量に含んだ『綿』って奴は、よ~く『燃える』んだ。
そいつが脂肪分をたっぷり含んだ『人間の肉体』で出来ているなら、それこそ申し分ないだろうな」
淡々とつぶやくドンの手に握られていたのは、何本ものロウソクが炎を揺らす『燭台』。
大聖堂の祭壇の上に、確かに置かれていたものだ。
それはおそらく、ロープ、いや『糸』を伸ばして一瞬で引き寄せたのに違いなかった。
湊沁の顔面が蒼白になる。
無敵にも近い防御力を持つ『イーグル・ハート』、その唯一の『弱点』は、彼自身が誰よりも良く知っている!
身体を『ほぐし』て打撃に耐え、その直後に火を放たれてしまうのか。
それとも、火を恐れて『ほぐす』のをやめ、そのままボコボコに殴られ続けるのか。
ドンが言う『選択』とは、つまりはそういうことだった。
「で、でも、そいつはドンさんの今のスタンドだって、条件は同じじゃん……!
火を付ける前に、ドンさんの方が……!」
「悪いが俺が持参した『ロープ』……お前がバラバラの『糸』にしてくれた『ロープ』は、難燃性の素材で出来ててね。
昔、炎を使うスタンド使い相手に、ロープを燃やされて苦戦したことがあるのさ。何事も経験しておくもんだな」
「…………ッ!!」
「さあ、選ばせてやる。――焼かれて死ぬか、殴られて終わるか」
油断はしない。慢心はしない。容赦もしない。
最高級の敬意を込めて、ドナルド・“ドン”・ハーディンは、大友湊沁に問いかけた。
ドンさん――
――なんだ?
こうなった以上――もう優勝しちゃうしか、ないじゃん?――
――当たり前だ。俺に任せとけ。だから、まあ、ソーシン。――この辺で、寝とけ。な?
★★★ 勝者 ★★★
No.449
【スタンド名】
タイト・ロープ
【本体】
ドナルド・“ドン”・ハーディン
【能力】
張力を調整できる縄を操作する
当wiki内に掲載されているすべての文章、画像等の無断転載、転用を禁止します。
最終更新:2022年04月21日 23:03