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第02回トーナメント:決勝①




No.4343
【スタンド名】
バッド・バード・ラグ
【本体】
煤架 耶樹(ススカ ヤギ)

【能力】
楔を打ち込んだモノを真っ二つに割る


No.449
【スタンド名】
タイト・ロープ
【本体】
ドナルド・“ドン”・ハーディン

【能力】
張力を調整できる縄を操作する




バッド・バード・ラグ vs タイト・ロープ

【STAGE:峠の茶屋】◆aqlrDxpX0s




市内から離れた山の上にある展望台……広い駐車場の一角には平屋の休憩所がぽつんと建っていた。
一足先に着いた煤架耶樹は休憩所の外に設置されたベンチに座り、おにぎりを食べていた。

耶樹「……ええ天気やなぁ。何もこんな日に戦わんでもええのに。」

空は一面真っ青で雲ひとつ浮かんでいない快晴だった。
こんな絶好の行楽日和でも、展望台には人っ子一人いなかった。

ブロロロロロ……    キッ


駐車場にワゴン車が停まった。運転席から降りてきたのは……耶樹と同じく決勝まで勝ち上がってきたドナルド・ハーディンだった。
ドンは肩にロープの束を提げてベンチに座る耶樹に近づく。

ドン「まったく、いい天気だ。こんな日は二人で酒でも飲みながら君のこれまでの戦いでも聞きたいものだな。」
耶樹「……ヘッ、聞いても楽しいもんじゃないで?……まぁ、たしかにこれが"大会"の決勝とは思えんわ。」
ドン「舞台演出も、観客も無い……ちょっと前までは考えられないな。」


展望台の広場から少し上の山頂までに生い茂る木々はすっかり紅葉している。広場に吹く風は冷たいが、日の光は暖かい。

耶樹「しかし……だからといってやらないわけにもいかん。俺は勝たなあかんからな。」
ドン「そうだな、俺たちはもうあとには引けない。互いに背負ってるもののために……戦おう。」

ドンは耶樹のいるところから後ずさり、距離をとった。

耶樹もペットボトルのお茶をぐいっと飲んで置き、ベンチから立ち上がった。


ドン「……開始の合図は?」
耶樹「いつでもええで……というより、もう始まってるんやないか?」
ドン「そうか、愚問だったな。」
耶樹「!!」

そのとき耶樹がドンにみたものは、彼の体から湧き出るような志気……オーラのようなものだった。
いや、そんなものは実際に見ることはできない。だが……それが見えるほどに、ドンの雰囲気は先ほどとはまるで変わっていた。

ドンが肩に提げたロープが浮き上がり、顔の大きさほどの拳の形をかたどっていった。

耶樹(あのロープがスタンドやったんか……奴はここに来たときからスタンドを発現させてたのか……)
ドン「それでは、こちらからいくぞ?」

グオッ!!

『タイト・ロープ』の拳が耶樹に迫る!
耶樹「『バッド・バード・ラグ』ッ!!」
耶樹の目の前に黒いボディのスタンド……『バッド・バード・ラグ』が現れた。

耶樹(ちっと驚いたがこのスタンド、スピードはそこそこあるが、俺のスタンドよりは遅い!)

バッ!

バッド・バード・ラグは両手に『くさび』を持ち、構えた。防御の体制というよりも、拳を迎え撃つ攻撃の体勢!
耶樹(ガードするのは簡単……だが、ここはダメージを与える事を狙う!『くさび』で受けて拳を割れさせる!)

ガッ!
バッド・バード・ラグは『くさび』でタイト・ロープの拳を受けた。

ズバァッ!

タイト・ロープの拳はくさびに触れたところから左右に二つに割れた!
耶樹「っしゃあ!拳ひとつカチ割ったで!」

ドン「ん……今、なにかしたか?」
耶樹「なっ……!」
耶樹(勢いが……割れたまま止まらん!?)

ドガァッ!!
耶樹「うぐぁっ!!」

くさびで割れた『タイト・ロープ』の拳はバッド・バード・ラグの両肩に命中した!
『タイト・ロープ』の攻撃は二つに割れたため攻撃力は落ちたものの、完全に気を抜いた耶樹にクリーン・ヒットした。

ドン「俺のスタンドは『縄』だ。拳が割れたところでなんの影響も無い。」


耶樹「くっ……ちっくしょ……」ダッ!
耶樹はドンに背を向けて走り出した。
ドン「おいおい、逃げる気か?こんな大舞台で……失望させてくれるなよ?」


耶樹が向かったのは、平屋の休憩所の中。シャッターは開いているが、中に人の姿は無い。

ドン「屋内での戦いを選ぶか……俺にとっちゃ屋内の方が戦いやすいんだがな。」
ドンは正面入り口から休憩所の中に入った。
中では中央で耶樹が立ったままドンに向かっていた。

耶樹「失望……か。それはこっちのセリフや。」
ドン「……?」

ドンは耶樹の足元を見た。……黒い鉄の棒のようなものが見えた。
さらによく見ると……黒い『くさび』が、床に浅く突き刺さっていた。

ドン(アレは……くさび?……さっき、『タイト・ロープ』の拳を真っ二つにしたのがヤツの能力だとしたら……)




ドドドドドドドドドド……


ドン「俺は、『誘い込まれた』ワケかッ!」


ドンは建物の中から振り返り、外へ出ようとする。しかし、足のあまり強くないドンは、すぐに外へ出ることはできなかった。

耶樹「もう遅いッ!落ちろォ―――――ッ!!」

ダン!

耶樹は浅く地面に差し込んだくさびを上から思い切り踏みつけた!


ズガガガガガガガガガ!!!!

地面はくさびを突き刺したところから、ドンのいる方向へ向かって大きく裂け始めた。
耶樹はくさびを差し込んだ直後に『バッド・バード・ラグ』に建物の『はり』をつかませて、『亀裂に落ちるのを避けた。』

耶樹「落ちるのはオマエだけや。」
ドン「うおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!」

ドンの足元で大地が大きく裂け、足場が崩れてドンは亀裂の中へ吸い込まれるように落ちてしまった!


休憩所の床に突き刺さっていたくさび……これはドンが来る前に耶樹があらかじめ仕掛けておいたものだった。
ドンが来たとき、耶樹がベンチに座っていたのは、『自分もきたばかり』のように見せるためだった。
耶樹(失望したで……『開始の合図』やと?そんなもんはあらへん。戦いの舞台に辿り着いた時……いや、その前から戦いは始まっとる。)


ドン(落ち着け……これは底なしの落とし穴ではない、ただの亀裂!……『タイト・ロープ』を伸ばせば脱出できる!)
耶樹「脱出……させると思うんか?」

耶樹は、亀裂に深く突き刺さったくさびを見下ろした。くさびには、長いヒモを結び付けてあり、その先端を耶樹が手にしていた。


耶樹「アンタには……生き埋めになってもらう。」

グィッ!


耶樹はヒモを引っ張って亀裂からくさびを抜き取った。


ズズズズズズズ………

ドン「な……なんだ……?」

耶樹「俺のくさびで割ったものは……『元通りにすることができる』んや。安心せい、レスキューは呼んどいたる。」


ドン「なっ!!『タイト・ローp」

ズズゥン!!


くさびを抜き取った直後、亀裂は一瞬で閉じてふさがった。……中にドンを残したまま。


耶樹「…………決着やな。」

亀裂が閉じたあと、あたりは何事も無かったかのように静かになっていた。初めから耶樹一人しかいなかったかのような……


ブォォン!!

耶樹は自分の乗ってきたバイクにまたがり、エンジンをかけた。

耶樹(あっけない終わりやったな……。)

耶樹には勝利の余韻を全く感じることができなかった。


それも当然である。『まだ、勝負はおわっていなかったのだから』……
そして、その決着は耶樹がアクセルをかけようとした次の瞬間に訪れた……

耶樹「!?」

グオオオオオオオオオオッ!!
耶樹の体が何モノかに『持ち上げられ』、それに体を包まれた耶樹は身動きがとれなくなってしまった!


耶樹「こ、これはッ!!」

耶樹の体を持ち上げたのは『タイト・ロープ』の手。

ドン<甘い、甘いなあ君。『戦いはまだ終わっていない。』生き埋めにした程度で油断したな?>
ドンはスタンドを通じて耶樹に語りかけた。

耶樹「な、どうやって……!?」

耶樹の体を持ち上げるタイト・ロープは、駐車場に設置された『マンホール』のふたが外され、中からのびていた。

耶樹「ま、まさか……亀裂の下に『下水管』があったってのかッ!!」
ドン「その通り。」

マンホールの中から全身泥だらけのドンが這い出てきた。

ドン「地中で俺は身動きは取れなかったがな。ミミズのように動く事ができる『タイト・ロープ』なら、地中でも自在に動ける。
   下水管という空洞を見つけたら、後は土を掘って引っ張ってもらうだけさ。」
耶樹「くっそ……運のいいやつ……!」
ドン「そうかな?君が亀裂を入れたのは『休憩所の近く』。下水管が通っていても不思議ではないさ。そこまで見通してワナを仕掛けるべきだったな。」
耶樹「…………!!」


タイト・ロープは耶樹の体をつかんだままゆっくりと高さを増していった。
耶樹の体はどんどん高く持ち上げられ、10mほどの高さで止まった。

耶樹「……何する気や?」
ドン「勿論、トドメをさすんだ。その高さから落としてな。」
耶樹「………!!」


ドン「………………では、さらば。」

タイト・ロープは耶樹をつかんでいた拳をゆっくりと解いた。


耶樹「――――――――ッ!」


耶樹は死の覚悟を決めた。


そうだ、甘かったのは俺のほうやった。

俺はあいつがワナにかかった瞬間、もう『勝った』と思い込んでしまった。

『下水管』なんて考えもせんかった。

それでなくても、生き埋めにしたら勝利……なんて、ははっ甘っちょろいわ。


最後まで勝負してたのは……アイツのほうやったわ。

あー……悔しいなあ……。


バウンン!


耶樹「!!?」

アスファルトにぶつかると思っていた耶樹だったが、耶樹がぶつかったのはやわらかい……とうより、弾力のあるものだった。

ドン「さらば…………なーんてな、『タイト・ロープ』。」

耶樹の体を弾ませたのは、タイト・ロープの『ネット』。ドンは耶樹の体を離したあと、すぐにネットを張ったのだ。

ドン「……落としたりはしないさ。その痛みは俺も知っているからな。」
耶樹「…………」

ネットに体を揺らしていた耶樹は地面に降りてドンに近づいた。


耶樹「なんで助けたんや。……これは"大会"の決勝やで。」
ドン「……たしかにそうだ。だがな、その前に俺はサーカスの芸人だ。」
耶樹「はぁ?」
ドン「俺は誰かを喜ばせるのが仕事だ。………『誰かを悲しませるようなことはしたくない』。」


耶樹「……はぁー……くだらんわ。」
ドン「フ、まだ続けてもいいぞ?」

耶樹「……いや、俺の負けや。……すべてにおいてアンタは俺を上回っとる。」

ドン「…………」

耶樹「……酒でも飲みにいこうや。アンタの話を聞いてみたくなったわ。」
ドン「ははっ、いいねえ。だが……先にひとっ風呂浴びてからでいいか?体中泥だらけなもんでな。」
耶樹「ありゃ、そいつはスマンかったな!……ちょうどここは行楽地やしな。」


耶樹は展望台の案内板に近づいた……。

耶樹「……あっ!」
ドン「ん?」

驚きの声をあげた耶樹を見て、ドンも案内板を眺めた……。
ドン「……おい、ホントにここは行楽地なのか!?」

耶樹がここに到着した時、この展望台にはだれもいなかった。
それは、"大会"の決勝のために人払いをしたからではなかったのだ。



耶樹「道理で行楽客が誰もおらんはずや……温泉のひとつもないなんて!!」

★★★ 勝者 ★★★

No.449
【スタンド名】
タイト・ロープ
【本体】
ドナルド・“ドン”・ハーディン

【能力】
張力を調整できる縄を操作する








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最終更新:2022年04月13日 22:36