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第02回トーナメント:決勝②




No.4343
【スタンド名】
バッド・バード・ラグ
【本体】
煤架 耶樹(ススカ ヤギ)

【能力】
楔を打ち込んだモノを真っ二つに割る


No.449
【スタンド名】
タイト・ロープ
【本体】
ドナルド・“ドン”・ハーディン

【能力】
張力を調整できる縄を操作する




バッド・バード・ラグ vs タイト・ロープ

【STAGE:深夜の駅前】◆aQVFw6W.SA




舞台が地方の駅であったことから、煤架耶樹は随分と速く舞台に降り立った。

「……」

彼は無言だ。
やはり先の戦いは、決して後味の良いものではなく、耶樹自身も引きずらないよう心がけているが、どうしても彼女の最期の言葉が脳裏に貼り憑いたまま剥がれない。

「…………」

これが初めてでもないだろうに。そんなことを駅前のベンチに座って考える。

「おい」
「ん……ああアンタかい相手っちゅうんは」

そこには、対戦相手と思しき男が立っていた。

「アンタがススカか。俺はドナルド・ハーディンだ」
「ああ。おおきに」

ドン自身も、この煤架耶樹の異様な雰囲気に多少戸惑いはしていたが……

「まあいいさ。とっとと始めてすぐ終わろうぜ」
「同感やなハーディン」

この戦い。すぐに終わると言う事を互いに直感で分かっていた。
思い立ったらば、あとは動くだけ。


まず動いたのは耶樹だった。
自信のスタンド『バッド・バード・ラグ』を発現させ、腰の「くさび」を抜き、ドンにそれを向ける。

「『タイト・ロープッ!』」

ドン自身は、この煤架耶樹を前にして『タイト・ロープ』を人型に形成するのが間に合わないことを直感で理解していた。
肉体に巻きつけたロープを部分的にスタンド化する。

「打ち込めッ! 『バッド・バード……』」
「甘い」

ドンは、危なげなくその「くさび」を躱し、それに『タイト・ロープ』となった縄を添える。

そしてそのスタンドパワーを込められた縄で、その「くさび」を縛り上げる。

「阿呆かっ! その程度で塞げると……」
「思っちゃあいないさ。事実大した破壊力だった」
「良え読みやけど……それがどうしたっちゅうねんッ」

「こっちは隙さえ作れりゃいい」

その瞬間は、ほんの十数秒であったが、それでもこの『タイト・ロープ』を人型に形成する隙を作るには充分であった。

「なっ」

耶樹は一瞬戸惑ったが、それでもすぐ立て直し、持ち前のパワーですぐに縛っている縄から「くさび」を無理矢理抜き取り、ドンに再び向ける。
だがそこに彼はいない。『タイト・ロープ』を駅内のどこか適当な柱に巻き付けて移動したのだろう。

確かにスピードも破壊力もこちらが勝っているが、射程距離はあちらの方がこの『バッド・バード・ラグ』の倍近くあるだろう。単純だがこれは大きな弱点でもある。
駅内は暗く、よく見えない。
地方の駅なので決して広くはないが、それでもトイレや階段などがあるだろう。

「距離をとられると不利や……」

駅の中にはドン・ハーディンが罠を作れる要素が多いだろう。
だがそれでも踏み出さねば勝つことも負けることもできぬ。駅の中に、煤架耶樹は足を踏み入れた。


駅の入り口の全体像は、少しだが掴めてきた。左側には窓口と券売機。そして改札(自動でない)もそちら側にあった。
右側には電車を待つ人用と思しき椅子が数個と、シャッターで閉ざされているキオスクがあった。

「どこにおるんやドナルド・ハーディンッ!」

ここで答えるバカはいない。いるとしたらB級以下な映画や十週打ち切り漫画の悪役だけだ。

迂闊に踏み込むのは危険だが、行くしかない。耶樹はゆっくりと改札の向こうに踏み込んでいくが、そこまで行った時点でなぜか「転ぶ」

何かに足をすくわれたような感じだったが、その「何か」が分からない。
いや、ドンが作った罠と言うのは分かるのだが、いくら目があまり慣れていないとはいえ、縄に引っ掛かればすぐに分かる。

「……何ッ!?」

『タイト・ロープ』の射程距離は『バッド・バード・ラグ』よりも長いと言うことしか分からない。だからこそこの不可解な「張り」は。

「糸かっ!」

足下こそ救われたが、今度は「くさび」を腰に装着した状態で親指で押して地面に射出する。
結局耶樹は転ぶのだが、転んでもただでは起きない。いやそれどころか「起き上がらない」
地面に打ち込んだ「くさび」を、破壊力-A相当の握力で掴んで地面に寸でのところで止まり、そしてそれを抜き取る時の反動で、起き上がらずに「跳ね上がる」。

相当な反動を以てして、耶樹が飛び込んだのは『線路』


ドンにとって、耶樹のこの行為自体がかなり「意外」であった。
改札とキオスクのシャッターの隙間に糸にまで解した『タイト・ロープ』を仕組んで、引っかけたのだが、耶樹はあっという間に「転んで」線路に落ちた。ただ転んだだけならば石畳に後頭部を打って気絶するはずだった。
階段からの中腹辺りの射程ギリギリからではパワーが不足していたのだろうか。
まあ、ここからなら『線路』はよく見渡せる。地方の駅だけあって線路と線路を隔てるのは鉄柱に括りつけられている縄だ。
『タイト・ロープ』を使って触れれば根こそぎ取り込める。時間はかかるだろうがどちらにせよ取り込めさえすればこちらのものだ。
いくら電車は来ないとはいえもう袋のねずみ。
だが、油断はしない。『イーグル・ハート』の大友湊沁との戦いで学んだ教訓である。
油断はせず、慢心もせず、容赦もしない。

「流石に趣味には合わんが、じわじわと炙らせてもらうぜ」

この駅の階段は、屋根が付いていて、そこから二番乗り場および三番乗り場に行き来する構造になっている。
階段を上り切って線路の真上に立ち、壁にある窓の隙間から『タイト・ロープ』の糸を通す。縫い糸のように慎重に。視認がほぼ不可能な環境とは言え、油断はできない。

線路を隔てる縄にさえ触れれれば……

ゆっくりと、ゆっくりとドンは糸を下に降ろして行く。もちろん窓から耶樹の様子も見つつだ。
耶樹が『バッド・バード・ラグ』を発現しているのは分かるが、見たところ何もしている様子はない。

下までの距離は2m、1m80、1m50、1m20……

数秒の緊迫の後、糸の『タイト・ロープ』は縄の上に降り立った。
射程距離ギリギリのためあまり上手く動かせないが、巻き取ることによってスタンド自体も人型にすることが可能だ。
幸い耶樹は背を向けている。

「本当に寝ざめが悪いや……だがまあ軽く当て身するだけさ」

数秒の後、『タイト・ロープ』は人型となり、耶樹の背後に忍び寄る。

「うあああえらあああああ」

目前にまで迫った時点で、耶樹が突然叫び、何か巨大なものが宙に放り投げられた。

「な……」

当然、ドンからは縄に遮られて何も見えない。
耶樹が投げたのは『縄』だ。


ご自慢のパワーを使って抜き取った『縄』を、鉄橋のド真ん中。屋根の上に向けて投げ込んだのだ。
だが、ただ投げただけではもちろんない。これはかなり無茶な行為だ。

「『バッド・バード・ラグ……』ブチ割れろや」

縄には、「くさび」が打ち込まれていた。何本もだ。先ほどやったように、耐性を変えずに親指で射出したのだ。

「「くさび」は全部使うたで……もうあとはないんや」

それはちょうど「ノコギリ」のような感じになって、橋を切り裂いた。

「……!!!? ここまでやるかいススカッ!!」

流石に、こんな無茶過ぎる技。戦略もへったくれもない技を想像するなんて無理だ。完全にパワーと精密性便りの『愚行』。
橋が割れて足場が傾き、煤架耶樹の姿がよく見えた。

「降参せえやハーディンッ!取って食うたりらせえへんわ」
「じゃかましいダボがッ!」

とてつもないしたり面だった。そしてこの二人は会って早々罵倒し合った。

「おいススカ……これは流石に想像できなんだが……こっからだって立て直せるんだぜっ!」

耶樹の近くにあった『タイト・ロープ』の像を解除し、自分の体に巻いていたロープで再び『タイト・ロープ』を構成する。

「こいつも巻きとれるッ!」

だが、依然として耶樹のしたり面は揺るぎない。

「教えたるわ。『バッド・バード・ラグ』は割ったもんを元に戻せる……」
「元に戻すんは…………」

元に戻すのは、割れた橋ではない。「くさび」を打ち込んで『ノコギリ』に変化させた

『縄』

それによってどうなるか? 元に戻って地面に落ちる。ただそれだけだ。




「よう。流石に無茶じゃねえかお前さんよ」
「かもしれへんな。せやけどもう戦う気あれへんやろ」
「分かってるよ。『落ち』るのは慣れてる。また縄をよじ登ればいい」
「それより一杯やらねえかい。どうせこっから都会に戻るんだからバーで一杯よ」
「やめとく。これから行くとこあんねん」

★★★ 勝者 ★★★

No.4343
【スタンド名】
バッド・バード・ラグ
【本体】
煤架 耶樹(ススカ ヤギ)

【能力】
楔を打ち込んだモノを真っ二つに割る








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最終更新:2022年04月13日 22:39