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第03回トーナメント:予選②




No.2643
【スタンド名】
メテオ・クラッチ
【本体】
豊念寺 惑火(ホウネンジ マドカ)

【能力】
殴ったものに熱を込め、弾丸として飛ばす


No.3724
【スタンド名】
アリウム・セパ=エイト・ハンドレッド
【本体】
信田 信夫(ノブタ ノブオ)

【能力】
触れたものに責任転嫁する




メテオ・クラッチ vs アリウム・セパ=エイト・ハンドレッド

【STAGE:図書館】◆1KCngmSt1w




小さい頃、信田信夫(のぶた・のぶお)は本が大嫌いな子供だった。
静寂に包まれた巨大な図書館の片隅、壁に背を預けて文庫本のページをめくりながら、彼は独りごちる。

「本が苦手というより……勉強が苦手だったんだな。小学生の頃には、ずっと成績が悪くて愚か者扱いされていたよ。
 それで本についても、苦手な読書感想文を書かされるモノ、くらいの認識しかできずに、いっしょくたに嫌っていたんだろう」
「…………」
「でも、ある日気づいたんだ。
 僕が勉強を嫌いになったのは、『無能な教師たちのせい』だった、ってことに。
 『僕のせいではない』ということに。
 そこに気づいてしまえば、あとは簡単だった。
 彼らの『間違った』――『多くの生徒には合ってるが、僕には合わない』指導を無視して、『僕に合った』やり方を探すだけで良かった。
 勉強が面白くなって成績が上がるようになるまで、それほど時間はかからなかったよ。
 本が好きになったのも、それからだ」

信夫は静かにページをめくる。
先ほどの言葉を考えれば小学生ということはないだろうが、高校生ということもないだろう。
おそらくまだ中学生、少年と呼んでもいいくらいの年齢ながら、すらりとした長身。
理知的な中にも、どこか幼さを残す容貌。
コミカルな印象も与えかねない、丸眼鏡。
高い書架に囲まれたこの空間には、不思議なほどに溶け込んでいる。
――そんな彼の前に、差す影が1つ。

「……あんたの人生に興味はないけれど」
「ん?」
「あんたが、『対戦相手』でいいのよね?」

1人の少女が、腰に手を当てて立っていた。
長い髪。はちきれんばかりの豊かな胸。
この発育っぷりで中学生ということはなかろうが、どこかの制服らしきブレザー姿ということは高校生か。
緑のネクタイを双丘の上に揺らし、少女は胸を張って名乗る。

「私は、豊念寺惑火(ほうねんじ・まどか)」
「信田信夫だ」
「あんたの名前、覚えておいてやる気はないけれど――さっさとはじめて、さっさと終わらせましょう」

少女は少年を見据えたまま、手近な書架から1冊の本を抜き出して――戦いが、始まった。


先手を取ったのは、少女だった。

「ぶっ放せ! 『メテオ・クラッチ』!」

叫ぶと同時に、燃え盛る炎のような人型の像(ビジョン)が出現。
少女が抜き取ったばかりの、ハードカバーの本を殴りつけて……
次の瞬間、本が炎の尾を引いて弾丸のように飛び出していく!
しかし、その進行方向にいた少年――信田信夫は、冷静だった。

「……『アリウム・セパ=エイト・ハンドレッド』」

少年の呼びかけに応じて出現した、スマートな人型の像が、弾丸と化して迫り来る本をはじき飛ばす。
標的を逸れた本は床を2、3度バウンドしながら滑ってゆき、そして静かにチロチロと燃え始める。
ごく軽い火傷にやや赤く腫れた手を小さく振って、少年は何かを確認するようにつぶやく。

「物質にパワーを込めて撃ち出す能力、ね……。エネルギーは熱として込められてるのかな。
 だけど、『使った本のせいで』不発に終わったね。形が悪かったかな、もう少し速かったら危なかった」
「…………!」

少女の額に、汗が滲む。
たった1発で手の内を見破られたことに対してもそうだし……それに、少年の従えるスタンド像。
今の迎撃の一瞬だけでも分かる、パワーも速度も精密性も、どれも相当なものだ。
接近戦は不利、遠距離から畳み掛けるのが最善! 『弾』になるものなら、いくらでもある!
そう少女は判断し、その手を再び書架に伸ばして――そして、一瞬だけ迷った。

さっきの攻撃、『使った本のせいで』速度が足りず命中し損ねたというのなら、同じような本では、また――!?

「……『迷った』ね?」
「!?」

そしてその刹那の迷いは、致命的な隙を作り出していた。
少年とそのスタンドが、少女の呼吸を読みきっていたかのように突進。一気に距離を詰めつつ、拳を振り上げる!

「め、『メテオ・クラッチ』! 迎撃をっ!」
「遅いっ! ド~~ラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラァ!」

少女が飛び道具の使用を諦めるのと、少年のスタンドが拳の弾幕を繰り出すのは、ほぼ同時だった。
踏み止まって『メテオ・クラッチ』の拳で迎撃に回る、しかし――速い!
パワーだけならほぼ互角、しかし『アリウム・セパ=エイト・ハンドレッド』の方が少しだけ、しかし確実に速い! そして正確!
少女の側の拳は、そのことごとくが撃ち落され、そして少女の身体に少年の拳が――!

「――――ッ!!」
「……でも、僕には女の子を殴る趣味はない――だから。


   この手が触れてしまったのは、『きみのせい』」


むにゅっ。

少年のスタンドの拳、いや、「手の平」が――少女の胸に、静かに触れた。


図書館に、一瞬だけ静寂が戻った。
真顔で片手を伸ばす、眼鏡の少年・信田信夫。
目を白黒させて固まる、巨乳少女・豊念寺惑火。
少女が悲鳴を上げようと、大きく息を吸ったところで――
少年は、素早く身を翻した。

「この手が触れてしまったのは、『きみのおっぱいが大きかったせい』――そして」
「……え? ええっ!?」


  「そして――『これからきみの身に降り注ぐ不幸の数々』は、すべて、『きみのせい』」


少年は混乱する少女をその場に残し、本棚に囲まれた通路をスタスタと歩いていく。
小脇に読みかけの文庫本を挟んだまま、静かに立ち去ろうとする。
悲鳴を上げそびれた少女は、思わずそのまま見送りかけて――

「待てや、このエロガキぃっ!」

我に帰ると同時に、大声で怒鳴った。
怒鳴りつつ、傍らの書架に手を伸ばす。
手を伸ばし、本を掴み、最初の時と同じように弾丸として飛ばそうとして……

手荒に本を抜いた衝撃か――雪崩のように本が、少女の頭上に降って来る!
それも――分厚いハードカバーの本が何冊も、十冊ほども!

「え、いっ、うわあっ!?」
「言っておくけど……ギブアップ、したくなったら早めに言ってよ。
 こう見えても、僕は紳士だからね。女の子が苦しむ姿は、あまり見たくない」

降って来た本を反射的に『メテオ・クラッチ』で打ち払う少女をよそに、少年はそのまま、部屋から出て行った。
無防備な背中を晒し、あっさりと、広い閲覧室から出て行ってしまった。

――ふざけるな。
怒りのままに追いかけようとした少女は、そして今度は、盛大にすっ転ぶ。
受身も間に合わず、べったん、と、顔面から床に叩きつけられる。豊かな胸がクッション代わりになったのは不幸中の幸いか。
タイミング悪く足の下に踏みつけていたのは、初手の一撃で「撃ち出した」本。
そしてそれは、『メテオ・クラッチ』が込めた熱の余波でチロチロと燃えていて、その炎が今のはずみで、少女のスカートに燃え移る……

「あ、あちちちちっ!? ちょ、ちょっと待ってっ!?」

冗談じゃない。こんな、『自分の能力』でつけた炎で火踊りなんて――!
とはいえ水場までは遠い、消火器もどこにあるのか分からない、スカートを脱ぎ捨てる決断はちょっとためらってしまう。
ゆえに少女は、とっさに床の上を転げまわることで、小さな火を消そうとする。そして……
ゴンッ!

「あ痛ぁッ……!!」

派手な音を立てて、立ち並ぶ書架の1つに頭をぶつけた。
当然だ。狭い図書館の床で暴れたりしたら、当然そうなる。
涙目で頭を抱えた彼女は、そしてすぐにハッとして目を見開く。

彼女が頭をぶつけた書架が、大量の本を詰め込んだ重そうな本棚が、ゆっくりと、床の上の彼女目掛けて、傾いてくる!

信じられないような不幸の連続。
コントのような失敗の連鎖。
少女は悟る――いまさらながらに、少年の『能力』を悟る。いや、まだ全てを理解したわけではないけれど。

「すべて『私のせい』……まさか、『運命操作』っ!? あの一瞬の接触でっ!?」

悟ったところで、もはやどうしようもない。
さきほどの数倍の規模の本の雪崩、そして、さらに重量感のある本棚そのものが、少女の身体の上へと影を落として……!


少年は、図書館の玄関ロビーにて、再び文庫本を開いていた。
遠くからはドタン、バタン、と激しい物音が聞こえてくる。
どうやら標的は、見事に空回りを続けているらしい。少年は独りごちる。

「僕が操作したのは、『運命』じゃあない。
 『意識』、それに『無意識』さ……当人にとっては、似たようなもんだろうけどね」

僕は悪くない――悪いのは、他の『誰か』だ。他の『何か』だ。
それが、強力な力を秘めたスタンド『アリウム・セパ=エイト・ハンドレッド』の根源たる、少年の想いだ。

少年の想いに応えて、ネコの耳を備えたスタンドは、『責任』を『転嫁』する。
触れたものに、全ての『責任』を押し付ける――全てが、『そいつのせい』になる。
意思を持つあらゆる者が、意識の上で、そして無意識の上でさえも、『そいつのせい』だと『確信する』ようになる。
広い範囲の人々の意識・無意識を、直接触れもせずに操作する……これは、そういう強烈な能力だった。

最初の一撃の後、少女が少し『迷ってしまった』のも、クリーンヒットしなかった原因を『本のせい』だと考えてしまったから。
胸を触られた少女の『怒りの反応が遅れた』のも、接触の原因を『大きな胸のせい』だと考えさせられてしまったから。
そして、少女が空回りを続け、自滅と消耗を強いられているのも――

「ここは地震大国・日本だよ。そう簡単に倒れるような本棚の設置をしてるわけがないじゃないか。
 先に到着していた僕が、スタンドのパワーと器用さを活かして、予め『倒れやすくなるように』仕込んでおいたに決まってる。
 けれど、トラップ発動の最後の一押しをしたのは、あの子だから――全ては『あの子のせい』、ってことになる」

最後の一言で刷り込んだのは、応用的な使い方――『未だ見ぬ不幸』の数々についての『責任転嫁』。
『不幸な偶然』に見えるようなトラップ満載の部屋。
頭に血を昇らせて、実際に『不幸な偶然』が発生する確率も存分に高めている。
そんな中で、『あなたのせいで』不幸になるのだ、と刷り込まれた標的は……
何度か『アリウム・セパ=エイト・ハンドレッド』の能力を、身をもって体験してきた標的は。

無意識のうちに。
本人も気づかぬうちに。
吸い寄せられるように、不幸になる。
表層意識が気づくより先に、無意識が不幸の種を拾ってしまい、そして、実際に不幸になる。

「いわゆる勘、っていうのは、一説によると『無意識下の判断』、だそうだよ。
 勘で避ける、勘で気づく……無意識の方が表層的な意識の先を行くことは、実際に多いんだ。
 その『意識より速い無意識』が、予め危機に気付いていながら、『自分のせいで不幸になるんだから仕方ない』と諦めてしまう……!」

それが、今も大きな音を立てて悪戦苦闘している、豊念寺惑火の陥っている状況。
唐突に火災報知器が鳴り響く。スプリンクラーが作動している音がする。同時に上がる、少女の悲鳴。
炎に関する能力を、可燃物満載の図書館の中で使ったらそうもなるだろう……
そして、突然のシャワーがまた何か『不幸な偶然』を呼んだのか、さらなる物音。続けざまに本棚が倒れていく音。
事態はさらに悪化していく。
少年が指1本動かす必要もなく、悪循環が巡り続ける。

前提条件を整えるのが難しい『使い方』ではあったが、少女は見事に、信田信夫の術中にはまっていた。


――やがて、物音が途絶えた。
少年は文庫本にしおりを挟んで閉じると、静かに先ほどの部屋へと歩を進める。

ほんの数十分前までは整然と本が並んでいたその空間は、酷い有様になっていた。
まるで、部屋の中で竜巻が暴れまわったかのような様相である。

めぼしい本棚はあらかた倒れ、壊れ、あちこちにひしゃげた本が散らばっている。
その大半は『メテオ・クラッチ』の能力を受けたのか、焼け焦げ、爆発したような状態になっていて……
さらに、そこにスプリンクラーで散布された水が、じっとりと染み込んでいる。あちこちに水溜りもできている。
もはやこの部屋の中に、無事な本が1冊でもあるかどうか。被害額を計算してみたら、きっと大変なことになるだろう。

「まあ、それもぜんぶ『あの子のせい』、ってことにするんだけど……どこに行ったかな」

部屋の中に動くものはない。自滅の果てに気絶でもしてしまったか。
そう思った信田信夫の眼前で、本の山の1つが、不意に動いた。

「ふうっ……。あー、しんど」
「…………っ!」

少年は息を飲む。
焼け焦げた本に埋もれていたのは、豊念寺惑火。バサバサと本を落としながら、ゆっくりと立ち上がる。
その身は満身創痍だ。
制服はあちこち破れたり焦げたりしており、痛々しい擦り傷や打ち身、火傷の跡が白い肌のあちこちに浮かんでいる。
ネクタイも上着もどこかに行ってしまったし、スプリンクラーで水をぶっ掛けられてシャツはスケスケ、ボタンもいくつか飛んでいる。
だが――

「だけど。『理解』、したわ」

だが、彼女の眼だけは、まだ死んでいない!
未だ尽きぬ闘志を宿し、まっすぐに、信田信夫を見据えている!
そして、自信満々に、きっぱりと宣言した。

「あんたの『能力』は、『運命操作』……私が何をしても、私へのダメージは避けられない!
 状況を打開しようと足掻けば足掻くほどドツボにハマる、そういう『運命』にされているってことよねっ!! どうっ!?」


  ――理解してねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!


少年は思わず叫びそうになった。
自信たっぷりのドヤ顔で放たれた解答は、完全な勘違い。
あれだけジタバタと足掻いて色々試して、その果ての結論がそれかよっ!? 馬鹿かこの女ッ!?
動揺しかけた少年は、しかし、寸前で気を取り直す。
い、いや、いいんだ。これでいい。勘違いしてくれているというなら、まだ状況はこちらの手の内にあるということ。
あれだけ苦しんでなお『心が折れてない』のは計算外だったが、まだ――!

「そして、もう1つ」

惑火は言葉を続ける。少年の動揺も知らず、そして、揺ぎ無い確信を維持したまま。
彼女は、言い切った。

  「あんたには、『覚悟』がない」


  ゴ、ゴ、ゴ、ゴ、ゴ…………!


たった一言で、部屋の空気の色さえ変わる。
プレッシャーが高まる。少年の手の平に汗が滲む。
どう考えてもこの状況、追い詰めているのは少年の方だ。そのはずだ。
少女は能力を誤解したままだし、互いの受けたダメージも疲労も格段の差。スタンドの基礎ステータスも少年の方が上。
なのに――この気迫はっ!?

「『女の子を殴る趣味はない』? 『僕は紳士』? 『苦しむ姿は見たくない?』
 いいや、違うねッ!」

豊念寺惑火の姿に重なるように、いつの間にか彼女のスタンドも姿を現している。
スタンドの像も、本体同様に満身創痍。
しかし燃え盛る炎の勢いは、彼女の視線同様に、熱く、激しく、そして――

「あんたは、『自分のせい』で誰かが傷つくことに、そして自分が傷つくことに、耐えられないだけだッ!」

炎のスタンド、『メテオ・クラッチ』は大きく拳を振り上げると。
そのまま、他ならぬ『豊念寺惑火の身体』に、『自分自身の本体』に、迷うことなく振り下ろす!

「なぁっ!?」
「何をしても『私へのダメージ』が避けられない『運命』だというのなら――大盤振る舞いよッ! 『相打ち上等』だッ!!」

少年の驚きと少女の覚悟の叫びと重なるようにして、少女の身体が、少女のスタンドが、突進する。
いや、それはもはや、突進などという生易しいものではない。
『メテオ・クラッチ』による『熱の付加』、そして『その噴出』による、人間砲弾っ!
豊念寺惑火自身が一個の弾丸となって炎の尾を引き、信田信夫に襲い掛かる!
まさに肉を切らせて骨を断つ、自爆覚悟のカミカゼ・アタック!

まずい。少年は直感する。
少女は未だに少年の能力を誤解しているようだが、この対策は『正解』。
『自分のせい』で『自分の身に不幸が起こる』と思い込まされている少女が、その錯覚を抱えたまま十全に実力を発揮する方法。
それは、『それを承知の上での行動』!
無意識が先回りして不幸を察知するまでもない、表層意識で先に不幸を『選択』し、その上でそれを前提に取り入れた行動を取ること!
しかし驚いているヒマはない、そうこうする間に、少女の拳は眼前に――!


「くっ……、『アリウム・セパ=エイト・ハンドレッド』ぉッ!!」

がしっ。
迎撃までする余裕はない、間一髪出した少年のスタンドは、辛うじて少女の身体を受け止める。がっしと抱き止める。
――熱い!
柔らかくて、いい匂いで、意外と軽くて、でも、凄まじく熱いっ!
火傷しそう、ってか確実にしているっ! 少女の身体から放出される熱で、信田信夫の肌が焼かれているっ!
相反する感覚に混乱しつつも、『アリウム・セパ=エイト・ハンドレッド』は忠実に寡黙にその役割を果たす。
高熱の弾丸をしっかと抱き止めて、軽く2mほども床の上を滑って後退して、それでも少年のスタンドはその一撃を凌ぎきっ――

「さらに……『メテオ・クラッチ』!」
「っ!?」
「ぶっ飛べ、このエロ小僧っ!」

凌ぎきった、そう思った瞬間――少年の身に、衝撃が走る。
それは抱き止めたところから放たれた、ワンインチパンチ。
寸勁の如き腕の振りなしでの拳が、『メテオ・クラッチ』の能力が込められた拳が、今度は少年の身に叩き込まれる!
動揺し、予想すらできなかった少年には、抵抗の余地などない。
人間砲弾として撃ち出されるのは、今度は少年とそのスタンドの方だった。

「あがっ、あじゃはぁぁぁぁぁぁっ!?」

割れるガラス窓。図書館の外に飛び出していく身体。
綺麗に斜め45度、放物線状に撃ち出された少年は、そのまま成す術もなく、硬い路上へと落下していく。

「あんた、『私のせい』だって言ってたけどね……
 逆に言えばそれは、『私の責任と覚悟と能力次第で、状況は打開できる』ってことでしょう?
 あんたが弄ってたのが、『運命』なのか何なのか知らないけれど。

 信田信夫、あんたの敗因は――
 全てを『他人のせい』にして、『自分で』責任を受け止める『覚悟』を持たなかったこと、よ」


雲1つなく澄み切った、青い空の下。
路上に出来上がったちょっとしたクレーターの中心で、最後に少年はつぶやいた。

「こ、こ、この敗北は……『組み合わせのせい』。僕は、『悪くない』」

――ガクッ。

素直な殴り合いに持ち込んでおけば、スピードと精密性で勝る少年の勝利は揺るがなかっただろうに。
意識を手放すその寸前まで、信田信夫は、やっぱり相変わらず、なのだった。

★★★ 勝者 ★★★

No.2643
【スタンド名】
メテオ・クラッチ
【本体】
豊念寺 惑火(ホウネンジ マドカ)

【能力】
殴ったものに熱を込め、弾丸として飛ばす








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最終更新:2022年04月15日 02:22