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第07回トーナメント:準決勝①




No.6037
【スタンド名】
インサルト・II・インジャリー
【本体】
キッド

【能力】
スタンドのつけた傷がどんどん深くなっていく


No.5307
【スタンド名】
ツリートップ・ロック
【本体】
エツィオ・クラーツ

【能力】
指先から種を撃ちだし、着弾地点から枝を生やす




インサルト・II・インジャリー vs ツリートップ・ロック

【STAGE:廃棄された飛行場】◆LglPwiPLEw





エツィオ「フゥー、何もこんな辺鄙なとこでやらんでも・・・」


エツィオ・クラーツは、ひとけのない夜の飛行場で“相手”を待っていた。

空は澄んでいて、月明かりが滑走路一面を照らしていた。


エツィオ「ま、一回戦よりかは人工的な場所だけどな・・・」


飛行場全体を見渡せる管制塔。
その前で、エツィオはのんびりと煙草を咥えていた。

彼の職業は自然保護官である。
自然の中ではもちろん煙草など吸わないが、人工の物体に囲まれていると容赦なく吹かしまくる。


コツ・・・ コツ・・・


エツィオ「お、来たな」


建物の中で音がしたのに気付き、エツィオは振り返った。


エツィオ「今度の相手はノリのいいヤツかなァー」


呑気にもそんな独り言を言いながら、エツィオは相手を待ち構える。


・・・・・・


エツィオ「・・・?」

何かが変だ。


そうエツィオがそう感じた瞬間―――
彼の背後から凄まじい『殺気』が押し寄せた。


エツィオ「うおッ!!」

シュビン!


エツィオは声をあげながら、反射的に攻撃をかわした。


エツィオ「ッッッ―――――とォ~~~、そっちから来るかァ~!」


キッド「・・・ふん」


エツィオの対戦相手・・・キッドは残念そうに鼻を鳴らした。

キッドはあらかじめ建物の天井に傷をつけておき、崩れた破片を時間差で落とすことで、相手の注意を引いたのだ。


キッド「今のタイミング、普通だったら間に合わなかった・・・戦い慣れしてるね」

エツィオ「なんだよいきなりィー! 歳の割に冷たいカンジだなぁー」


エツィオは相変わらず軽々しいノリで話しかけた。


キッド「・・・ハァー、僕の相手ってなんでこんな奴ばっかなんだろう。
   僕は忙しいんだ。早いとこ死んでよ」

バッ!

突然、エツィオの死角にキッドの『インサルト・Ⅱ・インジャリー』が現れた。

そして、エツィオの首めがけて刃を振るう!


ザクッ!


エツィオ「まぁまぁー、そう焦ってちゃあいけねーぜ? 人生なげーんだからよ」

自分の腕から生やした“枝”で、キッドの攻撃を防いだ。


エツィオ「それにしてもおたくのスタンド、いくらなんでも力不足じゃあねーか? 庭の手入れもできねーぜ?」

キッド「うるさい」


シュシュシュシュシュシュ!!


間髪をいれず、キッドは高速回転するカッターのように小さなスタンドの猛攻を繰り出す。

『傷をだんだん深くしていく能力』・・・
刃が肌を掠りさえすれば、スタンドの作用で相手は致命傷を負うことになる。


エツィオ「うおぉぉっと!」

エツィオは少しづつ後ずさりしながら防御している。
予想以上のスピードだった。


キッド「おじさん危ないよ」

キッドは懐から投擲用ナイフを取り出すと、流れるような仕草で後ろからエツィオに放り投げた。


ビュン!

エツィオ「くッ!」

バシッ!


カランカラン

『ツリートップ・ロック』が、音をたてて飛んでくるナイフを遠くに弾き飛ばした。


キッド「決まりだ・・・」

エツィオがナイフに気を取られた一瞬のスキを付き、『インサルト・Ⅱ・インジャリー』はエツィオの胴体に刃を差し込む。


エツィオ「うッ!!」

バシン!


すぐさまエツィオは刃を弾いて距離を取ったが、服が破れ、そこから赤い血が滲んでいた。


エツィオ「・・・クソッ!」

キッド「ふふふ! これで僕の勝ちだ! 『インサルト・Ⅱ・インジャリー』のつけた傷はどんどん深くなるッ!
   あとは僕が逃げまわっていれば、数分で傷はお前の心臓に達するッ!
   ・・・それとも、土下座して降参する? そしたら能力を解除してあげてもいいけど」

不気味な笑みを湛えながら、キッドはエツィオに話しかけた。

それは完全に子供のものではない。
情け容赦無いテロリストの態度だった。


エツィオ「・・・降参? なに言ってんだテメェ・・・」


キッド「・・・!」


エツィオが先ほどまでとは全く違う声色で話したので、キッドは少し驚いた。


エツィオ「俺は最後の最後まで諦めねーよ・・・たとえ心臓を斬られようが、胴体が切断されようが・・・
   死に至るその寸前まで、俺は諦めねぇ・・・」

キッド「・・・」


大丈夫なのかコイツは? とキッドは思った。
自分があと数分の命だというのに、全く焦る素振りを見せないとは。


エツィオ「聞けばお前、テロリストの一員らしいな。・・・どんなのかは知らんが、お前の目は既に何人も殺ってる目だ」

キッド「なぁにダラダラ話してるのおじさん、今も傷は深くなってるんだよ」

キッドは既に逃げる気マンマンだった。

だが、エツィオのスタンドは枝を生やす程度のショボい能力。
飛び道具にさえ気をつければ、近づかない限り大丈夫だ。

そして、エツィオの身体に傷がついた今、もはや自分の勝ちは決まったようなものだ。


エツィオ「まぁ聴けよ。俺は自然保護のレンジャー部隊に所属してる。
   俺とお前には、決定的な違いがあるんだ・・・だから、俺は勝つッ!」

キッド「・・・?」


言っている意味が分からず、キッドは呆れすら感じた。
何か時間を稼ぐ理由があるのかと周囲を警戒してみたが、そんな気配は何もなかった。


エツィオ「今はまだ平和なとこで仕事してるが、前にいた島はヤバかった・・・
   武装した密猟団とドンパチした時なんてさながらゲリラ戦の戦争だったぜ。それでも俺には、『自然』を守る使命があるんだ。
   お前は“殺す”、俺は“守る”。それが決定的な違いだ。“守る”と決めて覚悟した時の強さは、お前らの比じゃあねーんだよ!」


キッドにとって、エツィオの台詞は腹立たしい以外の何物でもなかった。


キッド「何を言い出すかと思えば、クドクドと根性論を・・・ナメんじゃあねーぞクソオヤジ!!」

ダッ!

キッドは、先ほど弾き飛ばされたナイフの方向へ走りだす。


エツィオ「OK、読みが当たって嬉しいぜ・・・そっちに向かってくれることをよォ!」


シュババババ!!


キッド「!!」


さすがのキッドも驚愕した。

地面のマンホールの中から、大量の“枝”が怪物のように湧きでてきたのだ。


キッド「うわああああッ!!!」


あっという間に、キッドは全身をがんじがらめにされてしまった。


エツィオ「さっき投げたナイフを取りに行くかと思ってよォ~、あらかじめその罠を設置してた方向にナイフを飛ばしたんだよ!
   お前のスタンドじゃあ、その枝を切るのに時間がかかる・・・そしてッ!」

バシュ!

ガラガラガラ・・・


エツィオは近くにある車庫らしき建物のシャッターに向かって“種”を飛ばし、枝にシャッターを持ち上げさせた。

エツィオ「じゃじゃ~ん、これは何でしょう?」


キッド「・・・!」

シャッターの中にあった物は・・・


エツィオ「飛行機を引っ張る航空機牽引車だぜ・・・ここはもう使われてないが、コイツは残ってたみてーだな!
   都合よく燃料も入ったままだったしよォ!」

バシュ!


もう一発、エツィオは種を飛ばした。
種は牽引車のガラスを突き破って運転席に着弾する。

すると、枝はスルスルと伸びて鍵穴に潜り込み、器用にエンジンを始動させた。


ドルルルルルン!!

夜空に響く獣の遠吠えのように、牽引車のエンジンが呻った。
牽引車の直線上には、動くことのできないキッドの姿がある。


エツィオ「・・・っつーわけで、これから何をするか分かるな?
   この牽引車に轢き潰されたくなかったら、能力を解除して降参しな!」

運転席の枝はギアを切り替え、アクセルを押した。


ブオオオオオ!!

牽引車がゆっくり進みだす。


キッド「う・・・あ・・・」


キッドの表情は恐怖に歪んでいた。


エツィオ「牽引車は少なく見積もっても5t以上はある・・・お前の負けは確定したんだ。負けを認めろ!」

キッド「ひ・・・」


キッドは何も言わない。

エツィオ「往生際が悪いな・・・それとも俺と一緒に死ぬ気なのか?」


キッド「そう・・・かも・・・しれないね・・・」

エツィオ「あ?」

キッド「僕はナイフを取りに走ったんじゃあない・・・“避難する”ためだったんだ・・・
   僕もずっと前からココに来てて・・・“切ってたんだ”・・・
   この時間に・・・“倒れること”を計算して・・・」

キッドは牽引車ではなく、上を見上げていた。


エツィオ「なに言ってん・・・だ・・・?」


ふと、月光が陰った。


ガラガラガラガラ!!


続いて、エツィオの背後で壁が崩れるような音がした。


ゾワッと、エツィオの全身に悪寒が走る。



キッド「へへへ・・・ちょっと演出としては・・・オーバーすぎたかな?
   “管制塔を切り倒す”って発想・・・」



一切の音を立てることなく、2人の頭上に管制塔がゆっくりと倒れてきた。




ドバアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!




凄まじい轟音と砂埃をあげ、管制塔は地面に崩れ落ちた。





・・・・・・・



パラパラパラ・・・




キッド「・・・」






エツィオ「植物の力ってのは凄いもんでなぁ、家の土台を持ち上げて生えてきたりする・・・
   まぁこの場合、俺のスタンドがこんなに成長しちまったことにオドロキだがな」


2人は無事だった。

2人の周りには、無数の枝がドーム状に寄り集まっている。
それらは中心で真上に伸び、まるで何百年もの樹齢を持つ大木のようになっていた。

この大木が、2人を守ったのだ。


エツィオ「残りの“種”をダメもとで撃ったらこうなっちまったぜ・・・
   しかしまぁ、管制塔を倒すなんてヤバい発想だな。木こりでもねーのによ」


キッド「・・・身体の傷は? 既に心臓に達しているはず・・・」


エツィオ「あ? あぁ、そいつは嘘っぱちだ」

キッド「え・・・? あっ!」


エツィオの服は既にボロボロになるほど傷が広がっていたが、“エツィオ自身は無傷だった”。


エツィオ「あの赤いのは、コレだよコレ」

エツィオは服の中からシワシワに枯れた“枝”を取り出した。


エツィオ「『血を流す木』・・・赤い樹液を出す木なんだ。
   騙すのに使えるかと思ってな、俺の身体から生やしといたんだ。
   ・・・俺がかつて守ってた、太平洋の孤島に生える種類の木さ」

キッド「・・・・・・」


砂埃は消え去り、再び周囲は静寂に包まれていた。

先ほどまでと違うのは、管制塔が消えたことで、空の明るさが一層増したように感じられることか。


エツィオ「俺は初めからお前に勝ってたんだ。発想のスケール以外ではな。
   俺は自然を“守った”。だからその自然が味方してくれたんだ・・・!
   ・・・な~んてのは自意識過剰か? 所詮はスタンド同士のバトルだしな! ハハハッ」


キッド「・・・」

キッドは何も喋らない。


エツィオ「・・・で、どうすんだ?」

キッド「・・・僕の負けだ・・・完全敗北だ・・・」


エツィオ「あたりめーだそんなの! お前自身が今後どうすんのかって聞いてんだよ!」


キッド「えっ!? そんな・・・そりゃあ、僕はこの仕事を続けるよ。続けなくちゃあならない。
   ただ、アンタの気高さは良く学ばせてもらった。だからこれからの任務には、その精神を活かさせてもらうよ」


エツィオ「ケッ! まだまだガキなんだぜオメーは! 学ぶべきことなんか義務教育の10倍以上あるわ!」


キッド「・・・フフ。じゃあ、決勝戦がんばって・・・」

エツィオ「おう! お前も仕事頑張れよ!」


キッド「・・・うん!」

★★★ 勝者 ★★★

No.5307
【スタンド名】
ツリートップ・ロック
【本体】
エツィオ・クラーツ

【能力】
指先から種を撃ちだし、着弾地点から枝を生やす








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最終更新:2022年04月16日 20:06