総合技能学校・理力科(クセ毛ボンバーの手記
注・前回と同じ学校であり、校舎の様子等、被る所は記述を抜いてあります。
今回は理力科の取材に着てみた。理力科の教室は教室に魔法陣などがあり「いかにも」な雰囲気を擁している。
今回は授業中の風景を見せてもらおうと、事前に連絡を取り午後の実習授業を見学させてもらった。
午後になって約束の時間。私は学校を訪れ、大きな魔法陣が描かれた実習室の一番後ろのパイプ椅子からその様子を見ている。
「はい、じゃあ、やってみようか。まず、このコップを動かしてー。中は色付きの水だから、引っかぶると大変だよー」
講師の先生が大きな声で実習している。生徒達の前には赤や黄色など、様々な色が着いた水の入っているコップがおいてある。
後で聞いたことだが、これは食紅などを使って色を付けているだけで、こういう何かではないらしい。
生徒達はみんな、万が一に備えてエプロンをしている。この学校もはてない県人の特色、というかエプロンを愛しているようだ。
「ん・・・ほら・・・よっと」
学校の制服であろう、パイロット科と同じブレザーを着た男子生徒の一人がんー、と手に持った青銅製の杖に力をこめているのが判る。
額には玉のような汗をかき、真剣にコップを見ながら念じている。
コップがじり・・・じり・・・と動き出す。
やがてそれがゆっくりと、宙に浮き、ふらふらと頼りなげに動き出す。
「お、やるなー。じゃあ、そのまま。頭の上で10秒静止な」
「は、はい・・・」
その言葉を聴いた瞬間、彼の周囲に居た生徒達が席を立った。
そんな事を気にする余裕もないのだろう、先生の言葉に彼は何とかうなずくと、そのコップを自分の頭の上に移動させる。
コップは静止できず、ふらふらと空中を泳いでいる。素人目に見ても、アレは怖い。
「ん・・・は・・・く・・・だ、だめだ!」
とうとう集中力が切れたのか、その生徒は息を吐いてしまった。その瞬間、頭の上のコップが重力に逆らうことをやめ、当然、そのまま引っかぶる。
「んぁー! つめてー! さみー!」
黄色の水で着色された生徒がべた、と机に突っ伏す。周りの生徒達がそれを見て爆笑した。
「と、このようにー、集中を切らすのはよくない。理力を使うなら、集中は絶えず途切れずにするように」
『はーい、先生』
黄色くなった生徒を除いた全員がまるで小学生のように返事をした。
・・・いや、だから頭が悪そうに見えるから、そういうのをやめなさい、君達は。
授業中、先生に言って杖を見せてもらう。
講師用の杖は生徒達が使っているものと変わらないらしい。どうやら、別物にすることで「何か特別な杖」を使っているという印象を与えないためだそうだ。
杖の材料は先ほども書いたとおり、青銅であり、鈍く光っている。
それとは対照的に先端部分には水晶がついており、なんとも理力使いらしい仕上がりになっている。
今、授業を受けている生徒達は理力の実習訓練が終わった後、更に理力使いとして知識を蓄えるとともに、他の剣士達との連携演習も行うそうだ。
「理力使いは理力使いだけだと、あんまり意味ないからね」
先生は自嘲なのか、よく判らない笑顔で言った。
「あぁ、そうそう。アンタ、味のれんいく?」
「はぁ・・・行きますが」
「んじゃ、今日の七時ごろに、行ってみな。面白いものが見れるから」
はて、と思ったが、私はそこでいったん取材を終えた。
一旦家に帰り、今、この手記を書いている。もうすぐ、言われた時間だ。何があるというのだろうか・・・
*
その後、言われたとおりの時間。私は家をでた。もうすでに暗くなっている町を歩く。この前見たパイロット科の生徒達が居た空き地にはすでに人はなく、彼らももう、帰った時間だろう。
普通の一軒家が並ぶことで有名なこのベッドタウン。その夕食の匂いが空腹を促す。
私は言われた、というのもあるが空腹に耐え切れない、という意味もあり早足で商店街の一角、味のれんに向かった。
味のれんに行ってみると普段は見ない立て看板があった。
『奇跡の魔術ショー』
・・・なるほど、なんとなくだが、読めた。
私はのれんをくぐり、中に入る。中では普段以上の人が居て、店の一角がステージになっていた。
店主である親父が大きな声で説明や指示をしている。
「あー、わかっとると思うけど、おひねりや勧誘は禁止ばい。彼らに何かしてやりたいんなら、自分の伝票につまみ一個多く注文して、差し入れするのだけみとめっよ」
「親父ー、横暴だぞー」
「お前が儲けたいだけだろー」
「ひっこめー」
「あー、うるさか! これは約束だから、これを破られるとおいが困るんよ!」
客と親父の楽しそうな口喧嘩が続いている。今日は普段見る連中以外にも普段は見ないような主婦や子供の姿も見て取れる。
「それじゃあ、時間ばい。きしゃんら、がんばっとよ」
親父が舞台袖にそう言って下がった。
店の電気が落ちた。変わりに様々な照明がつき、なんとも「それらしい」雰囲気が出来上がる。
「がんばってね・・・おにいちゃん」
私のすぐそばに居た少女がそうつぶやいて、真剣に舞台を見ていた。
さぁ、ショーが始まる。
*
ぱちぱちぱちぱち・・・・
拍手が鳴り響く。しばらくは止まる事もないだろう。
私も店の片隅で酒を飲みながらそれを見せてもらったが、途中の失敗やあるいは想像以上の大成功など、あらゆる要因があった。
我々、ノンダクレの酔っ払いには、それが面白かった。事実はただそれだけだ。
家族であろう人達がその拍手に胸をなでおろす。しばらくして先程までいかにも理力使い、という格好というか、すでにコスプレの領域まで達していた学生達が戻ってきた。
一人に話を聞いてみると、これも実習の一つらしい。人前で普段の成果を見せることで自分の実力を知ったり、自信を付けることが目的らしい。
それ以上の話は客達からのサービスで中断された。
学生達の家族はみな、今夜はここで夕食会となるようだ。
学生たちも今日は休みではないが、すぐに帰る必要がないらしい。
なんとも、粋な計らいである。
味のれんには普段以上の人がおり、様々な人が居る。
親父さんは忙しそうに、しかし、とてもうれしそうに料理を作ったりしている。
私も生徒達の家族に料理をサービスした。最初に兄を心配していたらしい少女がにっこり笑って「ありがとう」と言ってくれた。
酔っ払いのおっさんには何とも気恥ずかしく、コップを掲げて微笑するに留まった。
問題は、そのサービスのおかげで会計の時に青い顔になったことだが、藩王・さちひこにツケておいたことで事無きを得た事だけを記し、今日は筆をおく。
(5/7 癖毛爆男の手記
(文:癖毛爆男)
周辺環境:大和丘商店街・味のれん・大火山(カルデラ)・近所の空き地・普通の一軒家・学校
最終更新:2007年05月27日 18:34