アウトウェイ国内にある前線開拓村と呼ばれる広大な畑がある。ここでは季節折々の野菜や主食となる米、麦が作られる。開拓村には一般で言う農家の人たちがここで生活をし、アウトウェイの食糧の大半をここでまかなえるほどに野菜の種をまいては収穫し、土壌を整えまた種をまくというサイクルが続いている。また、開拓村の一角では中心部で過ごす人たちが週末ここに来て菜園を作ることも最近では珍しくもない。その時は開拓村の人々が丁寧に教えてまわるなどが好評のようだ。

 また、最近では酪農業も少しずつではあるが行うようになった。アウトウェイの国内面積を考えると現在微々たる物だが、よど湾での漁猟にも限界があるだけでなく、戦争支援等での食料の過不足対策が必要であった。戦時中となれば食糧の急な不足は、どの藩国も頭を悩ませる問題である。そのため藩王は希望山と、そこから流れる幻想河の源流の特性を生かし、わずか数頭の牛とヤギで酪農を実験的に行った。その結果、野山を駆け巡り、豊富な水源のおかげでミルクの質は向上、食肉も脂身が少なく、引き締まったものとなり、食にうるさいはてない国人であるアウトウェイの国民を満足させるほどのものであった。現在では希望山付近では牛60頭、ヤギ50頭、鶏30羽が飼育されている。このペースで行けば、翌年は倍の飼育が可能で国内に出回る酪農製品・食肉関係は数年のうちにほぼ100%国内でまかなえるようになるとの見解がある。

 さらにこの幻想河を下ると国の南部に位置するよど湾と呼ばれる湾に繋がる。この湾内外では漁業も行われている。幻想河の源流である希望山の水源から流れる水に含まれる成分は良質のもので飲み水だけでなく、プランクトンのえさとしても大変優秀なもので魚の育つ環境としては申し分のないものである。建国間もない頃、防波堤建築による潮の流れの変化が漁師の間で問題とされていたが、1年がかりの調査・検証の末、海流を妨げず、かつ従来の状態を保つことが確認された為、自然が壊されることなく漁獲量は安定している。湾内では3、4人乗りの小型船、湾外では6、7人乗りの中型船で漁が行われている。湾外での猟と言っても各藩国の定めている水域内である為、大きな問題に発展することなく漁業は成立している。猟の方式としては従来の一本釣りから定置網猟まで様々であるが、藩王の定めている漁獲制限によって乱獲防止と共に稚魚の繁殖による自然形態の保護を目的とした飼育・放流も行われ、現在は放流した小魚の一時的増加により大型魚類の漁獲量も上昇傾向にある。



(文:相葉翔)

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2007年06月01日 06:50