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食料生産施設(癖毛爆男の手記

「はい、ではこちらがローズマリーの栽培です」

前線開拓村。最前線の視察と食料の供給という国家にとって大変な役割を担うこの村では、現在、体験農業会を行っていた。
都市船の住民達が趣味や体を動かす目的でここにきているのを、私も一緒になって見学している。

「この村は古威森に囲われています。まぁ、これはこの国の何処でも同じですけどね。肥料は森からの腐葉土等で行っており、また、地中にすくう虫などが・・・」

体験会の講師である女性の説明が続いている。

切り開かれ、ある程度の面積が確保しているこの土地は、日光の照らし具合もよく、また、東側に近いことから、水源も豊かだ。森は何年も経過した自然の肥料を多く内包し、この国はある意味、農業に最も適した国の一つだといえるだろう。

*


「はい、お疲れ様です。これらのハーブは種類によって食べられるようになる時期が違います。今日植えたハーブの採取までの時間を書いた紙を配りますので・・・」

女性がにこやかに参加者たちに紙を配る。一枚もらうと様々なハーブの採取までの時期が書いてある。

参加者たちは大人から子供までいて、農作業に従事した成せいか、皆汗をかいており、また、さわやかに笑っている。

「それでは、これより実際の農作業の見学と参りまーす」

女性の案内で、私たちは移動を開始する。

*


「ここがキャベツや白菜などを植えている畑ですね。ちょっと収穫時期が過ぎてしまってますが、遅植えの野菜がまだ、実っています」

ぞろぞろと移動する私たちの前に緑、白の様々な色に塗れた広大な畑が出てくる。
何人もの農夫たちが働いており、ゆっくりと、静かに、作業が続けられている。
彼らは薄手の長袖長ズボン、ゴム靴に帽子と手ぬぐいといういかにも「らしい」格好で作業を続けている。

「主に冬から春にかけた野菜がこちらでは栽培されています」

そのまま女性はにこやかに、ゆっくり移動する。

次についたのは赤・緑といった、濃い色の野菜の畑だ。

「次にごらんいただくのは夏の定番、トマト、スイカなどですね。まだスイカは小ぶりで、出荷するほどの大きさにはいたってませんが、もうすぐ、皆さんの食卓に並ぶと思います」

女性の説明が聞こえたか、農作業中の農夫たちが顔を上げて、こちらに手を振る。

参加者の子供たちがそれを聞いて喜ぶ。親がそれで「仕方ないわねぇ」と微笑んだ。

「また、こちらの施設は貯蔵庫です。多めに取れた野菜などを備蓄しておく為の設備ですね」

案内役の女性が指差した方にはいくつかの棟からなる備蓄施設がある。

「木造でネズミ返しなどがありますが、中は暖かいように、或いは寒くないように知恵を凝らしております。これらの技術は原住民の方達から教えていただいたものですね」

参加者達がおおー、と感嘆の声を上げた。

*


しばらく移動して、畑から離れる。

「こちらは酪農分野ですね。ヤギや鶏、牛の育成なども行っています。ふれあいコーナーもございますので、そちらもどうぞ」

女性の長い説明に子供たちの大半は聞き飽きていたのか、まっさきに鶏やヤギのところに向かう。

「あいて、いてててて、つつくな、つつくなよぉっ」
「やぎさ・・・ん・・・ぷぁ、きゃ、お顔舐められちゃ・・・んぷぁ」
「うし・・・でっけーーーーー!!」

それぞれで、みんな興奮している様だ。

大人たちもそれほど変わっているわけではなく、女性の説明を適当に聞きながら試飲の牛乳や試食のチーズなどを頬張っている。

女性は慣れた物なのか、説明をやめるとおいしいチーズの食べ方、或いは料理の仕方などに講義が移っていった。

*


「それでは、本日の体験会はこれにて終了です。みなさま、お疲れ様でした」
『お疲れ様でしたー』

夕焼けの空、村の入り口に集った参加者達が頭を下げる。
最後まで、案内役の女性はにこやかであった。農業のプロ、それ以上に接客のプロであるのだろう。

「この村の紹介と案内を書いた紙をこちらで用意しますので、ご興味のある方は是非どうぞ」

参加した大人たちがぞろぞろとソレをとりに行く。

「おもしろかったー」
「またきたいねー」
「ヤギさん、また見たいー」

子供たちも大方が大喜びであり、母親たちは笑顔で?#92;レに答えている。

この国の食料を受け持つ最前線開拓村は、こうして、この日も終えようとしている。

「お疲れ様です」
「あ、癖毛さん・・・でしたか? お疲れ様でした」

最後に女性にインタビューを試みる。参加者たちのインタビューは取らなくても、その顔を見れば充分にわかったからだ。

「どうでした? 体験会は?」
「いや、面白かったですよ。中々、刺激的でもありました」
「そうですか」

にっこり微笑む女性。いかん、何故こちらがインタビューされているのだ。

「毎回、貴方が?」
「えぇ、私、元は都市船で観光案内などの事業をしていたんですよ。ソレが嫌になって、こうしてこちらに来て・・・やってること、あまり変わりませんけどね」

嬉しそうに微笑む女性。なるほど、充実しているのだろう。

「なるほど、結構そういう方は?」
「多いですね。やはり、こういうのに憧れている方も多いのでしょう。都市船が全稼動していた時はそれほど気にはしませんでしたが、こうして自然の空があって、台地があるというのも中々素敵です」

その言葉に私は苦笑した。なるほど、自然の空や大地を恐れる人間もいれば、喜ぶ人間もいるわけだ。

「最後に、一言だけ、お願いします」
「そうですね・・・自然と共に在る暮らし。ソレも中々、悪くありません。皆さん、たまにはこうして大地と遊んでみませんか?」
「ありがとうございます」

完璧だな、と苦笑しながら、私はその場を離れた。

また、この村に訪れる約束をして。
(5・25 癖毛爆男

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最終更新:2007年06月01日 07:22