資源採掘場(癖毛爆男の手記
「ぁー」
「ゎぅー」
元気に働きまわる工夫達を遠めに私と犬兵衛はだらけきっていた。
空は燦々と降り注ぐ太陽。この国特有の雨の多さで、非常に湿度が高い。
だらけるのも仕方ないと思うのだが、赤毛の工夫たちは元気に今日も働いている。
鉱山としての地位を確立しつつ希望山の根元の一角で行われている露天掘りの資源採掘場。
露天掘りとは簡単に言えば、大地を貝殻、渦状に掘り下げていくことで行われる鉱山資源の採掘方法だ。重機で堀、人の手で鉱石を調べていく、何とも原始的な方法の一つである。
また、採掘には爆薬を使うこともある。
遠目に新たに使うのであろう、作業用爆薬がおいてあるのが見える。
流石にお気楽なこの国の人間でも爆薬の危険性は理解しているのか、周囲には剣士が立っており、有事の際には更にもう一人か二人ほど、剣士が来るのであろう。
「ぅー」
「ゎぅー」
そんなこととは関係なく、私たちはだれきっていたが。
*
「うーし、こんなもんか?」
「まだまだ。とりあえず、もうチョイやろうぜ」
「オッケー、んじゃ、もう一頑張りするかねぇ」
工夫たちの声が遠くから聞こえる。いや、実際はそれほど遠くはないのだが、暑さと湿度のせいで意識が遠のきかけているのだろう。
「んじゃ、よいしょー」
工夫の一人が既にある程度採掘が行われているであろう露天掘りにピッケルを振り下ろしている。それに続いて、周囲の男たちも彼に続く。
その上では、地学学者だろうか、何人かのとても力仕事ができなそうな男たちと工事の責任者らしき男が話している。
カン、カン、グシャ・・・ゴォー
ピッケルの音、重機が更に露天掘りを深くするのを手伝っている。
土を運び出し、更に深度を増す露天掘り。
「うぁー・・・・飲むか?」
「わぅ・・・」
ぬるくなった水を取り出すと、私と犬兵衛はそれを分け合うように飲む。
佐合はまだまだ、続くようだ・・・
*
「あー、無理っすー、やっぱり、もう見つからないっすねー」
「判ったー、一旦上がってくれ。発破して、作業範囲を拡大する」
「了解―」
それから数時間・・・といっても、二時間程度か。日はまだ高く、いい加減、昼飯の時間になる頃に作業をしていた工夫が露天掘りのなかから声を上げた。
どうやら、やはりもはや大規模な移動、或いは採掘が必要になったらしく、作業用火薬による発破で作業範囲を広げるようだ。
余談になるが、この作業が比較的行われない理由は地中に埋まってる資源を傷付ける恐れがあるかららしい。単純に危ないから、とならないのはやはり鉱山の男なのだろう。
「それじゃ、作業班、はじめてくれ」
『うぃーっす』
露天掘りのなかから工夫たちが上がってくると、今度は爆薬を持った作業班が中に入っていく。
シャベルカー等の重機はいざという時のために距離を取っている。
「あぅー・・・」
「ゎぅー・・・」
「これが終わったら昼食ですから、そうしたら一息つけますよ」
うなだれる私と犬兵衛のそばに来た剣士の一人が笑顔で言った。
私と犬兵衛は早く作業が終わらないものか・・・と、空ろな目でそれを見ていた。
*
「ふぅ・・・生き返った・・・」
昼食と飲み物。人間はこれだけで十分生き返るのだと実感していた。
作業が終わり、全員での昼食になって私と犬兵衛は息を吹き返した。
犬兵衛はもしゃもしゃと食事を食べ、がぶがぶ水を飲むと私より先にとっとと食事の場所から退席している。
その場で粗相をしないのを誉めるべきか、それともどこでも粗相をするのを咎めるべきか、微妙に迷ったあたり私もアウトウェイ国民になってしまった、ということであろう。
作業場に戻ると、監督官が立っていた。
「作業は順調ですか?」
「ん? ・・・あぁ、貴方ですか。えぇ、何とか。とりあえず、午後一で発破による拡大を行い、今日はその整理に終われそうですが」
私の言葉に監督官は苦笑したような笑みを見せる。
赤毛の人のよさそうな男である。私は午前中、だらけきっていた分仕事しなくては、と話を続けた。
「爆破というと物騒なように思えますが、そうでもないんですか?」
「いや、やっぱりね。爆破は危ないさ。でも、それをすることでもっと資源が取れるなら・・・ね」
「なるほど・・・ちなみに、起爆装置はやはり?」
私は手でリモコン大の起爆装置のようなものを表す。
「いえ、起爆装置はこういう奴ですよ」
そういって、監督官はポンプを押すような動作をする。まるで自転車の空気入れのような物だ。
「ははぁ・・・なるほど・・・やっぱり」
「えぇ、男の浪漫ですよね、こればかりは」
- ちなみに私が言おうとしたことは微妙に違う。違うのだが、監督官の無敵に無駄にさわやかな笑顔を見て、どうでも良くなった。
「・・・それで、起爆装置は何処に? それなら、外に出しっぱなしなのでは?」
「えぇ、起爆装置はアソコですよ。何、今は人もいませんし、連動はさせましたが、まだ作業は・・・」
そういって指差した向こうにまるで自転車の空気入れを小さくしたような起爆装置と、よこでぷりぷりやってる犬兵衛がいる・・・て・・・ちょ・・・
「ま、まて、それはやめ・・・・っ!」
「や、やめるんだ、いぬべーーーっ!」
粗相をした後、なぜかその起爆装置のとって部分に手をかけた犬兵衛が・・・
「・・・わう?」
こちらの声に反応し、首をかしげながら、それを、押した。
ドゴォォォォォォォォンッ!!
大地が、揺れた。大轟音。ぱらぱらと、砂が降ってくる。
「ど、どうしたんすか!?」
「うわ・・・起爆しちゃったんすか!?」
「お、俺がやりたかったのにーーーーっ!!」
食事中の工夫たちが続々とやってくる。様々なことを言いながら、現状を確認しているようだ。
「けほ・・・こほ・・・けほ・・・だ、大丈夫です・・・か?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
私はといえば、誇りと衝撃で咳き込み、隣にいた監督官を心配してみた瞬間、彼が真っ白に燃え尽きていたことしか覚えてない。
「わぅわぅわぅわぅ!」
犬兵衛が空気読まずにやってくる。トテモ成し遂げような顔だったのが印象的で、正直、むかついた。
*
結局のところ、先にきちんと設置班が爆薬を設置していたことから、それほど問題がないことがわかった。
犬兵衛は誇らしげに踏ん反りがえっていたが、当然、私は誉める気にならなかった。
「私が・・・私の・・・役目・・・楽しみにしていたのに・・・」
ちなみに監督官はこの日、一日中 orz 状態であった。よほどショックだったのだろう。
「わう?」
犬兵衛が元気出せよ、とでも言いたげに監督官の顔を舐めていた。
- もう、こいつは連れてこない。何があってもつれてこない。
そんなことを決意した、蒸し暑い日の話である。
(5・30 癖毛爆男
最終更新:2007年06月01日 09:06