2012年 05月 17日 (木) 14時 42分] への返信
丸山くがね [2012年 05月 27日 (日) 17時 35分 58秒]
バッドエンドでのツアー戦
シャルティアは自らの視界が白く染まるのを見た。次の瞬間、自らがどこにいるのかが理解できなくなる。
渦に飲み込まれた枝のように、揉みくちゃにされ、平衡感覚がうまく働かない。それが何かシャルティアも理解できなかった。ただ白い光の中、激痛が襲いかかってくる。
防御をしようとしても体が非常に重く、動かすのが難しい。だが、シャルティアは全身全霊をかけて動かす。これは不味いと理解できたためだ。
全身を丸め、両腕で身を守るように庇う。
それは極限の爆発。
白い閃光が世界を染め上げる。
轟音と爆熱。
生み出された衝撃波が大地を吹き飛ばし、舞い上がった土砂がキノコの形を空に作る。
超熱波による致死領域はキロメートル単位にも及び、その範囲内に存在し、今なお動く影はなかった。土煙が収まるにつれ、その凄惨な有様が明白となる。
生きる者がいるはずがない、そんな中、土を払ってよたよたと立ち上がる者が1人。
「かぁ、かぁ、かぁ」
すさまじい爆発によって生じた超高熱波の中にいたために、喉が焼け爛れており言葉がうまく働かない。いや、喉だけではない。全身は焼け爛れ、かつての美しさはどこにもなかった。髪を全部失い、まるで黒く焼けた棒のようだ。
熱量での火傷以外にも、爆風によって全身に切り傷を負っている。
左の視界は完全に閉ざされている。右目はなんとか白濁しただけですんでおり、ぼんやりとだが像をかたどってくれる。体が傾げるのは、右腕を肩口から失ったためだ。ズタズタになったドレスが、見窄らしい焦げた残骸となって体に張り付いている。その中にあってシャルティアの身につけた最高級のアイテムたちのみ、そしてそれに隠れた部分が無傷なのが異様だ。
全身から突き上げてくるような痛み。
この痛みはまずい。
この痛みはシャルティア・ブラッドフォールンを滅ぼすものだ。
「ああああああああ」
思考が千切れになり、欠片が絶叫となって口から飛び出す。
炎によるすべてのダメージを無効にする自分がなぜ、熱ダメージを受けているのか。自らの守りはどうして突破されたのか。無数の疑問が頭をよぎるが、そのほとんどが痛みと混乱によってかき消される。
思考があちらこちらに飛び交う中、ただ1つだけが最重要事項として頭の中で警鐘をならしている。
それは――これ以上ここにいることは出来ない。このままでいたら死ぬから撤退すべきだ、という内容。
しかし、だ。
しかしナザリック大地下墳墓の守護者であるシャルティア・ブラッドフォールンが背を向けて逃げて良いのだろうか。はるかに劣るものたちに。
それはナザリックを、至高の41人の期待を――裏切る行為ではないだろうか。自らが死すとも、この下らない国を滅ぼすべきではないか。忠義と生存本能。2つがシャルティアの動きを縛る。
ギギギギ――。
シャルティアの口からきしむような音が漏れる。わずかに残った歯が擦り合わされ起こった音だ。
「かぁああ、くぃうう」
魔法が発動しない。
「ぎがあああがっがっぐ!」
憤怒。ありとあらゆることに対する怒りがシャルティアを染め上げる。
……この話が公開される日が来るのだろうか?
最終更新:2013年01月28日 22:43