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終わりと始まりの間に(続き) - (2008/04/18 (金) 04:09:15) の1つ前との変更点

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「終わりと始まりの間に(続き)」 高校生活最後の日が終わった。 今、部屋のベッドの上で仰向けになっている。 そして、ただぼんやりと天井を眺め続けている。 (こなた…) あの事が頭から離れない。 いきなり私に抱きついてきて、涙を流しながら、胸元に顔を埋めてきたこなた。 普段のあいつからは想像も出来ないほど、繊細で壊れそうだった。 あの後は結局、いつものこなたに戻って、教室でワイワイ騒いでいた。 愛らしくて、時々ちょっと憎らしくて、それでも放っておけないあいつ。 四月からは、離れ離れ。 (会いたい…) さっきから同じことばかり頭の中を駆け巡っている。 ほんの数日前まで、ごく普通の友人として見ていた。いつもアニメやゲームの話ばかりして、こちらの事情なんてお構いなしに、わけのわからないことをしゃべり続け、気がつけばあいつと同じ世界に足を踏み入れていた。あいつと知り合わなかったら、同人誌を手に取ることもなかったかもしれない。 それでもあいつは、私を友人として見てくれた。特に構えたりせず、自然に付き合ってくれた。そして、親友と呼べるような関係になった。 あいつの無邪気な笑顔が思い浮かんでは消える。 こなたに会いたい こなたを抱きしめたい こなたと一緒に過ごしたい どうして? あいつのことを考えると、胸の辺りが熱くなってくる。 なんで? (会いに行こう、あいつに、そして自分の気持ちが何なのか確かめよう) 私は携帯電話のボタンを押し始めた。 (頼む、出て、お願いだから…) 「もしもし~」 いつもどおりの、眠そうな声が聞こえてきた。 「こなた、今なにやってんの?」 「ん~、アニメのDVD見てるよ」 「ちょっと、時間作れないかしら」 「え、いつ?」 「今日!今から!!」 「え、ちょっと待って!今何時だと思ってんの??」 「抜け出しちゃえば平気よ!」 「待って、落ち着いて冷静になろう。こんな時間に表を歩いちゃ危ないよ」 「……」 「かがみがそこまで言うなら、大事な用なんだろうけどさ、やっぱり、友達を危険な目に遭わせるわけには行かないよ」 「……」 友達 私たちの関係は、やはり友達。 それ以上は、望めないのだろうか。 「でも、今、すごく、こなたに…会いたい」 「う~ん…困ったな……」 しばらくお互いに沈黙する。 「じゃあさ、朝になったらうちに来なよ。始発が出る時間なら大丈夫だと思うよ」 「……」 「かがみん、聞いてる?」 「優しいのね、あんた…」 「え?」 「…本当に嬉しい」 「いやいや、別に普通の事じゃん」 「そんなことないよ、そこまで私のこと心配してくれるなんて…」 この場にこなたがいたら、抱きしめている。 いや、あいつに抱きしめられたい。 あいつの胸に飛び込んでいきたい。 「…わかった。そうする」 「うんうん、素直な子はいいね。ポイント高いぞー」 「フフフッ」 こなたらしい表現だ。 (明日こなたに会える、こなたに…) 枕を抱きしめながら布団に潜り込んだ。 (ん…?) カーテンの隙間から陽の光が差し込んでいる。 (あ、何時だろ…) 時刻は12時半。 (しまったーーーー!!!!) いかん、卒業したからってたるみすぎだ。 慌てて下に下りた。 「あ、お姉ちゃん、おはよう」 つかさの方が早起きしている。しかも着替えている。ショックだ。 姉の威厳も何もあったものじゃない。 「二度寝したの?」 「え、いや、そういうわけじゃないんだけど…」 「じゃあ考え事してたのかな。私にもそういう事あるからさ」 「ん…まぁ、そんなところね」 「ふーん…」 いたずらっ子のような目でこちらを見つめる。 「な、何よ、言いたいことがあるならはっきり…」 「こなちゃんの事でしょ」 「な?」 「あははは、図星だね~」 (おいおい、一体何なんだ、私がつかさにいいように扱われてる…) 「昨日の夜、電話してたじゃない、聞こえちゃった」 「あ、あ…」 (どこの神様でもいい、つかさの記憶を消し去ってください…) 「気にすることなんて無いよ、春休みなんだしさ、いっぱい楽しんじゃえば」 「え…?」 「二人でどこか遊びに行くんでしょ?なんか盛り上がってたからさ」 にこにこと無邪気な笑顔のつかさ。 (昨日の会話、どこまで知っているんだ…) 軽くため息をつくと、椅子に座って、トーストにかじりついた。 「私は用があって行けないけど、お姉ちゃんと一緒なら、こなちゃん退屈しないだろうな…」 どうやら、私とこなたがどこかへ行く約束でもしたと思っているらしい。 「え、まぁ、その…そんなところね」 「すごく相性が良さそうだしねー」 ブッ! 口に含んだ牛乳を吹いてしまった。 「ひゃあ!!な、何なの~」 「ご、ごめん!!今タオル持ってくるから」 (…何を考えているんだつかさは、全然わからん) 食事の後、こなたに電話してみることにした。 (怒ってるかな…) 自然に手に力が入る。 「…もしも~~し…」 数回のコール音の後、今にも寝てしまいそうな低い声が聞こえてきた。 「こなた?遅くなってごめんね!寝坊しちゃって…」 「ん~…かがみん、受験が終わってたるんでるんじゃないの?」 「べ、別にそんなことは…ない…と思う」 「…まぁ、いいや、で、うちに来るの」 「え、うん…だめ?」 「いいよ~」 「てかあんた、すごく眠そうだけど、ずっと起きてたの?」 「…ん~、なんかDVD全巻見たらこんな時間になっちゃって…」 「相変わらずね…とりあえず、今から向かうわ」 「…ほーい…」 電話を切った。 私は着替えを済ませると、駅のほうへ向かった。 こなたの家に着いた。 ピンポーン 呼び鈴を押しても応答は無い。 (どうしたんだろう…) 何度か押して見たが、誰も出てこない。 「こんにちはー、柊でーす、こなたさんいますかー」 物音ひとつしない。 「すいませーん、誰かいませんかー」 何の反応も無い。 (こなた、確か家にいるはずよね…来てもいいって言ってたし) このまま上がりこんでしまおうか…しかし、人の家に勝手に入るなんて…。 (寝てるのかな?でも、もしかしたら、ケガでもして倒れてるかもしれない…ここで帰って、後で大変なことになったらどうするの…) 言い訳のような事を自分に言い聞かせると、私は意を決して、こなたの家に上がりこんだ。 (確か、部屋は二階だったわよね…) (続く) **コメントフォーム #comment(below,size=50,nsize=20,vsize=3)
「終わりと始まりの間に(続き)」 高校生活最後の日が終わった。 今、部屋のベッドの上で仰向けになっている。 そして、ただぼんやりと天井を眺め続けている。 (こなた…) あの事が頭から離れない。 いきなり私に抱きついてきて、涙を流しながら、胸元に顔を埋めてきたこなた。 普段のあいつからは想像も出来ないほど、繊細で壊れそうだった。 あの後は結局、いつものこなたに戻って、教室でワイワイ騒いでいた。 愛らしくて、時々ちょっと憎らしくて、それでも放っておけないあいつ。 四月からは、離れ離れ。 (会いたい…) さっきから同じことばかり頭の中を駆け巡っている。 ほんの数日前まで、ごく普通の友人として見ていた。いつもアニメやゲームの話ばかりして、こちらの事情なんてお構いなしに、わけのわからないことをしゃべり続け、気がつけばあいつと同じ世界に足を踏み入れていた。あいつと知り合わなかったら、同人誌を手に取ることもなかったかもしれない。 それでもあいつは、私を友人として見てくれた。特に構えたりせず、自然に付き合ってくれた。そして、親友と呼べるような関係になった。 あいつの無邪気な笑顔が思い浮かんでは消える。 こなたに会いたい こなたを抱きしめたい こなたと一緒に過ごしたい どうして? あいつのことを考えると、胸の辺りが熱くなってくる。 なんで? (会いに行こう、あいつに、そして自分の気持ちが何なのか確かめよう) 私は携帯電話のボタンを押し始めた。 (頼む、出て、お願いだから…) 「もしもし~」 いつもどおりの、眠そうな声が聞こえてきた。 「こなた、今なにやってんの?」 「ん~、アニメのDVD見てるよ」 「ちょっと、時間作れないかしら」 「え、いつ?」 「今日!今から!!」 「え、ちょっと待って!今何時だと思ってんの??」 「抜け出しちゃえば平気よ!」 「待って、落ち着いて冷静になろう。こんな時間に表を歩いちゃ危ないよ」 「……」 「かがみがそこまで言うなら、大事な用なんだろうけどさ、やっぱり、友達を危険な目に遭わせるわけには行かないよ」 「……」 友達 私たちの関係は、やはり友達。 それ以上は、望めないのだろうか。 「でも、今、すごく、こなたに…会いたい」 「う~ん…困ったな……」 しばらくお互いに沈黙する。 「じゃあさ、朝になったらうちに来なよ。始発が出る時間なら大丈夫だと思うよ」 「……」 「かがみん、聞いてる?」 「優しいのね、あんた…」 「え?」 「…本当に嬉しい」 「いやいや、別に普通の事じゃん」 「そんなことないよ、そこまで私のこと心配してくれるなんて…」 この場にこなたがいたら、抱きしめている。 いや、あいつに抱きしめられたい。 あいつの胸に飛び込んでいきたい。 「…わかった。そうする」 「うんうん、素直な子はいいね。ポイント高いぞー」 「フフフッ」 こなたらしい表現だ。 (明日こなたに会える、こなたに…) 枕を抱きしめながら布団に潜り込んだ。 (ん…?) カーテンの隙間から陽の光が差し込んでいる。 (あ、何時だろ…) 時刻は12時半。 (しまったーーーー!!!!) いかん、卒業したからってたるみすぎだ。 慌てて下に下りた。 「あ、お姉ちゃん、おはよう」 つかさの方が早起きしている。しかも着替えている。ショックだ。 姉の威厳も何もあったものじゃない。 「二度寝したの?」 「え、いや、そういうわけじゃないんだけど…」 「じゃあ考え事してたのかな。私にもそういう事あるからさ」 「ん…まぁ、そんなところね」 「ふーん…」 いたずらっ子のような目でこちらを見つめる。 「な、何よ、言いたいことがあるならはっきり…」 「こなちゃんの事でしょ」 「な?」 「あははは、図星だね~」 (おいおい、一体何なんだ、私がつかさにいいように扱われてる…) 「昨日の夜、電話してたじゃない、聞こえちゃった」 「あ、あ…」 (どこの神様でもいい、つかさの記憶を消し去ってください…) 「気にすることなんて無いよ、春休みなんだしさ、いっぱい楽しんじゃえば」 「え…?」 「二人でどこか遊びに行くんでしょ?なんか盛り上がってたからさ」 にこにこと無邪気な笑顔のつかさ。 (昨日の会話、どこまで知っているんだ…) 軽くため息をつくと、椅子に座って、トーストにかじりついた。 「私は用があって行けないけど、お姉ちゃんと一緒なら、こなちゃん退屈しないだろうな…」 どうやら、私とこなたがどこかへ行く約束でもしたと思っているらしい。 「え、まぁ、その…そんなところね」 「すごく相性が良さそうだしねー」 ブッ! 口に含んだ牛乳を吹いてしまった。 「ひゃあ!!な、何なの~」 「ご、ごめん!!今タオル持ってくるから」 (…何を考えているんだつかさは、全然わからん) 食事の後、こなたに電話してみることにした。 (怒ってるかな…) 自然に手に力が入る。 「…もしも~~し…」 数回のコール音の後、今にも寝てしまいそうな低い声が聞こえてきた。 「こなた?遅くなってごめんね!寝坊しちゃって…」 「ん~…かがみん、受験が終わってたるんでるんじゃないの?」 「べ、別にそんなことは…ない…と思う」 「…まぁ、いいや、で、うちに来るの」 「え、うん…だめ?」 「いいよ~」 「てかあんた、すごく眠そうだけど、ずっと起きてたの?」 「…ん~、なんかDVD全巻見たらこんな時間になっちゃって…」 「相変わらずね…とりあえず、今から向かうわ」 「…ほーい…」 電話を切った。 私は着替えを済ませると、駅のほうへ向かった。 こなたの家に着いた。 ピンポーン 呼び鈴を押しても応答は無い。 (どうしたんだろう…) 何度か押して見たが、誰も出てこない。 「こんにちはー、柊でーす、こなたさんいますかー」 物音ひとつしない。 「すいませーん、誰かいませんかー」 何の反応も無い。 (こなた、確か家にいるはずよね…来てもいいって言ってたし) このまま上がりこんでしまおうか…しかし、人の家に勝手に入るなんて…。 (寝てるのかな?でも、もしかしたら、ケガでもして倒れてるかもしれない…ここで帰って、後で大変なことになったらどうするの…) 言い訳のような事を自分に言い聞かせると、私は意を決して、こなたの家に上がりこんだ。 (確か、部屋はこっちだったわよね…) (続く) **コメントフォーム #comment(below,size=50,nsize=20,vsize=3)

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