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「......ン」 視界の端へと流れていく景色を眺めていると、後ろにいるこなたが小さく声を漏らした。 と同時に掴まれていた制服が少し引っ張られる。 無意識かもしれないけど、それがなんだか嬉しくて。 誰に見られてるわけでもないけど照れ隠しに空を見上げてみると、そこには見知った青色の空。 「...かがみ」 「ん?」 背中越しに名前を呼ばれた。 振り返りたいけど、さすがに二人乗り中に後ろを向くのは危険行為だ。一応法律で禁止されてるしね、コレ。 短い返事と肩の動きだけで答えると、サラッと髪を撫でられる感触が返ってきた。 ――コイツは... 髪なんてもう何回も触られているのに、それでもこいつに髪を触られる度高まってしまう胸の鼓動がうるさい。 梳かす様に何度も髪の毛に指を絡めてくるこなたの指がくすぐったくて、でもやめて欲しくなくて。 そんな自分の矛盾に笑ってしまう。 「何してんの?」 「かがみの髪が遊んで欲しいって」 「そりゃ迷惑かけたわね」 少し拗ねたような口ぶりでグリグリとさっきよりも強い力で指を絡めてくる。 チラッと横目で後ろを疑うと、いつになく真剣に流れる私の髪を梳くこなたが見えた。 その姿はまるで蝶を追う猫そのもので。 可愛いとか、子供っぽいとか、そんなものじゃなくて... なんか分かんないけど凄く嬉しい。 私の髪の毛にいちいち反応してくれるコイツが、追いかけようとしてくれるコイツが。 たまらなく可愛い。 こなたにばれない様に息を抑えて笑ったのに、背中越しにそれを感じ取ったのか少し強い力で髪の毛を引っ張られた。 なんで引っ張られたのかは分からないけど、とりあえず肩を少し動かして「ごめんごめん」と投げかけると、トンッと背中に暖かい感触が当てられる。 「かがみ、温かい」 背中に当てられたのはこなたの額なんだろう。 心地よい高音が私の体ごと伝わってきて、こなたが触れている部分が熱い。 でもそんなこと言ったらからかわれること間違いないし、だからと言って無視できるほど器用でもない。 大体こなたはどの意味で"あったかい"と言ったんだろう。 気温のことか、私の背中のことか... 前者なんだろうな、コイツのことだから。 「確かに今日は暖かいかもね」 気付かれないように、慎重に返したつもりなのに。 何故かこなたは一瞬体を強張らせて、そうじゃなくて、と呟いた。 「ん?」 「.........なんでもない」 なんなんだろう。 ネタでも本音でもズバズバ言うコイツが躊躇うなんて。 まさか、 こなたも私と同じことを...? ......なんてあるわけないか。 こなたと付き合うようになる前も、なった今も、 自分の都合の良いように解釈してしまうのは私の悪い癖だ。 ならちゃんと聞けばいいんだけど、それはそれで何故か悔しい。 「かがみ、そろそろ変わる?」 そんなおめでたい自分の思考に苦笑している私にこなたが問いかけてきた。 「何を?」 「運転」 あぁ、確かに交替でこぐって約束したけど。 キュッとこなたに握られている自分の制服を見ると、どうにも足が止まらない。 いや、多分止めたくないんだろう。 こなたの熱も、息遣いも、心臓の音さえも聞こえてくるこの場所から離れたくなかった。 ギィ、と二人分の体重を乗せた自転車が錆びた金属音を鳴らした。 一人で乗っている時には決して聞こえない音。 それが嬉しくて、幸せで。 頬をくすぐる風がやけに気持ちいい。 「風、気持ちいいわね」 そう言うと、返事の代わりにこなたの額が背中から離された。 今さっきまであったこなたのぬくもりが背中から拡散するみたいに広がって、風に流されていく。 そんな風を切る感触がとてつもなく気持ちいい。 一人じゃこんなこと思ったことないのに。 やっぱりコイツが傍にいると景色までこんなに新鮮に見えるんだと思う。 ギシッ、と鳴った音に横目で視線を後ろに向けると一瞬こなたと目が合った。 ずっと見られてたんだろうか。 そう聞こうとすると、フイッとこなたが視線を逸らした。 「うん?どうしたの?こなた」 「な、なんでもない!!!」 ほんの一瞬見えた頬の赤さは気のせいだろうか。 もっと追及してやろうと、口を開いた瞬間。 すっかり冷えてしまっていた背中に再度暖かい感触が伝わってきた。 と、同時にグリグリと多分こなたの顔だろうものが擦りつけられる。 「...っ」 その感触にゾワッとした電流が背中を流れる。 まずい、この感覚はまずい。 焦燥感だとか、こなたに触りたい欲だとかが一気に押し寄せてきた。 ここは外だし、ましてやまだ日が高いのに。 何考えてるんだ、私は。 理性という脆い糸をなんとかくい留めて、深呼吸を一つ。 大丈夫、こなたはここにいるし、私はこなたの傍にいる。 「かがみ」 「ん?」 唐突に名前を呼ばれた。 優しく、でも甘えるみたいな細い声。 こいつが呼ぶ私の名前はいろんなパターンがある。 からかうような猫口で呼んだり、宿題を忘れてせがんでくる泣きそうな声や、そしてこんな風な細く響き渡る声で私を呼ぶ。 私の名前を呼ぶこなたの声が感情そのものを表してるみたいで、凄く嬉しくて、可愛いと思ってしまう。 「ずっと、こうしていたいね」 「私の足が悲鳴をあげるわね」 「でも痩せるんじゃない?」 余計な御世話だ、せっかく人が褒めてあげてたのに......心の中でだけど。 制服を握っているこなたの指に少し力がかかって、汗ばんだ背中からはちゃんとこなたの体温が伝わっくる。 「たく、余計なお世話よ......でも」 「ん?」 「ずっとアンタの傍でこうして笑っていたい、ってのは同感」 耳が熱い。 ついでに言うと顔全体が熱い。 自分で言ったにも関わらず上がってしまう胸の鼓動がやけにうるさくて。 こなたが後ろにいてよかった。 きっと今の自分の顔は驚くぐらい赤くてにやけてると思うから。 見られていないだろうかと視線を動かすと、こなたはなにやら左手で顔を覆っていた。 目にゴミでも入ったんだろうか。 だけど。 本当に少しだけど。 ゆらゆら揺れるさざ波みたいに揺れる髪の毛の隙間から見える耳は赤みを帯びていて... それだけで込み上げてくる熱量が何倍も増してくる。 そのままバレないうちに前を向き直すと、こなたが少し上擦った声で私を呼んだ。 「かがみ、ほっぺた赤いよ?」 「るっさい」 そんなこと言われなくても分かっている。 だからこうしてさっきまで気持ちいいと感じていた風さえも熱く感じて、そのまま真っ直ぐ前を見る。 「耳も真っ赤だよ?」 「......それはアンタもだろ」 これはさっき確認済みだ。 そう心の中で呟くと、何を思ったかこの小さい恋人は全体重をかけて背中に抱きついてきた。 「だー、もうなんなんだ、アンタは!」 「だって抱きつきたくなったんだもん」 「はいはい」 「かがみ?」 「今度はなによ?」 「好きだよ」 「......知ってる」 「かがみは?」 「.........好きよ」 「知ってる」 その言葉になんだか胸が締め付けられる程痛くなって、それを隠そうとこなたに凭れながら笑うと、こなたも声を出して笑った。 **コメントフォーム #comment(below,size=50,nsize=20,vsize=3) - おお、二度おいしい &br() -- 名無しさん (2009-02-27 22:28:52) - リバーシブルで甘々! ぐっジョブ! -- 名無しさん (2009-02-25 23:49:46) **投票ボタン(web拍手の感覚でご利用ください) #vote3()
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