「何気ない日々~想い絡む夏-1~イラついて、それでも貴方に……」の編集履歴(バックアップ)一覧に戻る
何気ない日々~想い絡む夏-1~イラついて、それでも貴方に……」を以下のとおり復元します。
 どうして、私は雨に打たれているんだろう。寒くてたまらないのは体なのか、心なのか感覚が痺れてわからない。
 こなたの家はすぐ近くなのだから行けばいいと思う……でも、二度聞きたくない言葉というのはあるものだから、だから私は、それが何故だかとても怖くて、この結局誰もいない雨の降る公園で立ち尽くしているのかもしれない。
 ―そもそもどうしてここにきてしまったのか、わからない。こなたにすがりたかったのか、それとも雨に打たれて解けてしまいたかったのかしら。
 こなたに頼るのことは悪いことじゃない、だって私達は頼りあえる関係になったはずなのだから。そんな関係なのに頼ることを拒むのは、単純に意地っ張りな私の心なんだろうな?馬鹿らしくて笑ってしまった。頬についた髪が少しうっとおしくて、その頬に伝うのは雨にしては少し熱かった。それにしても本当に寒いわね、背中がぞくぞくするような寒気じゃなくて、心がじわじわと凍り付いていくような不慣れな寒さ。どうしたら防げるのか、まったく検討がつかなかった。
 だって、こんな意地悪な寒さなんて今まで味わったことがなかったから。

 私がどうして雨に打たれて立ち尽くしているかという理由の説明については、ほんの少し時間を遡らなければならない。
 明るい太陽の下から、何の光もない絶望の穴の入り口付近にまで追い込まれるというのは、もしかしたらああいう心境なのかもしれないわね。
 そもそもの始まりは、まだ雨が降る前で、空もまだ明るかった数時間前のこと。
◇
 心なしか控えめなノックの音とともにつかさが“今入っても大丈夫かな?お姉ちゃん”と扉越しに声をかけてくる。
私はといえば、最近休日の日課になりつつある、朝食の後の受験勉強を終え、こなたに進められたライトノベルを片手にクッションを枕に寝転がって
、ポッキーをくわえているという、予定がない日版いつも通りの休日ライフに身を投じつつあったわけで暇といえば暇だった。
意地っ張りでやや見栄っ張りなのか、妹が部屋に入ってくるというだけのことなのに寝転がった姿勢のままというわけにもいかないかなと思い、クッションに座って、ライトノベルに目を走らせたままくわえたポッキーをパパっと食べて(思わずこなたに、最近太ったんじゃないかね?かがみんやと言われた時の声が頭の中で響いて赤くなってしまった)残りを机の上においてから“どうぞ”答える。
「おはよう~お姉ちゃん」
ちなみにもう十一時を回っているのでおはようじゃないけどね。
「ん、おはよ。あんたはまだ寝巻きなのね」
「あはは、ほら春眠暁がどうのって」
「もう夏……のはずなんだけど」
「はぅっ……ってそうじゃなくて、ちょっと相談があるんだけど」
私はライトノベルを机の上においてつかさの顔を見た。その顔は考え疲れて目の下にクマができていて憔悴してはいるものの真剣な物だった。
「何があったの?私で答えられることならいいんだけど」
その真剣な表情に少し気おされてドアを閉めていなかった事と、運が悪い事とが重なったとしか言いようがなかった。
今日は祝日でたまたま誰にも予定がなかった、それを運の悪い事というのも自分勝手だとは思うんだけどね。
「お、お姉ちゃんはこなちゃんと、えっと、その、付き合ってるんだよね!それで私も―」
つかさがそう言った直後にいのり姉さんが通りかかったのだ。そしてつかさが本題を言う前に、
「な、どういう事なの!?かがみ」
といういのり姉さんの声につかさの声は遮られ、私はいのり姉さんによって居間へと引っ張って行かれる事となったのだ。
 正直、何を言われたのかあまり覚えていないというより、思い出したくない。罵られたわけじゃない、ただ、母とつかさを除く家族全員に説得されただけの事だが、途中つかさに助けを求めて、
「約束を破るわけじゃないけど、お姉ちゃんごめんね……今は私、味方になってあげられない」
涙を零しながらごめんを繰り返すつかさにすがる事もこういう時に味方でいてくれるといったのにそうしてくれなかったといって責める事もできなかった。そもそも、責めるのはお門違いなのだから。

 母もこうなってしまっては父との話し合いという兆候の姿勢をとるしかなく、最終的に
「あぁ、もう!出て行くわよ。私はこなたと今は別れるつもりはないから……」
誰もわかってくれない、私は今とても幸せだという事を否定される。心が悲鳴を上げて余裕がなくなって、私は泣きながら誰も求めていない一言を叫んだ。

◇

 それで今に至るというわけだ。自業自得だからどうしようもない。誰も出て行けとはいわなかったのに、私が勝手に飛び出してきただけなのだから。
家を出る時、つかさに手をつかまれて止められた。そのつかさの手を私は、振りほどいた上に叩いてでてきてしまったのだ。
つかさはどんな顔をしていたのだろうか、傷つけてしまった罪悪感が胸を突き刺す。
 ただ、説得というこなたとの関係と幸せな心の否定が私からすべての余裕を消していたのは間違いなかった。心に余裕がない時は、自分でも間抜けなくらい周りの人を傷つけてしまうような気がするから、こなたの所に行きたくないのかもしれない。
 それにしても、私はどこに出て行くつもりだったのだろう。びしょびしょになった財布を見ても何も好転しない。貯金もあるにはあるけど、
こなたみたいにバイトをしていたわけでもないから精々お年玉等を貯めていた微々たるとまではいかないものの、頼りない額ではある。
 どうしよう。何だかこなたに突き飛ばされた時みたいだなと思えば思うほど心が黒く染まってしまいそうになる。
 だめだ、座り込んでひざを抱えてもどうしようもない。どこかで雨をしのがないとこのままだと立っているのも辛い。
ずいぶんと体は冷えてしまっていて動くのはおろか、立ち上がるのも億劫だったが、そのままでいるのも辛かったので、穴だらけで雨よけは待った期待できない屋根のついたベンチに腰掛けて、何を詰めてきたのかすら、よくわからないスポーツバックを肩から下ろしてさらに深くベンチにもたれる様にして座った。
 雨は冷たくて……なのに頬は熱くて

 誰も望んでいないのに飛び出して
 自分勝手な自分にイラついて……

それでも心に浮かぶのは不思議な青空

そう、我侭でイライラして、そんな自分がいやになって―

それでも私は、今、凄く―こなたにただ、会いたかった。



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- こりゃまた今後目の離せない展開に・・・(@д@)/?  -- kk  (2010-01-05 00:13:26)



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