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2話 トモダチの作り方」を以下のとおり復元します。
楽しいとつまらない。嬉しいと悲しい。そんな対照的な気分を同時に持つのは変なのかな? 
困ったことになった。これは本音。あともう一つ。でもよく分からない。なんで、いいよ、なんて言ったんだろう? 

「こなたー!8時になったけど朝ごはん食べない?ってもう起きてたの?」 

透き通った声。綺麗に響く私の名前。なんかくすぐったいよ。 

「おはよ、かがみ。起きてるには起きてたよ。」 
「・・・あんた、また徹夜か?」 
「勘がいいね。」 

ドアの方を見ると、エプロン姿の女の子。髪の毛の色はパープル。そしてツインテール。 
なんとまぁ、改めてみると絵に書いたようなツンデレキャラだ。 

「あのさ、同居し始めて1週間たったよね?」 
「うん。」 
「さて、問題。徹夜でゲームしたのは何回目だ?」 

きりっとしたつり目。これも萌え要素だよね。でも、つり目はつり目でも、なんとなく優しく見えるのは気のせいじゃない。 

「5回目。」 
「・・・体壊すわよ?」 
「大丈夫。慣れてるから。それより・・・焦げ臭いよ?」 
「やばっ!卵焼きこげちゃうっ!」 

そういって慌てて駆け出すかがみ。ツインテールが宙を舞った。あんな理想のツインテール、初めて見た。 

「はぁ。」 

無意識にため息が出る。 
自分のペースを崩したくない。あまり人と話すのは得意じゃない。もちろん、甘えるのも苦手。 
かがみにはまだあまり知られてないが、いわゆるオタク。一人がスキだ。 
なのに、何故? 
この質問は1時間に1回、私を駆け巡る。自分でも分からない、同居の理由。 
私に光は似合わない。かがみが陽性植物なら、私は陰性植物。 
同じ環境では暮らせない。それなのに始まってしまった同居。お父さん、いきなりこなたは憂鬱です。 


隣の2号室にはつかさ。かがみの妹。天然な女の子。 
私の部屋は3号室です。同居人がいます。名前はかがみ。きっとツンデレな女の子です・・・仲良くできるか不安です。 
始まりは半分の憂鬱と、半分の、期待。ここから始まる幸運星荘での生活。 


‐‐‐‐ 

「徹夜までして何やってるの?」 

もぐもぐとパンをかじりながらかがみは私に問い掛ける。やはり少女とパンは合うな。 

「んー、まぁ、ゲームしたり、マンガ読んだりかな。」 

ギャルゲーや、ネトゲーだけど。きっとかがみには検討もつかないだろう。 
いわゆるオタク文化。ディープな世界の住人。中学時代から、変わらない私。 

「へー。今度私にもやらせてよね。」 
「うん。」 

変わらなくていい。ずっと狭い無機質な世界で生きていきたい。現実より楽なデータの世界で。 
なのに。神様は酷だ。私の願いなんて聞き入れてくれない。 

「夜更かしは体にも美容にも悪いわよ?今日は早く寝なさい。いいわね?」 
「大丈夫だよ。」 
「ダメ!約束だからね。それと、人と話すときは人の目を見る!あと、もっとはっきり喋りなさい!」 

なんだこれは?これなんて罰ゲーム?望まない介入。つまりはお節介。 
それなのに、私の半分は、そんな事を微塵に思っていなかった。 

「・・・はい。」 
「まぁ、いいわ。ごちそうさまでした。じゃ、私ここで勉強してるから。」 

そう、半分は。この半分の気持ちは中学の時にはなかった。だから私は戸惑う。かがみを見ると、戸惑う。 

「こなたも気が向いたらおいでよ。ま、ムリにとは言わないけどさ。でも案外楽しいかもよ?友達同士で勉強するのもいいものよ。」 

トモ、ダチ? 
あぁ、そっか。私ってやっぱり馬鹿なんだな。こんな単純な事に気が付かなかったなんてね。 

「あのさ、かがみ。」 

有り得ないと思っていた感情。でもこの瞬間、憂鬱が負けた。だから認めなきゃいけない。 
私の密かな期待と感情を。 

「なに?」 
「いや、別に、何って言う程じゃないけど・・・」 

期待してるだけじゃ変わらない。せっかく、幸運に恵まれた、かもしれないこの同居。 
後悔はしたくないもんね。 


‐‐‐‐ 

「あのさ・・・」 

たまには光を浴びるのも、悪くない。強い光を浴びて、変わってみるのも、悪くない。 
やっと分かった、答え。1週間悩み続けた問題。答えは本当に単純。 

「勉強教えてくれないかな?」 
「私がこなたに?」 
「ダメ、かな?」 

惹かれたんだ。 

「いいけど、私こなたに教えられるかどうか・・・」 
「大丈夫。私も今年の春から・・・」 

無機質な世界から生身の世界を感じてみたい。かがみを見た時、そう思ってしまった自分がいた。 
ずっと、このままでいい。そんな考えを押し退けて、陰性植物は陽性植物に惹かれたんだ。 
だから、ちょっと勇気を出して、光を浴びてみようと思った。 

「陵桜学園に行くんだ。だから宿題は同じだよ。」 
「え!?それマジ!?」 
「・・・そんなにビックリしないでよ。いくら小さいからって失礼だぞ。」 
「いや・・・それもビックリだけどさ・・・」 
「ふぇ?」 
「・・・陵桜の始業式、明日よ?もしかして、宿題手付かず?」 

パープルのツインテール。女の子らしい繊細な体躯。凛と響く声。 
初めて見た時から、友達になりたいって思っていた。初めて、生身の人間と友達になりたいって思った。 
かがみの性格、全然分からないのにね。変かな? 

「・・・」 
「図星か?」 
「・・・テヘ。」 
「テヘ、じゃない!」 
「というワケで、宿題見せてー、かがみん。」 
「かがみんって・・・てか自分でやりなさいよっ!」 
「とか言いつつ、今、バックからテキストを取り出して私に見せてくれるような素振りを見せるのはなんなのカナ?」 
「う、うるさいっ!・・・今回だけだからね。」 
「おぉ!リアルツンデレ!かがみんは可愛いなぁ。」 
「ツンデレってあんたね・・・いいからさっさとやりなさいよ・・・」 


私の部屋は3号室。同居人が、友達になりました。名前はかがみ。立派なツンデレです。 
これが今日の幸運。さて、明日はどんな幸運があるのかな? 


‐‐‐‐ 


-[[3話 目の合わせ方>http://www13.atwiki.jp/oyatu1/pages/357.html]]へ続く

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