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明るくなるよ」を以下のとおり復元します。
『明るくなるよ』 

晩御飯を食べたら眠くなってしまい、どうやら少しほど居眠りをしてしまったらしい。 
あの日の夢をみた。 



「私、かがみのことが好き。」 
卒業式の日、別れ際に、私は親友-----客観的にみた場合はだが-----である女の子、泉こなたに告白された。 
もちろん雰囲気から、それが本気の愛の告白であることは分かっていた。 
 私だって、こなたのことは好きだった。友達としてもだし、それに少し、少しだけ、彼女のことを恋愛の対象として意識もしていた。 
自分のこの気持ちに気づいて以来、私は恋する乙女の気分に浸っていた。 

 しかし・・・ 

私の思いは情けなくなるくらいに中途半端だった。この愛のかたちは社会的に認められないと知っている。 
そして私はどちらかというと社会的な規範に忠実な人間、つまり常識人たろうとしてきた。 
こなたの思いはうれしい、しかしその思いを受け入れてしまえば私は『普通』ではなくなる、だけど彼女を傷つけたくない、彼女とずっと仲良くしていたい。 
 そんなひとりよがりで、自己中心的な考えがだした答えは、 

「すこし考えさせて・・・」 

 そういった私に、こなたはいつもの破天荒さからは考えられないような、今にも不安で壊れそうな笑みを浮かべて、 

「返事、待ってるね。かがみん」 

そして、私に別れを告げ、何かを振り払うかのように走り去っていった。 



夢から覚めた私は、いつもこの夢を見た後がそうであるように、自分を傷つけてしまいたい衝動に駆られた。 
こなたとはその後、ほぼ一年間、会っていない。連絡もたまにメールする程度。 
私の優柔不断さが、こなたをこの上なく傷つけた。臆病な私はその後こなたに会うこともせず、逃げるようにここに引っ越してきた。 
そして、それらのことを考えまいとするかのように(実際そうだったのだろう)、私は大学の勉強、サークル活動、行事に取り組んだ。 
しかし、考えまいと努力すればするほど、そして時間がたてばたつほどに彼女への仕打ちに対する後悔、そして彼女への思いが私を蝕んでいった。 
大学でできた新しい友達にさえ、 

「最近元気ないね。」 

と言われるようになってしまった。 

 やりきれない思いが溢れていく。 

(このまま部屋にいてもおかしくなっちゃいそうだわ・・・!) 

この辺りは治安がよく、夜にも安心して出歩ける。 
外に出てみる。今日は天気はいいが冷え込んでいる。あまりの寒さに身を震わせる。 
私は気を紛らわすために近くの公園へと向かった。その公園は夜には滅多に人がいない。 
私はどこかに落ち着こうと辺りを見回す。そこには背中合わせになっているベンチがあった。 
そこだけ外灯のぼんやりとした温かい光に照らされていて、周りの暗く寒々しい空間とは断絶された別世界のようだった。 
ベンチには、帽子をかぶった女性の後ろ姿があった。不思議と落ち着いたその空間に惹かれ、私は彼女とちょうど背中合わせになる位置に座った。 

「寒いですね。」 

「・・・ええ」 

私の言葉に女性が低くて小さい、けれども穏やかな声で答えた。 

(なんだか、こんな雰囲気って久しぶりね・・・) 

思えば近頃私には心休まることがなかった。学校ではなにかにとり付かれたかのようにせわしなく動きまわり、一人のときは日に日に重みをましていく心を抱え、私は身心ともにぼろぼろだった。 
それが、今の妙に落ち着く空間に身を置いてしまって・・・。 

(ダメ、涙が・・・!) 

泣いてしまった。涙と共に感情のダムも決壊してしまった。溢れるものを止められなくなってしまった私は、たまらず喋り出した。 

「私、去年の高校の卒業式のときに、親友の女の子から告白、されたんですっ・・・!」 

泣きながら話す。背後の女性は私の話を聞いているのかは分からないが、黙っている。しかし私は構わずしゃべり続ける。 

「彼女の告白は嬉しかった。私も同じ気持ちだったから!でも、勇気のなかった私は、彼女の気持ちを一番ひどいやり方で拒絶してしまった・・・。 
返事を待つって言った彼女をおいて私は逃げた。笑っちゃうでしょ?彼女を傷つけたくないとか、彼女ともっと一緒にいたいとか考えて、それで招いた結果は最悪よ。 
私は彼女も自分自身も裏切って、すべてを失った・・・・。だけど、彼女への思いは日に日に大きくなっていく・・・。自分から逃げ出しておいて勝手よね。だけど私は、彼女のことが大好き。」 

私は夜空に見える星に手を伸ばす。ほかの星たちから離れ、二つ並んで奇麗に輝く星。 

ああ、やっぱり届かない・・・。 

「彼女は私に告白するときにすごく勇気を振り絞った。周りからの冷たい視線も、私となら耐えていける。そう思ってわたしに思いを打ち明けてくれた。 
けれど私はそれを真正面から受け止められなかった・・・!」 

星を湛える夜空に登るためのはしごはもう消え去った。 

「あの子、今頃なにしてるかな。乱れた生活なんかしてなきゃいいけど・・・。」 

こなたの顔を思い出す。 

「いっつも馬鹿やってて、意地っ張りで、だけど寂しがり屋で・・・」 

会いたい、こなたに。 

「馬鹿みたい。一人で悩んでても、仕方ないのに。」 

決めた。こなたに会いに行こう。そして自分の正直な気持ちを伝えよう。逃げた先でも逃げていたら、一生前なんか見えてこない。 
逃げた私のことを許してくれなくてもいい。拒絶されたって構わない。あの子が幸せになれるなら、私はなんだってしよう。 
輝く星にはさわれなくても、その輝きを見ていよう。 

「こなたに・・・あの子に会ってくるわ。私への気持ちが消えていても。あの子に、あの時の言葉を返してくる。 
あの子が私のためにしてくれた覚悟、ううん、それ以上の覚悟を持って。」 

その場に沈黙が舞い降りる。 

(人に話すだけで、こんなにも自分の心から迷いが消えるのね。) 

さっきまで昂っていた心も、少しは落ち着いてきたみたいだ。いや、吹っ切れた分、いつもよりどこか清々しい気分だ。 
同時に、私はいままで黙った女性に対して一方的に喋り続けていたことを再認識した。考えてみたらものすごく恥ずかしい。 
非礼を詫びようとしたそのとき、 

「その子は・・・」 

私に代わるように後ろの女性が喋り出す。 

(あれ・・・?) 

「あなたの返事を待ってる、って言ったんでしょ?」 

(この声って・・・まさか) 

「じゃあ、あなたのことを忘れてるわけないじゃん。」 

(ああ。) 

「きっと、ずっと待ってるよ。ずっとあなたのことを好きなままで。」 

(曇りのとれた鏡なら) 

「ううん。もしかしたら待ちきれなくて会いにきちゃうかもしれない。」 

(こんなに近くに星を写しだせるんだ。) 

「・・・そうよね。あいつは・・・あんたはそういうやつだったわね。」 

「仕方ないじゃん・・・。私、我慢強くないのに、ずっと待たされて・・・寂しかった・・・不安だったんだから!」 

私はベンチを立って、泣きだした彼女の正面へと回る。 

「ごめんねこなた。私のせいで、寂しい思いさせちゃって。」 

そう言った私の胸に、こなたが飛び込んできた。 

「かがみの馬鹿!私の遅刻よりひどいよ!!」 

私は今にも安堵で崩れ落ちそうになっている彼女を、持てるだけの力を持って抱きしめる。 

「ごめん、ううん、ありがとう。こんな私をずっと待っててくれて。もう絶対に待たせたりしない。絶対に離さない!」 

「うっ!うぇぇぇん!かがみぃ!大好きだよぉ!」 

私の腕のなかで泣きじゃくるこなた。ああ、この子がこんなにも愛しかったなんて・・・。 

「うん!私も大好き!!これからはずっと、なにがあっても一緒にいるから!」 

迷いはない。いらない常識などもう捨てた。この子さえ私の腕になかにいれば、何があっても私はやっていける。 

私たち二人なら、きっと輝いていけるよね?他の人たちも見入ってしまうくらいに。 

「うん。きっと。」 

「?」 

つぶやく私に疑問を浮かべるこなた。 

「なんでもないわよ。さ、行きましょ?今日は泊まってくんでしょ?」 

「うん!もちろんだヨ!」 

そして私たちは、温かい家々の光へ向かってゆっくりと歩き始めた。 


End 



~~~別に見なくてもいいおまけ~~~ 



「か~がみん♪」 

「な、なによ?」 

「なんでベンチに座る前に私だって気付かなかったの?」 

「だってあんた帽子かぶってたし・・・。 
帽子も去年まで何種類かあったみたいだけど、どれにもあてはまらないし。 
あとあんた背伸びたでしょ?この前まで142cmしかなかったのに。 
それに髪の質が少しよくなったみたいだし。 
あと斜め後ろから見た感じではバストも1,2センチ増えたみたいだし、あ、そうそうそれと・・・」 

「かがみ、それ私が恋人じゃなかったらただの変質者だよ・・・。お父さんも負けるよ。」 

どうやらかがみは想像以上にこなたloveなようです。 



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