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white chocolate (1) - (2009/02/25 (水) 00:09:58) の編集履歴(バックアップ)


告白した、あの日。
忘れもしない、あの日。
時が止まった、あの瞬間。

ずっとずっと、好きだった。

私の気持ちは、あの時から変わっていないよ。
変わるはずがないんだ。

多分、これから先も、ずっと。

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white chocolate (1)
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2月14日。それは、乙女による乙女の為の乙女の日。

私だって、一応女の子。
この日になると、色付く空気がたまらなくくすぐったくて。

朝起きれば青空だった。
澄んだ青で、私を見下ろしていた。
だけれど、雪はなんだか降りそうな気がした。

まだまだ寒い、今日この頃。

昨日、ゆーちゃんと一緒に作ったお菓子。それは、チョコレート。
ゆーちゃんはゆーちゃんで愛しの人に作ってて。
私も、まぁ、大好きなかがみの為に作った。実は作りたくて仕方がなかったのだチョコレート。
世界にただ一つの、オリジナル。
そう思えばなぜか愛しくみえるから不思議だよ。

言わば私の想いの分身。私の心の一部。

それが私の鞄に入れば、学校に行く準備は万端。

かがみは受け取ってくれるよね?


今日も変わらず学校へ行く。
毎日毎日変わらないのに、今日はどうしてか心がここにない、そんな気がして。
やっぱり今日が2月14日だからなのかな。
今は、いつもあいつと待ち合わせしている場所につく前の一時。
つかさと2人で歩いてる。

「今日は先に帰ってもらえる?」

つかさに言うと、

「うん、わかってるよ♪」

なんてご機嫌な様子で返してきて。
なんでそんなに機嫌いいわけ?

「だって、こなちゃんと放課後デートするんでしょ?2人がうまくいってると、私も嬉しくって♪」

うぅ…恥ずかしい。
デート、とか…しないわけじゃないけどさ、ねぇ。てゆうか、むしろデート以外のなにものでもないのだけれど、ストレートに言われると恥ずかしいわよ。

今日の放課後、私たちは2人だけで帰る約束をしていて。

昨日こなたに、2人きりで帰ろう、そう言われて。
理由なんて、聞くわけなくて。
そんな言葉は、必要なくて。

ただ、目と目が合わされば、それで充分だった。
ただ、手と手が触れあえば、それで充分だった。

多くの言葉は必要ない。

一緒にいるとき、はしゃぎあえて。
馬鹿みたいに笑いあえて。
少しだけいい雰囲気の時には、多くの言葉はいらない関係。

私はそれが、凄く嬉しくて。

だって、こなたに出会えたあの時から。ずっとずっと欲しかったから。
今のこの、関係がさ。


私の好きな人と、私の親友が歩いてきた。
私が先に待ち合わせ場所に着いてるなんてあんまりないんだけど、今日は早く起きちゃったものだから。早めに家を出ちゃった。

「こなちゃん、おはよー」
「早いじゃない、珍しいわね」

私も2人に挨拶を返す。
私はかがみに目で合図した。

今日の放課後、大丈夫だよね?

かがみも、私に合図した。

わかってるって、大丈夫よ。

私たちがそうしていると、つかさは何がなんだかわからなそうだった。

「さぁさ、学校へ行こう行こう!」

私はなんだか嬉しくなって、歩き出した。

「朝から元気だね、こなちゃん」

「ふふ、当たり前だよつかさ。だって今日は…乙女の日だからね!」

「全くあんたは…乙女の日って、何よ」

「いいの~?言っちゃっても」

「なによ。言ってみなさいよ」

「私とかがみが、激しく愛し合う日のこと「変なこと言うなー!」

全部言い切る前に遮られた。

「お姉ちゃんたち、進んでるんだね」

なんか納得してるつかさ。
かがみは顔真っ赤。

冗談がすぎたかな…?
まぁ、実際に何回か、そうゆうことをしてたりするからこそ、かがみは顔が紅いのかな。
なんて、思い出したら私まで顔が熱くなってきた。
しまった、自爆しちゃったね。

「てゆうか、それのどこが乙女なのよ。むしろなんだか乙女から遠ざかってるじゃない!」

「そう~?でもあの時のかがみは乙女ちっくだったから…って、痛いよかがみ~…」

軽く口をつねられた。うぅ~。


学校に着いた。
なんだかやっぱり、今日は雰囲気が桃色だ。
みんな意識、してるんだな…。

上履きを出そうと、げた箱をあけると―――

とあるモノを、見つけてしまった。
手紙だった。
綺麗な字で、柊かがみ様、そう書かれていた封筒だった。

思考が停止した。

「かがみ、どうしたの?」

後ろからこなたに声をかけられて、我に帰る。
私はとっさにその手紙を隠してしまった。隠した理由はどこにもないように思えた。
こなたはそれに、気づかないようだった。
私がなんでもないよと言ったら、ふぅん、そう言っただけだった。

つかさとこなたと別れたあと。
トイレの個室に駆け込んで、手紙を読んだ。



突然のお手紙、申し訳ございません。今日の放課後、屋上に来ていただけませんか。渡したいものがあります



差出人不明。
やっぱりこれって…ラブレター?まさか、ね。

いや、認めざるを得ない。
これは、紛れもないラブレターだ。
だって封筒をとめるのにハートのシールが使われているし。
それに、今日このタイミングで手紙を書くなんて、どう考えてもやっぱり、ね。

そんなことをしていたら、チャイムがなった。私は急いで、心ここにあらずのまま、クラスに戻った。


1日の授業は、あっという間に流れた。

今は最後の時限だ。
これが終われば放課後だ。

早く放課後にならないかな。
早く放課後にならないかな。

そればかり、考えていた。
愛しのかがみに、早く会いたいよ。

「じゃあ泉、ここの答えはいくつだ?」

突然、先生に指名された。
…ヤバい。授業全く聞いてなかったから、わからない。
しかも教科書すらあけてない。
今、数学だっけ?
…いいや、適当に言っちゃえ!

「3χです!」

「うん、正解だ」

え…いや、まさか。…当たっちゃった!言ってみるもんだねぇ。

「正解なんだ…が。なんで教科書すら開いてないのに答えがわかったんだ?」

…。
それは。うん。聞かないでほしかったなぁ。
…いいや、適当に言っちゃえ!

「そこに答えがあるからです!」

「アホか!泉、授業終わったら職員室来い!」

え゛…。…ヤバい。放課後はかがみと大切な約束があるのに。

授業が終わった。
つかさやみゆきさんに励まされた。ありがとね。

早めに先生のお説教すまして、早く幸せの時間を過ごさねば。
私は急いで先生のあとをついていった。
職員室からすぐにかがみのもとに向かえるように、鞄を持って。
私の心の一部は、鞄の中でひっそりと眠っていた。


職員室に入るときだった。

かがみが屋上への階段をあがるのが見えたんだ。
見た途端に、私の第六感は告げた。

………まさか、ね…。


放課後になった。
全然、頭に授業が入らなかった。

私はなんて言って断ろうか、考えていた。
おそらくは女子から、渡されるのはきっとチョコレートと告白の言葉。
今日というこの雰囲気に押されて言っちゃえ、って決心したんだと勝手に想像。

私はこなたと付き合っている以上、他の誰からも受け取るわけにはいかないし、受け取れるはずがない。
こなた以上の相手は現れるはずがないから。
私は確信していた。私が好きになれるのは、後にも先にもこなた一人だけだって。

私は、もう大切な人がいるので受け取れません、そう言って断ることにした。

屋上に出た。まだ、誰だか知らない相手は来ていなかった。
授業が終わってすぐに来たからかな。

こなたが待っているから、早く済ませたかった。誰かさんには申し訳無いけれども。

しばらくたった。長すぎる待ち時間。長く感じられただけで、多分5分はたっていないと思う。
時計をみて確認しようかな、なんて思ったときだった。

扉が、開いた。
それは、意外な相手だった。


日下部だった。


最初、私は日下部も誰かに用事があったのだと思った。

「日下部じゃない…あんたも、何か用事があるの?」

聞いて刹那、日下部の瞳を見て全てを悟った。

――この人だ――

そう。手紙の差出人は、日下部だった。

「日下部が…手紙の差出人?」

一応確認したら。

「うん…」

ただ、それだけ。
日下部は鞄から、綺麗に包装されたもの――恐らくチョコレート――を取り出して、言った。

「柊…。ちびっこと、付き合っているのはわかってるんだ。だけど…私、もう耐えられないんだ…。自分の気持ちを、これ以上、おさえられないってゆうか…。う、うけとって貰えないかな…。」

私の思考は止まりかけた。
…日下部は、私を、好きなんだ。

びっくりしてしまった。
中学からずっと一緒だったのに、そんな素振りさえ見せなかったから。

「いつから…?」

疑問に思って、聞いてしまった。

「…柊がちびっこと付き合いだしてからかなー。なんかなー、柊が付き合ってるのをみて、こう、胸が切なくなって…」

いつもの喋り方だけれど、明らかに違う様子で言った。照れた表情だけれど、瞳は真剣だった。
本当に本当に好きなんだ、そう目が訴えていたから。

日下部の手は、震えていた。
日下部は、泣き出しそうだった。

やめてよ。泣かないでよ。
そんな悲しい表情はあんたには似合わないよ。
日下部は、手を滑らせて、日下部の想いの詰まった包装を落としそうになった。

私はとっさに、それを取った。


後ろで、屋上の扉が開く音がした。
振り向くと。


――こなたがいた。

大きく瞳をあけて、そう、信じられない
と、言うかのように。

「…なんで…こなたが…ここに?」

私はとっさに言った。
だってこなたは…私と帰るために、教室に、いやここ以外の場所にいるはずだったから。

「…なんでは…こっちのセリフだよ…」

こなたは下を向いた。
震えながら、言った。

「…か…かがみは…なんで…みさきちと…ここにいるの…?」

…こなたは、泣いていた。

私はその時わかった。

誤解、されている。

私が日下部となんらかの関係があると誤解している。

私は急いでこなたに駆け寄ろうとした。

「、来ないでっ!!!」

こなたは叫んだ。泣きながら。涙を、流しながら。
私は駆け寄ることができなかった。

こなたは手に持っていた鞄から、ラッピングされたものを出して、私に投げつけた。
乱暴に、私に投げつけた。

私はそれを受け取ることができなくて。

「…かがみの、うそつき…っ!!!」

こなたは泣きながら、そう、叫んで。
走り去ってしまった。

私はただ、呆然とそこに立ち尽くしてしまった。



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  • 氏の作品はどれも続きが気になって困る(いい意味で)。
    続編期待してます!!
    頑張ってください! -- 名無しさん (2009-02-24 16:24:52)


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