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パーフェクトスター第4章Cパート2 - (2008/05/18 (日) 21:51:12) の編集履歴(バックアップ)


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『パーフェクトスター』
●第4章「夢の終わりに謳う歌」Cパート2
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つかさの申し入れを了承し、その1時間後につかさはうちにきた。
会って話すだけなら、前の公園で待ち合わせることも考えたけど、今日も炎天下。
それにかがみにご飯を作って待っていると言った事、沈んだ気分のまま遠出はしたくなかったから、つかさをうちに招く事にした。

そして、正午過ぎ。かがみが急に帰ってくる事はないとは思ったけど、
念のためにかがみにはバイトが終り次第メールをくれるように手配はしておく。

「ちょっち散らかってるけど、どうぞどうぞ」

「お邪魔します」と律儀に一言いれてから上がるつかさを部屋に通し、冷蔵庫に入ってるお茶を2人分準備する。
かがみと一緒に暮らすようになってから、常備するようになったお茶だ。
手元にあるコップが、注がれていくお茶の量に比例して冷えていくのが心地いい。

「こなちゃんのアパートにくるの、これで2回目かな?」
「ん、確かそだったかな? まぁ相変わらずの部屋だけどね」

何故か立ちっぱなしのつかさにお茶を手渡す。
つかさが言うように、つかさがこの家にくるのは2回目だ。
ちなみに1回目は、つかさにみゆきさんに、ご招待というなのお手伝いをしてもらった日。
ストレートにいうと、引っ越し初日だった。
手伝ってもらったはずなのに、片付くまで当社比2倍の時間が掛かったあの日の思い出に関連してなのか、
ふと漫画やDVDを収納した棚や棚の前に極限まで積まれたアニメグッズ、数不明な積みゲーの区域に目がいく。
引っ越す際にお気に入り以外のものはほとんど実家においてきた分、あの区域は物が増えたという証拠でもある。
── かがみにもあのヲタ区域については、2日に1回は口うるさく言われてたっけ。
そこまで考えが至って、自分の思考に落胆した。
── …また、やってしまった。
最近は何を考えても、最後はかがみに結びついてしまう。
それが悪いとは思ってはいなかった。…つい2日前までは。
今の私はかがみのことに考えが至る度に、かがみを失う可能性の未来を考えては、陰鬱になり、周りが見えなくなってしまう。
── まだ失うとは決まったわけじゃないのに、ね…。
そう。その可能性に縋るか、捨てるかは自分次第なのに、私は未だ決められていない。

「こなちゃん、どうしたの?」
「へ…あー…なんでもないよ」
「そっかぁ」

今朝同様、トリップしていたらしい。
手元のお茶を一口含んだつかさは、見るからに不服そうな表情をしてる。

「いや、まぁ私のことよりさ。つかさ、今日はどうしたの?」
「ふぇ?あ、うん…その事なんだけど…」

微妙な空気が生まれたのを感じて、話題転換を図ったものの、帰ってきたのはいつも以上につかさの歯切れが悪い返事。
そんなつかさの様子から、心の何処かで嫌な予感をひしひしと感じていたけど、今の所は見て見ぬ振りをした。
気を紛らわせる為に、お茶を飲む。

「一個だけ、こなちゃんに聞きたいことがあってね」
「ん」
「その、こなちゃんは………お姉ちゃんのこと、好き?」
「ぶっ!!」

お茶を吹きかけた。
ついでに、気管にお茶が入って、さらには手の中にあるコップを落としかけた。
そんな慌ただしい今の心境をゲームに例えると、グラフィックでエネミーエンカウントするRPGのプレイ中、
目視出来ない敵にバックアタック食らった感じだ。
一見冷静に例えてるけど、実際は唐突かつ意外な不意打ちに、咽せつつも頭の中はぐちゃぐちゃになってた。

「こ、こなちゃん、大丈夫!??」
「げほっ!げほっ!」

本気とかいてマジで心配そうな顔なつかさに、咽せつつもジェスチャーで大丈夫と意思表示しておく。
まぁ咽せた原因は間違いなくつかさにあって、本人はそんなこと露にも思ってないのはさすがだと思う。
一通り咳き込んですっきりしてから、一方すっきりとは程遠い頭を稼働させた。
つかさの質問の意図は解らないけど、言葉の意味は理解できる。
「かがみのことが好きか?」と言われれば、もちろんYesだ。
だから、私は口を開いた。

「私は」

なのに。
何故か言葉が続かない。もう一度喉へ風を通す。

「私は…!」

── かがみのことが好き。
またしても、肝心なところは音にならなかった。
答えは出てるのに、どうして言えないのだろうかと、自分を顧みる。
── ああ、そうか。
常識的に考えればすぐにわかることだった。
私の口を止めていたのは、僅かに残っていた常識なのだ。

人と人とが好き合うことに問題はない──
けど、それは世間一般の常識の範疇である同性間や異性間に生まれるのは友情、
または特定の異性に対して恋愛感情を抱くことに問題ないだけだ。
私もその常識の中にいて、ずっとリアル同性趣味はないと豪語していたのに。

──ふたを開けてみれば、私はかがみを好きになっていた。

同性の、しかも抱いてる感情は限りなく恋愛寄りなものであって、友情じゃ留まれないくらい強い想い。
そんな私の想いは、日本という世間では冷たい目で見られる上に、
かがみの家族であるつかさに、非常識を一方的に突きつけていいはずがない。
そんな常識が、私の口を止めていた。

「…それともこなちゃんは、お姉ちゃんのこと…嫌い?」

しばしの間の後、背に刺さる言葉。
いや、この痛みはもっと深いところに刺さったんだろう。
《かがみのこと嫌い?》
その一部だけが頭の中で反復され、心の中の何かが軋む音がした。

「そんなことない!嫌いなんかじゃない!」

脊髄反射ともいうのだろうか。
気付けば、語尾を強めた言葉を返しながら振り返っていた。
思ったよりつかさとの距離が近くて、驚いたのもつかの間。
彼女の持っているほんわかした雰囲気で忘れがちだけど、つかさは私より目線一個分身長が高い。
そんな身体的な特徴や、今、つかさが纏っている空気に、表情のせいもあるのかもしれないけど。
…記憶の中のかがみの面影と、目の前にいるつかさが重なって見えて、私はつかさに釘付けになった。
かがみが、泣いている私を抱き締めてくれたときと、同じ優しさが、
あのとき同様に、“我慢しなくていい”と言われてるような感覚に、私の気持ちを抑えつけていたものを取り除いていく。

「かがみのこと…かがみのこと」

つばを飲んで、想いを吐き出す準備をして。

「嫌いじゃないよ…」

このときの私は、紡いだ言葉と共に素直な想いを篭城していた常識が取り除かれて。

「むしろ…好き、大好きなんだよ!」

── 私は完全に、自分の想いに飲まれていた。

「友達として、じゃなくて…多分、恋愛感情的な意味で。
つかさに言うような事じゃないし、気持ち悪いって思われても仕方ない。
女同士で、こんな気持ち抱くのは間違いだって、自分でもわかってるんだよ。
でも、そんなこと関係ないって、周りにどう思われてもいいって思っちゃうくらい、かがみが好き──」

そこまでいって、ようやく口の暴走が止まる。
雰囲気に飲み込まれた自我が、目の前にいるつかさの笑顔を確認したとき、そろっと帰ってきた。
想いの相手に伝えたわけじゃないのに、今の自分は間違いなく愛の告白をしているわけで。
沸き上がる羞恥心が顔を赤に染め上げるには、そう時間は掛からなかった。
顔が熱い。

── は、恥ずかしすぎる…。

そんな私をつかさは見続けていた。
ある種の羞恥プレイに心は悶えながら、身体は頭を抱え込んで、とりあえずつかさの視線から逃亡を図る。

「あ、いや…その、つかさ、今の…一部忘れてくれると、助かるんだけど…」

絞りだした私の言葉と様子を見てか、つかさは声を出して笑っていた。
馬鹿にするような笑いじゃないのは、顔を見ていなくても解ったから、気が済むまでそのままにしようと思う。
しばらくして、幾分か落ち着きを取り戻した顔の温度を確認した後、抱え込んでいた手を離した。

「あははっ、ご、ごめんね、こなちゃん。こなちゃんの慌て方が楽しくてつい…」

目の前にいるつかさは、先程見たかがみの面影はすでにないものの、笑顔は健在のまま、本当に嬉しそうに笑っていた。

「つかさ、そ、そんなに笑わなくてもいいじゃん」

心から怒ってなんかない、上辺だけの悪態でコミュニケーションをとる。
こうやって、私が弄られる立場に立つ事は滅多になかっただけに、新鮮味があった。
つかさは目に溜めた涙をスッと拭って、もう一度「ごめんね」と謝罪を入れてから。

「私ね、こなちゃんからその言葉聞きたかったんだ」

屈託のない笑顔を浮かべて、つかさはそう言いきった。


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コメント:
  • ↓同じく・・・首を長~くして待ってます。 -- kk (2008-05-18 21:51:12)
  • 続き、まだかなぁ…… -- 名無しさん (2008-05-18 10:42:34)
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